《俺+UFO=崩壊世界》初めて訪れた場所での報収集はRPGの基本である
「……凄いを見てしまったわね」
M202に搭乗していたミルがぽつりとそう言葉をらすと、先程までぎ一つできなかった搭乗員達が一斉に息を吐く。今、目の前で繰り広げられ景に対して、一息も吐けなかったと言った所だろうか。
「いや……一どうしてあんな事ができるんでしょうか? 生義手……であんなにパワーがある訳ないし、左腕に著けていたのはHAじゃなかったし……。そもそも、生半可なHAを軽く凌駕する程の威力がありましたよね……」
ニルソンも様々な品を扱うフィブリル商會の一員として長く過ごして生きてきたが、あれ程の力を生み出せる裝備には心當たりがない。
しかし、この崩壊した世界では時として計り知れない程のが発見される時もある。
もしかしたら、それをあの年が手にしてる可能が……?
「んなわきゃないか……。そんなのあったら既に売り飛ばして一生遊んで暮らしてるだろうし」
たたでさえ、スカベンジャーやハンターと言った職はかなり死亡率の高い職業だ。
大金を手にする事ができたのならば、好き好んでそのまま続ける意味はない。
偶に好き好んで組合所に所屬し続ける紅姫と言う規則外の存在や、何らかの理由を背負って所屬する貴婦人と言った例外は存在するが、組合所に組する大抵の人間は生活の安定を求めての事である。
「なら話は簡単ですわ。"アレ"は裝備だとかHAなどではなく、あの子に備わった力なのでしょう」
「……一番ありえない可能な筈なんですが、あんな景を見せられたら素直にそうけ取るしかないっすよね」
ニルソンは遂に考えることを放棄し、ミルの言葉に賛同した。
「まぁ……今更驚く方が可笑しいのでしょう。彼は壊し屋を討伐し、ミシヅの貴婦人も退けたのですから。聞けば、何十人ものスカベンジャーが死亡した施設をヒューマノイドを連れてとは言え、制覇したそうですし」
「……何だか、そうやって改めて考えると凄い子ですね」
加えて言うのならば、それ等を全部片付けたのはたった一月の時間を消費しての事でもある。
あの紅姫ですら、その頭角を現し始めたのは組合所に登録して半年が過ぎてからだ。
そんな彼にも數々の"逸話"が存在はしてはいるが、今の沿矢が生み出し始めてる"戦績"も恐らくその部類にるになるだろう。
「……惜しいわね。彼がキスクの組合に屬していたのならば、早々に支援をして繋がりを結ぶのですが……」
目まぐるしい活躍をするハンターやスカベンジャーに対し、"スポンサー"が付くのはそう珍しい事例ではない。
広大な荒野に飛び出して彼方此方を行き來する彼等を支援する事は、商會や企業にとって多大な宣伝効果を発揮する。特に今の沿矢は若く、更に見麗しいヒューマノイドを連れてるとなれば、人目を引くのは容易だろう。
「はぁ……寶を目にしてお預けされてる気分だわ」
フィブリル商會の本社があるキスクとヤウラでは、しばかり距離が遠すぎる。
もし上手く沿矢とスポンサー契約を結べたとしても、彼を支援する為の裝備や弾薬を運ぶ道路が険しすぎるのが難點なのだ。
そもそもとして、今のミルの立場はあくまでフィブリル商會の一隊商を率いるだけの代表者。
今回の行商は言わば、彼の父親がミルに"箔"をつけさせる為に組んだ旅なのである。
幾らミルがフィブリル商會のご息とは言え、スポンサー契約の有無を決定付ける程の立場にはまだない。
彼が"お願い"すれば、そんな無茶も通るかもしれないが、流石にそれは自重すべきだろう。
ただ、いずれフィブリル商會の代表者となる彼がこうして頭を悩ませるのは良い経験だ。
「まぁ、今はそんな事を考えている場合ではないですわね。この商談を纏める事に集中しなくては……」
旅の終わりはまだ先の事だ、気を抜くには早すぎる。
ミルは一旦頭の中を整理し、そう結論付けた。
ただ――そう呟いた彼の視線が未だに沿矢の方を向いているのは如何なものか。
ニルソンや他の搭乗員は靜かに心中でそう指摘した。
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「いやー……助けるのが遅くなってすみません。出発前に約束してたのに、怖い思いさせちゃいましたね……」
