《モテないキャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜》35 作家『お米炊子』と絵師『スペシウム』③
「休日楽しみだわぁ!」
4人で晝食を取るために事務所近くの定食屋へと出向く。
朝からずっとテンション上がりっぱなしの作所長が気になっていた。
「所長、隨分ご機嫌ですね」
「ふっふーん、ずっと待ちんでいた楽しみなことがあってね。待ちに待って明日がその日なのよ」
「へ~、どんなのか聞いてもいいですか?」
「教えてあげたいけど……聞いたら花村くんも行きたがるかもしれないから!」
「どうやら3人までしか一緒に同行できないイベントらしくて……」
「結構前からの話だったから、花むっちゃんをハブったわけじゃないの」
なるほど……所長だけでなく、仁科さんや九寶さんも一緒に行くのか。
向けのイベントなのかもしれないな。
どうせ土日は忙しいし、深く聞くこともない。
俺も行きたいなんて言って3人を困らせるわけにもいかない。
「いいですよ。その代わりに月曜日に教えてくださいね」
「ええ、もちろん!」
ってなことがあった。
ま、まさかこのイベントでバッティングしてしまうとは……。
やばい、さすがにこの距離だと気付かれるかもしれん。
マスクとサングラスをしっかり付けて、絶対にバレないようにしないと……。
スペシウムと知り合いだけならまだ何とかごまかしがきくけど、そこから派生して俺がお米炊子であることがバレるのがまずい。
頼む、スペシウム。難なく終わらせてくれ!
「初めまして、私達、スペシウム先生の大ファンなんです。お會いできて栄です」
「あー、ありが、うおっ! ほ~~、3人とも人さんだからびっくりしちまったよ」
さすがのスペシウムもあの3人のしさに驚きを隠せなかった。
後で奧さんに鼻をばしてたってチクっておこう。
「じゃ、私は月ちゃんでお願いします。私、本當にスペシウム先生のイラストが大好きで毎日毎日見てるんです」
「あたしの分はその月ちゃんの紙と一緒に太一くんを描いてあげてください」
「仁科、いいの?」
「所長への禮ですよ。でも寫メ撮らせてくださいね」
「お二人とも仲がいいね~。そっちの黒髪のお嬢さんはどう?」
「月ちゃんの弟の星斗くんでお願いします。ちょっとクールっぽくニヒルに笑うのが好みです」
「あはは、俺の奧さんと同じこと言ってるな」
ふぅ……何とか無事終わりそうだ。
サイン會なんて流れ作業だ。1人に構う時間は限られている。
サインも書き終わったし、これで終わりかな。
「3人とも浜山に住んでるのかい?」
「はい、そうです」
「俺も浜山出だから……地元のファンは嬉しいよね」
スペシウムてめ、余計なことで話を膨らませてるんじゃねぇよ!
そうだ、この男は無類の好きだ。
目の前に一級の集団が現れたら誰でも興味を引いてしまうもの。
「あの……私達、お米炊子先生の大ファンで……。先生とお米炊子先生ってやっぱり仲良しなんですか?」
「うん、あいつとは同郷だからね。高校の時からの友人だったんだ」
やめろおおお! 余計な報を出すんじゃない!
同期生300人くらいに絞られちまったじゃねぇか。
くそ、俺が剝がしとしてくしかあるまい。
「あの……スペシウム先生、そろそろ」
「あれ今、花むっちゃんの聲しなかった!?」
なぜ分かる!? 念のために聲を変えて話しかけたのに……!
仁科さんがキョロキョロし始めた。
早く終わらせないと……、何か九寶さんがこっち見てるし。
花村さんと背丈が似てるとか言い出しかねない……早く追い出さないと!
「君達お米炊子先生と會いたい?」
「會いたいです!」
3人の聲が重なる。おお……俺されてるなぁ。でも花村飛鷹ではなくお米炊子に會いたいって意味なのでちょっと複雑だ。
っ! スペシウムが俺の手を摑みやがった。まさかこの場で実はこいつがお米炊子なんだよ……みたいなサプライズをやろうとしているのか。
「この子達、すっげー人だぞ。知り合っておけよ、絶対損しねぇって」
同僚じゃなきゃな!
もう一刻の余裕も無くなった俺は思いっきりスペシウムの手を引っ張った。
予想もしない勢いにパイプ椅子は後ろに倒れて、スペシウムは後ろに転んでしまう。
地面の上で介抱するフリをし、スペシウムに小聲で話す。
「いてて、何しやがる」
「あの子達がその同僚なんだよ! 前言ってた俺の會社の同僚! 3人!」
「え!? マジ!?」
「頼む、余計なことを言わないでくれ……」
スペシウムを起き上がらせて、再度椅子を設置し座らせた。
俺はこれ以上は……と思い後ろを向く。
「え……あ……その」
スペシウムのやつ……言葉を失ってやがる。
まるで奧さんに黙って風俗行ってキレられて、危うく実家に帰られそうになった時のようにしどろもどろになっている。
あの時は俺が間にって助けたので、今回は俺を助けてくれ。
「もしかしてお米炊子先生に會えるんですか!?」
「お米炊子先生の素顔ってどうなんですか!」
「お米炊子先生を一目見たいです!」
「お米炊子は……」
スペシウム先生は聲を震わせながら振り絞るように出す。
「お米炊子は!」
◇◇◇
翌週、月曜日出勤した俺の見たものはやる気を失った3人のの姿だった。
「お、おはようございます」
「おはよー花むっちゃん」
一昨日の件の結果だろうか……3人は機に伏している。
「花村くん、一昨日……実はスペシウム先生のサイン會があってね。スペシウム先生とちょっと話したのよ」
「は、はぁ」
「それでお米炊子先生に會いたいか? って聞かれたから、會わせてくれるかもってテンション上がったのよ……。そしたらさ」
「……」
「お米炊子はの子を見ると見境無くワキを舐める奇病にかかっているから會わせられないって言われたのよね」
おう、知ってますよ。
なんてこと言ってくれたんだと後で思いっきりんでしまったよ。
創作に癖をれまくってますけど、現実で出しませんってば!
スマン……俺にはこうすることしかできなかったっと親友が涙ぐむから何も言えなくなっちゃったよ。
「お米先生って若いって噂だよねぇ。かわいそうだね」
仁科さんがものすごく憐れんでくる。心の底から哀れな人間だと言われているようで心が痛む。君の言葉は俺に良く効く。
「相當なヘンタイってのは知っていましたけど、現実を知ってしまったじがしてショックですね。作者と作品は別って割切るのは難しいですね」
ヘンタイって言うのやめて。
「それでも私はお米先生を応援し続けるわ。よく思えばあの癖集合の作品はまともな神経してたら書けないわよね。うん、私、応援する。仁科も葵もどうなの!」
「あたしだって応援します! 作品に罪はないから! 例え腋舐めが大好きだったとしても」
「わたしもです! ヘンタイだったとしても!」
「よろしい。ん? 花村くん、どうしたの」
「あ、頭が痛いです……」
俺はもうこれで絶対的にお米炊子であると言えなくなってしまった。
ちょっと癖出すの……控えようかな。
その後、癖を控えた話を各所に送ったら編集や読者に異常に心配され、7chでお米炊子乗っ取り説が出てしまい創作界がなぜか揺らいでしまったので結局癖は割切って出すことになったとさ。
はぁ……つらい。
達にヘンタイと言われたらわりとご褒なんじゃ? と思う作者でした。
作家編は終わりましたので次回はちょっと展開が変わります。
新たなヒロイン……もしくは達のライバルか!
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