《俺+UFO=崩壊世界》一番褒められた日
「んあ……ほぁ!?」
目覚めてすぐ、俺は違和を覚えた。
まず頭が凄くらかい何かに包まれている。
次にをかそうとして、かない。
いや、正確には"かしたくない"と言った方が正しいのか。
し顔をかして上を向くと、ラビィが真紅の瞳を瞼で細めながら俺を眺めていた。
彼の顔が見える事から考えると、俺の頭の位置はどうやら彼の元にあるらしい。
どうやら違和を覚えたのは、彼が俺を抱きしめる様にしているからだ。
しかも、今回の抱き締めはテントで寢泊りしていた時とは破壊力が段違いだ。
何故なら俺は寢袋を使用せず、そのまま寢ているからだ。
更に言うと俺はラビィの真上に乗る様にして彼に抱きしめられてる。
つまりとして言うと、かなりヤバイ。
絵面的にもそうだし、男の生理現象的にもヤバイ。
「ら、ラビィ。おはよう」
「はい、おはようございます」
ニッコリと、らかな笑みを浮かべてラビィは答える。
その際にむにゅんとしたが俺の顔を包んで、非常に気持ちいい。
「まさかずっと……抱きしめてた?」
「はい。8時間と34分21秒、22秒程。この勢を継続してます」
「そ、そう……ふーん」
確かに一緒に寢たいとは言ったけどさ、これは予想外だ。
何が予想外って、この心地よさかな。
仄かに香る特有の匂い、らかな、れ合うから伝わる微弱な熱。
そのどれもが俺とは縁の無いモノであり、強烈だ。
ヤバイ……嵌りそう。ってか、理的に嵌ってるからね、今。
このままでは危うく理が蒸発してしまう。
俺はこの心地よさに抗い、悲痛な決斷を下す。
「も、もう起きるよ。ありがとな、ラビィ」
「………………………………はい」
何故か數秒ほど沈黙してから、ラビィは俺を解放した。
その瞬間に俺は素早くリングから降りるプロレスラーの如く橫に転がり、彼の上から退くと同時にベッドからも降りた。
「ふぅ……」
々と危なかった。
心臓の悸との巡りがえらい事になってる。
昨日使用したSBナノマシンの高揚すら凌ぐ破壊力があった。
自の気持ちを落ち著けつつ、大きく背びをする。
その際に香る鉄の臭いに気付き、咄嗟に表を歪めてしまう。
近くにあった鏡を覗くと、頬や髪や首元にこびり付く返りがまだ殘っているのが分かった。
「うへぇ……まだ拭き殘しがあった。しかも完全に乾いてるし、風呂でもらないととれんぞ、これは」
カリカリと爪で引っ掻くも、そう簡単には取れない。
そもそも朝から寢起きでそんな単純作業をしたくもないわ。
「沿矢様、ラビィが拭き取りましょうか?」
「えぇ? けど、水も布も無いぞ? 他所様の家だし、勝手にそこ等のを借りる訳にもいかないだろ」
俺達の荷はまだ倉庫にあるテクニカルに積まれたままだ。
昨日は全てが終わると直に就寢する事を選んだからな。
「大丈夫です、ラビィにお任せを。さぁ、此方へ」
自信満々にラビィがそう告げると、僅かに期待してしまう。
彼にはセンサーやら脳波測定機能等、俺を驚かせた機能が幾つも備わっている。
つまり、今回も新たな機能を披してくれるに違いない。
俺は心ワクワクしながら彼に近寄り、ベッドに腰掛けた。
すると次の瞬間、ラビィは俺の顎をそっと自然にらかく摑んだ。
「では、失禮します」
「あの、ラビィ? ラビ……ラビィさん!? えぇ!?」
俺の頬に水気を帯びた何かがれた。
そしてそれは顔を寄せたラビィから突き出ている。
らかなきをし、何処か妖艶にも思えるそれは朝日の輝きを浴び、僅かに帯びた水気を輝かせていた。
簡単に言うと、舌である。
俺は今、ラビィに舐められて返りを拭き取られているのだ。
「いやいやいや!! アナログすぎるだろ!?」
もっとこう……何? 口から高圧で洗浄水が発されるとかあるだろ。
いや、やっぱり嫌だわ。ラビィにそんなんされたらショックで寢込みそう。
「ご安心を、ラビィに臓されている水分は浄化された真水です。ですから汚れを拭き取るのに適しています。……んっ」
耳元近くで、ラビィが僅かに息を吐いた。
俺はゾクゾクっとを震わせ、全のが滾るのをじてしまう。
そうやって膠著していると今度は首元付近を舐められ、思わずが跳ねそうになる。
(いかん、いかんぞこれは。もう何が起きてもおかしくないし、何かを起こしてしまいそうだ。既に一部は起きてるしな!!)