俺はそう言って藤宮さん達に頭を下げた。
そもそも空中ジャンプしながらのパンチとか余裕こきすぎた。
いや、余裕と言うか、ああしなきゃ間に合わなかったんだが。
追撃してたら電とかもさせられるし、まだし髪が逆立ってるんだけど。
格好良く決めたと思ったらコレだよ。流石は無人兵、たたでは壊れないと言う事か。
「なに言ってんだい! 危うくぺしゃんこになる所だったんだ、遅くなったどうこうなんて言わないったら」
開口一番にそう言って、里菜さんが慌てて俺の肩を摑んで頭を上げさせようとする。
それに従って素直に顔を上げると、ルザード先輩が苦笑していた。
「木津はし謙虛すぎるぞ。水蜘蛛型を撃破して速攻で此方に駆けつけたと思ったら、そんな事で頭を下げられるとは思ってなかったよ」
「予想外ってレベルじゃないっての。木津、アンタはもうし威張り散らしてもいいんだからね?」
二人はそう言って小さく笑顔を浮かべている。
と、其処でずっと沈黙を保っていた藤宮さんが一歩前に踏み出し、大きく腰を曲げて頭を下げた。
「――本當に、本當にありがとうございます。言うまでも無く、私達はもうしで命を落とす所でした。このチームのリーダーとして、深くお禮の言葉を申し上げます」
「そんな、皆が無事で俺も嬉しいです。だから、そう畏まらないで下さい。俺ったら皆さんが迎撃している最中の殆どは隊商のトラックに避難してただけなんで……。最後の最後にお役に立てて幸いでした」
俺ってばトラックのおっちゃんと長々と『ヤベー!! スゲー!!』って騒いでただけだからね。
あのまま危うく一人の観戦者として戦闘を過ごし終える所だったよ。
「それに、三人の活躍も凄かったじゃないですか。この依頼でのファーストキルの功績は藤宮さん達のですよ?」
右翼から接近する敵に気づき、素早く迎撃できたのは間違いなく彼達の手柄だ。
それに二機目の不意打ちにも寸前で気づき、攻撃を加えてもいた。
もしも機関砲の弾が切れてなかったら、そのまま彼達が倒してしまってたかもしれない。
そう言って大げさに褒め稱えると、里菜さんは左肘をルザード先輩に軽くぶつけて彼を賞賛する。
「はははは……私達って言うより、殆どフェニルのおだよ」
「うん、そうだよね。フェニルが敵の位置を初めに把握してくれなかったら、大変だったと思う」
「いや、そう単純に褒められても困る。私が気を抜かず、弾を裝填していればあの様な危機は訪れなかったのだからな」
「ばーか、あそこまで接近されてたんじゃ、もし弾を裝填してたとしてもそう數は撃ち込めなかった筈よ。撃破できたかどうかは々五分五分って所ね。だから、どっちにしろ危うかったのよ。そう気負う必要ないって」
あっけらかんと里菜さんがそう言ってめると、ルザード先輩が何ともいえない微妙な表を浮かべる。
「いや、だからと言ってミスを流すのは良くないぞ。これを機に反省し、次に生かさねば今度は死んでもおかしくはない」
「まぁねぇ……。ミスと言えば、私ったら車からライフルを撃ちすぎちゃってね。し難聴気味なんだ。もう焦りまくっててさ」
「そのおで、私なんかギアの作ミスをしちゃったんだからね? 車で跳ねる薬莢がギアに被せた手に當たって熱かったんだから!」
「しょ、しょーがないでしょ?! あんな狀況じゃそんな事に気が回らないってば!!」
「窓から銃をし出せば済む事じゃない、ちょっとは考えてよねっ」
そう言って彼達は各々のミスを振り返り非難し始めたが、その表には笑顔が浮かんでいる。
死ぬ寸前のストレスからの開放で、ちょっとばかしハイなテンションになっているのかもしれない。
この戦闘で何両かの車両が銃撃をけて被弾していたが、各々が持參していた修理で応急処置を施す。
無論、それで完璧に直った訳ではなく、やはり不自然な所がかなり目立つ。
しかし、これ位の損傷ならば走行や戦闘に支障は無いだろう。
それ等を點検して時間を過ごしていると、各車両から降りてきた同業者達が先程撃破した水蜘蛛型の解作業を始めていた。今度はそれを手伝おうと小走りで駆け寄ると、その作業の指揮を執っていたカークスさんが眩い笑顔を浮かべて出迎えてくれる。
