《リターン・トゥ・テラ》7話『託された機』
フィルを抱えながら、僕は歩く。先程ってきた位置に向かって。
無重力だからフィルを運ぶ事は簡単だった。仮に重力下だとしても、パイロットスーツは言わば強化外骨格とも呼ばれるもので、腕に付いているボタンを押せば、自分の持てる力の何倍もの力を出すことも可能になる。どちらにせよ、フィルを運ぶ気持ちは変わらなかった。
銀河帝國では上層部の人が戦死した時、様々な人が集められてその人に別れを告げる催しがあった。國葬と言っただろうか。自分も集められて、その映像をスクリーンで見ていた事を思い出す。
フィルも、そのようにはいかないかもしれないが、せめて地球軍の仲間の所へ送り屆けてあげたい。そんな思いがあった。
戦艦にってきた位置にたどり著く。ってきた時には何もないように思えたが、フィルから貰った認証キーを取り出す。すると
「特殊不可視モードを解除します。」
と音聲が鳴り、徐々にその場にがついていく、そのような覚でアームドが徐々に姿を表していく。
戦闘中はよく見ていられなかったが、地球國家を象徴するカラーである青と白のアームドだった。
僕は徐々に姿を表すそのアームドを見て
「しいな……」
と口にしていた。
今まで乗っていたグラディエーターは黒一で、この機に比べたら々ゴツゴツとしたイメージを持つ。華奢とまではいかないが、グラディエーターに比べれば細で、それでもってまとまりがあり、洗練されたデザインのアームドだと思った。
コックピットの位置は確かめる必要がなかった。エーテライトオーバーロードで発した僕の乗っていたグラディエーターの破片、黒の裝甲の一部が突き刺さってる。
V-21の事を思い出して、また悲しくなったが、僕は新しい使命ができた。この機で、銀河帝國と戦い、フィルの為、地球を守る。
「この調子なら表ハッチは開かないな…」
破片は大きく、表の搭乗ハッチの開閉は不可能だろう。でもフィルは外に出れた。だとすれば……
「新型機でも、ある程度仕様が同じであれば……」
機後方にあるであろう急出にも使われる別の搭乗ハッチを探す。
「やはり、この位置なんだな。地球軍も。」
アームドは1000年も前から存在したと相棒は言っていた。きっと長年の時を経て、使いやすいように最適化されていったデザインがこうなんだろうか。地球軍側の、しかも新型機ですら、銀河帝國のものとあまり変わりはない。
ハッチは空いたままになっていた。グラディエーター以外の機に乗り込んだ事がないので、気持ちがし落ち著かないが、搭乗する。もちろん、フィルも一緒に。
「凄いな……コックピットにこれだけの損傷をけても、機がくのか……」
どれだけ頑丈な作りなんだろうか。外から見えた破片が貫通している。フィルがこれに當たって致命傷を負ったのだろう。V-21へのとフィルへので複雑な心境となる。2人への申し訳なさが僕を襲った。
だが、そんな事を思っている余裕はない。今は新しい使命の為に前を向くしかない。
「機の作……これもほとんど変わりないか。」
コックピット自、しの違いはあれど、グラディエーターとほぼ一緒の位置に同じものがある。起さえできればパイロットリンクの生データを書き換えて難なく縦できそうだ。
認証キーを差し込み、機を起させる。
モニターに地球軍のマークが表示され、徐々に起が始まる。
機名はストライカー。フィルが言っていた通りだ。その後ろにタイプ・ジ・アースと書かれている。
「搭載型AI、Psi"サイ"起。」
地球軍はアームドのAIにすら名前をつけているのだろうか。
起直後にAIが喋り出した。
「パイロットの心肺停止を確認。様々な蘇生方法を検索中……」
V-21よりさらに人間味を帯びたような機械音聲が流れる。若い男の聲だ。もはや普通の人間と大差ないぐらいの。
そうか、まだパイロットリンクの生データを書き換えていないから、AIは後ろに乗っているフィルを認識しているのか。
「コックピットに別な搭乗者の反応を知。別なナノマシン反応により、別なパイロットと判斷。ワタシの最優先事項はそれでも変わりません。パイロットの蘇生方法の検索を行います。」
僕が作する前に、AIが獨自で狀況を判斷して、勝手にき始める。
「おい、ちょっと待ってくれ。生データの書き換えを……」
そう言ってもそのAIは僕の言葉に聞き耳を立てる様子もない。
「パイロット、パイロットはワタシに帰ってくると約束したはずです。ワタシはパイロットの帰りを待ち続けていました。こんなかたちの再開は嫌です。蘇生方法を検索し直します。」
このAI、何かちょっと普通のAIとズレてるような気がするが……
損傷をけた事によるバグなのか……?
