《俺+UFO=崩壊世界》崩壊の足音

『此処で待機して下さい。弁護士への連絡は今現在不可能です。通信が回復すれば此方から連絡しますので、連絡先を教えてください』

「……ベンゴシなんざ知らねぇよ。とっとと失せろ」

『弁護士の要請は無し。ならば警察組織への引渡しとなりますが、今現在連絡が取れません。通信が回復次第通報し、貴方達を移送する手続きになります。それまで待機して下さい』

「勝手に言ってろ……ブリキが」

ダッシュはそう舌打ちし、牢獄へと足を踏みれた。

その後に続いてミノルが押し込まれ、鍵を閉められる。

彼等が収監されたのはオーソドックスな鉄格子が嵌められた部屋だ。

一つの大広間に幾つかの通路と牢屋が並び、その合間をガードが巡回している。

ミノル達が足を踏みれたその牢屋は、夥しい數の白骨で埋め盡くされていた。足の踏み場すらもなく、ダッシュとミノルはその場に立ち盡くして息を飲む事しかできない。明確な死の形が雪が降り積もるが如く殘っているのだから、それも無理はないだろう。

「これが投降した奴等の末路か……。まぁ、想像通りではあるな」

「すまない、皆。でも……生きていればどうにかなるさ」

警報が鳴った際、當然として彼等は混した。

何時もならばその場に息を潛めて警備をやり過ごすか、安全な場所へ移するかを瞬時に判斷しただろう。

しかし、仲間であるロングが居なくなっていたのならば、どうする事もできない。見張りをしていた雙子の姉妹はロングを止めなかった罪悪からか、探しに行こうとした。だが、それを止めさせようと他の仲間が説得していたのだが……その結果、外から近付いてきていたFG型の足音を聞き逃してしまったのである。

り口を押さえられる形となり、彼等は逃げ場を失った。

タルパーを使えば確かに迎撃できるが、一機に見つかった時點で周囲のFG型に通信され、居場所は既にばれている。 増援を避ける為には見つかる前か、見つかった直後に奇襲でAIを一撃で打ち抜くしか無かったのだが、それはもう無理だった。

一度戦闘を開始してしまえば、戦闘モードにったFG型相手に降伏はできない。

苦渋の決斷を強いられ、ミノルは暫く悩んだが……他から迫るFG型の足音を捉え、最後には降伏を選んだのだった。その後はガードに囲まれ、こうして収監フロアに移送される流れと相った。

「でも、良かった……。こっちにはロングが居ないよ! そっちはどう!?」

ダッシュとミノルが居る反対側の牢から、ミレイがそう伝えてくる。

はブックと共に牢に押し込まれており、不安そうな面持ちでミノルを眺めていた。

「こっちにも居ねぇぞ。ツインズはどうだ?」

『……居ないよ! そもそもロングが居たら、私達の會話を聞いて返事してるでしょ……』

『ごめんね、皆! 私達の所為で……』

他の二組よりし遠くの位置に収監されたイチとラン。

達はその聲に暗さをえており、罪悪を表していた。

「二人とも謝る必要はない。リーダーとして気を抜いた僕が悪かったんだ……」

「リーダー、貴方とミレイに休む様に勧めたのは僕です。その理屈で言うなら責められるのは僕ですよ」

「ブック……すまない。そんなつもりじゃ無かったんだ」

こんな狀況下でも、まず彼等は互いに気遣ってめあった。

ダッシュは白骨を蹴散らして端にどけ、ドッと勢いよく腰を下ろす。

「なんにせよ、ロングが此処に居ないのは良い事だ! きっとアイツなら助けを呼んできてくれる! 俺達はのんびり待とうや!」

「助けに……來てくれるのかな? 來たとしても、此処の警備は……」

ミレイは顔を青ざめながら、牢から外を見回した。

収監フロアの広さは大きく、そして其処を巡回するFG型もその大きさに比例して多い。

それだけならまだしも、その中には明らかなリーダー格が混じっていた。

他のFG型とは違ってその機は左肩部にガトリング砲を備え付け、背部にはそこから排出されるであろう弾薬を攜えたバックパックを背負っている。悠然と周囲を眺める様に首を回しながら、その機はフロアの片隅に陣取っていた。

