今日は夕方にＪ社へ打ち合わせに行って、それから浜山に帰ってきたのですっかり遅くなってしまった。

事務所に帰ったら誰もいないもんな……。

寂しい。

電車に揺られて１５分。

徒歩で歩いて１０分。

家へ帰るまでにワクワクする気持ちが芽生えてくるなんて先月までには考えられなかったことだ。

自宅マンションに帰ることがこんなに楽しみだなんてな。

家の鍵があるのにわざわざ８０２號室のチャイムを鳴らす。

その理由は。

「おかえりなさ～い」

最カワの人が出迎えてくれるからだ。

「た、ただいま……仁科さん」

「む」

「あ、ごめん」

よし、改めて聲を出す。

「ただいま……一葉(かずは)」

「おかえりなさい！」

人を名前で呼ぶことの素晴らしさ。

出迎えてくれるなんて本當に夢のようだ。

もう我慢できず、一葉を抱きしめてしまう。

「こらこら、早いぞ」

「運転して疲れて抱いて癒やしてほしい」

「もう、花むっちゃんらしいね」

「あ、一葉だって呼んでくれないじゃないか」

「ごめんごめん。ひーくん、おつかれさま」

おふふ。

人から自分だけの稱で呼ばれるのはとても素晴らしい。

花むっちゃんはみんなからの稱だったので一葉には別の言葉にしてしかった。

普通だったら名前の飛鷹って呼んでもらうものなんだが、うっかり所長がたまに呼ぶよなと言ってしまったばかりに飛鷹呼びがＮＧになってしまった。

心を間違えてしまう発言だった。

そんなわけで俺は一葉と呼び。一葉はひーくんと呼んでくれる。

マジで人っぽいな！　世間の人達はみんなこんなじで呼び合っているのだろうか。

「風呂でもってさっぱりとしようかな」

「ひーくん」

「なに？」

「ただいまのチューをしてない」

「仕方ないなぁ一葉は」

人になってまだ１ヶ月経たない俺と一葉はもうベタベタだ。

行ってきますとおはようとおかえりとおやすみなさいのチューは必須である。

お互い初人だし、學生時代にやれなかった甘酸っぱいをやってみたいと思う。

外ではさすがに年相応の振る舞いをしているが部屋の中ならいいよな。

一葉と人繋ぎをして、ゆっくりとキスをする。

夜の時は深い方のキスをすることが多いがおかえりのキスは同士でを確かめる様にすることが多い。

「ひーくん、好き好き」

「俺もだよ」

一葉はとにかく好きという言葉を連呼する。

甘ったるい聲で好きと言われると脳がとろけてしまいそうな覚に陥る。

そのままほっぺにれたり、背中にれたり……しっかり長したにれたり……を確かめる時間はこれでもなく長い。

そのキスが楽しすぎるため本當に止め時が分からない。

もうずっとずっとこうしていたい。

「……」

「……」

「じー」

ドスケベな格好したエロメイドがスマホで俺と一葉のキスシーンを撮っていなければ。

「葵」

「葵ちゃん」

「毎日毎日毎日お盛んですね、旦那様、奧様。食事が冷めてしまいますのではよ、來なさい」

前提を話すが……一葉とは結婚を前提としたお付き合いをするため同棲することになった。

社宅を使ってるし、たまに一人で過ごしたい時もあるだろうということで引っ越しはしていないがほぼ一葉は俺の家で一緒に住んでいる。

そして今まで家事代行をしていた葵だったが……。

「ここを追い出されたら……お風呂場で働くしかありません」

絶対噓のくせにガチだったら困る発言をするのと……一葉が若干負い目をじているのもあるので家事代行を継続することになった。

まぁ元々仲良しの２人だし、仲良くやってくれるならそれでいいかな……なんて思う。

「わたしと奧様で作った晩ご飯です。どうか食べてください」

「……結構多いな」

「あはは……張り合っちゃった」

平日の晩メシなのに１０品以上あるんですが……。

仲良くやってるように見えてバチバチやってるんじゃなかろうか。

さて……何から食べようかな。

