《包帯の下の君は誰よりも可い 〜いじめられてた包帯を助けたら包帯の下はで、そんな彼からえっちで甘々に迫られる高校生活が始まります〜》第4話、溫泉旅行①
「晴くん、お母様が今日もあたし達に用事があるってお話なのですが」
「深冬さんが? 今日は何の用事だろう?」
エプロンをに著けてポニーテール姿のユキの聲がキッチンの方から聞こえる。俺は白銀のポニーテールを揺らすユキの後ろ姿を視界に収めながら、リビングのソファーに腰を下ろしていた。
盛大に祝ってくれた俺の誕生日パーティーから三日後の事。今日もいつも通りに學校での授業をけて、マンションでユキと二人のまったりとした時間を過ごしている時だった。彼の聲が良く聞こえるように流していたテレビの音量を下げ、キッチンの方へと耳を傾ける。
ユキは夕飯の支度を進めながらリビングに居る俺へと話しかけていた。
「お母様の話では晴くんの誕生日に渡そうと思っていたものがもう一つあったらしくて。それを今度こそ手渡したいと言っていました」
「深冬さんが俺にもう一つプレゼント? なんだろうな、それって」
俺はテーブルの上に置かれた湯気の立つコーヒーを見つめる。
誕生日に深冬さんがくれたものと言えば高級コーヒー豆のギフトセットで、あまりにも味しいコーヒーだったので毎日のように頂いていた。
「これ以外にプレゼントがあっただなんて。どうして渡しそびれちゃったんだろ」
「うーん……お母様に限って忘れていたという事はないのでしょうけど、晴くんの誕生日會で渡さなかった理由はあたしにも分からないですね」
「プレゼントの容とかは言ってなかったか?」
「直接渡すまで緒という話です。じきに來るはずなのでそれまで待っていてしいと言われました」
「そっか。ともかくコーヒー豆だけじゃなくもう一つあるだなんて、本當に深冬さんには頭が上がらないな」
俺はマグカップに口をつけながら頬を緩ませる。小學生の頃から俺を可がってくれていた深冬さん、俺が高校生になった今でも以前と変わらず大切にしてくれるあの人にはいつだって謝している。
そんな風にしみじみと考えていると玄関のチャイムが鳴り響く。
「深冬さんかな?」
「そうだと思います。今あたしは手が離せないので、晴くんお願いできますか?」
「ああ、分かった」
俺は玄関の前で待っているであろう深冬さんの事を考えて、すぐに出迎えようと立ち上がった。合鍵を持っているはずなのだが、それでも扉を開けず律儀に待っているのは実に深冬さんらしい。
扉を開けば予想通り深冬さんの姿があって、ビジネススーツ姿なのを見ると今日も仕事帰りなのだろう。俺が顔を出すと深冬さんはにこりと優しい笑みを浮かべて頭を下げた。
「こんばんは、晴ちゃん、突然ごめんなさいね」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ユキから話は聞いてます。どうぞ上がって下さい」
「ありがとう。お邪魔しますね」
靴をいで家に上がった深冬さんを連れてリビングの方まで案する。
廊下にはユキが作った料理の良い匂いが漂っていて、それに気付いた深冬さんは目を細めて微笑んでいた。
「良い匂いですね。今日の夕飯もユキが?」
「はい。今日もユキのお世話になってます。いつも本當にありがたいですよ」
「ふふ、晴ちゃんに味しいものを毎日食べさせたいって張り切っていますからね」
「どの料理も俺好みの味付けで、どうしてこんなに味しいんだって、毎日のように舌が絶してますよ」
「それは良かった。ユキは晴ちゃんの事になると一生懸命ですから。二人が仲良くしているのを見ているとわたしも安心出來ます」
深冬さんは嬉しそうに微笑んでいて、俺もつられて頬が緩んでしまう。
そんな會話をしながらリビングにると、夕食の用意を進めるユキがキッチンから顔を出す。
「お疲れさまです、お母様。今日の夕飯はお母様の分も用意しておいたのですが、大丈夫でしたか?」
「ありがとう、ユキ。そうですね、今日はお仕事で疲れていたのでちょうど良かったです」
「そうですか! よかったぁ……。もうすぐ出來上がるから座って待っていてくださいね」
ユキは深冬さんにそう伝え、パタパタとスリッパの音をたてながらキッチンへと戻っていく。
俺は深冬さんをリビングのソファーへ座らせて、それからユキの手伝いをしようとキッチンに向かおうとするのだが深冬さんがそれを止めていた。
「晴ちゃん、ちょっと待ってくださいね。誕生日會で渡せなかったもの、先にお渡ししようと思って」
「え? 今ですか?」
「はい。ユキにはまだ緒にしておいてくださいね。びっくりして料理を焦がしてしまうかも分からないので」
深冬さんは持っていた鞄に手をばす。ユキが驚いて料理を焦がす程のプレゼント、一それが何なのかと俺は首を傾げてしまう。
そして深冬さんが鞄の中から取り出したのは何の変哲もない白い封筒だった。厚さは殆どなくて何枚か紙のようなものがっているようだが、外からでは中が何なのか全く分からない。
「これは……?」
「ふふ。中を見てください、晴ちゃんもきっと驚くと思います」
悪戯っぽく笑う深冬さんは俺の反応を楽しむようにしながらそう口にした。
俺はしドキドキとした気持ちを抱きながら深冬さんの手からその白い封筒をけ取って、そして丁寧に封がされたそれを開いていくと――。
「えっ!?」
俺は思わず聲を上げるが、深冬さんはに手を當てながらしーっと人差し指を立て、それ以上大きな聲をあげないようになだめるのだった。