「検索中……検索中……ダメです。どの方法も今の狀態のパイロットを蘇生する方法がありません。ワタシの力不足です。ああ、パイロット。申し訳ありません。あの時、ワタシが咄嗟に自縦に切り替え、角度修正の計算をして瞬時に飛び散る破片を避けれていれば……」
このままでは埒があかない。
「頼む。生データの書き換えをお願いしたい。」
話の切れ目にようやく言いたかった話題を切り出せた。
「狀況を確認……シートにお座りなのは、銀河帝國軍パイロットと推測。あなたがパイロットの命を奪ったのですか。」
「確かに、それは間違いではない。」
エーテライトオーバーロードでフィルは致命傷を負った。それは僕に責任がある。
「ただ、フィルは……」
そう言いかける前にAIが喋り始める。
「ワタシからかけがえのないパイロットの命を奪い、そしてパイロットリンクの生データの書き換えを命じる。と言う事は。ワタシは鹵獲された、と推測されます。」
「そうなってはいけません。ワタシは鹵獲されるわけにはいきません。そして大切なパイロットの命を奪った罰をけてください。オーダー000を自認証します。エーテライトエンジン始。エーテライトオーバーロード準備……」
「待ってくれ!!違う!!僕はこの轟沈したこの戦艦の中で出會った、傷ついて倒れていたフィルを介抱したんだ!!」
「それは、本當ですか。……搭乗者の脳波を見るに噓ではないと判斷。オーダー000解除。エーテライトエンジン停止。」
危なすぎる。AIが的にくなんて……
AIに、……?
とりあえず話を聞いてもらえる段階にはなったようだ。
僕はAIに話した。これまでの経緯を。
銀河帝國にもういられなくなった話。エーテライトオーバーロードで、確かにこの機に損傷を與え、フィルもそれによってに傷を負った話。デブリを彷徨い、傷ついたフィルと出會い、フィルを介抱した話。フィルが火星基地へと連絡を取り、僕を捕虜として扱ってくれるようにしてくれた話。ここに小型艇が到著し、地球軍が助けに來てくれる話。そして……
フィルがし遂げたかった地球を守るという思いを託され、自分自も銀河帝國と戦う意思があるという話。
そうして、この機を託されたという事を。
「だから頼む。協力してもらえないか?」
「脳波をチェック中……噓でないと判斷。搭乗者の意思はわかりました。パイロットをありがとうございます。パイロットのごをここまで運んでくれたのは搭乗者だったのですね。こんなかたちにはなってしまいましたが、再會できたのは搭乗者のおかげです。」
「なら……!」
「あと、ワタシとしてもここに放置されると困ってしまいます。あと、サビシイです。そしてカナシイです。」
寂しい……?悲しい……?それはAIでもわかるのか……?
