《【10萬PV!】磁界の王はキョンシーへ撲滅を告げる》④ 大

「素晴らしい! 何をしたいのか全くもって分からないが、お前の言葉を聞くとしよう!」

霊幻は無條件に関口の言葉を信じた。関口は生きた人間だったからだ。

バチバチバチバチバチ! 腕と腳に纏う紫電の勢いを今一度強くする。

紫電は旋風に絡め取られ、カウンターが飛んで來るが知った事では無い。

帯電しているのであれば、それは霊幻の作対象だ。

ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

に輝く竜巻を、霊幻は部屋中に紫電を放ちスポットとする事で無理矢理作する。

「……」

コチョウが片眉をピクッとしだけかした。

エレクトロキネシスとエアロキネシスの間で竜巻の作権の取り合いが始まる!

「ハッハッハ! やはり分が悪いな!」

間接的に竜巻を作しようとしている霊幻では、純粋に空気分子をれるコチョウの土俵で力比べをするのは悪手だ。

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

それを見たのか見ていないのか、関口の弾がひたすらにコチョウと霊幻の方へ投げ込まれ、コチョウの竜巻とテレキネシストの力球と激突し発する。

意思を持った大蛇や竜の様だった竜巻達の連攜に一瞬の綻びが生まれた。

「開いたぞ!」

その僅かに開いた隙間を霊幻は見逃さない。

ビリビリビリビリビリビリ! グン! クーロン引力と斥力を高速で切り替えて、さながらリニアモーターカーの様に霊幻のは急加速して風の迷路の隙間へと突撃する。

パタパタパタパタ! コチョウはすぐさま腕を羽ばたかせ前方に竜巻を生むが、勢いは未だ育ち切っておらず霊幻が打ち破れるほどのサイズだ。

小規模な暴風の塊と霊幻のが重なり、捩じ切られそうな力のベクトルが霊幻ののあちこちを走り回った。

しかし、霊幻は全を鋼鉄へ置き換えたメカニカルキョンシー。生ならばが削がれる嵐の中であろうと、霊幻相手では合を剝がす事に留まった。

バァン! とうとう霊幻は風の壁を打ち破り、前方ニメートル先までコチョウに迫る。

「ハハハハハハハ! 撲滅だ!」

バチバチバチバチバチバチバチ! 霊幻の額の蘇生符が一際強く発する。

チャージ完了まで後コンマ五秒。霊幻の口が三日月形に歪んだ。

その時であった。

「良くやった気狂い」

関口のニヤリとした笑い聲が聞こえた。

霊幻は気付いた。いつのまにか自分とコチョウの眼下に、関口が連れて來たエレクトロキネシストのの一が立っていたのだ。

コチョウの風、霊幻の紫電、テレキネシストの力球、そして関口の二弾。それらの余波をけたそのキョンシーは酷いだった。顔面の半分が抉れ、腳が上下左右逆さまに捩じれ、ギリギリで関節と繋がっている始末。

だが、そのキョンシーは指が捥げた両腕で赤と緑のエアロボムを溢れんばかりに抱えていた。

「おっとぉ!?」

霊幻は眼を見開く。これは流石に拙い。自分でさえ壊れる可能があった。

即座にコチョウに放たんと溜めていた紫電を全に纏わせる事に切り替える。

グン! 方向は考えなかった。眼下のエレクトロキネシストのキョンシーと離れられればそれで良い。

霊幻のが南東の角へ飛ぼうとする直前だった。

「ぶっ飛べ!」

関口の號令と共に、エレクトロキネシストが抱えていたエアロボムとフレアボム全てが発した!

***

「シャルロット、盾にれ!」

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

研究棟の南側で起きた大発が起きる直前、京香はシャルロットを盾に替えた。

シャルロットの変形が完了したのと、関口の二弾を抱えたキョンシーが発したのは全くの同時。

強烈な熱と風が球形に広がり、人間では避け切れない速度で京香へと向かってくる。

グオグオグオグオ! グオグオグオグオ! グオグオグオグオ!

「ぐっ!」

シャルロットが変形した半明で薔薇狀の盾が、風圧で半球狀に歪む。

京香の左腕が軋み、両腳の筋繊維が悲鳴を上げた。

――あ、こりゃ駄目だ。

踏ん張りを京香は止め、後方へ、即ち研究棟一階東側に開いた大へとジャンプした。

ビュオオオ! 風切り音が聞こえる。を熱波がで、京香のは十五メートル飛翔した。

線を描きながら京香はシャルロットを下にしてコンクリートの地面へ落下し、ガリガリガリと火花を生みながら停止した。

キィーンとした耳鳴りが聴力を奪い、三半規管が一時的に狂った事を京香は判斷する。

「シャルロット、小さくなって」

キュイン! を覆うほど大きく広げていたシャルロットを腕の大きさにまで折り畳み、京香はふらつきながら立ち上がる。

幸い視覚には異常が無く、京香はトレーシーを右手に構えたまま、研究棟へと再び近付いた。

十五メートルの距離を歩いている間に京香の聴覚はある程度復活し、まあ、聞こえなくは無い程度までには回復した。

中からは先程まで響いていた戦闘音が無く、シンとした空気が流れていた。

の煙が酷く、一階の様子を京香はまだ摑む事ができない。

「霊幻、居たらこっちに來なさい」

京香の相棒は心地の近くに居た。発を避けようとしていた所までは見ていたが、その後どうなったのかまでは分からない。霊幻が今の発で壊れてしまったなど、京香は微塵も信じていなかった。だが、萬が一という事もある。

ビリビリビリビリ!

「ハハハハハ! 京香、お前も無事だったか!」

――良し。生きてるわね。

紫電と喧しい聲に京香は一先ず安心する。最悪の場合は避けられた様だ。

ドスンと京香の左隣に霊幻は著地し、その姿を見せた。

「……アンタは割りと壊れたわね」

「なぁに深刻なのは々左腕くらいだ」

霊幻のを覆っていた合が半分剝がれ金屬パーツが出していた。

確かに霊幻の言うとおり、被害が最も大きいのは左腕だった。

左腕に被害をあえて集めたのだろう。肘から先のパーツが無くなっている。左頬から首元までチューブと金屬部分の螺子が見えていて、左腳は半分削がれていた。その姿は出來の悪い人模型にも見える。

「……アンタを修理できる設備近くに無いわ」

「問題ない。吾輩達のエンジニアを取り返せば良いのだ」

「そうね」

これ以上は言わず京香は一階の部屋へ視線を戻す。煙は大分晴れて來ていた。

「京香、あそこだ。南側の壁際」

霊幻の言葉に京香は右手で指された場所を見る。そして、京香は見つけた。

「……」

「よう、コチョウ、眼は覚めたか?」

頭(・)と(・)首(・)と(・)肩(・)と(・)腕(・)。たったそれだけの、本だけにったコチョウを関口が見下ろしていた。

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