《俺+UFO=崩壊世界》存在証明

俺達は既にブクスを離れ、次の集落へと向かって南下している最中だ。

昨日とは違って空は雲一つとして無い快晴である。

そのおか日差しが強くて熱気が渦巻いており、時折荒野の先に蜃気樓が見える時があるぞ。

昨夜は結構寒かったのに気溫の上がり幅が激しいな。

荒野の気象は砂漠に似ているのだろうか。

しかし、視界は良好だ。

隊商のトラックにもれは生じないし、雨も降ってないから昨日の様に泥にタイヤが嵌ったりもしない。

ただ、ベース・ウォーカーと遭遇するかもしれないと言う危険があるので油斷はできないな。とは言っても、山の様にデカイとの特徴がある敵だ。もし居たとしても遠目から直に視認できるだろう。

――pppppp……!!

PDAに設定しておいたコール音が車に鳴り響く。

無線の定期信の時間なので、無線機の電源をれる。

『各員、間もなくロード・キャッスルに到著する。今日はトラブルもなく、そろそろ気が抜けてきている頃かもしれないが最後まで集中する様に頼むぞ』

『あぁ、分かってるよ。しっかし、ここら辺はし建が殘ってるな。だからと言って探索したくはねぇがな。ハハハ』

そんな風にカークスさんの注意が飛んだが、軽く雑談が返ってくる反応を見るに効果は今一と言った所か。

だが、誰かが述べたその言葉通り、ここら辺では時折に前世界のビルや建がポツポツと見える。

地面にはコンクリート道路の名殘も僅かに殘ってたりするし、もしかしたらこの辺りは無人兵の攻撃をけて壊滅した街があったのかな?

しかし、ロード・キャッスルとは面白い名前をしてる集落だな。

ブクスとは違う外見をした場所なのかな? 今から見るのが楽しみだ。

とまぁ、俺もそんな風に若干気が抜けていた。

だが、その時であった。

遠く彼方に突如として黒いが霞める様に見えてくる。

ベース・ウォーカーの存在の懸念していた俺はまさかと思い、一瞬だけが固まりかける。

しかし、荷臺に居るラビィは何の反応を見せない。

つまりは……何の問題も無いと言う事だろうか。

一応警戒しながら車両を走らせていると、徐々にその姿がハッキリと見える様になってきた。

あれは……高速道路の立差點か? だとしたらかなりでかいかもしれない。

海外とかで良く目にする様な巨大なタービン型だろうか? それともクローバー型?

まぁ、適當に言ってみたが區別は著かない。何となくそんな種類があるってのは知ってるけども。

その浮かび上がった高速道路の下には、トラックが荷臺として使う大型のコンテナが散している。

一見すると打ち捨てられた様にも見えるのだが、それは妙に正しく並べられており……。

「……ん? 人が居る? あ、もしかして家代わりにしてんのか?」

前に屈む様にしながら視界を凝らすと、そのコンテナの周りには結構人が居る事を確認できた。

中にはブクスにあった様にキャンピングカーを家にしている人達もいるが、此処では大型のコンテナを家屋として使っている人のが多い様だ。

しかし、高速道路の下だけでも結構な數の住人が居る。

多分、上の方にも住人は居るのだろうが、だとしたら百人以上は軽く居るかもしれない。

そのまま考察をしながら高速道路に近づいていくと、高速道路の上では幾つか砲塔の様なが飛び出ているのに気づいた。

それだけならそんなに驚きはしないのだが、なんとその砲塔はしづつ橫にいていってる。

まさか戦車が巡回してる? いや、それとも大砲に車でも著けてかしてるだけなのだろうか?