なんて低レベルな下ネタを思っている場合ではない。
このままでは、俺はラビィを……!!
『ソウヤ君? 起きてる? 藤宮です』
「ふへぇ!? あ、はいはい! 起きてますよ!!」
突如、部屋の外から藤宮さんの聲が聞こえてきたので、俺は思わずラビィを咄嗟に引き剝がした。
「沿矢様……」
何処か憮然とするラビィを目に、俺は大慌てで服のれを直す。
しかし、この狀態で藤宮さんと真っ向から対峙できない、主に俺の間の所為で。
仕方なく、俺はドアを開けるとしだけ顔を覗かせた。
「お、おはようございます。藤宮さん、寢れました?」
「うん、何とか……。あれ、ソウヤ君……?」
ふと、藤宮さんは眉を顰めた。
次に彼は俺の頬に手をばし、其処にゆっくりと指を這わせる。
「もしかして、泣い……てた?」
「……泣く? え? あッ……!」
瞬間、先程のラビィの行為が雷鳴の如く脳裏を過ぎる。
恐らく藤宮さんはラビィが舐めた跡を、俺が涙を流した跡と勘違いしているのだ。
「いや、あのぉ……。これは、違うんですよ」
否定の言葉の口にして、俺は口篭る。
俺は馬鹿か? この後どうすんだよ? こう言えってか?
――これ? これは昨晩浴びた罪の結晶を、銀髪の天使に舐め取らせてたのさ(微笑
とでも言うのか? 馬鹿か!! 何処のサイコパスだよ!! ジャ○ーズ顔でしか許されない臺詞だぞ!? いや、ジャニー○本人でも駄目だわ!!
心の混が凄まじく、暫く沈黙してしまった。
そうこうしているに藤宮さんは表を歪め、何故か彼自が泣きそうになっている。
「ごめんね……。ごめんなさい、ソウヤ君。私、君を傷付けたよね……」
「はっ!? え?! いや、傷付けたって言うか、寧ろ昨晩は俺が沢山傷付けたと言うか……はい」
傷付けるを通り越して、殺害してるけどな。
しかし、思ったより罪の意識は薄い。
そもそも奴等がした行いが非道すぎるってのもあって、俺の倫理観はあまりダメージをけてないらしい。
取りあえず俺は彼をめるべく、何とか間を沈めてからドアを開けて真正面から向き合う。
「藤宮さん、俺は大丈夫です。昨晩の戦闘では銃で被弾もしてないし、よく寢れたので力も回復しました」
「違うの、そうじゃなくて……」
『木津!! おい、居るかぁ!?』
と、その時外から俺を呼ぶ誰かの聲が聞こえてきた。
俺は一旦藤宮さんに斷りをれると、部屋に戻って窓を開ける。
すると道路にポツンと一人、コープが佇んでいる。
奴は俺がこの周辺の建に寢泊りしていると誰かに聞いたのだろう。
だが、どうやら詳しい位置までは知らなかったみたいで、暫くキョロキョロと周囲を眺めている。
俺が何となく寒さに耐える奴を無言で二十秒程眺めていると、ようやく視線がかち合った。
すると奴は片手を振り上げて怒りをにした。
『てめ……! 居るなら返事しろや!! 何を無表で眺めてんだ!!』
「あぁ? だったらちゃんと『昨晩、俺をHAの攻撃から庇ってくれた格好良い木津は居るか!?』って呼べや!! 別人かと思うだろうが!!」
『どういう判別方法だ、馬鹿だろテメェ!?』
心底呆れたと言わんばかりの表でコープは吼える。
対する俺はニヤニヤと笑みを浮かべながら言葉を返す。
「それで? 何の用だ? 態々と俺を起こしに來る程、俺が好きになったか? いやー困るなぁ。けど、ハグくらいならしてやるぞ?」
『……誰がテメェを起こしになんぞ來るか!! カークスが皆を集めてる! 準備が出來次第、テメェも來い!! 集合場所は倉庫だ!! 早く來いよ!!』
「おう、ご苦労じゃった。もう帰ってよいぞ」
『神視點か!? 偉そうにしてんじゃねぇ! ったく……』
「……律儀だなぁ」
態々と此方の煽りに答えてくる辺り、アイツにも中々のセンスが備わってる。
俺はそのまま奴を見送ると、窓を閉めて藤宮さんの元へ向かおう……として部屋の異変に気付く。
「ラビィ……? 何処行った?」
何時の間にか、ラビィは部屋から消えていた。
首を傾げながら部屋から出ると、リビングのテーブルにラビィと藤宮さんが向かい合って座っていた。
「ラビィさん~! 私はもう駄目だぁ、駄目なんだよぉ……!」
「すみませんが、何を言いたいのか理解できません。ちゃんと言葉を発して下さい」
「だからねぇ、私はソウヤ君を……あ」
と、其処で藤宮さんとバッチリ視線が合う。
