《大好きだった馴染みに彼氏が出來た~俺にも春が來た話》エピローグ 馴染みにありがとう
「やっと最近靜かになったね」
スーパーで買いを済ませた帰り道、妹が笑いながら言った。
俺の両手は20キロの買い袋で塞がっている。
なんで二人は手ぶらなんだ?
「そうね、人の噂も75日って言うけど、今回は5日で済んでくれて良かった」
「俺は別に心配してなかったぞ」
直ぐ飽きる、俺は分かっていた。
「よく言うわ、やり過ぎたかもしれないって私達に謝ったのは誰?」
「本當に、真理ちゃんから聞いたよ」
「まあ...結果良ければ全て良しだな」
真理は翔子に何でも話している。
翔子から真理にもだ、學校はもちろん家でも隠し事は出來ん。最強タッグだ。
俺は山口を説得した。
奴は千秋の家に行き、今までの自己本意な行の謝罪し、千秋は來週の月曜日から高校に行く事を約束した。
それは良いが、問題は説得の際生徒會室から俺の聲が外にれた事だ。
どこにでも噂好きが居る。
裏も取らず憶測を広める迷な奴等が。
『岸井凌平は佐藤千秋にフラれた腹いせに、佐藤千秋を脅して、それを咎めた山口生徒會長までも恫喝した』
『岸井凌平は佐藤千秋に期からつきまとっていた』
『岸井凌平はゴリラと人間のハーフである...』
等の噂が校に広がった。
ふざけた話だ。
恫喝なんかしていない、する理由もない。
聲がデカさから間違われたのかもしれんな。
つきまとい疑は...大きくなってからは否定出來ん。
千秋の気持ちを無視した行だった。反省だ。
最後はどう言う意味だ?
俺は良いが妹もか?...許せん。
意外にも山口は必死で噂を否定した。
休み時間の度に各教室で事の真相を話て回った。
『あんなゴリラを庇うなんて、山口さん可哀想...』
一部の子からそんな聲があったと聞いた。
言った奴は片っ端から翔子の教育的指導を施されたらしい。
山口は諦めず、學校に働きかけ全校集會を召集しようとしたが止めた。
相変わらず山口の人気は凄い。
否定すれば、する程逆効果だ。
結局は真理と翔子が學校のグループラインを使って、ようやく下らない騒ぎが収まった。
「山口もしくらい反省したのかな」
「凌平、これで反省しなきゃ本當のバカよ」
「まあバカなりに反省したんじゃない?」
二人は山口に辛辣だ。
しウザいが悪い奴じゃ無いと思ったんだけど。
「でも、あの二人には上手く行って貰わないとね」
「全くだ、これ以上は面倒みきれん」
奴に関わると碌な事にならん。
懲り懲りだ。
「そうじゃないよ、戻られたりしないかって事」
「は?」
よく分からん。
戻るって、千秋が學校に戻ったらダメなのか?
俺の苦労が徒労に終わるじゃないか。
そう思ったけど二人の様子に余計な口を挾まない事にした。
「そんな事より今日の夕飯楽しみ!」
「ええ、バッチリ練習もしてきたから楽しみにしてて」
「やった!」
今日は真理が家に泊まるので翔子は大喜び。
と言っても、勉強するのが目的。
何故か翔子も一緒だ、當然寢るのも真理は翔子の部屋...無念だ。
アレやコレは大學にるまでお預けと決めている。
悲しくはない、でも虛しい。
「お兄い、そんなに落ち込まない」
「何を言うか、俺は真理と過ごせるだけで満足してるぞ」
せっかく親父とお袋は旅行で居ないのに...何故翔子は一緒に行かないんだ。
いや、翔子がったから真理が泊まるんだ。
ありがとう、妹よ。
「たっぷりスタミナ料理を作ってあげるから、楽しみにしてなよ」
「うむ」
ちょっと言い方にモヤるが、確かに楽しみだ。
しかし、余りをつけたら寢られなくなる。
発散したくとも、翔子の部屋は壁一枚だ。
今夜は真理が居るので難しいだろう。
更に真理の湯上がりなんか見た日には...生殺しだ。
「真理ちゃんって綺麗だし、勉強や料理も出來る完璧子だね」
「ああ、加えて運もな」
「もう、褒めすぎよ」
照れているな?
本當はスタイルもと言いたいが止めておこう。
「お兄い、真理ちゃんを紹介した妹に謝してよ」
「そうだな」
素直に謝だ。
翔子が真理を引き合わしてくれなかったら、俺はまだ千秋を引き摺っていただろう。
フラれて落ち込んで、男としての自信を失っていたまま、間違いない。
「私も翔子に謝よ」
「真理...」
「なんか興味無かった。
告白された事はあったけど、全然好きになれなかったし」
それって山口の事か?