その正を確かめ様にも、此処からじゃしばかり難しい。

高速道路自し行った所で崩れてたりして、どの車線も不安定ではある。

が、幸運にも立差として機能していた部分全は現存しており、そこを拠點とした集落の様だ。

此処の立差はとにかく巨大であり、幾つかの車線が差してできている建造だ。

近くに行くと威圧にも似た雰囲気をじてしまう。

なるほど、ロード・キャッスルとは確かにこの場所に相応しい名前だ。

隊商の車列を護衛したまま俺達はその真下にろうとしたが、その寸前で車列が停止する。

窓を開けてを乗り出して見れば、どうやら先頭で集落の人達からストップが掛かった様だ。

分証明でもしてるのかな? ブクスではそんなに時間が掛からなかったのだが、此処では嫌に時間が長い。

そのまま車で暫く時を過ごしていると、先頭から銃を攜えた守衛っぽい二名が歩いてきた。

彼等は此方に真っ直ぐと近づき、窓を叩いて開ける様に指示してくる。

チラリと周りを見渡せば、他の車両も同じ様な対応をけているのが見えた。

仕方なく、窓を開けて相手と顔を合わせる。

「ヤウラのハンターだそうだな? ライセンスを出してもらおうか」

「後ろのお前もだ。早くしろ」

とまぁ、しばかり高圧的な態度の二人だ。

此処で渋ってトラブルを起こす訳にもいかないし、素直に従ってライセンスを見せる。

「はい、これが俺のライセンスです。後ろの彼は……俺の同行者で、組合には所屬してないんです」

なんとなく、この人達にはラビィがヒューマノイドである事は伏せておこう。

要らぬ興味を惹いて時間を取られたら厄介だし。

「同行者だぁ? まぁいい……ふっ、確認した。おい、次に行くぞ」

オイコラ、その含み笑いは何だ。

畜生、俺のランクを見て馬鹿にしたな?

こうなってくると意地でもランクを上げてみたい気もするが……まずは借金の返済が先だ。我慢我慢。

ロード・キャッスルはブクスとは違って壁はないが、立差の高さを生かして多數の砲を上部に備えているみたいだな。

近づかれる前に倒すってスタイルなのか。

だとしても、ステルス型の様な相手だと危なくないかね?

それとも接近を判別できる機材とかあんのかな?

そんな事を考えていると、ようやく車列がゆっくりと進み始めた。

そのまま徐行を維持したままで立差の真下にり込み、直に停車する。

すると何としたか、周りからその様子を伺っていた集落の人々が直に隊商のトラックに群がる様にして集まってきた。

余りの勢いに唖然としてしまうが、こういうのは普通の事なのか?

言ってしまえば繁盛してるって事だもんな。

そんな風に戸いを覚えながら、一応トラブルが発生していないか無線機の電源をれてみる。

すると案の定、俺と同じ疑問を抱いていた各々が會話をわしていた。

『おい、カークス!! あいつ等を止めなくていいのか? し異常だぜ』

『私もそうは思うが、隊商の人達が無線に反応しない事を考えるとトラブルではないのだろう。見た所、略奪をけている訳でもない』

『で、でも一どうしたんでしょう? まるで、みんな飢えているみたい……』

藤宮さんのその呟きを聞いて、確かにそうかもと思い當たった。

隊商との渉が済み、人混みから離れた一人の男がその場で手にした缶詰をこじ開けて食っていたりもする。

まさに鬼と言った様な、鬼気迫る姿で無意識に唾を飲んでしまう。

「カークスさん。もしかしたら、これ……」

『ふむ、私も同じ考えが過ぎったよ』

俺が確認取るように無線で呟くと、カークスさんの強張った様な聲が返ってくる。

しかそ、そんな會話は無線機の電源をれている各々にも屆くわけで、直に他の人達が食いついてきた。

『何を話してるんです、リーダー? この狀況に心當たりがあるのですか?』

『……確証は無かったのだが、ブクスである報を耳にしていた。ベース・ウォーカーが南の地でうろついていたと言う、な。今の狀況を見ると、それは當たりかもしれない。南から訪れる來訪者が最近ヤウラにも來なくなった言う現狀もあるしな。恐らく、ベース・ウォーカーの存在がこの付近一帯の通を塞き止めているのだろう』