「木津君、大活躍だったな!! いやはや、貴重な経験をさせてもらったよ。あんな逆転劇はそうそう見れるものじゃない。ハハハ」
彼はそう言って高笑いし、上機嫌な様子を隠そうとはしない。
自分が指揮を執る護衛依頼の序盤で危うく死者が出そうになり、何とかその危機を打破したのだから彼のそんなハイな態度も無理もないと言うものだろう。
「いえ、それよりも俺も作業を手伝いますよ。何をすればいいですか」
「あぁ、君が手伝ってくれるなら凄く助かる。とりあえずだが、部品を運ぶのを任せてもいいかな? 君がそれを擔當してくれれば、解する作業人數を増やす事ができる」
「分かりました、任せてください。部品は何処に運べばいいですか?」
「各々の車両に分けて載せようかと思ったのだが、隊商のトラックの一つにかなり空きがあるみたいで、ありがたくもスペースを貸してくれるらしい。ほら、アレだ。それじゃ……任せてもいいかい?」
「はい! じゃ、また後で……」
そう言ってカークスさんと別れ、俺は水蜘蛛型がら剝ぎ取られたパーツを働き蟻の如く運んでいく。とは言っても、その作業にはそんなに時間が掛からなかった。
何故なら、最初に仕留めた水蜘蛛型は各車両の集中砲火をけて見るも無殘な有様であり、使えるパーツが殆ど無かったからだ。そんな鉄屑もプラントに放り込めばリサイクルできるらしいが、今は護衛依頼の最中であるので無視するらしい。つまりは、実質解するのは俺が仕留めた二機目と三機目だけであり、十數名で事に當たればあっという間だったのである。
何とか解作業が終わり、各々が自分の車両へと素早く戻っていく。
PDAを見れば、戦闘を開始してから既に一時間としの時間が経っている。
あっという間の出來事だったが、これでもまだ護衛依頼はまだ序盤なのだ。
しかし、流石にし疲れを覚え始めているのは否定できない。
「はぁ、はぁ……はぁ~~疲れたぁ。ラビィ、待たせたな。警戒してくれてありがと、ご苦労様」
ようやくラビィが待つ自の車両へ戻ると、ずっと警戒行を続けてくれていた彼に労いの言葉を掛ける。
すると彼は小さく頷きを返したが、荷臺から無言で此方をじーっと見つめているではないか。
彼とはまだ短い付き合いではあるが、俺にはそれが何を意味しているのか直に分かった。
これは何やら不満を抱いておるに違いない。
「……どしたの? 何か言いたい事があるのか、ラビィ」
「…………沿矢様は些か無謀すぎます。もうしを大事になさって下さい」
「いや、そうは言ってもさ……。彼達とはちょっとした縁もあるし……何よりが勝手にいちゃうんだもの。仕方ないよね」
そのまま『許してちょ☆』と、今世紀最高のウィンクを決めて許しを請うが、ラビィは表一つ変えない。
いかんな、どうやら本気で怒ってるのかもしれん。
そもそもラビィが怒るかどうかも分からんが、どうやら俺の回答はお気に召さないだったらしい。
「……にしても、さっきは助かった。ラビィが真っ先に敵の存在を知し、おまけにタイプを見抜いたから皆も落ち著いて対処できてたよ。この調子で後も頼むぞ!」
仕方なく、話を逸らして言葉を區切った。
それに対し、ラビィは淡々と返事をする。
「……警戒を任されましたから、當然の事です。別段、褒められる事ではありません」
「はははは……クールだよね、ラビィは」
心なしか、何時もよりクールすぎる気もするがな。
だげどもだ、俺としてはこの反応は実に好ましいものである。
……って言っていいかは分からんが、最近のラビィにはそれに近しいをじてしまう。
カークスさんもラビィには高度なAIが搭載されてる様だと言ってたし、もしかしたら學習機能かなんかでT-8○0みたく長してるのかもな。
「ところで、だ。さっきの戦闘で何発使ったか分かる?」
「位置を特定した瞬間のみ撃ち込んでいたので、そう消費していません。使用した七十九発中、六十二発を命中させました。費用対効果としてはベストだと自負します」
……ステルス型って見え難いんだよな?
