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――後、百四秒！

４０３號室には４０１號室と同じ様にパイロキネシストとテレキネシストが一ずつ居た。

撲滅対象たるキョンシーを塊に変えて霊幻は迅速に廊下へと飛び出す。

研究棟に居る殘りのキョンシーはエアロキネシストが二、パイロキネシストが四、エレクトロキネシストが二、テレキネシストガ三だ。

クネクネクネクネ！　ウネウネウネウネ！　クネクネクネクネ！

ウネウネウネウネ！　クネクネクネクネ！　ウネウネウネウネ！

廊下の奧、十五メートル先で、テレパシストが糸の力場を霊幻にばし続けている。

バチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチ！

バチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチ！

「ハハハハハハハハッハハハ！　無駄無駄ぁ！」

だが、か細く弱い糸の力場では束になっても霊幻の紫電を突き破る事は葉わない。

糸の力場は紫電に屆いたその瞬間、弾けて泡沫に消えた。

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

キイイイイイイイいいイイイイイイいいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン！

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

キイイイイイイイいいイイイイイイいいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン！

四階に殘る撲滅対象(キョンシー)が居る部屋は４０２と４０４號室。

炎と力球と糸の勢いは苛烈さを増し、が徐々に上がって來ていた。

――る事に慣れて來たのか？

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！

テレパシストが霊幻の同僚たる顔馴染みのキョンシー達をっている事は確実だ。でなければ、曲がりなりにも霊幻のきに著いて行ける筈が無い。

この數十秒の中で複數のキョンシーの連係の度が急速に向上している。バラバラだったきは同期され、チグハグだったＰＳＩの隙間が無くなっていた。複數のキョンシーを合わせて一つの裝置かの様な不気味な噛み合い方を見せようとしていた。

「脳の並列化か！」

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！

「面白い！　素晴らしき撲滅対象では無いか！」

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

キイイイイイイイいいイイイイイイいいイイイイイイいいイイイイイイイイイイイイいン！

笑いながら炎と力球に包まれて霊幻は４０２號室へと突撃する。

――殘り時間は九十三秒か！

「撲滅には十二分(十二分)だ！」

――七十一秒！

４０２號室のキョンシー達の連係は凄まじいだった。パイロキネシストとテレキネシスト二の炎と力球は一つの意思を持った機械の様に部屋を飛び回り、霊幻を撃退しようとした。

なタペストリーの如きＰＳＩの共演が４０２號室を覆い盡し、攻略はほぼ不可能だった。

普通の一般的な名無しのキョンシー達では無理だっただろう。

霊幻は特別製(ネームド)だ。汎用型とは違い、求められた機能を追及した特化型のキョンシー。

そして、求められた技能は単騎突貫に依る撲滅戦。未知の脅威に対する特攻こそ霊幻の能を最大限に活かせる戦闘方法だった。

――殘り居る撲滅対象は最低、パイロキネシストが二、テレキネシストが一、エレクトロキネシストが二、エアロキネシストが二。見えていないのはエアロキネシストだけ。

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！！

霊幻は頭の中で殘りの元同僚達の姿を表示しながら、四階の最後の部屋である４０４號室へ走る。

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

キいいイイイイイイいいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイいいイイイイイイいいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン！