彼はボッと火が出るかの様に顔を赤くし、ゆっくりと頭を下げる。
「ご、ごめんね。聞いてた?」
「……駄目駄目騒いでましたね。大丈夫、藤宮さんは駄目なんかじゃありませんよ」
「ぅう……また気を使わせたぁ! 私はやっぱり駄目だぁ!!」
その後、俺は何とか藤宮さんを落ち著かせ、彼とラビィを連れて倉庫へと向かう事となる。
朝日を浴びたテラノの街の様子は酷い有様だ。
ホテルに居た敵兵は八十人ちょっとだったらしいが、その他は外に居た。
倉庫を制圧した事と街の人達が反旗を翻した事で戦況は大分有利に傾いたらしいが、流石に無で解放とまではいかなかったらしい。
所々に刻まれた真新しい銃痕との乾いた跡、崩れた建、放置された無法者の死。
すれ違う街の人達にしたって解放された喜びに浸る人は疎らで、本當に疲れ切った表で會釈する人の方が多い。
『にしても、昨晩はよく勝てたな』
『やっぱりカークス隊長とバスク副長は流石だよな。昨晩の指示は見事だった』
『いやいや、それもそうだが、やっぱあの二人が……』
到著がし遅れたが、まだ全員が揃った訳では無い様だ。
倉庫の前にはクルイストの人達がポツポツと集い、會話をしている
彼等は到著した俺に気付いて此方に向き直り、笑みを浮かべながら話し掛けてきた。
「よぉ、"ストーム"!! 昨晩はよくやった!!」
「噂に違わぬ暴れっぷりだったらしいじゃねぇか!! ラウルの奴等から聞いたぞ!!」
「お前とフルトはヤウラの新星だ! これからも同郷のよしみで頑張ろうぜ」
「……ど、どうも」
思わぬ歓迎をけ、俺はし戸う。
クルイストの面々と最初に會った時とはえらい違いだし、それも無理はない。
だが、昨晩バスクにも述べたとおり、俺達はこのピンチを切り抜けた戦友だ。
そんな彼等から褒められるのは一人の人間、いや、男として嬉しくない筈がない。
「ストーム! 今度一緒に飲もうや! 奢ってやる!!」
「ははは……ところでその呼び方は……?」
俺は地球を防衛する隊員になった覚えはないぞ。
そんな俺の心が伝わる筈も無く、彼等は気な態度を崩さない。
「お前の二つ名だろうが。何だ、それともフィストの方がいいか?」
「絶対にやめろぃ! ストームでお願いしやす……」
フィスト呼びとか、どこぞのAV男優か俺は。
定まりつつある俺の呼び名に対し、思わず溜め息をじえない。
場が盛り上がるとクルイストの一人が俺の肩を摑み、皆に向かって大聲を上げた。
「"我等が嵐"に敬意を表しよう! こいつはきっとあの紅姫も超える!! 俺がそう保証するぞ!!」
『我等が嵐に!!』
「…………うへへぇ」
とは言うものの、やっぱ褒められるとどうしても嬉しい。
これで何処ぞのが俺に惚れて、キスの一つでもしてくれたら完璧なんだが……。
暫く騒いでいると、里菜さんとフェニル先輩がやって來るのが見えた。
彼達は此方に手を翳しながら近寄ってくると、しい表で挨拶をくれた。
「よっ、木津。やけに人気者だね。まぁ、昨日の事を思えばそれも無理はないだろうけどさ」
「そうだな……。改めて禮を言うよ。ソウヤ、本當にありがとう」
「いえ、そんな……。それに昨晩の勝利は皆の協力もあってこそですから。藤宮さん達も、よく持ち堪えてくれました」
ラビィや彼達がホテル上層で攻撃をけていた事は、警備室を襲撃した際に分かっていた。
だからと言ってどうしようもなく、ただ先を急ぐ事しかできなかったあの時の焦燥は忘れられない。
「それこそ完全にラビィのおだね。彼が居なければ、あたし達は何も出來なかった」
「……部屋から出する時の案はどうかと思ったがな。どこぞの馬鹿は演技に熱がりすぎたし」
フェニル先輩がそう愚癡ると、真っ先にラビィが反応した。
「あの配役に貴方を選んだのは理由があります、ルザード。まず第一に貴方達のプロポーションです。藤宮は全的なバランスは良いですが、それは逆に特化した場所がない事を意味しています。続けて里菜は部の発達合が良かったのですが、異を刺激する場所としては絵面的に地味。ともすれば、三人の中で一番の部を有していた貴方が……」
「な、なななななな何を言ってるんだ!? ラビィ! 勝手に人の的特徴をばらすな!!」
フェニル先輩は大慌てでラビィの肩に摑み掛かり、その言葉を止める。
周囲を見れば、里菜さんも藤宮さんも顔を真っ赤にして反応を示していた。
彼達は一、どんな手段を用いて出したのか?
