《リターン・トゥ・テラ》8話『地球軍』
小型艇の格納庫のハッチが開き、ガイドビーコンが出る。それに沿って機をかし、機を著艦させる。
格納庫のハッチが閉まる。そうすると格納庫に人がわらわらとってくる。中には武裝している人もいる。何故だろうか。しかし、これだけ人が集まっていると、機をかし辛いな。機の収納場所まで行くことができない。
「パイロットリンク解除。外に出る。」
そう言うとサイが僕を引き止める。
「待ってくださいパイロット。外に出たらすぐにホルスターにしまってある拳銃を捨て、両手をあげてください。」
「その行にどんな意味があるんだ?」
「抵抗はしないと言う意思を相手に見せる事が出來ます。」
「もともと抵抗する気なんてないぞ。」
「それでもやってください。今パイロットが置かれている狀況が特殊過ぎるのです。」
「了解した。やってみる。」
そう言って後部ハッチから出る。言われた通りにホルスターから拳銃を外し、宙に浮かせる。そして両手を上げる。
そうするとサイがアームドの拡聲機能を使って喋り始める。
「こちらストライカーのAI、サイです。この者に抵抗の意思はありません。脳波で検証済みです。」
人々がざわつく。何が行われているかよくわからない。
またサイが拡聲機能で話す。
「データベースを探しましたが、おそらく銀河帝國から捕虜を迎えれるのは地球軍として初です。慎重に扱ってください。」
そうだ、フィルのを地球軍へ返さなければ……
僕はフィルのを抱えながら下へと降りた。
そうして、人の集まりの先頭に立っている人の元まで歩く。
その人も宇宙服を著てバイザーが降りているので表、別は判斷できないが、おそらく型を見るに人した男だ。
その人の元へフィルのを預ける。
その男はバイザーを外し、フィルのを確認するとともに崩れ落ちた。他にも人が駆け寄ってくる。何人も。そうしてフィルのを見ながら、聲を上げている。
みんなヘルメットを取ったり、バイザーを上げて彼を見る。別れを惜しむように。
その景を見た時また目に熱いものが込み上げてくる。サイに聞いておけばよかったな。このと狀態は、銀河帝國では教えられたことがない。
そこで、聲をかけられる。
「銀河帝國のパイロットさんよ。お前さんもヘルメットをいでくれんか?顔を見てみたい。」
サイが先程通信で繋いだ男の聲だった。おそらくこの小型艇を縦してた者だろう。男もヘルメットを外し、こちらを見ている。
聲の通り、見た目通りにし年老いた男だった。短い髪、そして顔に顔に刻まれたシワ、しかしそれすらも引き締まって見えるほどだった。今は宇宙服を著ているからわからないが、も鍛え上げられている事だろう。武人というのはおそらくこう言う人の事なのだろう僕は思った。
他の人がバイザーを上げたりヘルメットを取ったりしているところを見ると、酸素濃度は問題ないだろう。一応インターフェースの酸素濃度を確認し、僕はヘルメットを取る。
そうするとその男が驚愕する。
「こ、こりゃたまげた……!まだガキじゃないか……!オイ……!お前さん、何歳になる……?」
「生まれた時から計算すると3年だ。」
正確には3年と數ヶ月経つが、あまり覚えていない。V-21なら正確に覚えていてくれたが、連日の厳しい訓練や戦闘で、そんなもの數えている余裕なんてなかった。
「3年!?ウソだろ!?ガキっつても15歳ぐらいには見えるぞ!!その見た目で3歳ってのは……」
「フィルにも聞いたが、どうやら地球軍には年兵団、クローン部隊はないらしいな。銀河帝國特有のものらしい。とりあえず僕は本當の事だけ話している。」
その男が呆気に取られてるうちに、別な男から聲がかかる。先程、フィルを預けた男、今はヘルメットを外して顔がよくわかる。無髭を生やし、くるくるとしている髪には白が目立つ。先程の男よりは若いが、それなりに年は取っているだろうと推測される。
「事はサイから聞いたよ。フィルをここまで連れてきてくれてありがとう。私はムラクモ。火星基地では宇宙空母エンタープライズIIIの艦長をやっていた。見事に轟沈したがね。生前、フィルには々お世話になっていてね。本來は別な艦で月まで行く予定だったが、どうしても彼に會っておきたくてね。無理を言ってこの小型艇に乗せてもらったのさ。」
ムラクモの話が終わったところで、先程のし年老いた男が喋り出す。
「こんなガキを捕虜って言ったって……手錠つけて獨房に放り込むなんてちと可哀想過ぎる気がしますわなぁ……」
そうするとムラクモはその男に話しかける。
「ふむ……では、君ならどうする?マキシ大尉。ここにいる最年長で軍にいる経験も長いはずだ。」
「わ、ワシに聞かれてもなぁ……艦長。ワシはしょせん大尉止まりの男でさぁ……」
「それは君が上層部に毎回突っかかるからだろう。」
「あれはワシのプライドが許さんからじゃ!!」
「わかったわかった。」
ムラクモはマキシとの話を切り上げた。し話しかけたのを後悔した様子だった。
そして、僕の方に向き直り、真面目な顔つきで話す。
「ではこうしよう。君の捕虜しての扱いは月面基地本部に著くまではお預けだ。ただ、申し訳ないがこれをつけてもらう。ユウカ、あれを。」