『ベース・ウォーカーだと!? カークス、お前そんな怪が居るかもしれないって報を俺達には黙ってたのかよ!?』

『……お前自が言ってるとおり、あくまで"かもしれない"との不確定報だったんだ。無闇に不安を煽るのは避けたかったんだよ』

コープが非難の聲を大きく上げるも、カークスさんは対照的に冷靜な態度で釈明した。

が、ベース・ウォーカーと言う驚異的な存在を耳にし、無線機からは皆の戸う様な聲がれてくる。

『き、機種は!? 判別できているんですか? リーダー!』

『馬鹿が、一番小さい奴でも全長が軽く百メートルは超える怪だぞ!? 俺達では手に負えん、火力不足だ!!』

『い、一旦ヤウラに戻って報告すべきでは?! 今南進するのは危険だろう!!』

ラビィの説明をけて薄々とベース・ウォーカーの脅威を分かっていたつもりでいたが、それは自惚れだったかもしれない。

今の様に同業者達の不安混じりの聲を聞いて、俺は初めてベース・ウォーカーが並大抵の敵ではないと確信できた。

『落ち著け!! まだ確証は得られていないと言っているだろう!! ……とりあえず、此処の住民達からも報をできるだけ集めるんだ。これからの行を考えるのはそれが済んでからだ』

カークスさんがそう言うと、暫くして各自から小さく了解の返事が聞こえてくる。

不味いな、みんなが浮き足立ち始めているのが俺でも分かる程だ。

こんな調子ではベース・ウォーカーどころか、そこ等辺の無人兵相手でも苦戦しそうだぞ。

カークスさんが報を黙っていたのは、コレを見越しての事でもあったのか。

とりあえず、此処はもう集落の中だ。

隊商からし離れた位置に車両をかし、停車させて降りる。

すると、俺からし離れた場所で停めた偵察戦闘車両からカークスさんが降りてきた。

彼は俺を視認すると一つ頷きを返し、真っ直ぐ歩いてくる。

「君の推測が正しい可能が出てきたな。この狀況では仕方ない、私はフィブリル殿にベース・ウォーカーの事を伝えてくるよ」

「え? でも、報を集めてからでも遅くは無いんじゃ……」

「とは言ってもな、さっきの會話は無線信で流れてしまった。隊商の誰かがかに聞いてたりしたかもしれん。ならば不審を抱かれる前に先に報告しておく必要がある」

「……そうですね。分かりました、俺はまた報を集めてきますんで」

「あぁ、気をつけてな。……見た所、ここの住民は隨分と殺気立っているからな」

そう言ってカークスさんは鋭い視線を周囲に向けた。

それに釣られて俺も周囲を見渡すと、何やらコソコソと此方を眺めながら會話をしてる輩が目にる。

こういう場所では完璧な自給自足が難しいのか、食料や水が不足してるのだろう。

だから通の便が途絶えた今、外部からの來訪者がそれ等を所持していないか目をらせてると言った所か。

一応周囲を確認するも、畑らしき場所や豚とか牛を飼育してる場所も小規模ながらあるにはあるんだが……。どうやら、ここの住民全てをそれで食わせていくには難しいのだろう。

ってか、豚とか牛ってこの世界で普通に居たんだな。

見た所は造形に異常もなく、奇形化もしてない。

以前食べた鶏に関しても味に異常はなかったし、何だか安心したぜ。

「ラビィ、すまないが此処で待機しててくれ。車両を放置するとヤバそうだからな」

そう命令するとラビィは不満気に目を細めた。

恐らく、俺の単獨行を快く思っていないのだろう。

そんな彼の分かりやすい反応に苦笑しながら続けて言葉を発する。

「大丈夫だ。また藤宮さんか、他の誰かに同行してもらうからさ」

「……その前に無線機をお忘れなく。沿矢様、どうかお気をつけて下さい」

ラビィの注意をけ、助手席から無線機を取り出して車両から離れる。

向かう先は藤宮さん達のテクニカルだ。

達も車両を停止させ、三人で周りを様子を伺いながら警戒している。

「どうも、何だか大変な事になってきましたね」

片手を上げながらそう言って話を振ると、まず真っ先に里菜さんが聲を上げた。

「大変と言うか、災難と言うか……。まさかベース・ウォーカーが話に絡んでくるとは思ってなかったよ」

「あの、木津君。ベース・ウォーカーの件はまさか……?」

藤宮さんはそう言って、確かめる様に聞いてくる。

俺はそれに頷きを返すと、軽く頭を下げて謝罪した。

「はい。トテさんの話がどうにも気になってラビィに確認してみたんです。そしたら山の様にデカイ無人兵が存在するって分かったですから、一応カークスさんに伝えておいたんです。黙っててすみません、あくまで仮定の話として考えてたもので……」

「ううん、謝らないで下さい。その考えに至らなかった私が未なんですから」

そうやって許しを得ていると、車両に寄りかかっていたルザード先輩が靜かに口を開く。

「とりあえず、今は報を集める必要があるな。木津もそのつもりなのだろう?」

「はい。けど、此処の雰囲気がし妙でしょう? だから、このまま一人で出歩くのは心細くて……良かったら、誰か同行してくれませんかね?」

「ハハハ、デートのい文句にしてはし弱気だな。この狀況下では、もうし強気の方がは安心するぞ?」

「へ? じ、じゃあ……し顔を貸せ、が居た方が男の口が軽くなるからな……な~んて!」

珍しく、ルザード先輩が冗談を口にするので俺も乗っかってみた。

すると彼は口角の端を持ち上げて愉快そうに笑う。

「ハハ、強気ではあるがへの気遣いが今一だぞ。まぁ、今はそれで十分か。シズ、クミ、私が木津と報を集めてきてもいいか? 昨日は一日中銃座に著いてたからな、気分転換がしたいんだ」

そう言って、ルザード先輩が二人に同意を求めた。

直に快諾の聲が返ってくるのかと思ったのだが、同意を求められた二人は微妙な表を浮かべている。

「……フェニル、一応確認するんだけど……昨晩の事は冗談だったんだよね?」

「何だ、まだ気にしてたのか? そうだと言っただろう、疑い深い奴だな」

「いや、それにしてはアンタの態度がやけに……ねぇ?」

里菜さんは渋い表を浮かべながら、何やらルザード先輩に不審の眼差しを向けている。

確かに、そう言われてみれば何時ものクールさとは違う気がする様な……。

何だろうか、爽やかさが増してるじがする。

「……分かった。二人とも、気をつけてね? 無線機の電源はずっと點けておくから、何かあったら連絡して」

「はい、それじゃ行きましょう。ルザード先輩」

「ん、そうだな。二人とも、なるべく早く戻るよ」

そのままルザード先輩と橫並びになり、集落を見て回る。

とは言っても、歩いてる場所は立差の高速道路の下だ。

上へ向かうにはし離れた所にある道路を登っていかないといけない。

「とりあえず、まずは下に住んでる人達に話を聞きましょうか。ベース・ウォーカーの目撃報を期待するなら、この上で見張りをしてた守衛の人達に話を伺った方がいいんでしょうが、そっちは後回しで……って、どうしました?」

話をしながらチラリと橫目を向けると、ルザード先輩が微笑みを浮かべていたので思わず言葉を中斷してしまった。

「いや、何。思えば、木津とこうして橫並びになったのはクースの時以來だなと思ってな」

「はははは、そうっすね。あの時は々と大変でしたが、何とかなりましたよね。ルザード先輩のおです」

あの時、ルザード先輩がキャンプに負傷者を運び込んできたおで、病院で何が起こってるのかが分かった。

言うなれば、彼のおで藤宮さん達を助け出せたんだよな。

更に言ってしまうと、ラビィとの出會う切欠を作り出してくれた事にもなるのか?

まぁ、その代償として百式と真正面から毆り合う破目になったが……。

「……前々から思っていたのだが、どうして私だけ先輩呼びなんだ? 組合に屬した時間で言うならば、シズやクミも木津より上だぞ?」

「え? あ、いや……最初はそう深い意味はなかったんですが。ルザード先輩はクースで廃病院に向かう人達に警告したり、負傷者を助けてたりしてたでしょ? それを見たり聞いたりして『ああ、この人は頼りになる』と思って……今では尊敬の念を込めてそう呼んでるじですかね。あ、でも他の人達を尊敬できないって訳ではないですよ?! 藤宮さんや里菜さんも、よくあの狀況で生き殘っていたと思いますし……」

