《星の見守り人》008 遭難船の探索
「こちら探査隊エダジマ、調査の結果、特に問題は無いようなので、これからスタイン、ハルナ両隊員と共に部に侵します」
その言葉をけて副長のナタリーが改めて全般的な指示を出す。
「注意して進むように、亜人探査艇はその船の詳細をさらに探査、小型戦闘機は周囲を警戒、小型醫療艇はそのまま待機」
こういった場合、何が起こるかわからないので、本船は決して1時、すなわちの速度でも1時間以には近づかないのが基本だ。
最悪、何かの罠で近づいたら発したり、そうでなくとも何か仕掛けがしてあるかも知れないからだ。
「了解」
エアロックを開け、中に進するエダジマとスタインとハルナの3人。
「真っ暗だ、明かりをつけて行きましょう」
「了解」
肩についている広域ライトを點燈する3人。
途端に周囲が明るくなり室を見回す。
「まずは制室に行こう、この上のはずだ」
「了解」
3人が階段を上り、制室にたどり著く。
「しかし狹いわねえ・・・天井も低いし・・・ここは艦橋?」
「艦橋と言うよりは縦室だな、ただしこの船の制はすべてここでやっているがね」
確かにその場所は艦橋というよりは々広い縦室というじだった。
「こちらエダジマ、船に酸素はありますが、照明もなく補助電源のみがいている様子です。
現在、縦室ですが、誰もいません。
これから船室の方を調べます」
縦室の後方にあるドアを開けて船室に向かう3人。
開けた通路からそれぞれ左右にある船室に向かう。
片方の船室を開けたハルナがびをあげる。
「うわっ!何コレ?」
そこは倉庫といえば聞こえの良い方で、手當たり次第にが放り込まれていた。
一方、エダジマの方は部屋のベッドに橫たわる人を見つけていた。
「もしもし!私がわかりますか?聲を出せますか?」
「ああ・・・」
何とか聲を出す男。
「こちらは銀河連邦の恒星間探査船です。
かなくてもいいですから答えられたら質問に答えてください。
この船にはあなた以外に誰が乗っていますか?」
最も重要な質問のみをするエダジマ。
「私・・・だけだ・・・」
力なく答える男。
「わかりました、後はこちらで保護しますから何もしなくても大丈夫です」
その言葉に安心したのか、目を閉じる男。
「こちらエダジマ、生存者を1名発見。
意識はかろうじてありますが、極端に弱っています。
その理由は不明、現狀では他に生存者は発見できません」
「了解した。直ちに小型醫療艇に収容。
スタイン2曹とハルナ3曹は念のため、その船の他の場所も探索、他に生存者がいないか、確認。
合わせて船の狀況を探査せよ」
「了解しました」
「生存者は一人か・・・」
「これで事は何とか聞けそうですね」
と副長。
「そうだな」
漂流船に接舷した醫療艇に男が移乗させられる。
「こちらは醫療班セイン、患者を確保、直ちに救命措置にります」
「念のため、醫療艇は數日の間、隔離処置を、探査隊のメンバーも同様の措置を行います」
醫務長が指示をする。
「了解しました」
「スタイン2曹、そちらの様子はどうか?」
「船のほとんどを探索しましたが、やはり他の生存者は見當たりません。
死もありません。
乗組員は元々一人だったようです。
船自の方もボロボロです。
エンジン・生命維持裝置・電源室その他全ての機械がなくとも30年以上前の形式で、どうかすると70年以上前の裝置すらあります。
こんな船がいていたなんて信じられないほどです」
「他には?」
「ロボットが3ほどいましたが全ていていません。
メンテナンス裝置も故障しているため修理ができなかったのでしょう」
「船の修理はできそうかい?」
「やってやれない事はないでしょうが、修理しても、おそらく1ヶ月以にまたどこかが壊れるでしょう。
後は博館に寄贈するか、スクラップにするしかありませんね」
肩をすくめるように答えるスタイン2曹。
「持ち主に許可も得ずにスクラップには出來ないよ。
取り合えずエンジンはともかく、最低限の部分を・・・そうだな、生命維持関係と照明だけでも修理してみよう。