これは大いに興味をそそられる事案である。
後學の為、ラビィに後でこっそり教えてもらうしかないな。うん!!
そんな風に興を高めていると、一臺のテクニカルが向かってきた。
その車両は倉庫の前で停車し、中からカークスさんと何人かのクルイストメンバーが降りてくる。
「呼び出したのに遅れてすまない、言い訳をすれば足の包帯を取り替えててね。だが、気分は最高だ。昨晩の勝利は私の……いや、私達全員の生涯の中で最も誇れる勝利となった! 諸君、そうだろう?!」
『応!!』
「うむ、良い返事だ! とりあえず、倉庫の中で話そう。此処だとし寒いからな」
現れるなり、さっそく彼は男連中の士気を高めていく。
ああいう振る舞いがリーダーには必要な素質の一つなのだろうか、なくとも今の俺にはそれはできそうもない。
俺達はゾロゾロと倉庫の中に足を運び、各自好きな位置に立ったり座ったりして分かれる。
表には居なかったコープ達が既に中にっており、倉庫の一角に陣取っていた。
全員が中にるとカークスさんは周囲を眺め、次に表を引き締めると悲痛な聲で語り掛けてくる。
「テラノは解放された。されはしたが……この街はもう以前とは違う。食料の殆どは無法者に食い盡くされ、殘った食料も一週間後には無くなる。男の殆ども殺された為、街の防衛力も大きく低下した。無人兵が攻めてくれば、殘った者達で撃破するどころか、撃退できるかも怪しい」
その言葉は、勝利で浮かれていた俺達の気持ちに冷や水を浴びせるだった。
気付けば誰もが顔を歪め、心に沸いてきた苦い気持ちを隠すことなく表している。
「昨晩、街の人達と私は今後の事で話し合った。その結果……此処に住む人達はこの街を放棄する事にした」
次の瞬間、倉庫の彼方此方から驚きの聲が上がる。
『放棄だって!?』
『苦労して此処を解放したってのにか!?』
『街の奴等はどうやって生きる気なんだ?』
「靜まれ!! 聞け、いいから聞くんだ!! 頼む!」
困した皆をカークスさんが宥めようとしたが、それは暫く収まらなかった。
何とか場を沈めた彼は、疲れた様に息を吐いて続きを話す。
「……私はある依頼を……違うな。ただのお願いとして其処で彼達に頼まれた。それはこの街の人達を全員、ヤウラへと送り屆けてしいとの願いをだ」
それを聞いて誰もが驚きのにわされる中、真っ先に聲を上げた者が居た。
「おいおい! カークス! テメェ何を勝手に……それにヤウラだと!? 此処からだとバハラの方が近いじゃねぇか!! 街の奴等に都市の保護をけさせるなら、バハラを目指すべきだろうが!!」
『確かにそうだ、數百も居る街の人達を連れて此処からヤウラまでなんて無理があるぞ……』
『それにお願いって……要するに無償でって事か? それは流石に……』
大聲を上げたのはコープだ。
彼のその意見に賛同するかの様に、幾人かが続けて聲を上げるか、首を縦に振った。
カークスさんはそんな意見に答える様に瞼を閉じ、ゆっくりと頷きを返す。
「バハラを目指す事は私も同意見だった。事実、私も最初はそう勧めた。だが、バハラは都市部ではあるが、ヤウラと比べると小規模だ。故に有するプラントの數も大きな差がある。其処に數百人の難民が流れ込むともなれば、良い顔はされん。仮にけれたとしてもだ、その換條件として子供達が軍に労働力として徴集される危険もあると、街の人達は難を示してな。それに……私にもある考えが浮かんだんだ。そしてそれはヤウラでしか実行できない」
「徴集が嫌だぁ!? ヤウラだってそうだろうが!! 十數年前に三船がやった徴兵活を忘れたのか!?」
コープがそうぶも、カークスさんは腕を真橫に振り払ってその言葉を吹き飛ばす様に言い返す。
「そう、十數年前の事だ!! 今のヤウラはもう違う、宮本市長は外居住區の住民との歩み寄りを積極的に行っているではないか!!」
「あぁ、そうかもな!? けど、昨今ではこんな事件も起きたよな。軍の佐が壊し屋を雇って教會の子供達を狙ったあの事件だよ! 市長が代わっても、軍部の腐敗は殘ってるじゃねぇか!!」
すると途端にその事件に関わっていた俺にも注目が集まるが、此方としては片手を上げるくらいの反応しか見せられない。
そうこうしている間にもカークスさんの話は続く。
