《ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ》41 『山のけんか』

昔々のことよ。

あるところによ、大きな山が二つあったのよ。

一つは八ヶ岳って山でよ、もう一つは富士山よ。

この二人はもともと仲が良かったんだけどよ。

ある日、「どっちが背が高いか」ってことでもめ始めたわけ。

そこで神様がやってきてよ。

二つの山のてっぺんに“とい”を作って、真ん中から水を垂らしたのよ。

するとよ、水は富士山の方に流れて行ったわけ。

ほら、水ってのは高い方から低い方に流れていくだろ?

だからよ、神様は「八ヶ岳の方が高い」とジャッジしたの。

するとよ。

富士山は怒っちまってよ。

もう大噴火よ。

その勢いで八ヶ岳のてっぺんが吹っ飛んじまってよ。

今のように八つの峰に別れちまって。

結局、富士山の方がでかくなっちまったのよ。

以來、二人は仲が悪くてよ。

今でも、お互いにそっぽ向いてるらしいぜ。

……いやよ。

この話聞くと、ちょっと々考えちまうのよ。

実は俺も、“とあること”で今、親友と絶してんだ。

あいつとは高校以來、口をきいてねえ。

あ?

何があったんだって?

いやよ。

それは俺のトラウマっつーかよ。

ちょっと……れられたくねえ部分なんだよ。

え?

ダイゴらしくない?

まあよ。

それくらい、俺にとっちゃ、大事件だったからよ。

ま、そりゃそうか。

親友と、訣別した日だもんよ。

……今でも忘れねえ。

あれは、高校の夏休みの時だぜ。

あの日はそう、とても暑い日だったぜ。

俺と親友のタカハシはゲーセン行って帰ってたのよ。

そしたらよ、タカハシが「あちょー」とか言って、冗談で俺の後頭部をたたいたのよ。

それがちょっと痛くてよ。

俺も「なにすんだよ」つって、わき腹に軽くパンチれたわけ。

そしたらタハカシ、「なんだよ、冗談だろ」つって、また俺の頭を叩き返してきたのよ。

今度はさっきより強めでよ。

かなり痛くて、俺は反的にまた叩き返したの。

するとだよ。

タカハシが「いてーなあ」つってまた俺の背中をバンって叩いてきやがった。

それが段々強くなってきててよ。

俺はムカついてきてよ。

こぶしを振り上げたのよ。

そしたらタカハシの野郎、その手を摑んで、こんなこと言いやがるワケ。

「おい、ダイゴ、キリがねえからよ、この辺にしとこうぜ」

俺はマジでムカついたぜ。

だって、最初に手を出してきたのは向こうなんだぜ?

俺はよ、

「いやいや、お前の方が一発多く叩いたんだから、最後に一発シバかせろ。それで終わり」

って言ったのよ。

そしたらタカハシの野郎、

「ダイゴの方がちょっと強く叩いたんだから、これで引き分けでいいだろ」

なんて言いやがるわけ。

俺はマジムカついてよ。

「そんなことはねーよ! さっきの、結構痛かったぜ!」

つって、怒鳴ったワケ。

あとはもう水掛け論よ。

「そんなことはねーべ! 俺は50%の力しか出してねー」

「馬鹿野郎! 俺は30%だ」

「へっ、引っかかったな。実は俺は20%なんだが」

「俺の30%は実質10%なんだよこの野郎」

「子供かてめーは! ま、俺は5%なんだけど」

こんな調子でよ。

もう路上で言いあいよ。

それ以來。

俺とタカハシは一度も口をきいてねえんだ。

そう。

あの夏の日。

俺ぁ……親友を一人失っちまったんだ。

かけがいのない、友を。

    人が読んでいる<ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください