《包帯の下の君は誰よりも可い 〜いじめられてた包帯を助けたら包帯の下はで、そんな彼からえっちで甘々に迫られる高校生活が始まります〜》第5話、二人の夕食②
帰宅後、俺はユキと一緒にキッチンに立っていた。
いつもなら夕食を作るのはユキに任せきりだったのだが、今日のハンバーグ作りは協力しようと思った。何故かと言えば、こうして同じ屋の下で暮らすの子と二人で、一緒に夕食を作りながら雑談に花を咲かせるなんていう日常にも憧れていたわけで。それにユキの球技大會の活躍を祝ってあげたいという俺なりの心遣いのつもりでもあった。
「それにしてもハンバーグの作り方一つでもユキってこだわってるよな。氷水をれたとボウルを重ねて、ひきを冷やしながらこねるだなんてさ」
「こねている時に手の溫度でおの脂が溶けちゃうので、こうやって冷やしながらこねると良いんです。それに予め塩をれてから良くこねると、粘り気が出て割れにくくなるんですよ」
「へえー。毎日ユキの料理は食べてるけどさ、こういう工夫があったから何でも味しかったんだなあ」
「晴くんが味しい、って言ってくれるから頑張れるんです。それに今日は晴くんがお手伝いをしてくれるのが本當に嬉しくて、ものすごくやる気も出ちゃうっていうか。とっても楽しいんです」
ユキはにこにこと微笑みながら下ごしらえを終えたひきをハンバーグの形にしていく。俺もその隣でユキのやり方を真似ながら、ダネをふっくらとした楕円形に整えていった。彼も楽しいと言ってくれたが俺も楽しかった。
俺の隣で微笑むユキ、可いくて優しくてそんな彼と肩を並べて一緒に何かが出來るのはとても楽しいものだった。こうして一緒にいると包帯を巻いていたユキと過ごした小學生の頃を思い出す。彼との生活が戻ってきた事を実していた。
そして二人でハンバーグの準備を終えて、俺達の作ったハンバーグをユキが上手に焼いていく。部屋の中には味しい匂いが漂っていた。
皿の上に完した熱々のハンバーグと綺麗に切り分けた野菜を並べ、ユキが作ってくれた特製デミグラスソースをかけて完だ。あまりの味そうな見た目に涎がこぼれそうになってしまう。
俺達はテーブルに料理を並べ、向かい合いながら夕食を食べ始めた。
ユキが作ってくれたハンバーグは俺が、俺の作ったハンバーグはユキがそれぞれ食べる。
ユキの作ったものに比べると俺の作った方は不格好だったが、それでもユキは「とっても味しいです」と満面の笑みを浮かべながら食べてくれた。そして俺が食べているユキ特製ハンバーグの方は形も整っていてめちゃくちゃに味い。フォークで押すとじゅわ~とが溢れてきて、濃厚でコクのあるデミグラスソースとの相は抜群だった。
これは何杯でもご飯をおかわり出來そうだ、箸が止まらない。お腹が幸福で満たされていった。
そうして二人で夕食を進めているとユキが話を切り出した。
「ところで晴くん。明日の予定って何か決まってますか?」
「うん? そうか、明日って土曜日だから學校は休みだったな」
「はい。天気も良いみたいなので、もし良かったらお出かけにでも行きませんか?」
「それは楽しそうだな。でも何処に行こう?」
「実は行きたい所があって前々から準備していたんです。晴くんが行っても良いって言ってくれるなら、ぜひお願いしたいなって」
「もちろん良いぞ。休日に二人でマンションに居るのも楽しいけど、遠出したりとかは今までなかったもんな。それで何処に行きたいんだ?」
「実は水族館に行きたくて。晴くんは水族館って好きですよね?」
「水族館が好きなの覚えていてくれたんだな。ユキとは何度も行ったよな」
「そうですね、一緒に何度も行きましたよね」
「薄暗い廊下にさ、たくさんの水槽が並んでてんな魚とかが泳いでてわくわくするんだよな。あとはイルカショーとかさ、あの水しぶきが大好きでさ」
「良かったあ。小さい頃から水族館が好きなのは変わっていなかったんですね」
「まあな。中學の頃は勉強に集中してて行けなかったし、ユキとまた水族館に行けるなんて楽しみだ。本當に久しぶりだよな」
ユキと一緒に水族館へ行く時は母さんに連れられて、いつもバスに乗って行っていた。
わくわくしたよな、バスが來るのが待ち遠しくて。バスに乗り込んでからは窓の外を眺めながら早く水族館に著かないかなってユキと話をした。
水族館に著いてからも二人で跳び跳ねるようにはしゃいでいたのを良く覚えている。それでも遊び足りなくて、最後はまた別の所にある公園まで連れて行ってもらってさ。そこでブランコやらして遊び回った。最後は疲れ切って帰りのバスの中で二人して寢ちゃうんだ。
懐かしい気分に浸りながら俺はユキ特製のハンバーグを口へと運ぶ。
そして二人で食事を終えた後は、二人で空になった皿を片付ける。ユキには恩返しだから任せてくださいと言われたが、折角だからと二人で並んで食を綺麗に片付けた。
それからはユキと二人で食後のデザートの時間。
食べるのはケーキとかオシャレなものじゃなく、スーパーで買っておいた練るタイプの知育菓子。ユキの前で小さなスプーンでお菓子を練って「練れば練る程味くなる」と小さい頃に良く言っていたセリフを當時のまま言うと、ユキは俺を見つめながら楽しそうに笑っていた。
小學生の頃の記憶が鮮明に戻ってくる。
包帯の下で浮かべるユキの笑顔と、素顔を見せた彼の笑顔が重なる。
こんな単調な遊びなのにユキと一緒ならとても楽しくて、俺とユキは笑顔を絶やす事なくふわふわの甘いお菓子を味わった。
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