《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》58.前試合 その② ~かつての弟子との対決~
58.前試合 その② ~かつての弟子との対決~
~ラッカライ視點~
す、すごい! さすがアリアケ先生だ!
私《ボク》は先生の無駄のないきにしていた。
勇者の攻撃は確かに強力なユニーク・スキルだったけれど、先生は鮮やかな多重スキルの行使で完全に無効化してしまった。
逆に勇者のその必殺技は明らかに隙があるから、無効化さえしてしまえば無防備になる。先生はすかさず自分にスキルをかけて杖による理攻撃を繰り出した!
ああ、本當に無駄のない完璧なきだった。さすが私《ボク》の先生……。思わず頬が熱くなる。
そして、その完璧に鳩尾に決まった一撃で、勇者は今、王族や大衆の衆人環視の元で、
「うげええええええええええええええ。うっうっ……おええええええええええええ」
と、地面に涙と胃の中を吐き出している始末だった。……ボクだったら二度と立ち直れないほどの恥ずかしい狀況……。
そんなことを思っていると、デリアさんやエルガーさん、プララさんはその景が信じられないといった風に、
「こ、これは……な、何かの間違いよ……」
「あ、ああ。そうだ。煉獄打突武神剣《オーロラ・バーストエンド》は勇者の所持するユニーク・スキルの中でも最速の技だ。萬に一つも見破られるはずがない」
「だよね……。確か究極的終局舞《ロンドミア・ワルツ》より高速で、隙のない超必殺技なんだし……」
なんて言っているのが聞こえて來た。
ボクはその言葉に思わず首を傾げる。
隙がない?
何を言っているんだろう。
(隙だらけだったと思うんだけど……)
ボクはさっき観察した技を鮮明に思い出しつつ、
(だって、以前、勇者からけた究極的終局舞《ロンドミア・ワルツ》は、見切るのもギリギリだった。でも、さっき見た煉獄打突武神剣《オーロラ・バーストエンド》は、あれより格段に遅く見えたし……っていうか正直、さっきのくらいだったら、ボクにだって躱して反撃できそうな程度の技だったと思ったのだけど……)
そんなことを考えたのだった。
でもその時、アリアケ先生が、
「ビビア、手加減しているのか?」
と言ったんだ。
「いや、さすがにそうに違いないか……。そうだろう! 勇者ビビア!」
先生は何度か頷いてから、まだ餌付《えづ》いている勇者へと聲を掛ける。
すると、勇者は悔しそうに顔を真っ赤にしながらも、
「くっ!? しょ、しょ、しょ、しょうだ! う、おえ、ぐええええ……」
そう先生の質問に、息も絶え絶えといった様子で肯定したのだった。
「ふむ、やはりな」
先生は納得する。
ボクも同じく、
「そ、そうだったんですね……」
そう呟いた。なるほど、どうやら本気ではなかったらしい。
(そうだよね、前の時より隨分弱かったみたいだし……)
そんなことを考えていると、ローレライさんに回復魔法をかけてもらった勇者が、フラフラといった様子で立ち上がり、
「お、俺はラッカライと戦うつもりだったんだ! それを、アリアケ、てめえ、でしゃばりやがって‼」
突然そんなことを言い出したのだった。
「そうだったか? 明らかに俺に向かって衝撃波が飛んで來たような気がするが……?」
「か、勘違いだ! この卑怯者め! 反則だ! 責任をとってラッカライと1対1で戦わせろ!」
へ?
ボクと1対1? 急な主張に頭がついて行かない。
「う~む……」
先生は、よく分からない勇者の主張を味されているようだ。
本當に先生はどんな時でもしっかりと考えを巡らせる。
その姿は本當にカッコいい。思わずが溫かくなる。
「反則反則反則反則反則反則反則反則!」
一方の勇者は、反則反則と子供のように喚《わめ》き続けていた。
とはいえ、観客たちも勇者の主張の激しさにあてられたのか、
「そうだ、反則だ!」
「アリアケは勇者の主張を認めろ! この卑怯者!」
などと言った罵聲を上げる。
「やはり認めるわけには……」
思った通り、先生は斷ろうとした。
でも、
「いえ、やらせてください、先生!」
ボクは初めて先生の言葉に割り込んだんだ。
「ラッカライ?」
先生は訝しんだ表をするけど、
「ボ、ボクの……。私《わたし》の先生が反則だなんて、卑怯者だなんて言われるのが我慢できません!」
我儘《わがまま》を言ってしまう。先生は思った通り困った顔をした。
しかし、
「ほーれ、ラッカライの野郎もそう言ってるぞ~? お前は弟子のことを信じられないのか~? ああーん?」
勇者が、今だけは絶妙なタイミングで割り込んでくれた。
優しい先生は、そう言われたら、認めざるを得ないだろう。
私《わたし》のことを一番認めてくれている人なのだから……。
「ふむ……。そこまで言うなら仕方あるまい。だが、無茶はするなよ? 俺は君の才能を知っているが、まだ長の途上なんだから」
「ありがとうございます!」
どこまで出來るか分からないけど、恥ずかしくない戦いをしよう。そう決意して私《わたし》は微笑んだのだった。
~勇者ビビア視點~
(くはー! 馬鹿なやつだぜえ!)
俺は思わず「しめた!」と心で有頂天になる。
(ラッカライの野郎なら楽勝じゃねえか!)
思わず心でせせら笑う。
あんな長余地のない無能なら勝ったも同然だ!