聞かないけど。
「だから翔子には謝してる、凌平と出會わせて貰った事」
「や、止めてよ真理ちゃん」
頭を下げる真理に翔子は真っ赤な顔で照れている。珍しい事もあるな。
いつもなら『分かれば宜しい』とか言うのに。
「...あのままじゃ誰も幸せになれなかった」
翔子がポツリと呟く。
幸せになれないとはどういう意味だ?
「千秋は兄さんが対象じゃないのは知ってたの。
千秋の理想は王子様で護衛兵士じゃない。
でも兄さんは千秋しか見えてなかった」
「それは...」
確かにそうだった。
でも真理の前で言わなくても。
「確かにそうだっわね、最初の頃は千秋、千秋って。私の事は?そう思ったわ」
「...うぐ」
そんな事今さら言うな、黒歴史レベルだ。
「でも、だからかな」
「何が?」
「こんなに人って一生懸命誰かを好きになれるんだ、って楽しいのかなって」
真理の目は真っ直ぐ俺を見つめる。
その視線に息が詰まった。
「変よね、普通なら彼が居る人にを抱いたらダメなのに。
凌平から千秋を紹介されたら逆に諦め切れなくなっちゃって」
「それは...」
どう答えたら良いんだ。
「それが相だよ」
「相?」
「そうね翔子、相よ」
相ってなんだ?
二人はうんうんと頷いているけど。
「凌平と千秋を見て思ったの、
『これならいつか』って。
だって二人の相が良いとは思えなかったし」
「...そうだな」
認めるよ。
相の合わない俺から千秋は逃げた。
當然の選択だ。
「...ごめんなさい」
「え?」
「あれ?」
「どうして?」
聞き覚えのある聲は千秋だった。
なんでここに居るんだ?
「ちゃんとお禮を言おうと思って...文章や電話は出來ないし。
それで近くに來たら、三人の姿が見えたの」
「そうだったのか」
ブロックは解除した。
その事は真理も知っているが、連絡をしてないから千秋は知らないんだな。
でもここに1人で來たのは気な千秋にとって勇気がいっただろう。
「山口の事なら、禮なんか要らないぞ」
「私達外そうか?」
「いや、構わん。むしろ居てくれ」
真理達にも聞いてしいんだ。
「ありがとう」
「ありがとう?」
千秋は首を傾げた。
ダメだ、獨り善がりの短い言葉じゃ伝わらない。
「俺が先に進めたのは、お前のおだ」
「そんな、私は凌平の気持ちを知りながら...」
「いや、お前の行は正しいよ。
誰だって好きでも無い人間から言い寄られたら逃げるさ」
「そんな!私は凌平の事が嫌いで逃げたんじゃない!!」
そんなに焦るなよ。
いかんな、どうにも説明は苦手だ。
「千秋の気持ちは分かるよ」
真理が千秋の前に立つ。
その表は穏やかで、小さな笑みまで浮かべていた。
「凌平の言った通りよ、誰だって斷るのって言いにくいわ。
嫌いじゃなく、ただに結びつけない人と距離を取るのはね」
まさか真理は山口の事を言っているのか?
「まあ、私の場合嫌いの範疇にったけど」
「あらら、やっぱり」
おい翔子、心の聲を口に出すな!
「だから千秋の決斷は間違がってない。
やり方はちょっと間違ったけどね」
「全くだよ」
こら翔子また!
「もう凌平は護ってくれない。
その覚悟をしっかり持ってね」
「...うん」
千秋はゆっくり頷く。
まだ不安なのか?
「仕方ないな」
「翔子?」
「お兄い、攜帯貸して」
「分かった」
攜帯を手渡すと翔子は自分の攜帯も取り出して何かを始めた。
「はい、これで私も解除したから」
「は?」
「千秋のブロックよ、あとお兄ぃのグループに私もったから」
「グループ?」
「うん、千秋とお兄いのグループ。
何の會話したか、全部分かるからね」
「お、おお」
千秋へ翔子なりの許しなんだろう。
「それじゃ私も」
「真理もか」
真理は自分の攜帯を取り出した。
「これで良し、ここに山口はれないでね。
あと呼び捨てを止めさせて、不愉快だから」
「...分かった、言っとく」
そう言った千秋の顔は神妙だが、僅かな笑みが浮かんでいた。
「それじゃありがとう」
「ああ、またな」
手を振りながら走り去る千秋に、これで良いのか分からないが、また一つ先に進む事が出來た気がしたのだった。
「またやるわね」
「ええ、人間って簡単に変わらないから」
傷に浸る俺の後ろから聲が聞こえた。
ありがとうございました。
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