「そう、だから奴等はその事件で起きた軍部への悪いイメージを払拭しようと今は必死だ!! そこで我々がこの街の人達の保護を要請すれば、奴等は喜んで手を貸す筈に違いない!! 特に今の市長はその手の活で票を集めるタイプだしな。この件を報告すれば、軍がいてこの街の人達の保護に來てくれる可能は高いと、私はそう睨んでるんだ」
「しかし、それは推測に過ぎないだろ? コープが言う様な懸念も、アタシは無視できないけどね」
里菜さんが橫からそう口を挾む。
それに対しても、カークスさんは気を悪くする事はなく賛同の意を飛ばす。
「無論、そうだ。私が語ったのはあくまで推測に過ぎない。しかし、仮に子供達が徴兵されるとしてもヤウラは軍事基地と都市が合わさってできた巨大な一型の都市だ。開いた住居スペースなど幾らでもある。數百人の難民をスムーズにけれるとしたら、今の荒廃時代ではヤウラは実に最適な都市だと言える。バハラだと最悪、街の外でテントで暮らす事を強要される事も有り得るだろう。折角助けた人達を、最後まで責任を持って助けたいと願うのは私だけだろうか? 皆はどうだ?」
そう問い掛ける様に語りかけたカークスさんに対し、皆は黙って考えに浸る。
無論、俺もその一人だ。
それに何より、俺はまず気掛かりな事がある。
とりあえず、手を上げてまずそれを聞いてみよう。
「あの~……フィブリルさん達の依頼はどうするんです?」
「無論、完遂する。まずは彼達をバハラへと送り屆け、其処から行するつもりだ」
『その必要はございませんわ』
突如、倉庫に新たな人影が現れた。
り口に目を向けると、腕を組んでフィブリルさんが仁王立ちしている。
彼は皆の注目を集めると満足そうに微笑み、優雅な足取りで中にってきた。
「人が悪いですわ、カークスさん。その様な"儲け話"を私に黙っているとは……」
「フィブリル殿! いや、これは……儲け話?」
カークスさんは突然の思わぬ來訪者に驚くが、続けて疑問を言葉に表す。
フィブリルさんはそんな彼の様子を見て愉快そうに笑みを強くし、自の頬に手を當てながら口を開く。
「今回の事件は大きな悲劇ですわ。一つの集落が無法者に占領され、多くの人命が失われた。この悲劇は、恐らく遙か先の荒野まで語り継がれるでしょう。ともなれば……フィブリル商會がその生存者達の援助を手伝えば、私達商會の名も大きく広がりますわ!」
「フィブリル殿、それは……」
その言葉を聞いて眉を顰めるカークスさん。
だが、フィブリルさんはそんな彼に真っ向から向き合い、彼に向かって指をピンと向けた。
「ですから、半端な支援は行いません! 我々は街の人達がヤウラに到著した後、彼達が自立した生活を取れる様に指導できる人員を送り、その援助を行います! それが宣伝費の代わりですわ」
そう言い切った彼の頬には、僅かな赤みが差していた。
要するにだ、フィブリルさんもテラノの人達を助けたいだけなのだ。
ただ、そう言うのが恥ずかしくて儲け話などと口にしたのだろう。
それがカークスさんにも分かったのだろう。
彼は徐々に笑顔を浮かべ、最後に瞼を押さえる様にしながら頭を下げる。
「フィブリル殿、非禮を詫びます。私は貴方を誤解する所でした」
「誤解も何も……その通りですわ。私はフィブリル商會の為にくのです。とりあえず、バハラへ行くのは中斷します。バハラの組合所には後日、非禮を詫びる手紙と違約金のボタを送ればいいでしょう」
フィブリルさんが此方に協力してくれるのならば、一気にカークスさんの案に現実味が出てくる。
すると倉庫の中は當然として、これからどうくかの話題に自然とシフトしていく。
「ともすれば……誰かをヤウラに向かわせないといけないな」
「だが、俺達のストライカーはもう無いぞ。テクニカルはあるが、先導する役目としては向いてない。先頭を走る車両は盾の役目も擔っているからな」
「だからと言って、ヤウラに送る為の戦力はそう多くは割けないぞ」
「そうだな、テラノを防衛できる戦力は今現在俺達しか居ないんだ。街の人達は男連中を失って無人兵と戦える知識や技も、そして何よりその気力も殆ど失ったんだ」
そうワイワイと議題が持ち上がる中、藤宮さんだけが憂う様な表をしていた。