「ふふ……そうか。だとしても、な。しばかり他人行儀で私は寂しいよ」

えぇ? そうかな? 俺は先輩呼びって好きだけどなぁ。ギャルゲーの後輩キャラって可いし。

これから花の高校生活が始まり、いずれは先輩呼びして俺を慕ってくれる後輩子に巡りあえたかも知れなかったのにUFOに拉致されたからな。

そう思うと宇宙生共にまた新たな怒りが浮かび上がってきてしまうが、マスター呼びしてくれる銀髪人に出會えたのだからチャラかもしんない。

「だから、な? 先輩呼びをするにしても、これからは名前の方で呼んでしい」

そう言うと、ルザード先輩は流し目で此方を見ながら様子を伺う。

対する俺は思わぬ提案にしだけ驚いてしまった。

「え、え? ルザードじゃなくて、フェニル先輩……で良いんですか? でも、俺は年下ですし……」

「組合に屬したでは、歳の差など何の意味も無いさ。大事なのはお互いに認め合えるかどうかだ。私は木津を認めている。君はどうだ……?」

そんなカッコイイ臺詞を言われたら、俺にはもうどうしようもない。

此処で斷りの選択肢を選ぶ奴は、ギャルゲーのBADENDを見たいだけの輩ぐらいだろう。

「勿論、俺も認めていますよ。それじゃ……フェニル先輩、これからもよろしくお願いします。俺の事も、これからは名前で呼んでください」

「ああ、分かった。ソウヤ、此方こそよろしく頼むぞ」

フェニル先輩は笑顔を浮かべながら右手を差し出してくる。

この世界に來てからという、あまり握手に良い思い出が無い俺はしビビッてしまうが、何とか此方も右手を差し出す。

らかく手を摑む俺とは対照的に彼は力強く手を握り締め、軽く上下に揺らす。

「よし、それでは行こうか。あまり二人を待たせると私がどやされる」

「ハハハ、仲が良さそうでいいじゃないですか。ラビィも良い子なんですが、やっぱりジョーク類にはあんまり反応してくれなくて……」

殺伐とした周りの雰囲気を他所に、俺とフェニル先輩は和やかに會話をしながら歩み進めた。

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

「そうですか、ベース・ウォーカーが……。ところで、ベース・ウォーカーって何か分かるかしら? ニルソン」

カークスからベース・ウォーカーの件を報告されたミル・T・フィブリルは、隣で顔を青くし始めた付き人であるニルソンにそう尋ねた。

尋ねられたニルソン本人は驚愕の余り目を見開き、先程とは違って瞬時に顔を赤く染め上げながら大聲を出す。

「え、えぇ!? し、知らないんですか?! ベース・ウォーカーですよ?!」

「貴方、馬鹿? 知ってたら尋ねないでしょ」

ミルはそう言って呆れ顔を浮かばせたが、呆れたいのはこっちだとニルソンは心中で吼えた。

「ベース・ウォーカーはその名の通り、無人兵達のく基地そのなんです!! しかも、厄介な相手になるとその部に小規模なプラントと製造工場を構えている型もあって、素材さえあれば無人兵達の修理、整備は勿論の事、新たに製造もできるんですよ!! つまり、奴等の破壊活の過程で幾つもの都市や集落を壊滅させる度にダメージをけたとしても直に回復できるし、下手をすれば搭載している無人兵を増やす事も可能なんです!!」

鬼気迫るニルソンの説明をけ、數秒の時を要して徐々にミルはその表を驚愕の形にかしていく。

「まぁ!! そんな危険な無人兵が存在しているの!? 大変じゃない!!」

「そうですよ!! しかも、素材さえあれば整備や修理ができるベース・ウォーカーの護衛に就いている兵達は、荒野を彷徨っている奴等と違って萬全な狀態なんですよ!! つまりはフルスペックでく事ができるから、桁違いの戦闘力を誇ります!! だから、大変どころの話じゃないんですよぉ~~!!」

