《【10萬PV!】磁界の王はキョンシーへ撲滅を告げる》② ツギハギキョンシー

つつがなく終了した會議から一時間後、京香はキョンシー犯罪対策局の研究棟を訪れていた。

數々の損壊が與えられた研究棟は僅か一週間でほぼ元通りにっていた。

本日より後輩とった木下恭介は事務連絡を聞いた後、フラフラと部屋を出て行った。流石に気の毒だと京香は思ったが、上が決めた事だ。木下には諦めてもらうしかあるまい。

六階まで上がり、マイケルの研究室のドアをコンコンコンと京香はノックする。

「マイケル、るわよ」

「おお、れ!」

研究室にっても、來客用オフィスにはいつも通りマイケルの姿は無く、珍しくヤマダとセバスチャンの姿があった。

優雅に紅茶を飲んでいたヤマダはヒラヒラと手を京香へ振る。

「キョウカ、退院おめデトうございマス。セバスのスコーンはイカが?」

「一つちょうだい」

「どうぞ、京香様」

セバスチャンからスコーンを一つけ取り、もぐもぐと口に頬張った。

「珍しいわねヤマダ達がここに居るなんて」

「今日はセバスの調整ビなんデス」

「なるほど」

ゴクン。スコーンを飲み込み、京香はスタスタとリペアルームへと向かった。

リペアルームの中央に置かれた検査用ベッドに霊幻が寢かされていた。

霊幻は四肢が解され、ハハハハハハハハハ! と笑っている。

「京香! 院は終わったようだな!」

「まあね。まだ安靜にしてろって言われたけど」

京香は霊幻の近くに寄ってその姿を見る。

「マイケル、霊幻はどう?」

「修理、つうかパーツの総取替えは七割方終わった。三日後にはまたけるようにしとくぜ」

「ハハハハハハハハハハハハハ! 今回の撲滅は凄まじかったな京香!」

「首しかかせないのに喧しいわねアンタ」

ペシっと霊幻の額を叩いて、京香はリペアルームに新たに増えた二つのリペアカプセルへと近付いた。

薄紫のエリクサーに満たされた二つのリペアカプセルの中では、パイロキネシストとテレパシスト――解析された記録からホムラとココミという名前だと分かった――が寢かされている。

ドカドカとマイケルが京香の橫まで來た。

「この二人はいつ頃治りそう?」

「まず、テレパシスト、ココミの方だが、こっちは早ければ一ヶ月だ。脳へのダメージは凄いがそれだけだ。意識が戻っても靜電遮蔽された部屋に置いておけば回復するだろう。テレパシーを阻害できる筈だからな」

「じゃあ、ホムラの方は?」

京香の言葉に、マイケルはやや悔しそうにその貍腹を叩いた。

「ああ、こっちの修理は無理だ。脳がイカれてる。けるようにはできるだろう。やろうと思えばすぐに起き上がるぜ」

「どこまでなら治せる?」

「ギリギリで使えるか使えないか。どちらにせよ脳に障害は殘る」

――そっか。

京香は息を吐いた。京香にはキョンシーを治す技も力も無い。マイケルが言うのならば、それは純然たる事実だ。

ジッと京香は瞳を閉じたホムラとココミを見つめる。

そっくりな顔をした姉妹のキョンシー。どちらもがどちらかの為にき続けたキョンシー。

「この姉妹は元に戻れるかしら」

鏡合わせの姉妹はまた前の様に話せるだろうか。

「でも、本當にソックリねこの二人」

れ出た京香の言葉にマイケルが反応した。

「そりゃソックリなのは當たり前だろ。そう作(・)っ(・)て(・)る(・)んだから」

「…………は?」

マイケルが今何を言ったのか、京香には分からなかった。

「ん? 気付かなかったのか? このホムラってキョンシーの姿はココミってキョンシーの外見を模して作ったんだ。整形だ整形。びっくりするくらい出來が良い加工だぜ」

「――」

京香は眼を見開いた。

「え、それじゃあ、この二人は、姉妹じゃ、ないの?」

「ああ、俺が斷言するぜ。こいつらには伝的に何の繋がりも無い」

「本當に? あ、ほら、縁は無くても姉妹型のキョンシーって可能もあるじゃない」

「ココミのはほとんど一つの素から作られた純正だが、ホムラの方は複數の素の掛け合わせたツギハギだ。見た目(ガワ)だけが同じで姉妹型でも何でもない」

――そんな、

京香は天井を仰いだ。そうだ、キョンシーなのだ。中を改造できるのがキョンシーで、顔だって変わってもおかしくない。

テレパシーを使えるココミがこの事実を知らない筈が無い。もしかしたらホムラも知っていたかもしれない。

何を思ってこの二人は一緒に居たのだろうか。

京香は何かを言おうとした。言葉は何も思いつかず、もとの奧で消えてしまう。

その時、狂笑が部屋に響いた。

「ハハハハハハハハハ! 何を固まっている京香!」

顔を向けると、霊幻がいつもの様にカラカラと大笑いを上げていた。

「……でも、霊幻」

続かない京香の言葉に霊幻は尚の事笑った。

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

「結局の所、この二は只(・)の(・)姉妹なのだろう! その事実は何も変わっていないではないか!」

ハッと京香は息を呑んだ。

ああ、今の霊幻の言葉は戯言だ。説得力は何も無く、霊幻から見えた事実を語っているだけ。

そこに証拠は無く、論理も無い。

しかし、京香は霊幻にそ(・)う(・)見(・)え(・)て(・)い(・)た(・)という事実が嬉しかった。

「ああ、そうね。この二人は姉妹なのよね」

「そうだな! 否定材料があるのか?」

「無いわね。何も無いわ」

京香は額へ右手を當てる。

「姉妹はできれば一緒に居た方が良いわよね」

「それは吾輩には分からん!」

ハハッ!

京香は笑った。作り笑いではなかった。

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