４０４號室から出てくる炎と力球の激しさはこれまでで最大だ。

炎は螺旋を描き、力球が発寸前の水風船の様に形を歪に揺らがせる。

――この様なキョンシーは居なかった筈なのだが。

キョンシー犯罪対策局が保有するＰＳＩ持ちキョンシーの中に螺旋型のパイロキネシスや揺らぎを持った形のテレキネシスの報は無かった。

ＰＳＩの形態は稀に変質する。それは神の有り様だったり、脳の損傷だったり、原因は様々だ。だが、往々にして碌な事では無い。

霊幻はＰＳＩの隙間を練って４０４號室に突貫する。

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！

笑う。笑って笑って笑い続ける。笑う事を止める回路が霊幻には無い。

４０４號室にはパイロキネシストが二。テレキネシストが一居た。

「お前達で最後だな！」

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！

これでこの研究棟に居た筈の対策局のパイロキネシストとテレキネシストは全てだった。

パイロキネシスト達の両手には螺旋型の炎が槍の様に持たれ、テレキネシストの周囲にはブヨブヨと形を変える力球が漂っていた。

対策局で保有していないＰＳＩの形態。質を変化させている事は間違い無かった。

確か、このパイロキネシストの出力はＣ、作はＤ－。テレキネシストは出力がＤ＋、作がＣ－だった。

「とてもそうは見えんがな！」

何度も炎を浴び、変した合皮を引き攣らせながら霊幻は突撃する。

バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ！

ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ！

床を壁を天井を、椅子を機を裝置を、４０４號室の全てを足場にして霊幻は紫電を纏って飛び回り跳ね回る。

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

キイイイイイイイいいイイイイイイいいイイイイイイいいイイイイイイイイイイイイいン！

相手の反応は剎那だった。パイロキネシスト達が炎の槍を霊幻へと投擲し、螺旋型の炎の攻撃範囲を補填する様に歪に揺らぐ力球が放たれる。

――隙間が無いな！

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！

流する炎と力球は壁と言うより波だった。霊幻が通り抜けられる様な隙間は無く、絶え間なくき続ける所為で雷撃でＰＳＩ力場をした側から新しい炎と力球の波が現れる。

炎、力球、炎、力球。多段のミルフィーユ型の構造を取った螺旋型の炎と蜃気樓型の力球は堅牢な防壁とって霊幻の侵攻を阻み続ける。

クネクネクネクネクネクネ！　クネクネクネクネクネクネ！　クネクネクネクネクネクネ！

炎と力球の防壁を突破しようとしている間に、糸の力場が容赦なく霊幻を狙ってくる。

バチバチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチバチ！

――後、六十秒！

紫電を纏えるのも後一分を切った。ペースとしてはギリギリ。廊下のテレパシスト。そして、今は姿を見せていない、先日戦した設置型のパイロキネシストが何処かに居るのだ。

求められた仕事は囚われている人間達が何処に居るのか、そして生きているかどうかを調べる事。それは頭に有ったが、霊幻はこの場でキョンシー全員を撲滅する気で居た。

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！

霊幻の思考回路に焦りは無い。纏う紫電の形を変形させ、千切れた左肘の先から雷の腕を生やす。肘付近の電子回路が悲鳴を上げ、絶縁破壊が起きるが瑣末な事だ。

同時に霊幻は右手で懐から鉄片十枚を出し、雷の左腕近くに浮かせた。

「充電(チャージ)」

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイいいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオイイイイいいイイイイイイイイイイイイオオオオオオオオオオオいいイイイイイイいいイオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオイイイイイイイイイン！

螺旋の炎の槍と蜃気樓の力球がサイクロイド曲線に似た軌道を見せながら霊幻を取り囲もうと向かってくる。

それに向かって霊幻は紫電の左腕を向けた。

ばされた雷腕の周りを鉄片達は高速で自転と周回運をする！

クネクネクネクネクネクネクネクネクネ！　クネクネクネクネクネクネクネクネクネ！　クネクネクネクネクネクネクネクネクネ！　クネクネクネクネクネクネクネクネクネ！

バチバチバチバチバチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチバチバチバチバチ！　バチバチバチバチバチバチバチバチバチ！

霊幻の意図に気付いたのか、糸の力場がブワァッと量を増やす。だが、それは紫電に阻まれバチバチと、蛍燈に飛び込んで燃える蛾の様に周囲へ霧散した。

霊幻が狙うのは自とも言える必殺技。右手を拳の形に引き、真っ直ぐに析出した機械の眼で炎と力球の先に居るキョンシーを見つめる。

「充電(チャージ)！」

その様はまるで弓を引いている様だった。

霊幻の右腕が眩く紫電に発する！

そして、炎と力球が自分に屆こうとした正にその時、霊幻は全てのエネルギーを解放した！

「発(リリース)！！」

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ！

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ！

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ！

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ！

紫電の左腕より十枚の鉄板が亜音速で前方へと出され、クーロン引力に依って鉄片達と繋がっていた霊幻のも一拍遅れて前方へと飛んでいく！

ブチブチブチブチ！　ブチブチブチブチ！　ブチブチブチブチ！　ブチブチブチブチ！

ワイヤー筋繊維が引き千切れ、中のサスペンションが軋む！

鉄片は炎の槍と力球の蜃気樓を撃ち破り、霊幻へと道を開いた！

瞬きの間に霊幻のは向かいの南側の壁に落雷し、撲滅対象が有効程範囲にる！

「撲滅だぁ！」

霊幻のが紫電に輝き、距離を取ろうとするキョンシー達へ紫電が放たれた！