ブックはそのリーダー格を眺めながら、冷や汗を流す。

「FG型133式……あれは拙いですね、百式の中でも厄介な指揮タイプです。あの一機が居るだけで周囲のFG型の連攜は遙かに向上します」

「ご丁寧な説明どうも。泣けてくるぜ……」

仲間を元気付けようと聲を上げたのに、ブックの説明でそれが無と化した。

ダッシュは溜め息を零し、遂には寢転がって宙を見上げる。

と、その時である。

収監フロアの扉が開く音が聞こえ、それと同時に何か不自然な音が聞こえてきた。

――ズッ、ズズッ。

ダッシュ達は腰を上げ、鉄格子に近寄ってり口の方を確認しようとする。

しかし、そこまで必死になる必要もなかった様だ。

何故ならすぐに"それは"FG型によって運ばれてきたからだ。

「マジかよ……」

「酷い……」

鉄格子の向こう側で、幾つかのスカベンジャーの死がFG型の手によって引き摺られていた。

よくよく見れば通路の彼方此方に乾いたの跡が見えて、彼等はを震わせる。

「あの人達は……昨日確か七階で出會ったよな?」

「あぁ、俺達に態々と『このフロアには何もないぞ』と教えてくれたハタシロの奴等だ。まぁ、俺達はそれを信じなかったけどな……」

その死の顔に見覚えのあったミノルがダッシュに尋ねると、答えが返ってきた。

つまり、彼等が警報に引っ掛かった人達なのだろうか?

それとも自分達の様にガードに発見され、抵抗もむなしく散ったのか、今となってはもう分からない。

は別の部屋へと運ばれていき、見えなくなった。

しかし、香る鉄の匂いと通路に描かれた真新しい痕が、先程の景が幻でない事をキッチリと伝えてくる。

『あたし達……死ぬのかな? 怖いよ、お姉ちゃん……』

『……大丈夫、大丈夫だから』

遂にはランが泣き出し、悲壯な雰囲気が漂う。

ミノルはその泣き聲から意識を反らすかの様に牢の中を見回し、白骨を掻き分け始めた。

「何か……何かないか?! ダッシュ、君も何かないかを探してくれ!」

「リーダー……お前のそういう所は素直にすげぇとは思う。けどよ……牢から抜け出てもあの數のFG型をどうにかするのは無理だ。だから誰かが來るまで待つしかない」

「だけど……!!」

渋るミノルを無視し、ダッシュは大聲を上げた。

「いいか、お前等!! 今俺達の希はロングが助けを呼んできてくれる可能だけだ!! 無駄な行は控え、できるだけ力を溫存しろ!!」

「ダッシュ、そんな他力本願な事を……!」

「それしかねぇだろ!? いい加減現実を見ろ!! リーダー、これは本來お前がしなければいけない事なんだぞ!!」

仮にもチームで最年長者であるダッシュ。

そんな彼の言葉は重みがあり、何よりこの狀況下では一番理に葉っていた。

ミノルは悲痛に顔を歪め、項垂れる。

その様子を眺めていたミレイも心を痛め、彼も悲嘆に暮れた。

ブックはそんな彼に近寄ると、その両肩に優しく背後から手を置く。

「ミレイ、貴方も休んでください。ほら、僕が白骨を退けましから……あそこで寢たらどうですか?」

「ありがとう、ブック。だけど、こんな狀況で寢るなんて……」

「こんな狀況だからです。ダッシュさんの言う事は正しい、今は力を溫存するべきです」

「……そう、だね。はは、これじゃ副長なんて呼べな……い?」

ミレイは其処で違和を覚えた。

その違和が何か分からず、彼が頭を悩ませているとブックが再度話し掛けてくる。

「どうしました? "ミレイ"、貴方はやっぱり疲れてるんですよ」

「……大丈夫、まだし起きてるから」

違和の正に気付き、ミレイは表を強張らせた。

今までは"副長"としか呼ばなかったブックが、自分を名前で呼んでいるのだ。

無論、ミレイとしては今更仲間である彼に名前で呼ばれる事など気にしない。

しかしだ。何故、どうして、このタイミングでそうしたのか?

