《リターン・トゥ・テラ》20話『火星、大気圏突』
ブリーフィングが開始される。
先程のキャベツ畑、コウノトリへの同時攻撃だったが、どうやら銀河帝國は、コウノトリの方も自させたらしい。これで銀河帝國のクローン量産に大きな打撃を與えることができた。
しかし、それと同タイミングで火星の軌道上に待機していた地球軍艦隊への攻撃が開始され、大規模な戦狀態にった。
地球軍も艦隊を集結させている。おそらく銀河帝國も総力戦で來ているのであろう。
セレーネは火星上空で攻撃に加わる。
そして僕らブレイブ隊は、大気圏突ポッドで火星に降下、制圧された火星基地の解放を目的としてく。
もう既に他の艦の部隊が火星基地への解放作戦を行なっている。それに加勢し、一気に敵戦力を叩く。
スペースコロニーのような疑似重力化ではなく、大気のあるちゃんとした重力圏での戦闘。
重力圏戦闘の為のセットアップはサイが行うが、あくまで縦は僕だ。
地球を守る。
そして、この戦爭を生き殘って、普通の人間として生きる。
おそらく敵部隊からの反撃も激しいだろう。
なんとしても自分の使命を全うしなければならない。
*
ブリーフィングが終わり、セレーネはスタースピードの準備をしている。
僕はハンガーに向かっていた。
そこでジンから聲をかけられる。
「ハンガーに向かうんだろう?良ければ、ご一緒に。」
ジンはあまり浮かない顔をしていた。
僕はジンに尋ねる。
「ジン、どうした。やはり降下作戦ともなると不安か。僕もだ。重力圏での戦闘には慣れていない。」
ジンは違うさと、言い、語り始める。
「もともと俺は火星基地にいたのさ。火星生まれの火星育ちでね。その奪われた火星基地を取り戻すってんだから、何としてもやり遂げなきゃな、と思ってさ。」
「今は避難しているが、火星都市にも両親がいるしさ。なんとしてもまた、家に帰らせてあげたくてね……」
「恥ずかしい話、自分の腕に不安があるのさ。マキシ隊長や君、そしてエドワードについていけるかってね。火星基地奪還の為なら人一倍頑張らなきゃならないのに。」
「こんな弱音、君に言ってもおかしいよな。ごめんな。ケイくん。」
僕は答える。
「無理に頑張らなくてもいいだろう。気合をれすぎると、変なところに力が回る。こういう時こそ、冷靜にいこう。慣れない地形での戦闘になるが、僕もできる限り、ジンを助ける。」
「火星基地にいたのなら勝手は一番わかってるはずだ。扇を頼む。」
ジンは笑いながら
「ケイくん、本當にパイロットしては肝が據わってるよな。マキシ隊長のお墨付きなわけだ。」
「それに、さっきの一件以來、どうも瞳のじが違う。覚悟が決まってる、というじだ。」
気がつくとハンガーにたどり著いていた。
「期待してるよ!若きエース!」
ジンはそう言って僕の肩を叩くと、自分の乗るアームドに向かっていく。
僕もストライカーへと乗り込もうと思い、コクピットハッチにかかる足場にたどり著くと、サクラが立っていた。
サクラは僕に気づくと、しだけ微笑む。
サイも言っていたな。僕もサクラのように、笑えるようになりたい。そうすれば、を伝えやすいのに。
しかし、その笑みの後、すぐ不安気な表を浮かべる。
サクラは僕に話しかける。
「ケイ、あのね……」
何を言うか迷ってるようだが、先程の話の流れから言うとこれだろう。僕はサクラの言おうとしている事を予想して、聲をかける。
「わかってる。どんな作戦でも、絶対戻ってくる。」
「僕は死なない。」
それでもサクラは不安そうな表をしている。確かに今回は危険な作戦だ。
僕はサクラに近づき、こう話す。
「ジンに言われたんだ。瞳のじが違うと。覚悟が決まってると。だから、サクラ。僕の目を見てくれ。」
サクラは僕の目を見て、し涙をこぼす。そしてこう話す。
「私、いつも見送る事しかできないから……」
「ケイ、お願いだよ。死なないで。戻ってきてね。」
