《リターン・トゥ・テラ》16話『報復』
「敵艦艇が機を回収してスタースピードで逃げれば、またそれが戦力として僕らを襲う。」
「もしくはスペースコロニーを解放した事を敵戦艦が察知したら居住區だろうがなんだろうが関係なくコロニーに攻撃をする可能もある。」
僕は足元のペダルを強く踏み込むと、敵戦艦へとどんどん機を近づける。
「それをやれる前に、こちらから攻撃を仕掛ける。」
急速で近づく機を察知したのか、敵戦艦からの艦砲撃が飛んでくる。しかし、アームドなら回避は余裕だ。
サイは僕に聞く
「パイロット。撃てますか。」
僕はサイに返す。
「覚悟は決まってる。やるしかない。」
その時、ジンから通信がる。
「お前……!一人で艦艇を相手取る気か!?無茶だ!!」
それに対してマキシからまた通信がる。
「あの坊主とストライカーを信じろ。それよりもジン!目の前の敵を落とせ!」
ジンは
「りょ、了解!マキシ隊長!」
と言い、通信が一時的に終わる。
それからちょっとしてまた通信がる。
相手はエドワードだった。
「おい、ガキ。死んだら承知しねぇぞ。また死神になりたくねぇからな。」
し間を置いて、
「……頼むぜ。」
そう言って通信が切れる。
みんなの期待を背負ってる。やるしかない。
「サイ、ビーム・ブラスターはどうだ?」
「パイロット、大丈夫です。荷電粒子フルチャージ。もうし距離を詰めれば、甚大な損傷を與えることが可能です。しかし、その先は対アームドミサイルの程。さらに、対空撃の程にもります。」
「了解だ!」
そう言ってさらに敵艦艇に近づく。
「パイロット、敵戦艦からのミサイルのロックオンをけています。気をつけてください。」
「大丈夫、サイ。ストライカーならやれるさ。」
「パイロット、敵艦艇、ミサイルの発を確認。ブレイク!ブレイク!」
高速のまま、機をかす。対ミサイルの訓練は何度もけた。
上昇、急旋回、バレルロール。ミサイルの導を誤魔化しつつ、敵艦艇にさらに近づいていく。
僕の機の後ろでミサイル同士がぶつかり、発が起こる。
それを確認した頃には敵艦艇はもう間近。対空迎撃が始まる。
「パイロット、見事なアクロバットでした。敵艦艇からの対空迎撃です。気をつけてください。シールドの使用を推奨。」
盾を構え、撃を避けつつ、敵艦艇に向かい、ビーム・ブラスターを構える。
激しい対空迎撃敵の中、ロックオンを始める。艦艇をよく見ると、12番の番號が見えた。
そうか、バドス艦長の乗る……
その時サイが告げる
「敵艦艇リアクター部、ロックオン、完了。シールドの損傷が激しいです。このままですとシールドが壊れます。撃ってください、パイロット。」
撃たないと僕が死ぬ。
撃ったらバドス艦長が死ぬ。
迷ってる暇もない。
気づかなきゃよかった。
震える手でトリガーを引く
閃は艦を貫く。
リアクター、エーテライトエンジンへの。大発が巻き起こる。
「バドス艦長……」
僕は力なく呟く。
「パイロット、他の敵艦艇がき始めました。艦砲撃確認。回避を。」
「サイ、僕は正しいことをしているか?」
僕はサイに問いかける。
「正しくないならば、どうするのです。パイロット、迷えば、アナタが死にます。それは嫌です。」
僕は敵艦艇からの撃を避け、デブリになった艦を盾に逃げ込む。
「敵艦艇が近づいて來ています。ビーム・ブラスター砲冷卻中。荷電粒子裝填までまだ時間がかかります。」
僕は力なくサイに語りかける。
「サイ、僕はかつての上を……」
そう言いかけた僕にサイは
「先程も言いました。パイロット、アナタには死んでほしくありません。そして地球を守るという約束はどうしたのですか。」
「パイロットがフィルの意志を継いでいるからワタシはパイロットを乗せました。それが失われているのならば、パイロットを降ろします。それに、もうパイロットが死ぬ事はもう嫌です。」
戦わなければ死ぬ。
かつての仲間と。
そんな狀況に置かれてようやく気づく。
僕は、今まで虛勢を張ってただけだと。
「パイロット、降ろしますよ。後で迎えに來ます。パイロットリンク解除。」
前ハッチが開く。