自分をめる為? ブックは穏やかな気を持つ男だ、確かにその可能は高いが……。

チラリと、自分の両肩に乗せられたブックの手にミレイは視線を向ける。

今までこの様なスキンシップを彼がするのを、彼は見た事がなかった。

それは陣に対してだけではなく、男陣に対してもだ。

自分の考え過ぎだろうか? いや、そうに違いない。だけど、もし他に理由があるのならば……。

「み、ミノル! 貴方も休んで! 貴方が元気じゃないと、私や皆が落ち込んじゃうよ!!」

ミレイはその考えに至ると咄嗟に立ち上がり、ブックの手から強引に逃れた。

反対側の牢に居たミノルはそんな人の不自然な振る舞いには気付かず、笑みを浮かべる。

「ミレイ……。そうだね、僕がしっかりしないと……! よし、とりあえずし休もう。今日は一日中探索してたから、疲れを癒さないと」

「そうそう! その通りだ! 皆も休め休め! もし出のチャンスが來てもヘバってたら失敗しちまうぞ!」

『……そうだね、希は持たないと。さぁ、妹よ。久しぶりにお姉ちゃんが膝枕しちゃうぞ~?』

『ひっく……お姉ちゃんの膝って付きが良くないから痛いんだよぉ……』

『この拳骨で痛め付けられるよりマシでしょ? いいから來なさい、ね……?』

『……うん』

各々が、力を溫存しようとき出す。

しかし、ミレイだけは鉄格子の傍でずっとかない。

そのまま暫く時を過ごしていると、背後からブックが聲を掛けてくる。

「ミレイ、寢てください。リーダーもそう言ってたでしょ?」

「……先に寢てていいよ。私はもうし……ッ!?」

再度、ミレイの肩にブックの手が乗せられた。

しかし、今度は握る様にして小さく力が込められ、彼の肩が僅かな痛みを訴える。

「駄目です。貴方は見張ってないと意地を張ってずっとそうしてそうですから……ね? 大人しく寢てください」

其処で初めてミレイはブックに恐怖を覚え、今更ながらに彼が"男"である事を自覚した。

ウララカに迫る崩壊の足音は靜かに、だが著実に近付いている――。

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俺達はとりあえず、警報が解除されるまで長のお姉さんの仲間が居た場所で休む事にした。

その際に彼は仲間が置いていった裝備を手に取り、ラビィに差し出してくる。

「これを使って。YF-6も良い銃だけれど、FG型を相手するにはしきついわ」

「タルパーFRGですか。しかもレイルバレルとコンデンサーを裝備している……。ふむ、充電もバッチリですね。予備の弾やコンデンサーは?」

「えっと、し待って。確か予備は……」

ラビィは遠慮なくそれをけ取ると、彼に殘弾數を尋ねる。

お姉さんは周囲を見渡し、袋の中を漁っていく。

俺はふと、どうして銃が回収されてないのかをラビィに尋ねた。

クースではこういう武が回収され、保管されていた筈だ。

「恐らく、それはガードが証拠として殘したからでしょう。ここはプラントによる製造施設であり、警備は此処までの道中を振り返れば分かる通り、厳重です。そんな施設に侵者が忍び込めたとすれば相手は優秀な工作員か、他國企業に雇われたエージェントでしょうからね」