エダジマ補佐とスタイン2曹はそのまま殘って修理するに當たっての道と資のリストアップをしてくれ。
ハルナ3曹は移送した患者をそのまま醫療艇で看護するように」
「了解しました」
「さてと・・・これは時間がかかりそうだな、どうしようかね、副長?」
「はい、生存者は収容しましたので、後は狀況が判明するまで進展があるとは思えません。
あの難破船を修理するにしても工作班をここに殘し、我々はこの恒星系の探査を続行すべきだと考えます」
「そうだな、ドクターセイン、生存者の狀況は?」
「まだ細かい検査をしていないので何とも言えない部分もありますが、基本的な原因と狀況はわかりました」
「原因はなんだい」
「栄養失調です」
「栄養失調~?」
28世紀のご時世では滅多に聞く事のない、その理由に驚きの聲を上げる私。
その私にドクターセインが説明をする。
「はい、ここ數ヶ月は水と僅かな非常用宇宙食しかとっていなかったと見えて、危うく死する寸前でした」
「無理ないわ、あのボロ船じゃね」
船務長が思わず想を述べる。
「まったくだ」
その言葉に私も同意する。
「さしあたって破損狀況の報告を待って工作艇を派遣しよう。
本船はこのまま當恒星系の探査を続行」
「了解しました」
副長のナタリーが答える。
私が指示をしていると、醫療艇から報告が來る。
「船長代理、患者の目が覚めました」
ビデオパネル越しのセインの報告にうなづく。
「會話をしても大丈夫かな?」
「しなら」
「カメラを回してくれ」
カメラが男に向けられると私が質問を始める。
「こちらは銀河連邦の探査船、船長代理の如月です。
質問に答えられますか?」
「あ、ああ・・・何とかね」
男は畫像越しにも、まだ衰弱している様子がはっきりとわかる。
「無理はなさらないで結構です。
あなたの所屬と目的を教えてください」
「所屬は・・・別にない。
私は個人の探検家だ。
名前はイワシタ・チョウイチロウ
目的はこの辺の探検だった。
そこで事故が起こって・・・」
「事故?」
「ああ、何しろあのボロ船だ・・・
事故はしょっちゅうだが、この間の事故はまさに致命的だった。
エネルギー伝導管が吹っ飛んでエンジンが完全に壊れちまった・・・
挙句に積んでおいた食料のほとんどが宇宙に投げ出されちまった。
まあ、宇宙船そのが吹っ飛ばないだけマシだったがね・・・」
「現在、當方で可能な限りの修理をしております」
「そうか、ありがとう・・・」
そういうイワシタ探検家に疲れが見え始めた。
「そろそろ疲れてきたようです」
セインの言葉に私がうなづく。
「だいたいの事はわかりました。
今はゆっくり休養を取ってください」
「ありがとう、そうさせてもらうよ、艦長」
どうやら意識も朦朧として私の事を艦長だと思っている様子だ。
実質的にはそうだし、意識不明の者にそれを一々問いただす者もいない。
イワシタが橫になるとビデオパネルが消えて副長が報告をする。
「技師長の報告によりますと修理は順調にいっているそうです。
もっともほとんどの機械が修理というよりも部を新型に換裝していると言った方が的確なようですが・・・」
「まあ、そうだろうな」
「技師長が言うには、修理するよりも新型を備え付けた方が余程早いそうです」
「そりゃそうだ、しかしあくまで我々が出來る事は修理であって、新品換じゃない。
仕方ないね」
「そうですね」
役所仕事の悲しさで、遭難者の手助けとして「修理」する事は出來ても、何の理由も無く「新品」を備え付ける事は出來ないのだった。
「エンジンはどうだい?」
もっとも肝心な部分の狀況の質問に副長の答えはわない。
「やはり修理をして、できない事はないそうです。
しかし、いつ壊れるか予想もできないし、次の時はあの船を木っ端微塵にしてもおかしくはないそうです」
「そうだろうなあ・・・」
「船長代理、せっかく修理している最中ではありますが、やはりあの船は廃棄してしまうしかないと考えますが・・・?」
「そうしたいのは山々だけど持ち主がどう考えるかだね」
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