「生データの書き換えを行います。搭乗者のナノマシン反応を検知。これをパイロットデータとして書き換えます。脳波、データ検知……様々な確認を行っております……指定値をクリアしました。パイロットデータ書き換え……完了。パイロットリンク接続。新しいパイロット。よろしくお願いします。」
網投影がスタートする。外部メインカメラの映像が網に投影され、コックピットの外が見渡せるようになる。視界が開けた覚だ。
「エーテライトエンジン、始します。」
AIがそう言うと、様々な裝置に電源がり始める。モニターには「はじめまして!よろしくね!」と表示されている。
「パイロット、名前を教えてください。」
AIにそう聞かれる。僕にはフィルから貰った、大切な名前がある。
「僕の名前はケイだ。」
「よろしくお願いします。パイロット、ケイ。ワタシはPsi"サイ"です。」
「ワタシはもう二度とパイロットを失いたくありません。お願いできますか。」
「僕にも『決して諦めるな。命を大切にしてください。』と言う使命がある。絶対に生き抜いてみせるさ。」
「約束ですよ。パイロット。」
「任せてくれ、サイ。」
その時レーダーに地球軍小型艇接近の反応があった。
「通信を繋ぎます。こちらストライカー、サイです。指定座標を再度送ります。」
通信が返ってくる。
「おお!サイ!生きとったかぁ!フィルは大丈夫か?」
聲が大きい、年齢を推測するに割と歳を取った男の人だろう。そんな人まで戦場に出るのか。銀河帝國では考えられない事だ。
「前パイロット、フィルは死亡しました。ただ、ごを回収して頂きました。コックピットにフィルも乗っています。そうして、今は新しいパイロットがワタシとパイロットリンクを繋いでいます。」
「そうか……間に合わなかったか……申し訳ないなぁ……で、新しいパイロットってなんだ?例の捕虜はどうした?」
「その捕虜が、ワタシの新しいパイロットです。」
「はぁぁ〜!?どう言うこっちゃ!?オイ!パイロット!聞こえているか!?」
ものすごい大聲だ。聞こえないわけない。
「こちらパイロット。そんな大聲を出さなくとも聞こえている。僕の名前はケイ。このアームドとパイロットリンクを繋いだ。これからこのアームドのパイロットとなる。よろしく頼む。」
「あのなぁ……!捕虜には捕虜の扱いってモンがあるんじゃい!それがなんで急にパイロット……うわっと!」
大きなデブリに當たりそうになったのだろうか。その悲鳴の後、通信で他の人と騒いでいる様子が聞こえてくる。しばらくして、また大きな聲が通信から聞こえてくる。
「とにかく!艇に回収したら捕虜は捕虜だ!」
小型艇が向かって來る。そうして、僕らのいる位置ほぼぴったりにつけられる。
小型艇と言っても案外大きい。コルベット並みだろうか。アームドを2機ほどは収容できるものだ。それを結構なスピードでかしてこのデブリ帯を抜けてきたかと思うと、相當縦に慣れている人なのだろう。
……まぁ、至る所はデブリにぶつかったのだろう。ボコボコになっているが。
「さぁ行きましょう。パイロット。」
サイが言う。
「ああ。行こう。」
小型艇へと機をかす僕。
しの不安はあったが、今の僕は希の方が大きかった。
8話へ続く。
【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。
【注意】※完結済みではありますが、こちらは第一部のみの完結となっております。(第二部はスタートしております!) Aランク冒険者パーティー、「グンキノドンワ」に所屬する白魔導師のレイ(16)は、魔力の総量が少なく回復魔法を使うと動けなくなってしまう。 しかし、元奴隷であったレイは、まだ幼い頃に拾ってくれたグンキノドンワのパーティーリーダーのロキに恩を感じ、それに報いる為必死にパーティーのヒーラーをつとめた。 回復魔法を使わずに済むよう、敵の注意を引きパーティーメンバーが攻撃を受けないように立ち回り、様々な資料や學術書を読み、戦闘が早めに終わるよう敵のウィークポイントを調べ、観察眼を養った。 また、それだけではなく、パーティーでの家事をこなし、料理洗濯買い出し、雑用全てをこなしてきた。 朝は皆より早く起き、武具防具の手入れ、朝食の用意。 夜は皆が寢靜まった後も本を読み知識をつけ、戦闘に有用なモノを習得した。 現にレイの努力の甲斐もあり、死傷者が出て當然の冒険者パーティーで、生還率100%を実現していた。 しかし、その努力は彼らの目には映ってはいなかったようで、今僕はヒールの満足に出來ない、役立たずとしてパーティーから追放される事になる。 このSSSランクダンジョン、【ユグドラシルの迷宮】で。 ◆◇◆◇◆◇ ※成り上がり、主人公最強です。 ※ざまあ有ります。タイトルの橫に★があるのがざまあ回です。 ※1話 大體1000~3000文字くらいです。よければ、暇潰しにどうぞ! ☆誤字報告をして下さいました皆様、ありがとうございます、助かりますm(_ _)m 【とっても大切なお願い】 もしよければですが、本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです。 これにより、ランキングを駆け上がる事が出來、より多くの方に作品を読んでいただく事が出來るので、作者の執筆意欲も更に増大します! 勿論、評価なので皆様の感じたままに、★1でも大丈夫なので、よろしくお願いします! 皆様の応援のお陰で、ハイファンタジーランキング日間、週間、月間1位を頂けました! 本當にありがとうございます! 1000萬PV達成!ありがとうございます! 【書籍化】皆様の応援の力により、書籍化するようです!ありがとうございます!ただいま進行中です!
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