「証拠?」

「はい。本當の一流が相手なら見つかると同時に自殺も有り得ますからね。相手が何を狙ってきたのか? 破壊工作が目的だったのか? しでも何かが判明すれば捜査は助かりますし、僅かな報が手にるならそれに越した事はないですから、ガードには現場を荒らさない様にとのプログラムが組み込まれているのでしょう。もっとも、世界が崩壊した今となっては無駄な行為ですが……」

「ほへ~……なるほどなぁ。俺には分かんない世界の話だ」

前世界のトリビアにそう関心していると、お姉さんがようやく目的のを抱えてやってきた。

「予備の弾は二十発、コンデンサーは四つあるわ」

「弾もコンデンサーも丁度使い切れる數ですね。素晴らしい」

「ラビィ、お前がタルパーを使用してくれ。この中で一番撃が上手いのはお前だ。戦果に期待するぞ」

「はい、お任せください」

「とは言っても、戦わないで済むならそれが一番なんだが……」

差し出されたタルパーをラビィに持つ様に指示し、彼は弾とコンデンサーをけ取る。

殘りは長のお姉さんが持ち、彼もタルパーを構えて準備萬端といったじだ。

はチラリと俺を見ると、困した口振りで尋ねてくる。

「君は……そのM5が重くないの?」

「全く重くないです。俺に関して流れてる噂は全て事実と思ってくれて結構ですよ。俺は生でHAクラスの膂力を有してます」

「な……なんて言ったらいいのか……。じゃあ、二人の人と自墮落な活を送っているって噂も……?」

のお姉さんは顔を青くし、肩を抱きしめる様にしながら背後に後ずさって尋ねてくる。

俺はすぐに首を橫に振り、それに否定の意を返す。

「すみません、五秒前の発言は取り消します。何も信じないで下さい。あえて言うなら、俺を信じて下さい。俺は無実です……!!」

ふざけやがって、そんな生活が送れるなら苦労せんわ。

こちとら自墮落どころか自我が崩壊しそうな程に忙しいんだよ!!

ってか、何処からそんな噂が流れた?

まさか田中さんか? あの人、ノーラさんの件で里津さんが吐いた噓を他人に話しちゃったのかな?

そう心で憤慨と困を織りぜていると、長のお姉さんはクスッと笑みを零す。

「大丈夫、君を信じるわ。さっきだって助けてもらったしね……。遅くなったけど、ありがとう」

「いえいえ、困った時には何とやらです」

「それと……ごめんなさい、自己紹介がまだだったわね。私はララ・バノン、仲間からはロングって呼ばれてるわ」

「ロング……。あぁ、なるほど」

確かに、彼にピッタリな呼び名だ。

何せロングさんはラビィの長すら超える程なのだから。

「本當にありがとう。さっきの戦闘でも貴方達に任せっきりで……自分がけないわ」

「いえ、俺がそうお願いしてましたし……。それに仲間とはぐれてたんじゃ、揺して戦闘どころではなかったでしょう?」

「……はぐれた訳じゃないの。私は自分の都合で彼等からし離れてて……その所為で……ッ」

と、其処でまたロングさんは涙を浮かべ始める。

俺は慌てて立ち上がり、そんな彼に近付いてめを試みた。

「大丈夫、大丈夫です! 此処で戦闘した様子がないって事は彼等が生きているって証であり、それは間違いないんですから! 要は助けてしまえばいいだけなんですよ!! 人間ミスは當たり前です。けれど、だからと言って諦めたら駄目です。それを挽回する為の努力が何より重要なんです。だから頑張りましょう! ね?」

