《【完結&謝】親に夜逃げされた姉妹を助けたら、やたらグイグイくる》第十六話 謝
目の前の差點で、數臺の自車が行き過ぎる。自分のいた故郷と重ね合わせると、その景はまったく異なっている。目移りするほど、人工的な明かりがあちこちで輝いていた。どこもかしもこ人がいて、かすかな息吹が聞こえてくるようだった。
「俺はさ」
まっすぐ奧へとびていく四車線道路を眺めながら、言った。
「ただ、小心者なんだよ。黙って見捨てることもできないくらい、臆病なんだ」
ずっと前からそうだった。小さいころに住んでいた古い木造建築の家で、夜寢るまえに、なにか忘れていないかをよく考えた。その忘れが、あるかどうかもわからない。ただ、一日という區切りのなかで、もう取り戻せない一日前に意識を傾ける。今だって、飼っているハムスターが急にぽっくり死ぬんじゃないかと不安になることがある。だから、わざわざペットカメラを購したわけだ。
「あのまま、すべてが悪い方向に進んだときに自分を保てるかが不安だった。もしかしたら、君たちのことをいつまでも引きずるようになるんじゃないかという気もした。そうなるくらいなら、さっさと助けてしまったほうがいいと考えたんだ」
もちろん、その場に流されたところも多分にある。格好つけたかった気持ちもゼロではない。ただ、一番大きかったは不安や恐怖であり、それらに押された結果なのは間違いない。
「だから、勝手に助けて、勝手に安心しただけだよ。正義なんてものを追い求められるほど、俺は人間ができているわけじゃない」
追い詰められていたときの二人の目が、俺の心の奧底にまで食い込んでいた。だからこそ、あのときにあんな夢を見てしまったのかもしれなかった。
もう一度、過去に戻ることができたのなら、俺はあの子を助けることができただろうか。泣いた顔ではなくて、笑った顔をもっと見られただろうか。止まってしまった足を見下ろしながら、遠くに行ってしまったあの子を思わずに済んだだろうか。
頭に浮かんできた幻想を振り払う。再び、目の前の現実世界に意識を戻した。
まんを食べ終えて、下に敷かれていた紙を丸める。二人の顔には、特にが浮かんでいなかった。こんな自分のことを、わざわざ話すべきじゃなかったのだろう。
そろそろ家に戻ろうと足を前に踏み出したところで、実里が言った。
「話してくれてありがとうございます」
振り返った。
実里は、俺を見ながらまっすぐ立っていた。目が合うと、すぐにその表が笑顔に変わる。
晴香の楽しそうな表はよく見ていたけれど、むすっとした表の多い実里が朗らかに笑っている姿はあまり見かけなかった。だから、俺は驚いてしまう。
奧の信號が、赤から青に切り替わる。停車していたトラックがき出す。
「わたしは、尼子さんに助けられて本當によかったと思っています」
はっきりとそう言った。
エンジン音にまぎれながらも、その聲は雑音と分かれてきれいに響いた。
紫のランニングウェアが、自車のヘッドライトに照らされていた。
「他の誰でもない、尼子さんでよかったです。勝手だなんて、言わないでください。わたしたちは、間違いなく助けられたんです。今だってときおりつらくなることもあるけど、尼子さんと一緒だから耐えられる気がするんです」
晴香も、実里の橫に並んだ。そして、実里を一瞥してから、小さくうなずいた。いったい、どういう表を作って返せばいいのかわからない。
「わたしたちは、尼子さんのことをまだよくわかっていません。だから、これからももっと教えてもらえると嬉しいです。尼子さんには尼子さんの事があるかもしれないけど、しずつでも話してください」
思いもらない実里の言葉に視線を泳がせていると、晴香がかぶせてきた。
「ランニングだって、もっと尼子さんと仲良くなりたいから提案したんです。負擔かけてばかりのわたしたちですが、その気持ちは本です」
俺は、気まずくなって視線をそらした。冷えた手をポケットのなかにれる。
「そんなにしてまで知るような人間じゃないぞ。ま、好きにしてくれ」
「もしかして、照れてます?」
「これくらいで照れないよ」
筋痛がいっそうひどくなってきた。俺が歩きはじめると二人もついてくる。
空には、青白いを発する月が漂っていた。久しぶりに運をしたからか、冬の夜にもかかわらず寒さはなく、肺のなかの空気が澄んでいるような覚がある。普段であれば、この時間はごろごろしているだけだっただろう。手に持ったペットボトルの水を、一口含む。
たまにはこういう時間も悪くない。ランニングをもうしつづけてみようと思った。
優等生だった子爵令嬢は、戀を知りたい。~六人目の子供ができたので離縁します~(書籍化&コミカライズ)
子爵令嬢のセレスティーヌは、勉強が大好きだった。クラスの令嬢達と戀やお灑落についておしゃべりするよりも、數學の難しい問題を解いている方が好きだった。クラスでは本ばかり読んでいて成績が良く、真面目で優等生。そんなセレスティーヌに、突然人生の転機が訪れる。家庭の事情で、社交界きってのプレイボーイであるブランシェット公爵家の嫡男と結婚する事になってしまったのだ。嫁いですぐに子育てが始まり、最初の十年は大変だった事しか覚えていない。十六歳で公爵家に嫁いで二十年、五人の子供達を育てブランシェット家の後継ぎも無事に決まる。これで育児に一區切りつき、これからは自分の時間を持てると思っていた矢先に事件が起こる――――。六人目の子供が出來たのだ……。セレスティーヌが育てた子供達は、夫の愛人が産んだ子供。これ以上の子育てなんて無理だと思い、セレスティーヌは離縁を決意する。離縁してから始まる、セレスティーヌの新しい人生。戀を知らない令嬢が、知らないうちに戀に落ち戸惑いながらも前に進んでいく····そんなお話。 ◆書籍化&コミカライズが決定しました。 ◆マッグガーデンノベルズ様にて書籍化 ◆イラストは、いちかわはる先生です。 ◆9人のキャラデザを、活動報告にて公開