いや、ラビィの視界を駆使すればそうでもないのかもしれんが、ちょっと命中率高すぎない?
まぁ……驚くのは今更か、彼にはこれまで何度驚かされたか覚えちゃいない。
にしても、今の戦闘で千と五百八十ボタを消費した事になんのか。
まっ、ステルス型とか言う厄介な敵を相手にした割りには安く済んだ方だな。
「それよりも、です。先程、ステルス型の過負荷による反撃をけた筈ですが……大丈夫なのですか?」
「へ? あ、あぁ。まぁ……し痺れたけど。なんともないらしい」
「……仮にも相手は兵、その機をかす出力は常人どころかどんな生でも耐え切れない衝撃を生む筈なのですが……」
「そうはいってもねぇ……」
確かに髪は逆立ってワイルドになったし、服やローブも裂けており、武鮫も焦げてるけども……?
「あれ……?」
「どうしました、沿矢様?」
「いや……何て言ったらいいのやら」
自の右腕の前腕に視線を落として、俺は困する。
そこに浮かんでいた黒い一線が心なしか"太く"なっている気がするのだ。
いや、気のせいなんかじゃない。
こちとら何年もこの模様を目にしていたのだ、この違和は"正しくオカシイ"のだ。
「……ふーむ。ここにきて、新たな問題が浮上するか」
これは吉兆なのか、それとも兇となるのか。
どうにも分からない。
――――ppppppppp……!
そんな事を考えているとPDAに設定していたコール音が鳴った。
俺は慌てて運転席に戻り、無線機の電源をれる。
『……各員、聞こえるか? 先程の戦闘はよく凌いでくれた。水蜘蛛型のパーツ分配に関しては、ブクスに到著してから話し合おう。もう晝過ぎだが、まもなく到著するので我慢してくれ。あとしだ、頑張ろう』
その後、各員の信が返ってくるのを確認し、カークスさんは改めて出発の號令を出した。
俺も一先ず自の問題に目を瞑りながらアクセルを踏み込んだ。
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集落と聞いてどれ程に田舎な場所かと思いきや、ブクスと言う場所は中々に"面白い要塞"であった。
荒野の果てに突如として浮かび上がったのは、茶混じりの黒い壁。
一何で構されてるのかと思いきやそれは數百臺の……いや、下手したら千を越える廃車だ。
勿論、ただ積み上げているだけなく、廃車と廃車の間を鉄板で溶接したりして簡単に崩落しない様に工夫が施されてある。いや、むしろ廃車は壁の土臺の役割となっているだけであり、基本的な防力は溶接された鉄板が擔っている様だ。その上を銃を持った何人かの住民が闊歩し、厳しい視線を荒野に向けて警戒に當たっていた。
ただ、一つ疑問なのが彼等は一どこから壁となる廃車の材料を集めたんだ?
