《包帯の下の君は誰よりも可い 〜いじめられてた包帯を助けたら包帯の下はで、そんな彼からえっちで甘々に迫られる高校生活が始まります〜》第8話、席替え③
マンションに帰ってからもユキは上機嫌だった。
洗濯を畳んでいる時も、一緒に夕食を食べる時も、スマホを離さず持っている。まるで俺からのメッセージがいつ屆いても良いように、と言ったじの様子を俺はずっと見ていた。
けれど一緒に居て話す時にスマホでわざわざ話す事もないし、このタイミングでメッセージを送るのはどうかと思って、連絡先を換してからまだ一度もスマホは開いていない。だけど俺もスマホでユキとやり取りするのは楽しみで、互いの部屋に分かれてテレビの前で一人ゲームをしている最中もスマホの事が気になって集中出來なかった。
「今、ユキ何してるかなあ」
壁を挾んだ向こうにいるユキ。
やっぱりテーブルに向かって勉強をしているのか、それとも橫になって休んでいるのか気になってきて、俺は持っていたコントローラーを床に置いてスマホに手をばした。
まだ一度もやり取りしていないトークルームを開いて、俺は文字力畫面を見つめる。一なんと送れば良いのか悩んでしまう。今日はありがとう、こうやってスマホでも連絡取れて嬉しいよ、とか、隣の席になれた事だったり以前の球技大會での活躍を褒めたり、そうやって長文を書いた後、「いや……いくら何でも初めてのメッセージが長すぎる……」と獨り言を呟いて書いた文章を全消去した。
他のトークルームを開いて母さんとのやり取りを眺めたり、中學の頃に一番仲の良かった舊友とのメッセージを眺めながら何かヒントはないかと調べたりもした。それで結局は無難な容の『今なにしてる?』なんて他もない容に落ち著いてしまう。
張しながら送信の部分に指をれる。
こんな短いメッセージを送るだけで張してしまうなんて。ユキとは仲が良いはずだから、多は変なメッセージを送ったとしても大丈夫なはずなのに、彼からどんな返信が來るのか心配しながらスマホの畫面を見つめ続けた。
「あれ?」
送った直後に既読がついている。もしかして……ユキはメッセージが送られてくるのを待って、ずっとスマホを眺めていたんじゃないかと思うくらい、瞬間的に既読表示がされていた。しかし、しばらく経っても返信が來る様子はなくて、やっぱりもっと気の利いたメッセージでも送れば良かったかなと後悔していると。
『お部屋でのんびりしていました。晴くんは?』
とシンプルな容のメッセージが返ってくる。
『俺はさっきまで部屋でゲームしてた』
『この前一緒に遊んだゲームですか?』
『ああ。買ったばかりだしやるならやっぱりあのゲームかな』
『また一緒に遊びましょうね。この前もすごく楽しかったです』
いつもなら傍に居て話すような容を、スマホのメッセージを介してやり取りする。こうしてユキとスマホで會話するのは新鮮で、こんな他もない容ですら直接話すよりもずっと楽しくじていた。スマホの畫面を食いるように見つめながら文字を力する。
何度かやり取りを続けていると、さっきまでの張がほぐれてきた。面と向かって話す時は恥ずかしくて言葉に出來なかった容を、勇気を出してそれを俺は文字にして送っていた。
『ユキ、いつも掃除とか洗濯とか毎日ご飯も作ってくれてありがとな』
毎日俺に盡くしてくれるユキへの謝。
マンションでだらしない生活を送っていた俺の一人暮らしは、ユキが來てくれた事で大幅に改善した。カップ麺や出來合いの弁當で済ませていた食生活も、ユキのおかげで栄養のバランスが取れた食事になったし、掃除が苦手で散らかり気味なマンションの中はユキが居てくれるから綺麗に片付いている。
他にももっと謝する事はたくさんあったけれど、文字で伝えるのもこれ以上は照れてしまって短い文章を送るので一杯だった。
しかし、謝のメッセージを送ったものの返事はなかなか返ってこない。やっぱりこういうのは面と向かって伝えるべきで、メッセージでそれを言うのは良くなかったのかと不安になってくる。
どうしたものかと悩みながらスマホを置くと、隣の部屋から何か音が聞こえてきて、俺はその音に耳を澄ます。
ばたばたというじの音だった。
布を何かで素早く叩いているようなじで、ぼふぼふ、という表現の方が近いかも知れない。ユキがベッドの上で何かをしているのは確かだった。
「もしかして」
壁の向こうの景は見えていないから、これは俺の想像でしかないのだけど、ユキは今ベッドの上で橫になって、枕にうずくまりながら布を足で蹴ってはしゃいでいるように思えた。そんな音が壁の向こうから聞こえてくる。
そしてすぐにスマホにメッセージとスタンプが送られてきた。大きなハートマークを持った可らしくデフォルメされた鳩のスタンプと添えられたメッセージを読む。
『晴くんがそう言ってくれてとっても嬉しいです。もっと喜んでもらえるように頑張りますね』