8 130不死の子供たち【書籍販売中】
記憶を失った青年『レイラ』が目を覚ました世界は、 命を創造し、恒星間航行を可能とした舊人類が滅んだ世界だった。 荒廃し廃墟に埋もれた橫浜で、失われた記憶の手掛かりを探すレイラは、 人工知能の相棒『カグヤ』と共に、殘虐な略奪者がのさばり、 異形の生物が徘徊する廃墟の街に身を投じることになる。 【いずみノベルズ】様より 【不死の子供たち③ ─混沌─ 】が販売中です。 公式サイト https://izuminovels.jp/isbn-9784295600602/ 【注意】感想欄では、物語や登場人物に関する重要な要素について語られています。 感想欄を確認する際には注意してください。 サイドストーリー中心の『ポストアポカリプスな日常』も投稿しています。 ※カクヨム様でも連載しています。
8 93【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金術師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-
書籍版4巻は、2022年7月8日発売です! イラストはかぼちゃ先生に擔當していただいております。 活動報告でキャラクターデザインを公開していますので、ぜひ、見てみてください! コミック版は「ヤングエースUP」さまで連載中です! 作畫は姫乃タカ先生が擔當してくださっています。 2021.03.01:書籍化に合わせてタイトルを変更しました。 舊タイトル「弱者と呼ばれて帝國を追放されたら、マジックアイテム作り放題の「創造錬金術師(オーバーアルケミスト)」に覚醒しました -魔王のお抱え錬金術師として、領土を文明大國に進化させます-」 帝國に住む少年トール・リーガスは、公爵である父の手によって魔王領へと追放される。 理由は、彼が使えるのが「錬金術」だけで、戦闘用のスキルを一切持っていないからだった。 彼の住む帝國は軍事大國で、戦闘スキルを持たない者は差別されていた。 だから帝國は彼を、魔王領への人質・いけにえにすることにしたのだ。 しかし魔王領に入った瞬間、トールの「錬金術」スキルは超覚醒する。 「光・闇・地・水・火・風」……あらゆる屬性を操ることができる、究極の「創造錬金術(オーバー・アルケミー)」というスキルになったのだ。 「創造錬金術」は寫真や説明を読んだだけで、そのアイテムをコピーすることができるのだ。 そうしてエルフ少女や魔王の信頼を得て、魔王領のおかかえ錬金術師となったトールだったが── 「あれ? なんだこの本……異世界の勇者が持ち込んだ『通販カタログ』?」 ──異世界の本を手に入れてしまったことで、文明的アイテムも作れるようになる。 さらにそれが思いもよらない超絶性能を発揮して……? これは追放された少年が、帝國と勇者を超えて、魔王領を文明大國に変えていく物語。 ・カクヨムにも投稿しています。
8 159私は、海軍最強航空隊のパイロットだった
初陣の真珠灣攻撃を皮切りに、各戦線で勝利を挙げていた、帝國海軍最新鋭の空母「瑞鶴」(ずいかく)。 世界最高の艦、航空機、搭乗員を集めた「瑞鶴」は向かう所敵なしであった。 しかし、次に補充されてきた搭乗員は、とんでもない「ド素人」だった! これは、世界最強の戦闘機に命をかけて戦った少年少女たちの物語である。 本作は小説家になろうでも公開しています。
8 105ゆびきたす
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人はとても不安定で不確かな存在だ。同じ『人』でありながら1人1人に個性があり価値観の相違があり別々の感性を持ち合わせている。 十人十色。この言葉は誰もが知っている言葉だろう。同じ人間でも好きなこと、考えていること、やりたい事は皆別々だ。 あるところに1人の青年がいた。彼は幾度となく失敗を繰り返していた。どれだけ努力しても変わらない自身に苛立ち、焦り、絶望し、後悔した。 しかしその度に支えてくれる人たちがいた。辛い時に側にいてくれる家族、何も聞かずいつものように明るい話題を振ってくれる親友、不慣れな自分をフォローしてくれる仲間。そんな優しい周りの人たちに言葉では表せない感謝を感じていた。 これは1つの願い……1つの願望だ。自身のため、周りの人たちの支えを忘れないために彼は心の中の想いを一冊のノートに書き並べる。いつかその想いを言葉にだすことを思い描いて。自分自身へ、そして自分を助けてくれた人たちへの約束を。 しかしある日、彼は願いを果たす前にこの世を去ってしまうのだった。 これはそんな青年の葉わなかった願いをある少女が受け継ぎ、果たすために日々を奔走する物語である。 堅苦しい概要はここまで! 最初の注意事項でも觸れていますがこの作品が自分が初めて書く小説1號です。 まだまだ失敗や思い通りにいかないことも多いので今後投稿済みのエピソードに修正や作り直しをすることがあるかもしれません。 內容こそ大きな変更はしないものの言葉遣いや文章そのものなど、表現の仕方が大きく変化する可能性があります。 それでもいいよ! という方は是非ゆっくり見ていってください(。・ω・。) ちなみに自分はコメントを見るのが好きなのでどんどん書いちゃってくれて構いません。 厳しい意見を書くも良し、コメ投稿者同士で會話をするのも構いません( ´∀`) 他の人同士の會話を見るのも楽しみの1つなのでどんどんどうぞです ( ・∇・)
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