《包帯の下の君は誰よりも可い 〜いじめられてた包帯を助けたら包帯の下はで、そんな彼からえっちで甘々に迫られる高校生活が始まります〜》第1話、文化祭準備②
珍しく今日はユキと一緒に帰らなかった。
文化祭の準備期間はまだ始まっていないのだが、生徒會の大きな企畫を功させる為にクラスの出しよりずっと早くから準備を始める必要があるらしい。今日はユキがその準備に參加して、秋奈の方は休みをもらったらしく、そんなわけで今日の俺は放課後になってから珍しく秋奈と一緒に下校している。
「なあ秋奈。立夏が生徒會の出しについて知ってたのってどうしてなんだ?」
「晴は知らなかったんだ。立夏は生徒會にっているんだよ」
「なるほどな……そういう繋がりがあったのか」
「あまり立夏は自分の話をしないからね。晴の予想通りだ、立夏繋がりで白鳩さんは生徒會の出しに參加するという話になった」
「ちなみにどんな容なのかは……」
「殘念だが、晴。こればかりはキミにも教えられない、當日までなんだ」
「育館貸し切りでやるとなれば……一何をやるんだろ、一日中やるわけじゃないよな?」
「午後からで――って危ない……。ヒントもあげられなくてね、申し訳ないんだけれど」
「まあ當日になれば分かるんだろ、それまで楽しみにしてるよ」
「うん。晴はクラスの出しを頑張ってしい。キミ達なら功させられるよ」
「割と無難な容に落ちついたよな。バルーンアートの展示だなんて」
「教室いっぱいに風船やら々浮かべるのは見栄えが良い。飾るだけだから當日は人手も必要ない。準備は大変かもしれないが當日は遊び回れるはずさ。悪くない選択だとボクは思うよ」
「遊び回る、か。どうしようかな……」
文化祭はユキと一緒にんなクラスの出しを見に行ければと思っていたのだが、生徒會の出しに參加するユキとは出歩けない。秋奈も同様だ、當日は大忙しだろう。そう思っていたのだが。
「晴が良かったら、ボクと二人でんな所に回った後、生徒會の出しを見に行くのはどうだい?」
「え? 當日は予定ないのか?」
「ボクが任されたのは前日までの準備でね。當日は空いているんだ」
「ユキもそうなのか?」
「白鳩さんは當日の主役を任されている。ボクのように空いてはいないと思う」
「そうだったのか……ユキが主役って余計に気になるな」
「楽しみにしていると良い。きっと驚くと思うよ」
「ああ、そうだな。それじゃあ當日は一人で回っても退屈だろうし、秋奈と々と見て回る事にする」
「決まりだね。まだ文化祭までは日にちがある、何処をどう回るかは文化祭の案を見てから決める事にしよう」
「ともかくよろしく頼むよ、秋奈」
「うん。それではボクはこの辺で、家は向こうの方だから」
「また明日な、秋奈」
「また明日ね、晴」
秋奈に別れを告げると俺は真っ直ぐにマンションに向かって歩いていく。
何だか不思議な気分だ。
いつもはユキと一緒に玄関をくぐってリビングへと戻り、そのまま二人で話をしたりするのだが、文化祭の準備で忙しいユキはまだ學校に殘っている。誰もいない靜まり返ったマンションを寂しくじていた。
ユキからはスマホでメッセージがあって『帰るのが遅くなる』と伝えられていた。いつもはユキに夕食やら任せていた俺だが、疲れて帰ってきたユキに家事をやらせるというのは良くないだろうと思って、珍しく一人でキッチンに立っていた。
風呂は後で湧かせて、掃除も後からする事にして……ユキが來るまでに俺が夕食を作っておこう。
帰ってきたユキを驚かせようと冷蔵庫の中にある食材を眺める。自炊の経験が殆どない俺であるが、ユキとの生活で彼の手伝いをしながらそれなりに技は吸収出來ているはずだ。とは言え難しいものに挑戦して失敗してしまうのは良くない。
「ペペロンチーノでも作ってみるか」
ペペロンチーノは休みの日に、ユキが何度か作ってくれた事もあって、その様子は良く目にしている。作り方も簡単そうに見えたし、文化祭に向けて頑張るユキを応援しようと早速調理を始めることにした。
ユキが作っていた姿を思い出しながらキッチンと向かい合う。茹で時間も麺の量もちゃんとユキが作っている時に合わせているつもりだった、自分では上手くいっていると思うのだが。
「……全然違うんだよなあ」
味見をして思う。ユキが作っていた様子を見様見真似でやってみたが、彼が作ったペペロンチーノの味とは似ても似つかないものが出來ていた。