到著する直前に定期信の時間となった事を良い事に、俺はその疑問をカークスさんにぶつけてみた。
『ふむ、前世界で起きた戦爭は突然の事態によるだ。今では考えられないが、昔の人達は一家に一臺は車両を持っていたらしい。逃げう人々は當然、それを使って無人兵の攻撃が集中した都市部から離れた。が、シェルターや軍事基地に辿り著けたのは極一部の幸運な人達だけ。世界中で戦闘が起きる中、大半の人々は戦爭が終わるまでは……山や森に逃げ込んだそうだ』
そこまで語りカークスさんが一息を吐いてると、唐突にコープの橫槍がる。
『だが、戦爭は終わらず。代わりに世界が終わっちまった。なんとか生き殘った奴等は無人兵の襲來に備えて涙ぐましい努力を重ねて武を掻き集め、燃料やバッテリーが切れた車両を壁の材料にしたって事だろうさ。ブクスみたいな集落は荒野ではボチボチと見掛ける』
「ふーん、なるほど……」
避難の為に都市部から離れていたら世界が崩壊し、その場所で生きていくしか道がなかった訳だ。
その時の心境を想像するだけで悲しい気分になるが、當時の人達は諦めなかったんだな。
そんな會話も終え、ブクスのり口近くへと遂に辿り著く。
勿論、そのままゲームのRPGの様にすんなりと中にれる訳ではなく、り口で警戒していたブクスの警備からストップが掛かる。
ただまぁ、俺は車列の後部に居たから會話の容まで聞き取れない。
しかし、そんなに長い時間は取られなかった。
錆びた鉄板で構された門が開き、隊商のトラックが中にっていく。
が、カークスさんが搭乗する偵察戦闘車両は脇に退き、中にらずそれを見送っている。
見れば、右翼と左翼に展開していた護衛のテクニカルも中へとろうとはしていない。
ならば俺もそうすべきなのだろう。
俺も車両を脇にかし、隊商の車列が門を潛るのを見送る。
だが、隊商の私兵戦力である偵察戦闘車両M202とテクニカル二臺は、そのままトラックの後を追って中にっていく。
その様子を最後まで見送っていると、何時の間にか自分の車両から抜け出したカークスさんが居た。
――ハハハハハ。
彼は自分のチームである人員と話しており、すっかりリラックスした様子だ。
どうやら、もう休憩してもいいのかな?
周りを見れば、ラウルのメンバーや藤宮さん達も車両から降り立っている。
ならば俺もと車両から出ると、そのまま背をばして息を吐く。
雨はまだ小雨ではあるが降り続いている。
が、先程は豪雨の中で戦闘を繰り広げたのだ。どうって事はない。
「なんだ、私達は外で待機するのかい?」
「當然だ、馬鹿者。全部の車両を門の中へと収容してしまったら、いざ襲撃をけた時に外へ出るのに時間が掛かるだろう」
「…………もしかしてだけど、私達はまさか集落の中じゃなくて外で寢るの?」
「そうだが? 車両から離れていては直に対応できないからな」
「ガーン……!! はぁ、護衛依頼って面倒なんだねぇ」
俺も『ガーン!!』である。
ルザード先輩の言う事はご尤もな意見ではあるが、々この仕事を甘く見すぎていたか。
気づけば、各々が各車両の荷臺を漁って荷を手に取ったり、既にテントの設営を開始している者もいる。
「……テント買っといて良かったわ。マジで」
まさかこのタイミングで使う事になるとは思ってなかったが、助かった。
備えあれば憂いなし、昔の人は良い言葉を生み出したもんだ。
周りの人達を見習い、俺もラビィと一緒にテントの設置をする。
と、そんな作業中にカークスさんが突然手を大きく叩いて乾いた音を響かせ、皆の注目集める。
「今日は此処で一泊し、明日の早朝六時に此処を出立する!! それまでこのブクスに滯在する事になるが、集落だからと言って気を抜かないでくれ。突然の非常事態になったら直に連絡が取れる様、無線機を離さず行しろ。それと出発前に述べたとおり、我々は南側の調査も組合から任されている!! できれば、ブクスの住民と積極的に報換もしてくれ!!」