俺には彼等みたいに語れる知識も無いし、とりあえず彼を気遣う事にする。
「どうしました、藤宮さん? 何か心配事でも?」
「うん……。メアはバハラのハンターなんです。けど、この狀況じゃ彼を送り屆ける暇も無さそうで……」
なるほど、流石は藤宮さん。
彼は街の人達だけではなく、助けたあのの事も気遣っていたのか。
俺はそんな彼を安心させようと、考えを纏めながら口を開く。
「なるほど……。じゃあ、彼もヤウラに連れて行きましょうよ。そして後日、送迎トラックに乗せて……いや、彼もハンターでしたか? じゃあ、テクニカルで送迎トラックを追従して探索地に向かい、其処で會うバハラの送迎班に保護を任せたらどうです? 多分、ヤウラとバハラで同じ探索日の探索地ぐらいあるでしょうし」
メアがハンターなら、恐らく彼の車両もこの倉庫にある筈だ。
ヤウラまで著いて來るなら、そう問題ではない。
「そう、だね……! うん、そうしよう! ソウヤ君って思考がだね! 私ったら、此処からどうやって帰そうかばかりを考えてて……」
「ははは! そうでしょう! この思考のさが俺を今まで助けてきましからね!!」
基本、俺は搦め手で勝利するタイプだからな。
昨晩だってゾルダートを裝著していた奴が落とした容、それが奴の強さだと俺は直ぐに直した。流石に使用法までは分からなかったので隠し持っていたが、奴が早速とそれを使用しようとしたので助かった。
戦いの中では冷靜さが必要だ。
あのまま愚直に戦い続けてたら、恐らく負けてたのは俺だろう。
そんな風に昨晩の行を思い返していると、議題が新たな展開へ向かい始めていた。
それに気付けたのは、近くに居たカークスさんとバスクの會話が自然と耳に飛んでくるからだ。
「隊長どうします? ヤウラに向かわせる部隊をどう編しますか?」
「……皆の言うとおり、あまり多くは割けない。それはテラノの大きさが枷となっているからだ。東西南北に置く戦力と度、それを考えれば我々は三十人程の人員しか居ないのだからな。慎重にらざるを得ない……」
確かに、この街は元は探索地でもあった為に広い。
そこを萬全に防衛するとすれば、至難の業だろう。
「街のに武を持たせても、援護すら怪しいです。昨晩は俺達が矢面に立ってたし、相手は既に士気が崩壊した無法者でしたので、それで十分でしたが……。しかし、流石に無人兵が相手となると厳しいです」
「ふむ、そうか……」
「幸運なのはレーザー砲が殘っている事と、充填されているパワーがそれなりに殘っている點です。しかし、それ一本で凌げるほど無人兵は甘くは無い。それに他に高火力な武と言えばテクニカルに搭載された武と、扱いが難しい無導弾のロケット砲ぐらいです。殆どしか居ない街の人達には到底扱えないばかりですよ」
バスクの言い方としては、街の人達を戦力と認める事ができないらしい。
確かに無法者と違って戦いに特化した無人兵が相手では、素人ではまず太刀打ちできないだろうし、弾薬の無駄になるだけだろう。
「とりあえず防衛の話は置いておくとして、助けを求める案をどうにかしよう。まず此処からヤウラまで直線距離で行くとしても七百キロ以上はある、故に何処かで無人兵と遭遇する危険はかなり高いだろう。高火力武も持たずに數戦力で向かえば全滅もあり得るし、高火力武を減らせばそれだけテラノ防衛も難しくなる……」
「困ったな……。ベース・ウォーカーの投影の所為で、警戒して誰かが通りかかる可能も低いでしょうし……。マックスめ、死んでも憎い奴だ」
そう言って唸り聲を上げるバスクとカークスさん。
すると彼等は不意に此方を見て、表を和らげる。
そしてそのの一人であるカークスさんはそのまま此方に歩み寄ってくると、なんと俺の意見を尋ねてきた。
「木津君、君は何か意見は無いか? 歳若いからと言って、もう遠慮は必要ないぞ? 昨晩の戦いで、皆の信頼を君は完全に勝ち取ったのだからな」
「ぅえ!? あーいや~……そうですねぇ」
突然話を振られても、俺に案などある訳もない。
だが、俺の傍らに立つ藤宮さんは俺に期待を浮かばせた視線を向けている。
くそ、先程彼の前で『な思考が~』とか格好付けたばかりだからなぁ!!
これは無殘な所を見せられん、どうにかしなければ……!
