《モテないキャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜》28 悪役令嬢の後輩①
「いらっしゃいませ~」
書籍化作家お米炊子の朝はそんなに早くない。
日々、出勤時間に合わせて常に7時起きをしているため土日でも変わらぬ時間に目が覚める。
そこからシャワーを浴びて、のんびりとインスタントコーヒーを飲んで覚醒を促す。
休日はさらにネットサーフィンでWEBの世界を泳いで、出版社からのメールに目を通す。
そうしていいじに時間が過ぎて小腹が減ったら……近所のカフェへ足を運ぶのだ。
浜山に戻ってきてから見つけたカフェがある。
実家からそう遠く離れていないのに今まで全然知らなかった。
雰囲気の良い音楽に味わい深いコーヒー。タブレットを片手にブレックファーストを取ることにする。
ふむ、今日はちょっと甘いものが食べたい気分だ。ふわふわのチョコレートシフォンケーキでも頼むことにしよう。
店員さんに聲をかけて至高のひとときに思いをふける。
いや。本當に良い店だ。これは執筆活も捗ることだろう。
今後はこの場所を俺の執筆拠點にするとしよう。
良いのはそれだけじゃない。何と視線の先には後ろ姿が非常にしいレディがコーヒーに口をつけていたのである。
喫茶ににコーヒー。これぞ完璧ということだろう。
すらりと背が高く、背中までびた黒髪ロングは非常にしい。
背筋がぴたりと椅子の背と平行になっており、育ちの良さがにじみ出ていた。
背を向けているため顔は分からないがきっとしいに違いない。
そんなレディの前に店員がやってくる。
耳をすませばレディの聲が聞こえるのではと思い、聴覚に全神経を向ける。
レディの聲が聞こえた。
「まっくろくろくろ悪役令嬢アイスティを下さい」
なんじゃそりゃ!?
メニュー表をよく見たらお貴族様系アニメ作品とコラボしてやがった。
それであんなわけのわからんタイトルのアイスティが存在したのか。
もう一度レディの方に顔を向けたらたまたま橫を向いていたためそのご尊顔を拝見できた。
―――九寶さんじゃん!?
俺の會社の同僚の九寶葵さんが目の前に座っていた。
え、噓だろ!? 何でここにいるの!?
彼はまだ俺の存在に気付いていなかった。
俺は書籍執筆用のタブレットの端末や紙の原稿などを急いでカバンにつっこんだ。
くそぉ……ここで今日締め切りの特典SSを仕上げるつもりだったのに……。
バレる前に退散しなくては……。
しかしなぁ。
ちらりと九寶さんの私服姿を視線にれる。半袖の白のブラウスとロングスカートの組み合わせはまさに清純。
アニメや漫畫に出てきそうな深窓の令嬢のような姿は本當に目の保養になる。
心なしか九寶さんの方をチラチラ見ている男達がいるような気がする。
分かるぞ、分かるぞ。
あのレベルはそういない。……ウチの事務所に同レベルが3人いるとは誰も思わないだろうが。
うーむ、しかしレジは九寶さんの座ってる席の近くだ。
さすがにそこへ向かえば気付かれてしまうだろう。むしろ店の時に気づかれなかったのが奇跡と言っていい。
まぁ……黒髪ロングのを見ながら書き下ろし新作を構想するのも悪くない。
特典SSは晝からでもいいだろう。
九寶さんが店を出るまで待ち続けてるかと思った先に……。
「おっ、すっげー人」
「ねぇねぇ、遊びにいかない?」
九寶さんに近づく不穏な聲が聞こえてきた、
んだこのお約束みたいなセリフを吐くクソ野郎どもは……。
俺の黒髪ロング観察を邪魔するなんて萬死に値するほどだ。
「あの……なんですか……」
「ふぅ~、聲もかわいいじゃん」
「名前何て言うの? 教えてよ」
「や、やめてください」
「葵、どうした」
俺の方に慌てて2人の男達が振り向いてきた。
九寶さんは俺の存在に驚いたようなそぶりを見せたが、俺がに手を置いて靜かにするようジェスチャーをしたので黙り込んだ。
「あ、なんだよ」
「人の妹に手を出すのはやめてもらえるか?」
「全然似てねぇーじゃねぇか」
「葵は母に似て人なんでな。よく間違えられるんだよ……。それで、俺の妹に何か用かな?」
「ちっ、行くぞ」
男達は慌ててレジで金を払って去って行った。
こういうのに余計な小細工は不要である。
顔が似てる似てないはさしたる問題じゃない。似てない兄妹だって山ほどいる。 むしろ兄が普通で妹がなんてラブコメ作品なら常識と言ってもいい。
店の中で兄と名乗る男を前にしてそれでも妹を口説こうとするやつなんてまぁ……いないだろう。
「あ、あの花村さん」
「ふぅ、まぁ……よかったよ。じゃあ俺はこれで」
そのままお金を払って立ち去ろうとした所。
クールに去ることはできないよなと思いつつ、強く服を引っ張られる。
「九寶さん?」
「え~。わたしはあなたの妹の葵ですよ。兄様と食事を一緒にしたいです」
こてんと九寶さんが首を傾げて、妹であることを強調する。
あ、やばかわいい。
こんなかわいい妹がいたら溺するわ。
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