『了解』
そう言うと、カークスさんは早速何人かを連れてブクスの門へと向かっていく。
野営地の警戒を任されたクライストのメンバーは気楽そうに談笑し、リラックスモードにっている。カークスさんはどうやら自分でいて積極的に報を集めるつもりの様だ。
「よし、上手く設置できたな。どれどれ……結構広いな」
そうこうしているにテントの設置も終わり、中にって気を抜く。
そこでふと武鮫に視線を向けると、結構損傷している事に初めて気づいた。
「あちゃー……。まぁ、無人兵相手に叩きつけてればこうなるわな」
ベルトを解除して武鮫を左腕から外し、損傷合を確かめる。
前腕部分にある幾つかの連なった裝甲板は幾つかが欠けていたりするし、拳の部分は僅かに歪んでいる。更には先程けた攻撃の所為だろう、全的に黒く焦げ付いていた。
幾ら鋼鉄製とは言え、元となったのはゴミ山の部品。そう無理は利かんと言う訳か……。
「うーん、けど無かったら無かったで凄く困るんだよなぁ」
何も纏ってない右腕を無人兵の部に突きれると、その勢いで切り傷を負いそうだし。
ってか、そもそも無人兵に対し接近戦思考で挑むのが間違ってるのか?
先程は運良く接近……いや、運悪くか? とにかく、あんな風に無人兵へと接近できる機會はそう多くは無い筈だ。
けどまぁ、無人兵に対しても俺の力が通じると検証できたのは思わぬ収穫だったな。
だからと言って調子に乗るのは危ういだろうが、あれ程の大を仕留める事ができたのは素直に嬉しい。
とりあえず、今日はもう武鮫は外しておくか。
「さてと……俺もし集落を見てくるかな。ラビィ、車両の近くで待機しててくれ。襲撃とか何らかの危機的狀況があれば、ラビィの自己判斷に任せる」
俺はテントから抜け出し、懐から車のキーを取り出しラビィにそう言って手渡す。
が、彼はそれをけ取りはしたものの、瞼を細めて小さく反論の言葉を返す。
「了解しました。ですが……単獨での未知のエリア捜索は危険だと進言します」
「え? いや、だけど報も集めたいし……」
かと言って、ラビィを連れまわして車両を放置するのも気が引ける。
もしもブクスを散策中に襲撃をけ、慌てて戻ってきたら既に車は大破してたってオチじゃ堪らんぞ。
「じゃ、じゃあ!! 私と一緒にブクスに行きませんか?!」
「ぅえ!? ふ、藤宮さん? 何時の間に……」
唐突に背後から奇襲をけ、盛大にどもりながら振り向けば藤宮さんが居た。
彼は此方の疑問の問いには答えず、早口で言葉を吐き出していく。
「さ、先程の借りもありますから、何かあったら私が木津君を全力で守ります!! フルトさん、それでいいですよね?!」
「貴方の戦闘力にし……いえ、かなりの不安はありますが……。沿矢様が承認なさるのであれば、ラビィは構いません」
「え? あ、じゃあ……し付き合ってもらってもいいですかね、藤宮さん」
「はい!! 一緒に報を集めましょう!!」
何か知らんが、そうなってしまった。
思わぬ展開に心首を捻ってしまうが、一人で寂しく新天地を歩き回るよりマシか。
その前に俺は車両の中へとってYF-6と無線機を手に取り、リュックの中に幾つかの缶詰を放り込む。
それと、7.62x51mm弾を余分に拝借してポーチの中に詰めておく。
里津さんの説明どおりならば、集落ではこうした弾薬や缶詰みたいな食料がボタ代わりの筈だ。
「待たせてすみません。それじゃ、行きましょうか」
「は、はい。行きましょう!! あ、無線機……私も持って移した方がいいのかな?」
「いや、一緒に行するならこれ一つで問題ないですよ。里菜さんとルザード先輩は來ないんでしょ? なら、彼達と連絡も取れる様にしておかないと」