容としては割と普通な返信だと思う。けれどどんな顔をしてこのメッセージを打っていたのかを想像出來た。俺からの謝のメッセージを見て、満面の笑みを浮かべているユキ。それを直接見てみたかったけど、彼が送ってくれたハートマークを持った可らしい白い鳩のスタンプを眺めて、俺はそれで満足する事にした。
それから互いに何度かメッセージを重ねて、先にお風呂にっていてしいと頼まれる。彼とのやり取りを思い出しながら、心とはぽかぽかと溫まる。幸せな夜の時間はまだ終わらなかった。
俺とユキは浴を終えた後もメッセージでのやり取りを続けて、そろそろ寢る時間が近付いてきた頃だった。電気を消した部屋で布にくるまってスマホを眺めていると、ユキから『もし良かったら寢るまでお話しませんか』とメッセージが送られてくる。
『今日も一緒のベッドで寢るのか?』
『いえ、そうじゃなくて晴くんと通話してみたいなって』
『通話?』
『はい。晴くんの聲を聞きたくて。通話じゃだめですか?』
『俺は構わないけど』
『ありがとうございます。それじゃあ早速かけますね』
ユキからメッセージが送られてきた後、音聲通話の著信を告げる畫面が出てくる。通話の開始ボタンを指でタップすると、ユキの聲がすぐ聞こえてきた。
『晴くん、こんばんは』
「ユキ、びっくりしたよ。まさか通話で話したいなんて」
『えへへ。こういうのずっと憧れていたんです』
「なんか不思議なじがするな。隣の部屋に居るのに直接じゃなくて、こうやって話をするってさ」
『ですね。一緒のベッドで寢たりした事もありましたけど、こうやって通話するのは初めてなので。なんだかがぽわぽわしちゃいます』
「夜ふかしはしないようにな。明日も學校だし、ユキはいつも早起きしてくれるから」
『寢ちゃうまでちょっとだけ。それまでお付き合いしてくださいね』
「ああ、もちろんだよ」
スマホのスピーカー越しに聞こえるユキの聲。
本當に不思議な覚だ。いつも聞いているユキの聲、隣の部屋で誰よりも近くにいるけれど、こうして通話をするなんて新鮮で楽しくなってくる。
「學校で付き合っているカップルとかさ。夜になるとこうやって通話したりするのかな」
『そうでしょうね。やっぱり夜になると寂しくなっちゃうので、好きな人の聲が聞きたいなって思ってしまうので』
「ユキもやっぱり寂しくなるのか?」
『もちろんですよ。こうしてベッドで橫になっていると……やっぱり好きな人の事を考えちゃいますから』
「今も考えてる?」
『はい――晴くんの事をずっと考えています』
甘い息遣いが聞こえる。布にくるまっているのもあって、彼のその言葉を聞いて全が熱くなっていた。ユキと再會してからはずっとそうだった。俺の事を大切にしてくれて、一緒に暮らして過ごす中でも、彼は一途に俺の事を想い続けてくれている。
彼が居てくれなかったら、今こうして楽しく夜の時間を過ごす事も出來なかった。散らかった部屋で、出來合いのコンビニ弁當やカップ麺だけを食べる孤獨な生活を続ける事になっていた。ユキが居てくれるから俺は幸せな毎日を過ごせるのだ。
やっぱりさっきメッセージで送った謝の言葉を、聲にして伝えようと勇気を振り絞ろうとした時だった。
『そうだ。あたし晴くんに送りたいものがあったんです』
「送りたいもの?」
『はい。ちょっと待っていてくださいね、今準備するので』
そう言った直後、ユキのマイクがミュートになる。
一何を準備しようとしているのか、送ろうとしているものは何だろうと首を傾げていると、畫像付きのメッセージが屆いた。
「え」
その畫像はユキの自撮り寫真だった。
顔を片手で隠しながら、著ているパジャマを口で噛んでめくり上げ、水のブラに包まれたたわわに実る大きなとき通るような白い、可らしいレース柄のパンツとむちむちとした太ももがスマホの畫面に映し出される。
僅かに見える頬は紅して、服を噛むらかそうで潤んだは妖しい笑みを浮かべていた。
『いっぱい見てくださいね』
ユキからのメッセージを読みながら顔が急激に熱くなっていくのをじて、ごくりと生唾を呑んでしまう。それからユキのマイクのミュートが外れて、スピーカー越しに可らしい聲が聞こえてきた。
『……晴くん、今の寫真どうでした?』
「ユ、ユキ……今のって……」
『えへへ、今撮ったばかりの寫真です、男の子ってこういうの好き……ですよね?』
「あ、ああ、そりゃ俺だって大好きだけど……まさかユキからもらえるなんて」
直に彼の下著姿は何度か目にする機會があったけど、寫真で見るのはまた全然違う。顔を隠している様子に背徳があって、それが尚更に俺を興させてしまう。
『それじゃあ送りたかったものも送れましたし、今日はもう寢ますね。晴くん、また明日』
「お、おやすみ、ユキ」
『おやすみなさい、晴くん』
通話が切れる音がする。その後も俺は畫面に映った下著姿のユキから目を離せなかった。可憐で可らしいユキが、恥ずかしがりながら撮った自撮り寫真。俺はこの寫真を家寶にする事を誓うのだった。
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