《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》34.一方その頃、勇者ビビアたちは⑫ ~勇者たちは自然の猛威を跳ねのける~
34.一方その頃、勇者ビビアたちは⑫ ~勇者たちは自然の猛威を跳ねのける~
「ったく、油斷も隙もありゃしねえ・・・」
俺たちパーティーは順調に大森林を前進していた。し臆病風に吹かれたパーティーメンバーがいたが、そこは俺がリーダーらしくバシッと叱責した上でお灸をすえている。
そのプララは先頭にされたことで、ずっとぐずり続けていて非常に鬱陶しいが。
「う・・う・・・どうせまた私を囮にして逃げるんだ・・・うっ・・・うっ・・・」
はぁ、まじで勘弁してほしい。ここはもう一発脅かして黙らせるか?
そんなことを考えていた時である。
「うっ・・・うっ・・・・・・・あいたぁ⁉」
急にプララが小さな悲鳴を上げたのである。
(ったく! いちいちうるせーなぁ! 構ってちゃんかよ! てか、多分デリアかエルガーが俺と同じ考えで、一発ぶん毆って黙らせようとしたのかね。まったく、俺と違って短気な奴らだぜ)
だが、
「痛《い》った⁉」
「うおおお!? か、かゆい!」
デリアとエルガーもし遅れて悲鳴を上げた。何なんだ、一?
俺が怪訝な表をしていると、
「ああ、≪黒羽蟲≫ですね。『蟲よけ香』が切れたのでは?」
「蟲? ああそういうことか」
俺は納得する。このエドコック大森林には≪黒羽蟲≫という羽蟲が出るのだが、人間の魔力を吸うのである。この蟲は毒を持っていて、吸われた場所が腫れあがるのと同時に、非常にかゆくなるのだ。
そのため、こういった森林系ダンジョンでは蟲よけアイテムを持ってくることは常識となっている。
「だいぶ奧地まで來たから口で使った『蟲よけ香』の効果が切れたんだな。よしバシュータ、次の『蟲よけ香』を出せ」
俺はポーターのバシュータに指示する。
「へ? いや、もうないですけど」
しかし、バシュータはあっさりと首を橫に振った。
「は?」
俺は唖然とした聲を上げると、
「何でもうねえんだよ!」
怒聲を上げて叱責する。當然だ、大森林攻略に蟲よけ香が無いなんてお話にならない!
だが、バシュータは怪訝そうに眉を寄せると、
「なんでって・・・。勇者さんアンタたちが『蟲よけ香』がどれくらい必要か聞いたら、『すぐにクリアするから沢山はいらない』と言ったんじゃないか」
「なあっ⁉」
まさか言い返されとは思っていなかったため俺は絶句する。
しかし、次にエルガーとデリアが怒聲を上げた。
「そ、それでも! いざという時のために予備を持っておくのが、ポーターの役目ではないか!」
「そうよ! あのアリアケだって、それくらいのことはしていたわよ! あいつですらアイテム不足なんて事態、一度も発生させなかったのに!!」
もっともな怒りをバシュータにぶつけた。
だが、
「は? そ、そんなことできる訳ないじゃないか・・・」
逆にバシュータがぎょっとした表をして言った。
「アイテムを持てる量には限度があるんだ・・・。勝手に予備を持つだなんて、しかも蟲よけを・・・。そんな重要な判斷をポーターが出來る訳が無いだろう⁉ それに、アイテム不足を一度も起こしたことがない⁉ ありえないよ! そんな凄腕ポーター聞いたこともない!」
最後は悲鳴のような聲を上げる。
「は?」
「な、何だって?」
「で、できないって・・・。ア、アリアケには出來ていたのに・・・」
俺たち3人はそろって呆然とする。
と、その時、
「あ、あの・・・」
とローレライがおずおずと口を開いた。
「バシュータさんの言う通りです。當たり前ですが持っていけるアイテムの量には制限があります。何を、どれくらい持っていくかという判斷は、そのまま冒険の否にかかわってきます。これは、冒険者が最初にギルドで習うことでもありますが・・・」
「なっ・・・!」
ポーターを擁護するような言葉に、俺は狼狽する。
ローレライは続けた。
「それはでも當然のことなんです。その冒険にどんなアイテムが必要なのか、どれくらいの量が必要なのか、それが見極められるということは、その冒険の難易度や敵の強さ、行程の長さ、休憩の頻度、自分たちの力量、天候や調など、すべてが見渡せていないとできないことなのですから」
だから、とは言う。
「それが出來る方は、まさにその方こそ、パーティーのリーダーということになります。リーダーの資質をお持ちと言うことになります」
「なっ・・・! なっ・・・!」
俺は知らないうちにギリギリと歯ぎしりをしていた。気づかないうちに手もブルブルと震えている。
「あ、あの・・・だからこそ疑問なのですが、今回のアイテム配分についてはもちろんリーダーである勇者様が決められたのですよね? それが出來ないようなら、そもそも冒険に出ることなんて出來ないわけですから」
「うっ・・・」
俺は言葉につまる。的指示など何もしていなかったからだ。
「前回は完璧にされたいたと思うのですが・・・。どうして、今回はできなかったのですか?」
ローレライはただただ純粋な疑問と言った様子でキョトンと聞いた。
「何か、出來なかった理由が、あったのですか?」
「たっ・・・!」
俺は絞り出すように言う。
「た、たまたま忘れていただけだ!」
「そうなんですか? でしたら余計に心配です!」
「は? し、心配???」
はい、と本當に心配そうな瞳で見つながら、ローレライは頷く。
「大森林に向かうのでしたら、蟲よけ香は必須アイテムです。その配分を誤る訳がないんです。だとすれば、やはり、何か決定的に調子が悪い『理由』があるに違いありません!」
俺はその言葉に顔を真っ赤にし、ブンブンと首を振ると、
「だからたまたまだ! というか蟲くらい大したことないだろう!」
思わずそう怒鳴り返してしまう。
すると、
「あ、あの、大丈夫でしたら、その、いいんです・・・。そ、それにですね・・・」
ローレライは委したようにしながら、自分のバッグをごそごそと探り、
「いちおう、いざという時のために、自分用のをしは持ってきています。そちらをお分けします。なので・・・そんなに怒らないでください」
「⁉ そ、そんなもの・・・! い、いらな・・・」
俺よりはるかレベルが下の冒険者から憐れみをけ取るわけには行かない!
俺はそのけ取りを拒否しようとするが、
「すまないな、恩に著るぞ、ローレライ」
は?
「蟲だけは・・・蟲だけは勘弁なのですわ。本當に助かりました。ありがとう、ローレライ」
デリアまで⁉
「ホント、蟲だけはアタシも無理なのよね。アンタを仲間にしといてよかったわ~」
プララっ・・・!
「僕も助かりました。ありがとうございます。今回の一件、ポーターとして長できた気がします」
バシュータ、お前までか⁉
(か、勝手に話を進めるんじゃねえぞ⁉)
俺は余りのことにパクパクとあえぐようにする。
しかし、
「ようし、それでは進もうではないか」
「ええ、奧地までもうすぐですものね」
「さっさと倒して帰って、お風呂にりたーい!」
「ええ、行きましょう」
「えへへ、喜んでもらえてよかったです~♪」
そう言って、俺などいないかのように、他のメンバー全員が先に進んで行く。
あろうことか、勇者である俺を忘れたかのように、行軍を開始しやがったのである!
「おい、俺抜きで話を進めるな! おい!」
俺は怒りに打ち震えながら、彼らの後を追ったのであった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
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