(あの無能には究極的終局舞《ロンドミア・ワルツ》で十分だろうが、くくく、煉獄打突武神剣《オーロラ・バーストエンド》を使ってやる。きひひひ、究極的終局舞《ロンドミア・ワルツ》を防げなかったラッカライにゃあ、まず防げねえ。そして、煉獄打突武神剣《オーロラ・バーストエンド》はそれを上回る速度と威力。見えねえだろうし、防ぎようもねえって寸法だぁ!)
し・か・も・だ。
奴には攻撃手段すらねえんだからなぁ! もはや積んでる! どんなけ無能なんだよって話だ!
俺は思わず腹がよじれそうになるのを耐える。
(だが、ラッカライは生かさず殺さずの狀態にしておいた方が良いだろうなぁ)
俺は冴えわたる思考にをニヤリと歪める。
(そうすりゃあ、アリアケはラッカライのフォローに釘付けになるってぇ訳だ。さっきは、ちーとばっか油斷したから、一撃を偶々(たまたま)もらっちまっただけだから、そこまでする必要はねえかもしんねえが……。ラッカライごと、アリアケをいたぶってやらないと気が済まねええええ!)
くっくっく。
俺にいたぶられて、さっき俺が観客どもの前で胃の中をぶちまけるハメになった屈辱の何倍もの屈辱! そいつを與えてやるよぉ。
勝利と共にもたらされるそんな素晴らしい未來図に、俺は喜悅の笑みを浮かべざるを得ない。
ぐひ。ぐひひひひひひ。
そんなことを考えつつ、仲間たちに目をやれば、
(ラッカライは防型の槍使いで、この1か月程度で攻撃が出來る様になってる訳もないから楽勝ですわ! ま、いざとなったら、何か理由をつけてローレライと私が代して、私の防貫通のユニーク・スキルでラッカライを集中攻撃すれば勝利は確定なのですわ!)
(回避型防の卑怯者など恐れるに足りん! 仲間を守れるのは俺のようなたくましいタンクでなくてはなぁ! ラッカライのような雑魚では話にならん‼ 攻撃をけているうちに防できなくなって役割を果たせなくなるに決まっている‼)
(ラッカライは複數攻撃に超弱いから、最悪あたしが間違っちゃったテヘとか言って、魔法で同時攻撃すりゃあ楽勝っしょ。ラッカライがウィークポイントだし、そこを突かなきゃねえ♪)
そんなアイコンタクトを送って來た。
くくく、腐っても同じ村の馴染パーティーだ。心は一つってことだなぁ!
作戦名『雑魚のラッカライをいたぶりつつ、アリアケもいたぶって倒す!』
これだ!
最高の作戦‼
(よおし、ほんじゃあ、まずは必殺の一撃を雑魚のラッカライに喰らわせてやるとするかぁ!)
「くらいやがれえええええええ‼ 煉獄打突武神剣《オーロラ・バーストエンド》‼」
くあーはーっはっはっはっは!
これでほぼ瀕死確定!
あとはボロボロのお前がアリアケの足を引っ張って、二人仲良く前試合で恥をかくって訳だぁ!
んで、俺たち勇者パーティーは再び栄を手にするってぇ寸法よう!
あーっはっはっは、ありがとよ、無能ラッカライ!
お前のおかげでまた俺の輝かしいっ……
「邪龍一閃・弐の型!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンン!!
「は?」
俺の放った衝撃波が、聖槍の一突きによって消失した。
(ば、馬鹿な! そんなわけねえ! そいつは俺の最大魔力を使った勇者のみ使えるユニーク・スキルでっ……!)
しかし、そんな心のびさえ上げている場合ではなかったのだ!
「派生! 邪龍一閃・參の型!」
一度消失したはずの魔力が聖槍の先端に収束する。
その一撃は真っ直ぐ俺へと向かってくる! だが、躱す暇などない!
聖槍の一閃はあえなく俺の鳩尾へと吸い込まれた。
「んっぎゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
ゴロゴロゴロゴロゴロ!
聖槍で思いっきり鳩尾を貫かれた俺は、コロシアムの床を泥だらけになりながら転がっていく。
「ぶべあああああああああああああああああああ⁉⁉⁉」
余りの衝撃とダメージに悲鳴を止めることなど出來ない。
そして。
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
壁に激突することで強制的に俺の口は閉じられた。
だが、一瞬後には、
「お、おえ。おええええええええええええええええええええええ。うええええええええええええええええええ。ゲえええええええええええええ」
絶え間ない嘔吐と屈辱が俺の脳を支配した。脳と胃がシェイクされ、鼻水と涙が止まらない。
何が起こったか分からない。
だが、間違いないのは、
「ひぃ」
「やだぁ、あの勇者また吐いている……」
「最低……。気持ち悪い……」
俺はまたしても、前試合にも関わらず、衆人環視の元、胃の中のをその場でぶちまけさせられたのである。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"……」
俺は呪いのごとく聲を上げる。
天を仰ぎ絶の聲を上げる。
なんでだぁ⁉
なんで俺がラッカライにこんな目にあわされなくちゃならないいいいいいいいいい!
俺は勇者なんだぞ! それなのにぃ!
「な"ん"で"お"れ"が"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"⁉ ラ"ッ"カ"ラ"イ"ごと"き"に"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"」
言葉にならない怨嗟の絶がコロシアムに轟いたのだった。
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