《モテないキャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜》25 馴染ざまぁされた上司②
「え……それってどういう」
「はぁ……何、馬鹿なこと言ってるのかしら。忘れてちょうだい」
はっと気づいたように所長は黙ってしまう。
仁科さんも本社から追い出されたことの想いが創作のジャンルのきっかけになっている。
「さっき言ってたトラウマってもしかして所長が創作をやっていることに関係していたりするんですか?」
「……仁科や葵に聞いた?」
「そういうわけではないんです……ただもしかしてと思って」
「そうね。でも私の創作理由なんて仁科や葵に比べれば大したことないし、小さなことよ」
作所長がしだけ寂しそうな顔をする。
「私の実家の隣にはね、同い年で小さな頃から一緒に育った男の子が住んでたの」
「馴染ですか……」
「そう。小學校も中學も高校も一緒でこのまま一緒にいるんだってずっと思ってた。その男の子が好きだったのよね」
作所長が馴染か。何とも羨ましい男の子がいたもんだ。
「でも昔から私……格きつくて、結構厳しいことを言ってたのよね。束縛したつもりはなかったんだけど……そう思われても仕方がないわよね」
「……それって」
「うん、高校3年生のある日突然言われたわ。もうつきまとうのはやめてくれ、おまえと一緒だと慘めに思えてくる、俺は本當は弱くないんだって。その馴染の隣には私を見てほくそ笑んでいる……彼の人がいたの」
所長は話を続ける。
「いわゆる馴染ざまぁってやつよ。私はざまぁされた方。寢坊ばかりの彼のために毎朝早起きして起こしに行ったり、お弁當を作ったり。留年しかけた時は試験勉強対策をしてあげたり、風邪を引いた時は看病もしたんだけどね。彼にとってはうるさい馴染だったみたい。大學が決まってお世話が一段落になった瞬間この扱いよ」
「……」
「私、盡くしたがりの格だったみたい。馴染のためになるならと思ってしずつ距離をつめていたら全部無くしちゃった。それから私は培ったものが突如無くなることに恐怖をじるようになったの。だから今もね。大口案件がなくなって……會社に損害を與えてしまって、育てている仁科や葵がいなくなってしまうことが怖いのよ」
「今も馴染の人のことを?」
「ふふ、當時は好きだったのに不思議なものね。今は名前も聞きたくないぐらいよ。でも私は報われなかったけど、馴染自は結ばれてしいと思った。現実だろうが架空だろうが私のようにはなってしくない。馴染が絶対に結ばれてほしいと思ってる」
それが所長の馴染のラブコメを書き続ける理由というものなのか。
ずっと心の中のびを書いているんだなと思う。
「でも、思い返せば格きついし、捨てられてもおかしくないわよね。仁科や葵から『厳しくてもうついていけない』って言われたら……さすがに」
「それはないと思います」
それははっきりと斷言できた。
「先日仁科さんや九寶さんと話をしたんですが、出てくる言葉は全部所長が彼達を見いだした謝の言葉ばかりですよ」
「……そ、そう?」
「普段3人一緒だから見えにくいのかもしれませんけど、外部から來た俺だからよく見えます。仁科さんも九寶さんも所長のこと大好きですよ」
「ちょ、は、恥ずかしいこと言わないでよ!」
「だから俺も所長が大好きになれるように頑張ります。その厳しさを全部吸収して自慢の部下になってやります」
「あ、あなたが言うとちょっと複雑な意味になるから! も、もう」
「所長の指導はに溢れています。俺、所長に教えてもらったことが間違ってると思わなかったです。……子供の頃からずっと同じように生きていたならその馴染さんは所長のに気づかない鈍野郎だと思います」
「花村くん……」
「いつか……もし、馴染だったその男がやっぱりおまえがいないとダメなんだなんて言った來たらこう言ってやればいいんです!」
俺は拳を突き上げた。
「もう戻れないんだよ、手遅れだバーカってね!」
「ふふ、そう……って赤信號!」
「げっ!?」
勢い余って赤信號を通過しそうになったので急ブレーキを踏んでしまう。
社名はっていない社有車だから大きなことにはならないと思うけどやらかしてしまった。
これは……すごく怒られるんじゃ。
「アハハハハハ、花村くん……あなた意外にやんちゃね!」
思ったより笑われていた。
「ちょっと弱気になっていたわ。でもあなたの言葉でちょっと吹っ切れたみたい……ありがと」
そうやってらかな笑みを浮かべてくれた作所長はとても綺麗だった。
……この人の元で頑張っていきたい。俺は理想の上司の下で絶対に長できる、そう思えた。
「でも、ヒヤリハット報告はちゃんとしてもらうからね」
「ハイ」
でもやっぱり所長は厳しいんだよなぁ。
そして客先に到著した。
先に営業車から出た作所長を俺は追う。
「花村くん、これから大勝負よ」
「はい」
「あなたは後ろで見てなさい。……でももしかしたら開発者として意見を聞くときが來るかもしれない。その時は……」
「ええ、何でも聞いてください。俺が所長を支えます!」
「よろしい。それじゃあ……いきましょう」
俺と所長は顧客擔當者を呼び出し、対処にあたるのであった。
結果は……。
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