そう、ベースウォーカーの真価は無人兵達のスペックをフルに発揮させる環境を整えている事だ。

普段ハンター達が荒野で戦う無人兵達は前世界での激戦を生き殘り、その後も數世紀の時を戦い続けた"老兵"である。

搭載する弾薬は壊れた同士から貰いけ、損傷したパーツも同士から抜き取りつつ、継ぎ接ぎだらけので何とか生き抜いてきたのだ。

そんな狀態では本來のスペックを発揮できる訳もなく、全盛期には程遠い。

そもそもとして言うならば、"そんな狀態"の相手に対してですら今の人類は苦戦しているのだ。

その事を考えると、前世界での戦爭が如何に激しく、絶的だったのか容易に想像できる。

ベース・ウォーカー直屬の護衛、並びに搭載された無人兵達がいわば"真の無人兵"と言える存在かも知れない。

各地で時折現れては桁違いのきを発揮して多數のハンター達を屠り、組合に賞金を掛けられて"ネームド付き"となった無人兵は、何らかの理由でベース・ウォーカーから離れた固ではないのかと噂されている事からも、護衛無人兵の戦闘力の高さが伺える。

「ニルソン殿の言う通り、ベース・ウォーカーは大変な脅威です。フィブリル殿、私は恥ずかしながら斷言します。もしもベース・ウォーカーと遭遇した場合、我々は貴方達を守りきれないでしょう。いえ……恐らく全滅します」

真剣な表でカークスがそう告げると、ミルの顔もそこでようやく青く染まり始める。

それはその周囲で話を聞いていた隊商の運転手や私兵達も例外とはならず、誰もが蒼白していた。

「でででで、ですが。私はお父様……いや、會長から此度の隊商を任されたのです。こ、此処で引く訳には……!」

勇ましくそう言ってのけたミルではあったが、引けない理由を持っているのは彼だけだ。

大金で雇われて此処まで危険な旅路に付き合ってきた運転手や私兵達も、流石にそんな自殺行為に付き合うのは免だと口を開く。

「フィブリル隊長、もう十分でしょう?! 幸運にもブクスと此処で荷の大半は売りさばけました! そりゃ……今引いたらバハラの組合所に出していた依頼が破棄され、違反金を支払う必要がありますが、それを帳消しにできるだけの稼ぎは十分にあります!!」

「そうですよ!! ベース・ウォーカー相手じゃ會長も責めませんよ。仕方の無い事です。何でしたら、俺達も會長に説明しますから!!」

自らの命が掛かっているのだ、各々がミルを説得する様子は鬼気迫るであった。

だが、それは間違いではない。

フィブリル會長の狙いは隊商の功の有無ではなく、あくまでミルに経験を積ませる為のである。例え何らかのトラブルで荷が全て失われようとも、ミルが無事に帰ってくればそれでいいのだ。

が、そんな親心を知らぬは子の定め。

ミルは焦る表を浮かべて必死に説得してくる従業員、並びに私兵達を見て沸々と反骨神が沸いてきた。

何故に誰一人として自分の意見に同調する者は居ないのか? 形だけでもそうしてくれれば良いのに。我がを可がるあまり、指揮を執る私をし空ろにしすぎであるだろう。

これまで甘やかされ、豪華な生活を過ごしてきたミルのそんな悪い癖が出てきてしまう。

「……とりあえず、進退の有無はまだ保留とします。カークスさん、何もベース・ウォーカーが本當に存在していると言う証拠はないのでしょう?」

「えぇ、今は皆に此処で報を集める様にとお願いしたばかりです。ハッキリとした報はまだ摑めていません」

「よろしいですわ。でしたら……暫く待ちの一手です。皆もよろしいですわね?」

ギロリと擬音が響きそうな程に鋭い目付きを輝かせ、ミルは従業員や私兵達を睨んだ。

有無を言わせない彼のその態度に思わず怯んでしまい、各々は口を閉じてしまう。

どうやら思わぬ所で大商人の娘であるミルの筋の力が発揮されてしまった様だ。

――頼むから、ベース・ウォーカーの存在を証明する報が出てきてくれ。

そんな風に皆の心中で思いが重なってしまったが、それも無理はないと言うだろう。

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