「おかしいなあ……俺が作ったの、なんか麺がパサパサしてるし。ユキが作ってくれたのは茹で上がりの直後のつるっとしてコシもしっかりあるじだった……ソースもとろっとしてて味しかったはずで、そもそも一味二味違うような……」
ユキの作ったペペロンチーノは、いくらでも食べられるくらいに味しかった。その作っている様子もさっとしていて簡単そうに見えていたのだが、いざそれを真似して実踐してみても全く同じ味にならない。
「こうなったら……オリジナリティを加えて俺特製のスペシャルパスタを……」
ユキのペペロンチーノが再現不可能なら俺のやり方で味くしてみせると、そう思って再びキッチンへと立ち向かう。調味料を新たに加えてみたり材を足してみたり、々な事を試せば試すほど理想とはかけ離れた別のが出來上がっていく。
窓の外が暗くなった頃。
俺特製パスタを口に運びながらため息をつく。不味くはないのだ、だが味しいとも言い難い。こうなったらもうフライパンの中の俺特製パスタを諦めて、今日は俺の奢りでピザを頼んで屆けてもらおう、なんて思った時だった。
玄関の扉が開いた後、鈴の音のような聲が聞こえてくる。
「晴くん、ただいま」
ユキが帰ってきていた。靴をいだ後、彼はそのままキッチンに向かって歩いてくる。
「夕食を作ってくれていたんですか?」
「お、おかえりユキ。ま、まあそのつもりだったんだけど……」
俺はフライパンの上のパスタを隠しながら、ユキの前に立っていた。
「きょ、今日はやっぱりピザにしようかって思ってさ。これから注文しようと思ったんだけどユキはどんなピザが食べたい? 文化祭の準備で疲れていそうだし、ほら、好きなもの頼んで良いぞ」
俺はスマホを取り出してピザのメニュー表を見せるのだが、ユキは映し出されたピザの寫真よりも俺の後ろにある特製パスタを気にしているようだった。
「パスタですよね。晴くん、それが夕食じゃないんですか?」
「い、いやこれは……その、失敗しちゃってさ」
「失敗?」
「そ、そう。ユキの真似をして作ってみたは良いものの、遠く及ばなくてさ……」
「塩をれすぎてしまった、とかですか?」
「いや塩加減とかは悪くないと思うんだけど……味がごちゃごちゃしてるというか、々とやりすぎて、不味くはないんだけど味しいパスタにはならなかったというか」
「せっかく晴くんが作ってくれたパスタですから、あたしはピザよりそっちの方が食べてみたいです」
「いやいや! 無理して食べなくて良いから、ユキに失敗作を食べさせるわけには……」
「失敗作なんかじゃないですよ。晴くん、あたしが遅くなるのを聞いて、あたしの為に頑張って作ってくれたんですよね」
ユキは優しく微笑みながら鞄を置いて、食棚から皿を持ってくる。
「晴くん、どうぞ盛ってください」
「本當に良いのか? 食べてくれるのか?」
「もちろんです。準備で疲れてお腹もぺこぺこなので」
「わ、分かった。じゃあちょっと待ってくれ」
俺はユキから皿をけ取ると、盛り付けだけは何とか綺麗にしようと力を込める。そしてテーブルの前に座るユキに特製パスタを差し出した。
「いただきますね、晴くん」
ユキはフォークを手に取るとにこやかな笑みを浮かべながら、上品な様子でパスタを食べ始める。その笑顔が一どうなってしまうのか、不安に思いながらユキの食べる景を見守った。
もぐもぐとパスタを味わった後、ごくりと飲み込むユキ。
そしてその味の想をユキは口にする。
「々な食材の味がして味しいですよ、晴くん」
「ほ、ほんとか?」
「はい。あたしは好きですよ、晴くんの特製パスタ」
にこりと微笑んだ後、ユキは再び俺の作ったパスタを口へと運ぶ。
「やっぱり味しい。レシピを見ずに晴くんが工夫して作ったものなんですよね」
「ああ、どうしたらユキに味しいパスタを食べてもらえるかって……下手なりかもしれないけど、それを考えながら作ったんだ」
「そうですか。だから余計に味しくじるのかもしれませんね。晴くんがあたしの事を想ってくれたから、それが一番の調味料です」
ユキは皿に盛られていたパスタをぺろりと食べ終えると、その皿を俺へと差し出した。
「晴くん、おかわりいただけますか?」
「おかわりまで……ありがとうな、ユキ」
「こちらこそ作ってくれてありがとうございます、晴くん」
俺が作ったパスタを味しいと言って食べてくれるユキを見つめながら、これから準備で毎日遅くなってくれる彼の為に、明日からは自信作だとを張って言える料理を作ってそれを振る舞おうと、そう心に強く誓った。
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