彼は輝いて見えた。

學式という晴れ舞臺で、多くの生徒達が集まるその空間で、真新しい制服にを包む彼は誰よりもしく一際輝いていた。

降り積もったばかりの新雪を思わせる白銀の長い髪、き通るような白い、らかな青の瞳、整った長いまつが印象的なだった。

日本人離れしたしい顔立ちでありながら、それでいて外國人特有の違和は一切なく、そんな彼の姿に魅せられた生徒達の視線が一點に集まっている。

彼は新生代表として挨拶を任され登壇する。背筋を真っ直ぐにばして堂々と、清楚な笑みを浮かべながら明るい聲ではっきりと話す。スピーチが終わる頃には全校生徒の心を摑んでいた。

俺も一瞬にして心を惹かれた。こんな素敵ながこの世界に存在するのかと本気で思ってしまった。同時に彼が自分には縁のない存在で、俺とは住んでいる世界が違うと、実は彼が天使なのではないかとじる程の尊さすらあった。

學式を終え新生は皆、各教室に戻っていく。

偶然にも俺は彼と同じクラスだった。

初めてのホームルームの時間。擔任からの生徒への激勵の言葉やら、生徒一人ひとりの自己紹介が始まって彼の名前をそこで知る。

『白鳩(しらはと)ユキ』

それが學校中の生徒達を釘付けにしたの名前。

彼の周りには自然と人が集まり、彼が笑うだけで周囲が華やかになる。

彼の元に集まるクラスメイト達の様子を眺めながら、俺は小さくため息をついた。他の生徒達のように勇気を出せれば良かっただろうに。あいにく俺はそんな用な人間じゃない。

小學生の時は無鉄砲で誰にでも話しかけるような格だったのが、勉強に熱を出して中學の３年間を引きこもり気味に過ごした結果、その格は隨分と変わってしまった気がする。

眩すぎる白鳩ユキの姿に距離をじて、同じクラスという地の利を活かす事も出來ず、俺は自分の席で靜かに座ったままだった。彼を囲む生徒達の楽しげな會話に耳を澄ましている。

「白鳩さんってすっごい綺麗ですね～間近で見るとほんとに天使みたい」

「新生の挨拶も凄かったわ。全く張していないじで立派っていうか」

「白鳩さんって彼氏とかいる？　もし良かったらオレと連絡先換しない？」

周りに集まった生徒へ白鳩ユキは丁寧に言葉を返していった。彼が発する言葉の一つひとつから格の良さがにじみ出る。

見た目だけじゃなく格も良い。それに新生代表を任されたという事は、中學の時の申點がトップだったり、試の績が最も良かったり、學業の方でも優秀でなければ選ばれない。まさにこの世の理想を現したような存在だ。

そして白鳩ユキは一通り返事をするとゆっくり席を立った。

「皆さんごめんなさい。お話したい人がいるんです」

學初日から白鳩ユキから話をしたいと言われるような相手がこの學校に居たのかと、中學の時からの友達か、もしくはとんでもないイケメンが學校にいるんだとその時は思った。

クラスメイトは皆、白鳩ユキとは初対面。中學からの知人もそんなイケメンもいない。一何処に行くつもりなんだろうかと考えていると、白鳩ユキは周りの生徒達の間を抜けて俺の方へと向かって歩いてくる。

意外だった。

彼はこちらを見て微笑むと艶やかな髪を揺らして俺の隣に立った。

「えへへ、同じクラスになれましたね」

鈴の音のような聲が耳に屆く。その聲を聞いただけで心臓が大きく跳ねた。

驚いて俺は思わず席から立ち上がる。

「……お、同じクラスだな」

揺を隠して挨拶を返す。

し見下ろす位置にある彼の顔には可らしい笑みが浮かんでいた。

「ちょっと廊下でお話しませんか？　二人きりで話したい事があるんです」

「俺と話したい事……？」

こんな可憐でしいが俺みたいなクラスのモブキャラに一何の用があるというのか。不思議に思いながらも俺は廊下へと歩いていく彼の背を追った。

廊下には俺と白鳩ユキ以外の姿はない。

二人きりでしたい話とは何だろう。不思議に思いながら彼の話す容に耳を傾ける。

「まさか同じクラスになれるだなんて。あたしとっても嬉しいです」

無邪気に笑う彼を――俺は知らない。

彼と何処かで會った記憶はない。こんな可憐なと出會っていたら忘れるはずがない、會ったのは今日が初めてだ。間違いないはずだった。

「あの……俺と白鳩さんって初対面、だよな？」

「顔をお見せするのは初めてでしたよね、それに苗字も変わっちゃってますし」

「顔を見せるのは初めて……苗字？」

「思い出してくれました？　あたしです、晴くんにいっぱい助けてもらった、ユキです」

彼は俺の瞳を真っ直ぐに見て、その寶石のような青の瞳を見つめて思い出す。

白鳩ユキ――舊姓は甘木ユキ。

小學生の頃、俺は彼と仲が良かった。

彼と俺は同じ學校で毎日のように遊んでいた。けれど俺は彼の顔を一度も見たことがなかった。どうして彼の顔を知らなかったのか、それには理由があったのだ。

小學生の頃、彼は顔を包帯で覆っていた。

病気が原因だとか、子供の頃に負った怪我が理由だとか、詳しくは分からない。とにかく彼は真っ白な包帯を顔に巻きつけて、その素顔を見る事は一度もなかった。

その包帯が原因でユキはないじめをけていた。

そんな彼を助けようと手を差しべたのが――全ての始まりだった。

『包帯の下の君は誰よりも可い』の一話をお読みくださってありがとうございます。毎日更新していきますので、ブックマーク・評価で応援して頂けたらとても嬉しいです。勵みになります。