「サイ。待ってくれ。自縦で艦艇を相手取るのはいくらなんでも無茶だ。」
「パイロット、ワタシは頭がいいです。ご心配なく。」
僕はあわてて作して前ハッチを閉める。そうしてサイに言う。
「僕は今まで虛勢を張ってただけだ。地球軍の仲間の前ではなんとでも言えた。でも、やはり、戦うとなると苦しいし、悲しいんだ。」
サイはを分析しているようだ。
「複雑なと推測。難しいです。しかしワタシから言えることとしては戦わなければ死ぬ。という事だけです。」
「ミサイルロックオン警報。位置がバレたようです。このままではすぐにお互い死にます。パイロットリンク強制接続。回避行を。」
ああ、もう、なんで撃ってくるんだ。
デブリを盾にしてミサイルを躱す。デブリに當たったミサイルは発し、さらにデブリを増やす。
銀河帝國軍は敵だ。僕らを殺す敵だ。
そう言い聞かせる。
そこで思い出す。かつてけた仕打ちを。
使い捨てにされた事を。
そうならなければこんな事にならなかった事を。
思えばバドス艦長は知っていただろうか。
僕らが使い捨てにされる事を。
それで噓の作戦を立てて。
噓のブリーフィングを行い。
その噓によって僕らを……
「クソッ……」
僕はそう呟いてビーム・ブラスターを構える。
「サイ、ビーム・ブラスターの狀態はどうだ。」
「パイロット、やる気になってくれましたね。荷電粒子充填完了。発態勢です。」
デブリの破片を盾にして敵艦艇に近づく。
ロックオン。もちろん狙うは敵艦艇リアクター部。
「これは、報復だ。」
そう言って僕はまたトリガーを引く。
放たれた閃は艦を貫く。
凄まじい発。2隻目を轟沈させた。
殘りは2隻……
そこでサイが僕に語りかける。
「パイロット、大丈夫でしょうか。脳波が著しくれています。ストレス、悲しみ、怒りなど様々なが渦巻いてると推測されます。」
「平気だ。このぐらい。」
そう言って次の艦艇へと攻撃の対象を移すためにブースターを吹かせる。
相変わらず艦砲撃とミサイルにロックオンされるが、それを躱す。
追ってくるミサイルを回避行で引き離し、なるべく遠く離れ、サブマシンガンでそれを破壊する。
ミサイル同士ので追ってきたミサイルは全て無くなった。
僕が対ミサイル攻撃に慣れてると言っても、このきで躱せるのは、ストライカーだからこその技だ。この機のスペックは高すぎる。
作戦の要になるのも納得だ。
この世に本當に存在して良いものなのだろうか。
対空迎撃が來る。僕は艦艇の下に回り込み、それの死角へとる。
そしてまた、ビーム・ブラスターを放つ
凄まじい閃が艦艇を貫き、発、そして酸素タンク、リアクター、エーテライトエンジンへとが始まる。
巻き込まれないように離する。
もう僕はかつての母國の事なんて考えていなかった。
いや、考えても憎しみしか出てこなくなっていた。
きっとそれはいけない事だ。復讐心を持って戦闘に出ることはシャーロットはまないだろう。
ただ、ひたすらに、自分の任務に忠実に、相手を殺す。
そうだ。それが僕だったじゃないか。
そこでサイから聲がかかる。
「パイロット、もう1隻はやめておきますか?きを確認すると、撤退の準備を進めています。」
ヤツらはまた年兵団を使い捨てにして、逃げる気だ。
「サイ。フルスロットルで突っ込む。あの艦艇がスタースピードにる前に潰す。」
自分の中で湧き出る復讐心を止められない。
許さない。
足元のペダルを全開で踏み込んで艦艇に近づく。
「パイロット、ビーム・ブラスターの充填が完了していません。」
そう言われてビーム・ブラスターを僕は腰の後ろのハードポイントにマウントする。
「サイ。対アームド用ダガーはどこに収納されている。」
「ヒトで言う膝の位置にあります、プロテクターに……」
最後まで聞かずにダガーを抜き取る。
「危険です。パイロット。艦艇に対して近接攻撃は推奨しません。」
「任せろ。なんとしてもあの艦を潰してみせる。」
ミサイルのロックオンより早く、敵の艦艇に近づく。
敵艦艇の対空迎撃が始まるが、それをシールドで防ぎながら、ギリギリまで近寄る。
その時、シールドが割れて、肩の裝甲に被弾する。