「はい、二人は暫く休むそうです」
藤宮さんはチラリと自分達が設置したテントへと目線を向ける。
それを追って俺も視線を向けると、何故か里菜さんが眩い笑顔を浮かべながら親指を立てていた。
何だアレ? 『報集めは任せるぜ!!』って事かな? 幸いにも俺はそういうのは得意だ。
なんせ俺は、RPGで村人が同じテキストを繰り返す様になるまで話しかけるのを諦めないからな。
酷い時だとイベントが進む度に街へ戻ってテキストに変化が無いか確かめてたし。
里菜さんのエールを脳で解釈しつつ、俺と藤宮さんは橫並びになってブクスの門へと向かっていった。
- 連載中20 章
クリフエッジシリーズ第三部:「砲艦戦隊出撃せよ」
第1回HJネット小説大賞1次通過、第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作品の続編‼️ 銀河系ペルセウス腕にあるアルビオン王國は宿敵ゾンファ共和國により謀略を仕掛けられた。 新任の中尉であったクリフォードは敵の謀略により孤立した戦闘指揮所で見事に指揮を執り、二倍近い戦力の敵艦隊を撃破する。 この功績により殊勲十字勲章を受勲し、僅か六ヶ月で大尉に昇進した。 公私ともに充実した毎日を過ごしていたが、彼の知らぬところで様々な陰謀、謀略が行われようとしていた…… 平穏な時を過ごし、彼は少佐に昇進後、初めての指揮艦を手に入れた。それは“浮き砲臺”と揶揄される砲艦レディバード125號だった…… ゾンファは自由星系國家連合のヤシマに侵攻を開始した。 アルビオン王國はゾンファの野望を打ち砕くべく、艦隊を進発させる。その中にレディバードの姿もあった。 アルビオンとゾンファは覇権を競うべく、激しい艦隊戦を繰り広げる…… 登場人物(年齢はSE4517年7月1日時點) ・クリフォード・C・コリングウッド少佐:砲艦レディバード125號の艦長、23歳 ・バートラム・オーウェル大尉:同副長、31歳 ・マリカ・ヒュアード中尉:同戦術士兼情報士、25歳 ・ラッセル・ダルトン機関少尉:同機関長、48歳 ・ハワード・リンドグレーン大將:第3艦隊司令官、50歳 ・エルマー・マイヤーズ中佐:第4砲艦戦隊司令、33歳 ・グレン・サクストン大將:キャメロット防衛艦隊司令長官、53歳 ・アデル・ハース中將:同総參謀長、46歳 ・ジークフリード・エルフィンストーン大將:第9艦隊司令官、51歳 ・ウーサー・ノースブルック伯爵:財務卿、50歳 ・ヴィヴィアン:クリフォードの妻、21歳 ・リチャード・ジョン・コリングウッド男爵:クリフォードの父、46歳 (ゾンファ共和國) ・マオ・チーガイ上將:ジュンツェン方面軍司令長官、52歳 ・ティン・ユアン上將:ヤシマ方面軍司令長官、53歳 ・ティエン・シャオクアン:國家統一黨書記長、49歳 ・フー・シャオガン上將:元ジュンツェン方面軍司令長官、58歳 ・ホアン・ゴングゥル上將:ヤシマ解放艦隊司令官、53歳 ・フェイ・ツーロン準將:ジュンツェン防衛艦隊分艦隊司令 45歳 (ヤシマ) ・カズタダ・キムラ:キョクジツグループ會長、58歳 ・タロウ・サイトウ少將:ヤシマ防衛艦隊第二艦隊副司令官、45歳
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8 156 - 連載中6 章
サウスベリィの下で
罪深いほどに赤く染まった果実の下、人生に背を向けて破滅へと向かう青年小説家と彼の最愛の”姉”は再會する。古び、色褪せた裏庭にて語られる過去の忌々しい事件と、その赤色の記憶。封じられた蔵書の內奧より拾い上げた、心地よく秘密めいた悪夢幻想の手記。
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