に泣かれるのはとても心臓に悪い。

それにこの狀況では彼を相手できるのは俺だけだし、放置なんぞ論外だ。

ラビィにめる様に命令しても碌な事にならなそうだし、そもそもそんなけない行は男としてNGである。

そう思いつつ慌てた口振りで何とかめたが、逆にそんな俺の様子に毒気を抜かれたのか、ロングさんは小さく笑う。

「……ふふ、君は隨分と前向きなのね。私とは大違い」

「そうでしょ~? 何せ俺は二百萬以上の借金を背負い、クラスもG-、だけど元気です! 何故なら前向きでないとやってらんないっすから! あははは……!」

自分で言ってて落ち込みそうになったわ。危ない危ない。

しかし、ロングさんを勇気付ける事は功した様だ。

は驚きつつも、苦笑しながら尋ねてくる。

「に、二百萬の借金?! はは、凄い……それも本當だったんだね。一何があったの?」

「いや~それを話せば長いんですがね? 興味があるなら、暇潰しがてらに聞いて下さい……」

警報が鳴り止むまでの間、俺はこれまで起きた出來事をロングさんに語った。

は興味津々でその話に食いる。

驚き、笑い、悲しみ、戸い、怒り。

様々なを見せながら、彼は話に付き合ってくれた。

そして話は昨日起きたテラノの出來事にまで及び、俺はPDAの映像を見せながら話を終える。

「見ての通り、これが昨日起こった出來事です。そして俺達はテラノを維持できなくなった住民達を助けるべく、それをヤウラへ伝えなきゃいけない。ですが、テラノは男の人を多く失って防衛も満足にできない。だから戦力の大半を殘し、俺とHopeの人達だけで此処に來ました。此処の送迎班に事を伝え、一緒に帰る事でヤウラへと安全に辿り著く為に……ってのが、まぁ今までの流れです」

南側の勢はマックスが行ったベース・ウォーカーの投影の件で悪化している。

存在しない脅威を警戒し、南方都市のバハラのハンター達が狩りを積極的に行っていないであろうからだ。

その所為でここ等を徘徊する無人兵の數と勢いを増している事は、ロード・キャッスルや道中での護衛戦闘で確認している。

だからこそ、こうしてクラスクの送迎班を頼りに安全策を講じてヤウラまで戻ろうとしているのだ。俺やHopeの面々だけで無理にヤウラを目指し、無人兵と戦闘を繰り広げた際に死亡とまではいかなくても、車両にダメージをけて足止めでもされれば、その時點でテラノに居る數百人の人達の命も共に潰える危険があるのだ。それを思えば、どう考えても慎重にく必要があった。

――とは言えど、こうしてクラスクで新たなトラブルに巻き込まれるとは予想外だったが……。

そんな心を覆い隠しながら、俺はロングさんの反応を待つ。

「そっか、だから君は私達を迎えにたった二人で……。何だかなぁ……」

ロングさんは話を聞き終えると、真上を向いて憂鬱そうに息を吐いた。

俺はPDAを懐にれながら、どうしたのか尋ねる。

すると彼は呆れた様に噴出し、頬を赤く染めながら恥ずかしそうに語りだす。

「いや、ね? 私……ついさっきまで自分がこの世界で一番不幸なんだ~って思ってた。けど、そんな訳ないよね。私はただ、自分に酔って悲劇を演じてただけなんだ……。そしてそれが皆に迷を掛けた……」

「ロングさん……」

的なその言葉を聞いて思わず心配して聲を掛けると、彼は大丈夫と笑い返しながら言う。

「けど、此処でウジウジしてたらまた同じ事を繰り返しちゃうわよね? だから……もう悩まない。私は絶対に仲間を助けだすわ。そう、絶対に」

「その意気です! 俺やラビィも力を貸します。絶対にウララカの人達を助けますから、一緒に頑張りましょうね」

大きく右手を振り上げて決意を表した彼に賛同する様に、俺も右手を翳して見せた。

すると彼はそんな俺の手に彼の掲げた手を合わせてハイタッチし、小さく微笑みながら頷く。

「……うん、お願いします。ソウヤ君」

「沿矢様、警報が鳴り止みましたよ。どうしますか?」

と、其処で警報の赤いが止んだ。

俺は一つ気合をれると、裝備を確認して立ち上がる。

「よし、行こうか……。ラビィ、十階では恐らく戦を避けられない可能が高い。その場合どんな激戦になるかは分からないが、もしかしたら俺とお前が別行になる場合もある。もしそうなったら自分の判斷でいていい。要はテラノの時と同じだ」

