《【10萬PV!】磁界の王はキョンシーへ撲滅を告げる》④ 蝋の翼は融解寸前

***

【タイミングを計って突撃】

【さくらは無事か?】

【たった二相手にこの人數って】

【うわぁ、第六課と一緒の仕事かよ】

【A班は北、B班は東、C班は後方から】

【エレクトロキネシスを使う時の注意點はっと】

【どうしたもんかねぇ】

【ハンパねえ。さっさと終わらせるか】

【さて、僕達の役割は】

【対象は二

【テレパシーってマジかよ?】

【外から撃すれば良いのに】

【あ、ラーメン食べたい】

【撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅】

【エアロキネシストの飛行隊が使えれば楽なのに】

【イルカくんでたいなぁ】

【脳味噌が殘れば良いなぁ……無理か、第六課居るし】

【今日は徹夜確定かぁ。絶対転職してやる】

【はてさて、どうしたもんですかね?】

――ああ。

ココミは滅(・)び(・)を察知する。

キョンシー犯罪対策局の研究棟から半徑百メートル。

第四課から第六課の人員とキョンシー達が包囲網を作ろうとしていた。

無論、これはココミとホムラの世界を滅ぼす為の包囲網だ。

ズキズキズキズキ。

人數は二十三、キョンシーは三十。いずれも全に電流を纏えるエレクトロキネシスト。

自分のPSIがテレパシーだとバレてしまっている。有効程範囲も割れている。

「~~♪」

マイケルの鼻唄が聞こえた。

この建に居る全ての人間にはテレパシーを使って洗脳している。研究棟が囲まれている事実に気付いているのは、それが不都合なのは、ココミだけだ。

ココミは計算する。テレパシーの力場、これは百メートル先の敵に屆くだろうか。

答えは可能だが有効では無い。距離としては屆く、だが有効程範囲からは外れている。

相手はエレクトロキネシスト。數本程度のイトでは屆かない。

電流さえ纏っていなければ思考を読み取る事はできる。

事実、キョンシーを連れた人間達とまだエレクトロキネシスを発していないキョンシー達の思考は頭に流れ込んできていた。これはココミにとって止める事ができない。

だが、肝心の、自分にとって唯一無二の武であるテレパシーに依る洗脳がこれでは実効的に上手く行かないのだ。

ならば、ココミに取れる手はたった一つだ。

ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ!

――痛く、ない。

ココミは頭を揺らさない様にゆっくりと俯いて瞳を閉じた。

【帰ったら結婚しよう。相手居ないけど】

【駄目だ、どの研究員とも連絡が付かない】

【清金さん、本當にこの人が第六課の主任?】

【C班に最終確認を】

【A101から103は短距離エレクトロキネシス。B202は中距離……ああ、もう普段使ってるのはエアロキネシスなのに!】

【撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅撲滅】

【あれが狂笑の霊幻。噂通りイカれてやがる】

【おい! 佐藤に鈴木! コイツに絡まれてる俺を助けろよ!】

【撲滅撲滅うるせえ】

【突撃まで後十分】

雑音(ネジ)がうるさい。脳を抉る。そんなはどうでも良い。

瞼の向こうにはリペアカプセルで眠らされるしい姉の姿がある。

「スー、ハー」

大きく深呼吸。

集中を、度を上げて、激痛(ネジ)の數が指數関數的に増加する。

――上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)!

ココミの頭からイトがびる。

無數に、痛みと比例して急速に、イトは増え、ココミの全を包んで行く。

の神経とPSI力場を接続する。

――上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)!

剝き出しにった神経に雑音(ネジ)が捩じ込まれていく。ココミを包んで行くイトは度を増し、肩甲骨から首に掛けて二対の強烈な度を持ったイトの塊が生えていった。

度増幅としてのその形はさながら翼(・)の様だ。

――上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)!

求めるのは何処までも高く飛べる蝋の翼。

墜落する寸前まで翼を大きくするのだと、ココミは自の脳とチキンレースを続ける。

二メートル、四メートル、八メートル、十六メートル!

翼のサイズが大きくり、研究棟の外にまでびて最後には凡そ三十メートルとった。

【夕飯はゲームしたいまたあのキョンシー疲れた~あの人は何時帰っ二次関數って何カレーと後はサラなんか変な集団が居るお腹痛いあなた今夜しいフィーバーナイトだこの人を殺してしまえ苦しいのね辛いのねば楽にるのかな臭い苦いあああ可いわ萬里あぁまた壊れた三回行だと筋痛だなこでも駄目よやっぱり全部やり直さなきゃれはあそこで何でボールを取れなかったのかゴォォール!】

聞く意味の無い近場の教育機関にまでテレパシーの範囲が広がる。

クラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラッ!

ココがギリギリだ。これ以上は墜落する。

ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ!

激痛(ネジ)は最高。蝋の翼は融解寸前。

されど、は消える直前こそ強く瞬くのだ。

「……羽ばたけ」

巨翼が羽ばたき、億を越えるイトが一瞬にしてキョンシー犯罪対策局の研究棟を包み込んだ。

「來るが良い。凌いでみせるから」

覚悟を込めて、ココミは翼を羽ばたかせる。

――上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)上げろ(いたい)!

痛みがへ亀裂を走らせる。

を裏返しにして砂利をり付けた痛みを數百倍にした刺激がココミを襲う。

そんなは幻痛だ。

だって、全ての痛み(ネジ)をココミはこの言葉を思い浮かべるだけで無視できるのだから。

――おねえちゃん。

世界で唯一のテレパシストは魔法の言葉を心で紡いだ。

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