俺はとりあえず腕を組み、それらしい事を口にしながら考えを始める。
「そもそもですね、ヤウラまで向かうってのが目標になってるのがどうかと思います」
「ふむ? どういう事だい?」
「つまり、俺達の今の目的は此処で起きた出來事をヤウラ軍に伝え、テラノ住民の保護をヤウラ軍にお願いする事です。けれど、今のテラノを放置して俺達はく事ができない。くとしても、街を防衛する戦力を多く殘し、助けを求める為の數鋭の部隊を結する必要があります」
あれ? 言ってて思ったが、今の狀況だと俺とラビィがその數に含まれないか?
ええぃ、だからと言って今更話を止められない、続けていくぞ!!
「よく考えてみてください。ヤウラ軍は何も都市部だけに存在してはいません。組合所に所屬する俺達はそれを知ってます。それは……そう! 彼等の中には探索地に赴く任を請け負った人達が居る!そして俺達が今居る場所から彼等に接するとしたら何処が一番近いのか? だから、それを考えるとですね……」
知恵熱でどうにかなりそうな程に脳を回転させ、俺は思い付いた事をただ口にする。
しかし、其処でようやくカークスさんが大聲を上げ、俺がぶっ倒れる前に救ってくれた。
「――なるほど、探索地に居る送迎班か!! バスク!! 此処から一番近い探索地は何処だ!?」
カークスさんの指示をけ、バスクは素早く懐からPDAを取り出して作する。
「待って下さい……!! よし、北東に約百二十キロの地點に廃工場都市『クラスク』があります!! 日程表を見ると……彼等は二日前に到著してる!! 探索期間は一週間を予定です!!」
それを聞くと、カークスさんは両手を挙げる勢いで歓喜の聲を上げた。
「やったぞ!! 重傷者でも出てない限り、彼等は其処に留まっている筈だ。木津君、ナイスアイデアだ!! その距離までなら數でも無事に辿り著ける可能は高い!! 其処で送迎班に事を話し、彼等と共にヤウラへと戻れば道中の危険も大幅になくなる!!」
「は、ははは……お役に立てて幸いです。ハイ」
はぁ~……危なかった。
直前に藤宮さんと送迎班がどうとか話してたから何とかその思考に至ったが、普通なら絶対に無理だったぞ。
しかし、そうとは知らないラビィは俺を大げさに褒め稱える。
「沿矢様……見事な作戦を立案しましたね。貴方に仕える従者として、ラビィはとても誇らしいです」
「確かに、傍から聞いてても目から鱗だったぞ。何故ソレを思い付かなかったのかと、自分を叱咤した程だ」
「木津は流石だね! やっぱ、アンタは頼りになる良い男だよ! 本當!」
続けて、フェニル先輩と里菜さんもそう褒めてくれた。
「いや、そんな……。ただの咄嗟の思い付きですから」
多分、今日が今まで生きてきた中で一番褒められた日に違いない。
俺はただ頬を赤く染めながら、そう返事をするだけで一杯だった。
【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです
俺には五人の姉がいる。一人は信仰を集める聖女、一人は一騎當千の女騎士、一人は真理を求める賢者、一人は人々の魂震わす蕓術家、一人は國をも動かす大商人。才知に優れ美貌にも恵まれた彼女たちは、誰からも愛される存在だったのだが――俺にだけ見せるその本性は最悪だった。無能な弟として、毎日のように姉たちから罵詈雑言の嵐を受け続けてきた俺。だがある日、とうとう我慢の限界を迎えてしまう。 「とにかく、俺はこの家を出るから。もう決めたんだ」 こうして家を出た俺は、辺境の都市で冒険者となった。こうして始めた新生活で気づく。あれ、俺ってもしかして超有能……!? 実力を評価され、どんどん出世を重ねていく俺。無能と呼ばれ続けた男の逆転劇が、いま始まった! ※GA文庫様より書籍化が決定、1~5巻まで発売中!