當初の目的、戦闘せずにウララカの人達を連れ戻すと言う目的は既に葉いそうにない。

故に、ラビィに新たな命令を下し、この後何が起きてもいい様に準備を整える。

「了解しました」

「ただし、だ。もし俺と別行になった場合にウララカのメンバーと一緒だった場合、彼等を救う事を第一にしてくれ。必要なら、彼等だけでも連れて出しろ。俺が居なくてもだ」

「――沿矢様を置いて、ですか?」

ラビィは不満げに眉を顰めたが、俺は強く頷いて諭す。

「狀況にもよるが、必要ならそうしてくれ。いいか、ラビィ? 全滅だけは絶対に許されないんだ。そして此処から素早く撤退するにはラビィのセンサーが必要不可欠だ。だからお前だけは失えない、分かるよな?」

施設からの素早い出を第一目標とするならば、ラビィのセンサーは必要不可欠だ。

俺では敵の位置やトラップを見分けられない。

俺やラビィの帰還が遅くなれば、藤宮さん達はきっと限界まで待つだろう。

しかし、それではテラノの食糧が持たない。

何としてもせめて明日までには帰路に就く必要がある。

そしてそれをし遂げるには、ラビィが一番適しているのだ。

もし最悪の事態が起きて俺とウララカメンバーだけが生き殘ったとしても、此処から出するのにどれだけの時間を要するかは分からんが、ラビィ程に素早く行う事はまず無理だろう。

故に、ラビィと言う存在を失う事態や、それを容認してしまう様な危険だけは避けねばならない。

それがたとえ俺を救う為だったとしてもだ。

俺のを抜きにして考えても、今の狀況ではそうせざるを得ないのだ。

故に、ラビィには無茶しない様にとの念を強く押す。

「いいか、ラビィ。此処を抜けるまでは自の生存を第一に考えろ、俺は二の次でいい。……分かったか?」

「……了解、しました……」

ラビィは俯き、そう聲を絞り出す様にして命令を諾した。

その様子が余りにも痛ましくて、俺は驚いてしまう。

は本當に機械なのか? 今まで何度も自問した、そんな考えすらまた脳裏を過ぎる。

「うわぁ……」

その様子を橫で見ていたロングさんは特に驚いたのか、そんな聲をらしながらラビィから目を離せない様だ。俺から見てもそうなのだから、他人から見れば相當な驚きなのだろう。

「沿矢様、お願いです。どうか無理はなさらないで下さい……」

「あぁ、気を付ける。今のはあくまで最悪を想定しての命令だ。もし安全に事が進みそうなら、迷わずそうするって。大丈夫、俺とお前が組んでるんだぞ? もし何かあったとしても、生半可な事ではビクともしないって」

これは純粋に俺の自信でもある。

今の俺は新たに芽生えた覚があるし、その有用は先程の戦闘で証明された。

それにロングさんが用意してくれたタルパーはレイルガンの機能も備えている、これなら並外れた撃能力を有するラビィの戦力を更に増大してくれる。近接戦は俺で、遠距離はラビィ、サポートとしてロングさんも同行してくれる。ここまで考えればそう不安にはならない。

「…………はい」

しかし、そんな俺の自信の程を見ても気分は晴れないのか、明らかに気落ちした様子でラビィは頷く。

この子は何処まで進化するのだろうか?

その進化を見屆ける為にも、俺は死ねないな。

そんなフラグを立てつつ、靜かに息を零しながら口を開く。

「よし、行こう。ラビィ、先導を頼む」

「はい」

頬を叩いて気合をれ、俺達は靜かな足取りで歩き出した。

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