普通のアームドなら艦艇の迎撃を肩に直撃したら、そのまま片腕に深刻なダメージになるだろう。
ストライカーは、あり得ないほどい。
機の狀態がモニターに表示されているが、まるでダメージがないかのような扱いだ。
艦前方に配置されてる対空迎撃用の砲臺を左手のサブマシンガンで潰し、甲板に降り立つ。
そして、CICが配置されてる場所をダガーで貫く。
ダガーを刺しっぱなしにして、し飛翔し、その部分にサブマシンガンでさらに追撃をれる。
艦艇のきが止まる。
そこでサイが告げる。
「ビーム・ブラスター、荷電粒子充填完了。」
僕は腰の後ろにあるハードポイントにマウントしていたビーム・ブラスターを右手で抜き取る。
「年兵団を使い捨てにした報いをけろ。」
トリガーを引く。
そうしてまた大発が起こる。
4隻目を轟沈させた。
僕はブレイブ隊に通信を送る。
「敵艦艇を4隻轟沈させた。すぐ戻る。」
ジンからすぐに通信が返って來る。
「本當にやったのかよ!?すげぇよお前!!」
マキシからも通信が返って來る。
「坊主!やりおったなぁ!こちらもスペースコロニー解放組と合流してアームドをポコポコ叩いておる!もう時期片付くぞ!」
エドワードからは通信が返ってこなかったが、僕から個人に通信をれる。
「エドワード、これでお前は死神ではなくなった。」
し時間を置いて、
「まだ気抜くな。ガキが。」
とだけ返って來る。
ブレイブ隊と合流する前に思い出す。
サクラとの約束を
「被弾をしてしまった。サクラと言う整備士に怒られてしまう。」
サイは
「パイロット、やはり無茶が過ぎますよ。でも……」
「どうした、サイ。」
「先程パイロットを突きかした、銀河帝國に対する憎悪のが気になるのです。」
「それは……」
サイに話していいのだろうか。負のを。
サイはを學習してしまう。
僕は復讐心に駆られただけだ。
「パイロット、わかりました。以前語っていた、かつて銀河帝國軍に使い捨てにされた事による怒りですね。」
「しかし、撃つのをしでも躊躇うあたり、パイロットは慈悲の心も持ち合わせていると推測します。」
「ヒトとは、やはり複雑ですね。ワタシにも勉強がまだまだ必要です。」
サイは僕のを読み取っていた。しかもトリガーを引く躊躇いまでも全て見られている。
「サイ、聞きたいことがある。」
「なんでしょう、パイロット。」
「サイはを學習するAIだと聞いた。実を言うと僕自の心もまだまだ完していない。」
「それでも、僕を乗せるのか。不完全な気持ちに巻き込まれて、お前も変な風に育つかもしれない。」
「パイロット、フィルの意志を継いでるならパイロットは変な風になる事はないと信じております。どうか、ワタシを導いてください。」
確かに荷が重すぎることだな、と思う。
し黙っていると、サイから聲がかかる。
「データベースにあるヒトの資料などを検索しましたが、ヒトの中で完璧な心を持つ者はいないと推測します。だから、それでいいのではないですか?」
「どう言うことだ、サイ。」
「誰しも迷って、悩んで、苦悩して、そしてヒトを憎む事もあるでしょう。」
「だからパイロットも、それでいいのだと思います。ワタシもそうなれるようにします。」
「そうならないのが一番良いんだけどな。」
「パイロット、そうならないのはきっとカミサマだけですね。」
「ワタシはプログラムされております。カミサマになるなと。」
「どう言うことだ、サイ。」
そこで信號弾が上がるのが見える。勝利、撤退を示すものだ。
「簡単に説明すると、AIがヒトを導く事になってしまっては、ホンマツテントウらしいです。」
「全然簡単じゃないぞ。意味がわからない。」
「パイロットから見たら古代の話なので、きっと理解するのは難解ですよ。さぁ帰投しましょう。」
「……了解した。」
納得はできないが、會話を切り上げてセレーネへ戻る。
様々なが渦巻いた初陣。勝利だったが、僕の心はモヤがかかったままだ。
17話へ続く。
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