団子に卵焼きにロールキャベツに……うん、唐揚げにしよう。

おひとつ頂くことにする。

「お、味い」

「やった」

「ちっ」

葵が喜び、一葉が舌打ちをする、

な、なんだろう。

次はこのロールキャベツをっと……。

「これもおいしい」

「やった」

「……」

「あの……２人で何競ってるの？」

「わたしと奧様で５品ずつ作ったので……旦那様が何を選ぶか競っているのです」

何て恐ろしい競い合いをしているんだ。

ちらっと一葉の顔を見ると明らかに睨んでいた。

「やっぱり料理は若い子が作る方がいいってことですね。ね、奧様」

「煽るねぇ、葵ちゃん。オラ、ひーくん、次食べようね。次は當てるよね」

「こえーよ」

じろ。次は當てないと殺されてしまう。

これか！　ポテトサラダを突き刺す。

「うん、せーかい」

良かった。……汗が止まらないかと思ったよ。

葵が耳打ちしてくる。

「浮気したくなったらいつでも言ってくださいね」

「君は本當に何を言っているのかなぁ」

葵の場合はからかい半分、ガチが半分なのが怖い。

目についたものを食べるって言い張って全種類手を出し、何とか晩飯を終わらせることができた。

「じゃあ奧様はそちらの部屋でお休みください。わたしは旦那様と添い寢しますので」

「葵ちゃん、帰ろうか」

「ぶー」

勤務系として夜泊まって朝帰りをしていたが、一葉と付き合ってから強制帰宅となっている。

そりゃ彼がいるのに別のが寢泊まりするのは宜しくない。

隙あらば俺に抱きついてくる葵は完全に一葉を煽っている。

葵を帰して、俺と一葉は二人きりとなる。

「ふぅ……やっと二人きりだね」

そーだな。

一葉は葵とバチバチやっているが本心はお互いに嫌いではない。

むしろ案外ずっと側にいてしいと思っているんじゃないだろうか。

その理由は１つ。

「２人きりだな、一葉」

「……ひーくん、食だよぉ」

俺が一葉をめちゃくちゃにしてしまっているからだ。

「所長も葵ちゃんもひーくんは奧手で迫っても全然靡かなくて仕事部屋にれ込んでると言ってたのに……」

ソファに２人で絡み合いながら倒れ込み、一葉を抱きしめてゆっくり話す。

「うん、なんつーか。一葉が好きすぎるんだと思う」

「意味わかんないよ」

所長と葵の場合は頭にインスピレーションが湧いて、とにかく創作がしたくてたまらなかった。

しかし……一葉の場合は違う。

一葉は俺だけのものって思いが強く。その経験を文字に書き寫したいと思わない。

俺だけのものであってしい。読者にも誰にも絶対渡さない。

「嫌かな」

「嫌だったら……けれてないよ。あたしも……大好きだもん」

何度も何度もキスをして服をがせて絡み合う。

飴の髪から甘い香りがするようでより一層に想いが加速する。

「んぐっ！　で、でもね。ひゃっ」

そこにれるたびに一葉は敏に反応する。

表が緩み、しまらない顔をする。

もっともっともっとれ続けたい。

「ひゃう、ワ、ワキをぬらし続けるのは……ちょっと困るかな！」

「ん、無理」

今日も俺は一葉のツルツルのワキをペロペロ舐め続ける。

マジで最高です。これで俺はあと１００年生きていける。

◇◇◇

「ひーくん」

「ん、なに？」

「好き」

「俺も」

ベッドの上で２人。

この１年、こういうシーンは幾度となくあった。

その度にあと一歩先へ進めなかったけど……目の前の子は正真正銘の人だ。

そういった枷はなく、想うままに抱くことはできる。

もう一葉と俺を遮る壁は存在しないのだ。

……いや、一つだけあったか。

兼ねてからずっと思っていた案件が一つある。

それを明後日の日曜日……一葉に告げる予定だ。

そう、俺がお米炊子であるということを一葉に告げる。

ベッドシーンはカクヨム版ではちょっとだけ描寫が多いのでもし宜しければどうぞ！

お米炊子バレは20時更新で！