《【10萬PV!】磁界の王はキョンシーへ撲滅を告げる》それゆけ、ユウパンマン!
*
ある意味衝撃的な上司の休日の姿を目の當たりにした後、恭介達は予定通り、シカバネ町北區のアミューズメント施設に來ていた。
時刻は午前七時を回っており、ユウパンマンの映畫まで後三十分である。
八階建てアミューズメント施設『有楽天(ゆうらくてん)』の最上階に位置する映畫館に著き、恭介は券売機で目當ての映畫のチケットを発券しようとした。
三人分の席を買おうとしたその時、ふとした疑問が恭介の頭に浮かんだ。
――あれ? キョンシーって席買えるのか?
キョンシーは〝品〟に區分される。いくら自律型とは言え、ホムラとココミ用の席を人間用の區分で買っても良いのだろうか?
「どうしたの? ぐずぐずしてないで早く買いなさい」
「ちょっと待ってて」
ホムラが返事をする前に恭介は適當な映畫館の係員を捕まえた。
「あの、すいません」
「はぁい。何でしょうかぁ?」
係員は間延びした喋り方をする大學生くらいのだった。
「そこのキョンシー達も一緒に映畫を見たいんですけど、どの區分で買えば良いですか? ユウパンマンの応援上映の映畫なんですけど?」
「お客さぁん、あなたもですかぁ? ええ、ええ、それならぁ、大人用の區分で良いですよぉ。まだ人も居ませんしぃ」
――?
係員の言いに疑問符が浮かぶが、恭介は禮を言った後、券売機近くのホムラ達の元へと戻った。
「ほらほら、さっさと買いなさい。ポップコーンとかも買うんだから」
「はいはい」
ピ、ピ、ピ。朝早いという事もあって、ユウパンマンの応援上映はほとんど席が埋まっていなかった。中央に三席、一番後ろに一席程度である。
――あんまり他の人と近いのも良くないか。
そう考えて恭介は一番前の真ん中付近の席を三つ並べて購する。
ホムラに急かされ、ポップコーン二箱(ホムラは全種類買おうとしたが、恭介がどうにか頑張り、塩バター味のみにした)とオレンジジュースを三つ購し、時刻は午前七時十五分。ちょうど良いタイミングで館アナウンスが流れた。
『只今より、[劇場版、それゆけ! ユウパンマン 希の星をつかむとき]を上映いたします。チケットをお待ちの方は付までお越しください』
ホムラはパッと顔を明るくさせ、ココミと一緒に勝手に付へと歩いていく。
「ココミココミ。いよいよだわ。初めてね、初めての映畫ね。どんなじなのかしら? 一緒にポップコーン食べながら見ましょ」
――楽しそうだな。
恭介の目にはホムラとココミは普通のの様にしか見えなかった。は白く、溫も低く、額に蘇生符がられ、何処からどう見てもキョンシーだとはっきりしていたけれど、映畫を姉妹で楽しそうに見ようとする姿は人間と遜が無い。
自律型のキョンシーの中でもホムラとココミの自我は格別だった。
一時的なレンタルの経験はあったが、恭介にとって本格的にキョンシーを持つのはホムラとココミが初めてだった。
これほどまでにかななのか、と恭介は日々驚く毎日だ。
『あんまりキョンシーにれ込んじゃいけませんよ。所詮ただの死なんですから』
アリシアの言葉を恭介は思い出した。
――ただの死、ね。
恭介は意識する。目の前に居る二のキョンシーはただの死なのだ。
彼達は決して生者ではない。
*
映畫上映とは本編開始前に十分ほどの幕間の時間がある。映畫鑑賞時のマナーや新作映畫の宣伝などが目的だ。
今回恭介達が見に來たのは応援上映というで、映畫鑑賞中にキャラクターへ応援の聲を出したりペンライトを振ったりして良いという特殊な上映方法である。
故に幕間の時間、応援上映のやり方についての説明が為されていた。
巨大スクリーンの中央ではマントを付けた丸顔のユウパンマンが恭介達に手を振ってくれている。
『みんなー、今日は來てくれてありがとうー! ぼくたちの冒険を楽しんで見てねー!』
「「「「「はーい!」」」」」
恭介は小聲でホムラはノリ良く、そしてココミは無言だった。
最前列の中央に左から恭介、ホムラ、ココミ(二は手を繋いでいる)の順で座る彼らの後方からは早起きしたチビッ子達と保護者の聲が屆く。
その聲の中で一際大きい人男のがあった。
――ん?
その聲に恭介は聞き覚えがあり、ポリッとポップコーンを食べながら後ろを振り向き、
「マジで?」
アングリと口を開けた。
シアターの最後列の中央、見慣れたキョンシーがペンライトを持っていたのである。
り付いた笑み、トレードマークの紫マント、ギラギラしてるのにを無くした瞳。
見間違えようが無かった。第六課のエースキョンシー、霊幻がそこに居た。
「何で?」
――キョンシーの間でユウパンマン流行ってんの?
俄には信じかだい。
「ええー」
「ちょっとうるさいわよ。無駄な聲を出さないで。燃やすわよ」
ジロリとホムラが恭介を睨む。
畫面上ではユウパンマンの応援上映の説明が続いていた。
「ホムラ、後ろ見てみてよ? 霊幻が居るんだけと?」
「どうでも良いわよそんなこと」
「いやでもさ、持ち主不在のキョンシーって中々やばいよ?」
「ちっ。京香だっけ? 何かあったらわたしたちの課の主任がどうにかこうにかするでしょ。この話はここでお終い。うだうだ言うのは止めて」
これ以上言うことは無いとばかりにホムラは視線をスクリーンへと戻した。
數秒程、恭介は視線を右方のホムラと後方の霊幻の間に行ったり來たりさせる。
キョンシー犯罪対策局の人間として霊幻に一言二言何か言うべきでは無かろうかという良識と、徒労に終わるであろう確信がせめぎ合っていた。
「見なかったことにしよう」
結局、後者に軍配が上がり、恭介は浮かせかけた腰を下ろし、映畫に集中することにした。
ちょうどユウパンマンの映畫が始まる所だった。
『それじゃあ、みんな! まわりの友達と仲良く応援してね!』
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