8 126【書籍化】初戀の人との晴れの日に令嬢は裏切りを知る〜拗らせ公爵は愛を乞う〜
一人目の婚約者から婚約破棄され、もう結婚はできないであろうと思っていた所に幼い頃から憧れていた王國騎士団団長であるレオン=レグルス公爵に求婚されたティツィアーノ(ティツィ)=サルヴィリオ。 しかし、レオン=レグルス公爵との結婚式當日、彼に戀人がいる事を聞いてしまう。 更に、この結婚自體が、「お前のような戦で剣を振り回すような野猿と結婚などしたくない。」と、その他諸々の暴言と言いがかりをつけ、婚約破棄を言い渡して來た元婚約者のアントニオ皇子の工作による物だった事を知る。 この結婚に愛がないことを知ったティツィアーノはある行動に出た。 國境を守るサルヴィリオ辺境伯の娘として、幼い頃からダンスや刺繍などではなく剣を持って育った、令嬢らしからぬ令嬢と、戀をしたことのないハイスペック公爵の勘違いが勘違いを呼び、誤解とすれ違いで空回りする両片思いのドタバタラブコメディです。 ※ティツィアーノと、レオン視點で物語が進んでいきます。 ※ざまぁはおまけ程度ですので、ご了承ください。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ 8/7、8/8 日間ランキング(異世界戀愛)にて5位と表紙入りすることが出來ました。 読んでいただいた皆様に本當に感謝です。 ✳︎✳︎✳︎ 『書籍化』が決まりました。 ひとえに読んでくださった皆様、応援してくださった皆様のおかげです! ありがとうございます! 詳しい情報はまた後日お伝えできるようになったら掲載致します!! 本當にありがとうございました…
8 190俺と彼女と小宇宙とが織り成す宇宙人とのラブコメ
俺、菅原月兎(すがはらつきと)は転校した日にラブレター貰って、宇宙に拉致られる。 この物語の一人一人が他とはちょっと違う歪な愛を持っている。 月兎の自己愛。 マリスの全愛。 エマの純愛。 麗兎、玲浮兎の偏愛。 カリーナの敬愛・・・等々。 そんな彼、彼女達は人とは違う愛を抱えながらも自分の信じる物を必死に守り通す。 本作はそんなハイテンションSFファンタジーです。 *この作品は小説家になろうでも投稿しています
8 1353分小説
一話完結の短編集です。
8 143複垢調査官 飛騨亜禮
某IT企業に勤務する《複垢調査官》飛騨亜禮と、巨大小説投稿サイトの運営スタッフの神楽舞とが繰り広げるドタバタコメディミステリー。 第二章では、新キャラの坂本マリアとメガネ君も活躍します。 第三章ではネット小説投稿サイト三國志的な話になってます。 第四章 僕の彼女はアンドロイド 少年ライトとアンドロイド<エリィ>の物語。ベーシックインカムとかアンドロイドが働いて家族を養ってくれる近未來のお話です。 第五章 複垢調査官 飛騨亜禮2 TOKOYO DRIVE(複垢狩りゲーム) 『刀剣ロボットバトルパラダイス』に実裝された<TOKOYO DRIVE>の謎を巡って展開する異世界バトル。 http://ncode.syosetu.com/n6925dc/ 第六章 《複垢調査官》飛騨亜禮の華麗なる帰還 《複垢調査官》飛騨亜禮が新ネット小説投稿サイトの調査に赴く。彼はそこで想像超えた恐るべき小説たちと出會うことになる。 第七章 AIヒューマン 「複垢調査官 飛騨亜禮」は第四章〜六章が未完になってますが、まあ、人工知能✕VALUの小説を書いてみようと思います。 複垢調査官 飛騨亜禮 https://kakuyomu.jp/works/4852201425154917720 書きたい時が書き時ということで、第四章なども書きながら完結させていきたいですね。 第四、五、六、七章は同時更新中です。 ほのぼのとした作品を目指します。
8 153糞ジジイにチートもらったので時を忘れ8000年スローライフを送っていたら、神様扱いされてた件
糞ジジイこと、神様にチート能力をもらった主人公は、異世界に転生し、スローライフを送ることにした。 時を忘れて趣味に打ち込み1000年、2000年と過ぎていく… 主人公が知らないところで歴史は動いている ▼本作は異世界のんびりコメディーです。 ただしほのぼの感はひと時もありません。 狂気の世界に降り立った主人公はスローライフを送りながら自身もまたその狂気に飲まれて行く… ほぼ全話に微グロシーンがあります。 異世界のんびりダークファンタジーコメディー系の作品となっております。 "主人公が無雙してハーレム作るだけなんてもう見たくない!" 狂気のスローライフが今ここに幕を開ける!! (※描くのが怠くなって一話で終わってました。すみません。 再開もクソもありませんが、ポイントつけている人がいるみたいなので書きたいなと思っています) 注意 この物語は必ずしも主人公中心というわけではありません。 グロシーンや特殊な考え方をする登場人物が多數登場します。 鬱展開は"作者的には"ありません。あるとすればグロ展開ですが、コメディー要素満載なのでスラスラ読めると思います。 ★のつく話には挿絵がついています。 申し訳程度の挿絵です 一章 0〜5年 二章6〜70年 三章70〜1160年 四章1000前後〜1160年 五章1180〜(996年を神聖歴0年とする) 《予定》五章 勇者召喚編、ただ今制作中です ●挿絵が上手く表示されないトラブルも起きていますが、運営が改善して下さらないので放置してあります。 気になった方いたら、本當に申し訳ございませんと、今ここで謝罪されて頂きます● 【なろうオンリーの作品です】 【この作品は無斷転載不可です】
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