京香は一拍の間を置いた。

「テレパシーと言いますが、これはエレクトロキネシスの一種です。霊幻が前に言っていた事を覚えているでしょうか？　周辺にある電子機、それも監視裝置のみをピンポイントにジャミングするエレクトロキネシスがあるならば、それの出力はＥで作はＡだと」

「それが？」

「人間の頭からは常に脳波が出ています。これはや思考によって変化し、アタシ達は電流としてこれを観測できます。ならば、圧倒的作、を持ったエレクトロキネシストならば脳波から思考を読み取れてもおかしくありません」

「その発想には飛びがあるぞ？　なるほど、エレクトロキネシストならば脳波を知できるとして、そしてそこからや思考を読み取れるとして、この野良キョンシーがそうである理由は何だ？」

京香はヤマダからノートパソコンをけ取り、水瀬に見せる為に畫面に表示しておいた映像を見せた。

映像は霊幻が野良キョンシー達と対面し、戦闘を行っただ。

畫面は霊幻が壁面へ跳び、著地した直後に火柱が生まれた時から再生される。

壁面へ著地した直後の絶対に避けられないタイミングでの火柱。

一瞬で火達磨にった霊幻は全へ紫電を纏い、炎を剝がす。

『ちっ！』

霊幻が炎をはがした直後、部屋の奧に居たのであろう野良キョンシーは舌打ちした。

そして、

ガタッ！

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

このキョンシーは千平方メートル強あるフロア全をパイロキネシスで燃やした。

僅か一分程度の記録。それだけで水瀬は京香が何を言いたいのかを理解した様だ。

「……なるほど。だから、この二は逃げたと主張したいんだな？」

「はい。この野良キョンシー達、まあ、この時點ではパイロキネシストだけだと思っていましたが、戦闘の初め、この姉妹のキョンシー達はおそらく連係プレーで霊幻を圧倒していました。そうよね？　霊幻」

「そうだな。吾輩としては業腹だが、完全に読み負けていた。あのまま続けていたら吾輩が負ける可能は六十％あった」

霊幻が笑いながら言った。

「にも関わらず、この二は逃走を選びました。逃げる事が目的だった可能もあります。でも、それなら最初から眼くらましの炎を出して逃げれば良かったんです」

「デハ、何故、方シンを変えタノか」

ヤマダが京香の言葉をサポートする。

「単純です。戦闘を選んだのは霊幻の思考が読み取れていたから、逃走へ替えたのは思考が読み取れなくなったから」

言葉の続きは水瀬が紡いだ。

「霊幻が全にエレクトロキネシスを纏ったから読み取ろうとした脳波が狂った。テレパシーが使えなければ霊幻相手に勝ち目が無い。故に、逃走へと切り替えた。そうだな？」

「はい。これが第六課の出した結論です。それともう一つ決め手があります」

京香はノートパソコンの映像を次のへと切り替えた。

「これはマイケルの研究室だな。何が起きた？」

「見てくれれば分かります」

映像は霊幻がメンテナンスの為マイケルを訪れた場所へ行った時のだ。

『はっはっは！　久しぶりだなマイケル！　渋々だが調整に來たぞ！　さあ、吾輩のを弄繰り回すが良い！』

『おお、霊幻、一ヶ月ぶりじゃねえか！　お前から來るなんて珍しいな。定期點検は來月だぞ？』

『京香に言われてな！　京香が院中は吾輩も撲滅活できない。この機會に調整してもらえと言われてしまったのだ！』

霊幻はマイケルに出迎えられ、研究部屋にり、中央に置かれた検査用ベッドに橫たわった。

そして調整を終えた後、マイケルと霊幻は研究部屋から出て行く。

來客用オフィスから外に繋がるドアまでマイケルは付いて來た。

『それでは吾輩はこれで帰る。調整が終わり次第、即座に帰って來いと京香に〝眼で〟命令された』

『おお、そりゃしょうがない。んじゃ、またできればすぐに來いよ。今度はエレクトロキネシスの測定をさせてくれ』

『了解！』

それでは、と霊幻はヒラヒラと手を振るマイケルに見送られながら研究室から出て行った。

映像は単純で、霊幻がマイケルの研究室を訪れ、を調整後、帰るまでが記録されていた。

「これの何がおかしい？」

「分からないんですか？」

「分からん。俺の目では普通に霊幻を調整しているキョンシー技師にしか見えん」

やれやれと京香は首を振った。

「マイケルが殊勝過ぎるんです」

京香は大真面目な顔で違和の正を口にする。

「はぁ？」

「アタシ達の知っているマイケルなら、調整にかこつけて霊幻のを隅々まで弄る筈です。罷り間違っても『今度はエレクトロキネシスの測定をさせてくれ』なんて言いません。その場で測定します」

「さらに報を付け加えよう。あの部屋には吾輩の他に二キョンシーが居た。吾輩が調整をけていた隣の治療部屋にな」

「第二課と第三課には確認が取れています。あの日、マイケルの研究室に治療をけに來たキョンシーは居ない。対策局が認知していない二のキョンシーがマイケルの研究室に居て、それをマイケルは霊幻には言わず、普段では考えられない行を取っている」

「つまり、マイケルがテレパシストのＰＳＩに依って洗脳をけていて、野良キョンシー達はマイケルの研究室に居る、と言いたい訳か」

「ええ、第六課の結論をどう考えますか？」

二分程の時間を要して、水瀬は「はぁー」と深く息を吐いた。

「明日、全対策課で代表者會議を行う。今の話を更に簡潔に纏めておけ。俺の方でエレクトロキネシストのキョンシーを集めておくから、そいつらを使ってマイケルの研究室を調査する。結果次第では第四から第六課で研究棟に行くぞ」

「承知しました」

次の日、キョンシー犯罪対策局の選別メンバーに依る研究棟への襲撃が決まった。