「は〜い。艦長。」
ユウカと呼ばれたは持っていたケースの中から何かを探している。
比較的若いだった。
僕の中ののイメージはF-108のようなクローンのイメージしかない。彼は髪が長かったが、このユウカと呼ばれたは、にしては短い髪をしている。だが、バランスを見てもその短い黒髪は似合っていた。
頭にはカチューシャというものが付けられている。
このカチューシャという髪留め、そういえばF-108も付けていた気がする。何故つけていたかはわからないが、カチューシャと言う名前はその時に聞いた。
そうしてムラクモは僕にまた話しかける。
「一応、ここに銀河帝國から投降して捕虜になる者が來るという話はけていたが、いかんせん、銀河帝國の素がわからない以上は々と用意させてもらったのだよ。」
「もしかしたら急に生で自特攻なんかされても困るなと思ってね。意外と危険視していたんだよ。アースゲートでのの様子なんかもそうだし、これまでの戦闘もそうだ。」
「だが、ストライカーのサイとパイロットリンクを結んだと言う話を聞いて安心したよ。あのAI、サイは特殊でね。」
「サイは君の脳波を読み取り、それがない事を確信した。だからパイロットリンクを結んだんだろう。」
それを聞いていたかのようにアームドの拡聲機からサイが話す。
「パイロットリンクを結ぶ時に、パイロットの脳波を確認させてもらいました。他にもブレインコントロールの有無など々確認させてもらいましたが、そのような傾向は一切見られませんでした。」
銀河帝國の兵士は地球軍からそのように思われているのか……そうだよな。無理もないだろう。
「艦長〜これですよね?」
ユウカが艦長の元に駆け寄ってくる。僕に取り付けるものを見つけたのだろう。
「ああそうだ。ありがとう。このチョーカーだ。ユウカ、彼にこれを取り付けてくれ。」
ユウカは僕に近づき、話しかけながら、首に裝置を取り付けはじめる。
「ごめんね〜。この裝置、ちょっとでも抵抗の意思とか見せると、AIの自判斷でビリっ!と電流が流れて、かせなくなっちゃうの。気をつけてね。」
電流裝置か。どちらにせよ抵抗はしないが、直接的に殺すと言うことはしないようだ。し優しすぎる気もするが、これで良いのだろうか。
「これでよし、っと!」
首に裝置がカチっとはまる。そうしてユウカは僕の両肩に手を置く。
「でも、大丈夫そうね。なんかキミ、そんなことしないよ!って顔してるし!」
そう言って僕の肩に手を置いたままユウカは僕に顔を近づけ、僕の顔をまじまじと見つめる。
「そしてキミ、まだ子供だけど、結構イケメンだし!格もイケメンだった!やっぱりイケメンに悪い人はいない!私の辭書にそう書いてある!書いてある通りだったわ!」
わからない単語が出てきた。イケメンとはなんだ、と聞こうとしたが、それを聞く前に、ユウカは僕から顔を離し、肩から力なく手を下ろした。
そして、先ほどまでとは違い、悲しい表で話を始める。
「フィルを連れてきてくれてありがとう。わたしも、フィルにはお世話になってたんだ……」
「それに……フィルに會えなかったら、あのコ、もっと可哀想だったしね……」
々と聞きたい事はあったが、聞き返す前にユウカは振り向き、去っていく。
ユウカを呼び止めようとしたが、ムラクモから聲がかかる。
「々とあるのさ、我らにもね。」
ムラクモも悲しい顔をしている。
「今は聞かないでやってくれ……」
理由はわからないが
「了解した。」
と僕は答えた。
ムラクモは下を向いていたが
「艦長がこれではダメだな。」
と小聲で言い、僕の方を見る。今度は真剣な表で。そうして話し始める。
「率直に話そう。我々には銀河帝國側の資料がなすぎる。そこでだ、々と銀河帝國についての話を聞かせてもらいたい。できるかい?」
「僕も銀河帝國については詳しくわかっていない。ただ、一番最初に教え込まれたことと言えば、『地球の奪還』と言うことで……」
「地球の奪還、ねぇ……。君は銀河帝國と地球國家における地球の位置付けについてどれほど知っている?」
「位置付け?どう言うことだ。」
「やはり何も知らないのか?と言うことは戦爭が何故行われているか、と言うことも?」
「地球國家は資源としての地球を獨占しようとしているわけではないのか?それを銀河帝國は阻止しようとしている、と聞いた。」
「銀河帝國側が行った地球和平協定の破棄については?」
「なんだそれは。」
ムラクモは驚愕した様子だった。
「まさかとは思ったが……戦爭が何故行われているかも知らずに戦わされていたとは……しかも……こんな子供に……」
ムラクモはを噛み締める。
「知らないことだらけだ。詳しく聞かせてしい。」
「わかった……。立ち話もなんだ。部屋を移そう。そうだ、コーヒーとか飲めるかい?」
知らないものの羅列で僕も疲れてきたが、とりあえず聞き返すしかない。
「コーヒーとはなんだ。」
歩き出したムラクモはしよろけた。
9話へ続く。
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