《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》48.一方その頃、勇者ビビアたちは⑰ ~勇者は弟子をかわいがる~
48.一方その頃、勇者ビビアたちは⑰ ~勇者は弟子をかわいがる~
「ラッカライ、って來い」
「は、はい……」
「ご挨拶しなさい。こちらは勇者ビビアとその一行だ」
「は、初めまして! ボ、ボクはラッカライと言います。宜しくお願いします!」
ワルダーク宰相の聲とともに部屋にって來たのは、目鼻立ちのはっきりした、中的な雰囲気のする気弱そうな年(ガキ)であった。黒髪、黒目勝ちで整った顔立ちをしているが、どこか怯えるような目つきだ。年だけあって聲はのように高い。
「このラッカライを弟子として育ててやってしいのだ」
ワルダーク宰相はそう言って俺の方を見た。
(はぁ~~~~⁉ なーんでこの勇者である俺が、こんなガキを弟子にして面倒なんか見なくちゃいけねえんだよ! だったらまだしも、男なんて育てても何もいいことなんかねえじゃねえか! 俺には周りから稱賛されるために、々やることがあるんだよなあ。弟子を育てるなんて面倒くせえことしてられっかよ! しかも、こーんなウジウジしたガキなんてボコりたくなっちまうぜぇ)
知らず知らずのうちに渋面を作ってしまう。
それを見た宰相が、
「ああ、そうか言い忘れていた。この者は≪聖槍(せいそう)ブリューナク≫の使い手に選ばれたのだ。だから聖剣の勇者であるビビア、お前に育ててもらいたいと思ったのだ。今のところ槍の腕は凡庸だが、聖剣の使い手が鍛えれば、お前を超えるほどの潛在能力を発揮するかもしれぬと、そう王國としては大いに期待しているのだ」
と言ったのである。
「は?」
俺はポカンとする。
何を言われたのか分からない。
こんなガキが聖槍ブリューナクに選定された、だと?
俺よりも余程年下に見える。
しかもチンチクリンのガキだ。
なのにこのガキが聖槍ブリューナクの擔い手だと?
それにいかにも気弱そうでビクビクと人をうかがうような、いかにもムカつく目をしていやがる。面がいいのも気に食わない。見ようによってはにすら見える。
なのに、そんな弱そうな奴が聖槍ブリューナクの使い手? 俺のようなたくましさもない奴が?
「は?」
俺は聖剣の使い手だ。
だからこそ王國指定勇者になった。
聖剣は特別だ。
聖槍ごときとは違う。
聖槍なんて大したことない。
なぜならば、聖剣は世界を救う者が持つ剣と言われている伝説でも最高の代だが、聖槍はただ単に結界を切り裂く力に特化した、ちょっとばかり特徴的な槍に過ぎねえからだ。
だから、そんなことは説明するまでもねえ。
言葉にするまでもなく聖剣の方が上なのだ。俺が格上なのである。
なのに、宰相はなんつった?
『お前を超えるほどの潛在能力を発揮する』
だとぅ‼
「HA?」
『聖』なんて大仰な名前を付いているせいで、聖剣の使い手である俺と同等にでもなれると勘違いしていやがる!
聖が付くのは聖剣だけでいいのにっ!
おかげで、とんでもない勘違いをしてやがる!
俺がこの世界で最も優れているのに! 最強なのに! 槍ごときにいいいいいいいいいい!
俺は余りに理不盡な仕打ちに義憤に駆られたのであった。
「い、いいぜぇ……。面倒見てやるよぉ」
「ほ、本當ですかっ! ありがとうございます、勇者さ……」
「とりあえず飲み持ってきてくれっか? あ?」
「へっ?」
俺の言葉にラッカライがポカンとした表をした。
「弟子つったら、お茶くみだろうが! このノロマがぁ! さっさと行け!」
「ひっ……! は、はい! す、すみません。勇者様!」
ラッカライはビクリとした後、慌ててドアを開けて何処かへと駆け出して行った。
どたーん!
