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しして、空が青から赤にその役目を明け渡した頃、京香達は気象塔の最上階の展室に居た。視界を遮るは何もなく、モルグ島を一できた。

もしも雲の上に住み種族が居るのなら、彼ら彼らはこの景をいつも見ているのだろうか。

展室にはがあまり無かった。中央に置かれた談話用らしき二つの五人掛けソファと一つテーブル。セミダブルベッドが四方に置かれているだけだ。

後、特徴的なのは配置された八のキョンシーだ。おそらく護衛と監視の役目を授けられたキョンシー達に違いない。

「『ねえ、おしゃべりしようよ！　これがさっき話してたキャンディ！　さ、食べて食べて！』」

ソファにセリアと座ったアネモイが各々展室のガラス近くで街を見下ろしていた京香達をまるで友達の様に手招きする。テーブルの上には袋詰めされたキャンディが丸底の箱に目いっぱい置かれていた。

そんなアネモイ達の右隣にソファに男が座っていた。

でこが広く白髪で、ひどい鷲鼻の男だった。だが、眼は垂れ眼で優しそうな雰囲気を纏っていた。

男の名前はクレマン・ガルシア。今回京香達へ依頼をする最終決定をした、モルグ島フランス支部を率いる男だ。

京香はアネモイ達の向かいのソファ中央に腰掛け、セリアが第六課のオフィスに來た時の様に、部下達を背もたれの後ろに立たせた。

機の上のキャンディを一つ取り、京香は包み紙を開けて口にれる。

人工甘味料を惜しむ事なく使われたオレンジ風味のキャンディだった。正直、京香はこれを味しいとは思えなかった。

だが、「『どう？　どう？　味しい？』」とニコニコを乗り出すキョンシーの姿に「ええ、味しいわ。ありがとうアネモイ」と京香は笑みを浮かべて返す。

「『どうぞどうぞ、もっと食べて良いよ！』」

「オッケー。後二つ貰うわ」

京香は言葉通りキャンディのった包み紙を二つ持ち懐のポケットにれた。

「『舐めたままで結構。京香さん、打ち合わせをしましょう』」

クレマンが鷲鼻から息を立てて、穏やかに口火を切った。

「あ、すいません。それじゃあこのままよろしくお願いしますね」

今から京香達がしようとするのは〝打ち合わせ〟だ。

口の中をオレンジ飴の匂いで満たしながら一息れて、京香は口を開いた。

「さあ、話しましょう。新しいアネモイの制作と、今のアネモイの破壊について」

今回の京香達の仕事は二つのステップがある。

一つ目はココミのテレパシーを使って新しいアネモイを作る事。

二つ目は現行のアネモイの破壊だ。

「的にどれ程の時間や手間がかかるかはやってみないと分かりません。そちらはどれ程のサポートをしてくれますか？」

「『全てです。我々に新しいアネモイを授け、今のアネモイを壊してくれるのなら協力を惜しむ気はありません。いつまででも居てください。必要なはこちらでできる限り用意いたします』」

「『マジで!?　じゃあ俺に研究室を貸してくれよ！　作りかけのガジェットがあるんだ！』」

「『手配しておきましょう』」

「『シャア！』」

後ろでマイケルがガッツポーズをしているのが分かる。この失禮な態度を許容しているところから協力を惜しまないというのは本當の様だ。

「謝します。じゃあ、とりあえず新しいアネモイを作るところから話しましょう。どちらにせよ、アネモイが居ないとそちらも困るんでしょう？」

「『その通り。まずは何があっても次世代のアネモイを作らなければいけません』」

「でも実際どうやって？　ココミのＰＳＩを使いたいって話でしたが、うちのキョンシーに害を及ぼす訳にはいきません。その點については何か考えが？」

背後に居るホムラからの圧力に京香は聞くべき事を聞いた。

「ああ、後一応言っておきます。ココミを傷つけるようなら、その可能がある様なら。姉のホムラが黙っていません」

京香の左手はアタッシュケースを摑んでいる。

これは脅しだった。京香は第六課を守る為なら手段を選ぶ気は無い。

「『落ち著いてください京香さん。その點については克則から厳命されてます。我々ヨーロッパの持つ最高のスタッフを用意してありますから』」

「『お？　じゃあ俺もそこに加えてくれ！　お前らのスタッフよりもココミのＰＳＩに詳しいぜ』」

「『それは願っても無い』」

京香はチラッとホムラ達を見る。ホムラの視線は鋭いままで、今にもパイロキネシスを使わんとする雰囲気だが、ココミを黙って抱き締めるだけで暴走する気は無い様だ。