こうして驚くのも無理はない。これが深冬さんからのプレゼントだとするのなら、それは俺だけではなくユキにとっても凄すぎる容だったのだ。
「晴くん、お母様? 二人ともこっそりお話をしてどうしたんですか?」
今日の夕飯を盛り付けた皿を持ちながらユキがリビングの方へと歩いてくる。
深冬さんがくれたプレゼントの容をユキが知ったら、その持っている皿を驚いて床に落としてしまいそうだと、俺は慌てて後ろ手に封筒の中を隠した。
「あ、いや、なんでもないんだ」
「そうですよ、ユキ。何もありませんから」
「むう……晴くんとお母様で緒話だなんて。あたしも混ぜてしいです」
ぷくりと頬を膨らませながら不満そうな表を見せるユキ。
俺はなんとか誤魔化そうと苦笑いを浮かべる。深冬さんはそんなユキの事を微笑ましそうに見つめていて、可い一人娘が喜ぶ姿を想像してか口元には笑みを浮かべていた。
ユキは怪訝な顔をしながらテーブルに料理を並べ終える。自分だけのけ者にされてしまったと不機嫌な様子だったが、深冬さんが頭をでてあげると途端に笑顔になっていた。
俺達は三人揃って席に著き、並べられた夕食を前にする。
プレゼントの容を伝えるなら今だろうなと深冬さんの方を見ると、彼はウィンクしながら頷いていた。
「ユキ、さっきの緒話の容なんだけど」
「はい、すっごく気になっていました。何か封筒みたいなものを隠していましたけど、もしかしてそれがお母様から晴くんへのプレゼントなんですか?」
「確かに俺へのプレゼントなんだけど、俺だけじゃなくユキへのプレゼントでもあるかな……」
「え。あたしにも、ですか?」
ユキが不思議そうに首を傾げると、深冬さんは優しく微笑みながら話し始めた。
「日本に戻ってきてから々と忙しくて、去年はユキの誕生日を祝えないままでしたから。晴ちゃんの誕生日と合わせて、ユキの分も一緒にプレゼントしようと思ったんですよ。でも誕生日會には友達の秋奈さんもいらっしゃいましたし、渡すなら別の日が良いかなと改めたんです」
「それで今日渡しに來てくれたんですね。でも封筒って……?」
「ふふ。晴ちゃん、さっきの封筒の中をユキに見せてあげてください」
「深冬さん、分かりました」
俺は隠していた白い封筒を取り出し、中にあった2枚の紙を取り出していた。そしてその中の1枚をユキに差し出すと、彼は目を丸くしてそれはもう驚いていた。口まで半開きになっている。こんなふうに驚くユキの姿はとても珍しくてそれがまた可らしい。まんまるの青い瞳がきらきらと輝いていって、驚きで開いていた口は徐々に綻び、白い頬は桜に染まっていった。
「……お母様、これ!?」
「驚きました? その反応が見たくてさっきは隠していたんですよ。ユキの事ですから驚いて皿を割ったり鍋を焦がしたら大変でしょう?」
「そ、そんな事はしません……! で、でも……これすごく、すっごく嬉しいです!」
満面の笑顔を見せて答えるユキ。輝く彼に渡した1枚の紙の正、それは県でも有名な溫泉旅館の宿泊券だった。
しかもそのチケットは2名分のもので、つまりこの旅行は俺とユキの二人で行く事を意味している。ユキは嬉しさを堪えきれないのか何度も俺と深冬さんの顔を互に見ては、幸せそうな笑みを浮かべていた。
「あたしと晴くんで溫泉旅行だなんて……本當に嬉しいです、お母様」
「ふふ、喜んでもらえたみたいで良かった。でも高校生2人でというのは難しいのでわたしも一緒に行きますから、そこのところは安心してくださいね」
「はい、分かっています。えへへ、楽しみだなぁ」
「晴ちゃんのご家族にも許可は頂いています。楽しんできてしい、と言っていましたよ。あ、それと『お土産は絶対に忘れずに』とも」
「はは……お土産は絶対にか。うちの父さんと母さんらしいや」
溫泉まんじゅうで勘弁してもらおうと思いながら、満面の笑みを浮かべるユキを見つめる。そういえば小學生の頃、みんなで行く溫泉旅行とかにユキは憧れていたっけか。
包帯を巻いていたあの頃は海やプールのように溫泉へるのもNGだったので、そういった場所に行く機會が全くなかったのだ。遊園地などには連れて行ってもらった思い出はあるが、やはりダメだと言われていた分だけ溫泉旅行への憧れも強くなっていたのだろう。
高校生になって海で初めて遊んだ時もそれはもうはしゃいでいたし、包帯を巻いていた頃には出來なかった事が出來るようになったおかげもあって、それが今のユキには嬉しくてたまらないものなのだ。深冬さんもその気持ちを理解してくれていて、だからこそ今回のプレゼントを決めたのかもしれない。
「行く日にちは來週の土日で構いませんね? というより予約が取れたのがその2日間だけだったので、それ以外の選択肢がなかったのですが」
「俺は大丈夫です。必ず行けるよう予定を空けておきます」
「あたしもです。絶対に行きたいです」
「旅館にはわたしの車で向かいます。來週の土曜日の朝に出発しますから、それまでに準備をしておいてくださいね」
俺達が返事をするのを見屆けると、深冬さんは微笑みながら手を合わせる。
「それでは夕飯にしましょうか。せっかくユキの作ってくれた料理が冷めてしまいますから」
「はいっ。じゃあ食べましょう、晴くん」
「ああ、そうしよう」
三人揃って両手を合わせ、來週の溫泉旅行を楽しみにしながらユキの手作り料理を口へと運ぶ。こうして三人で囲む食卓には笑顔が溢れていた。
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