おっと、慌てすぎてこけたらしいな。
(くくく、いい気味だ。くひひひひひひひいひいいい)
未な弟子を相手に教育的指導をすることに喜びをじざるを得ない。人を育てるってのは、時に理不盡に厳しくすることも必要なことだからなぁ。
「あの、勇者様、まだ小さな子に対して、今のまさにイジメのような仕打ちは何でしょうか?」
俺が喜悅に浸っていると、ローレライが冷えた口調で言った。
何だかその目はまるでゴミを見るような、凍てついた眼差しである。
バシュータまでもが、
「まさか聖槍の使い手が、自分よりずっと若い子で、しかも才能があるかも、などと言われたから、イジメたわけじゃないでしょうね? そんなゴミのような考えをしたとすれば本當に勇者失格ですよ?」
そう冷えた口調で淡々と言う。
「へ、へへへ。んなわけねえだろうがよ。鍛えてやりたい一心ってやつさぁ」
俺は肩をすくめてしっかりと否定する。俺は教師として弟子のためを思ってやったまでだぁ。俺の名譽のためにしっかりと否定しておかねえとなぁ。
「全然信じられません! 皆さんも何か言って下さい! 勇者様が間違っていたら正すのも仲間の務めでしょう⁉」
ローレライが聲を上げた。
すると、
「まあ、確かにあのラッカライって子。余り強そうじゃなかったわねえ。いざとなったら盾がわりくらいにはなるかしらねえ?」
デリアが爪をいじりながら言った。
「……え?」
その言葉にローレライが唖然とした聲を上げる。
「いやいや、盾にも『才能』が必要だからなぁ。そう俺のようにたくましいが無ければだめだ。ふはははは! いくら聖槍の使い手に選定されようが、俺のようなたくましい男でなければ意味がない。ある意味、俺の方が聖槍の使い手よりも格上ということだなぁ」
エルガーもそう言って続いた。
そして、プララも、
「魔法の的になってもらおうかなぁ。聖槍があるんだったら、防げるっしょ? てか、特別な才能があるとか言われてる奴ホントむかつくんだよね。何様ってじじゃん。いっぺん痛い目見た方がいいよね、人間的に長する意味でさぁ。そのためにお姉さんがちょっとしごいてあげるよ。きゃは♫」
そう言って嗤ったのであった。
するとローレライが、
「あなたたちも勇者様と同じ本當のカスどもですよ! いじめなんて最低ですよ!」
そう怒鳴ったのであった。
だが、他の仲間たちは心外だとばかりに驚きながら、
「あらあら。ローレライったら、し落ち著いて。私がいじめなんてするわけないでしょ? 「かわいい子には旅をさせろ」と言うでしょう? 私が言ったのはある意味、そういう意味よ」
「そうだぞ。俺のようにどっしりと構えてしいと願っただけではないか。斷じていじめなどするわけがない。國の守護者であるこのエルガー様がな!」
「そうだよそうだよ。ちょっとした冗談じゃーん。なにマジになってんのさー、きゃはは♡」
彼の言葉を笑ってけ止めたのだった。
「ぐす……。だ、だめだ……」
だが、なぜかローレライが天を仰いだ。そして、
「この人たち全員、同類なんだ……。どうして私はこんなところにいるのでしょうか……。どこで道を踏み外したのでしょうか……」
そう地獄よりも深い絶の聲を上げたのである。
正直、彼が何に參っているのか、よく分からないが。
「あ、あの、ジュース持ってきました」
と、ローレライがよく分からない絶の聲を上げていると、パシら……いや、お茶くみに行っていたラッカライがジュースを持って戻って來た。
「よしよし、へへへ。ぐびぐび。かぁ、人に運ばせた果実はうめえぜ。んん~、よ~し、んじゃまぁ、とりあえず『海洋都市デルタ』に向かいがてら、修行をつけてやるとするかぁ!」
「お、お願いします!」
(へっへっへっ。だが、つっても、歴戦の強者たる俺の見立てからしても、てんで才能はなさそうだなぁ。腕もみてえに細《ほせ》えし。はっ、どうせ、誰がやっても長なんてしねえだろう。散々しごくだけしごいて、「才能ねえわ」って言って放り出しちまうかぁ。きひひ)
俺はそんなことを思いつつ、果実を味そうになめたのである。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「弟子ちゃんは今後どうなるの!!」
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