僕はサクラに頑張って笑顔を作る。
それは笑顔になってるのかは僕はわからない。
でも、それを見てサクラも微笑み返してくれた。
「行ってくる。必ず戻る。」
僕はそう言ってストライカーに乗り込む。
ストライカーは起したままになっていた。
サイが僕に聲をかける。
「おかえりなさい。パイロット。コンディションをチェック……いいですね。今の調子ならパイロットとトモダチになれそうです。」
「そう言って貰えて嬉しいよ。サイ。本作戦のチェックは行ったか?」
「火星の重力に適応させる為、機のパラメーターを調整する準備は完了しています。」
「後は僕の腕次第って訳か。任せてくれ。どんな狀況下でも、戦い抜く。」
「パイロット。作戦容にもありましたが、大気圏突ポッド展開後は、パラシュートブースターで降下します。その期間の対空砲火が鬼門ですね。」
「その為に、大気圏突ポッドでチョバムアーマーを裝著するんだろうな。」
「作戦後もそのまま著ている事も、ぎ捨てる事も可能ですが、それは場合を見てですね。移速度が恐ろしく低下するのと、ブースターを使った場合の推進剤の減り方が大きいです。」
「了解だ。サイ。砲撃が多いようなら、なるべく地を這うように進む。その時は著たまんまだ。」
その時、艦放送が流れる。ユウカの聲だ。
「亜空間、抜けます……!」
「こ、これは……!」
続けてムラクモの聲が聞こえる。
「急げ!総員!戦闘配置!本艦は既に戦闘の真っ只中だ!」
どうやら外は激戦のようだ。CICは慌ただしく會話が続いている。
その通信を遮って、エレナから通信がる。
「各アームド、作戦を開始します。艦の護衛にあたる部隊はカタパルトへ、大気圏突部隊は突ポッドへ移を開始してください。」
いよいよ、大気圏突が始まる。
*
「突ポイントは、ストーンバンカー。各アームドはチョバムアーマーを裝著し、待機。大気圏の影響がなくなり次第、自的にポッドが開きます。」
「先行部隊が既に対空砲臺、対空兵を持ったアームドへと攻撃を開始していますが、それでも対空砲火の量は未知數です。ご武運を。」
エレナからの通信が終わる。
僕はジンに通信を送る。
「火星基地はそんなにも対空砲火が厳しいのか?」
ジンは答える。
「もともとはアースゲート含め、火星基地は最前線の要塞だったんだ。その分、防力も高い。」
「あの時の銀河帝國の攻撃が不意打ちだったのと、決死の攻撃だったようで、アースゲートはもはやデブリ。火星基地も完全に乗っ取られているがな。」
「なんとしても取り戻すさ。俺たちの基地を。そして家を。」
エレナからまた通信がる。
「ポッド投下までカウントダウン開始。」
10數え終わった時、艦後方からり落ちるように大気圏突ポッドが出される。
ポイント、ストーンバンカーに向かいポッドは姿勢制を行い、そして高速で落ちていく。
僕はサイに語りかける。
「す、すごいGだな…!」
サイは僕に語りかける。
「舌を噛むと大変なんで喋らない方がいいですよ。パイロット。」
「そうだ。ここはワタシがし気の紛れる話でもしましょうか。」
「超古代人達の見聞によっても火星は戦爭の星として位置づけられてきました。」
「ラグナロク戦爭のさらに以前の古代人達の話です。」
「今、そんな超古代人が本當に火星で戦爭が行われてると知ったら、どんな顔するでしょうね。」
そんな話を聞いてるうちに大気圏を抜けたようだ。ポッドにかかる圧力が和らぐ。そして、ポッドは姿勢制を行い、ポイント、ストーンバンカー上空に到達する。
マキシから聲がかかる。
「ブレイブ隊!?武裝裝著は大丈夫か!?降りるぞ!」
「ヒャッホウ!帰ってきたぜ!火星によぉ!」
そう言ってマキシ機は空に落ちていく。
ジン機、エドワード機も降下を始める。
僕は実弾ライフルと、マガジン數を確認し、シールドの裝著を確認し、サイに聲をかける。
「問題ないな?」
「はい。パイロット。チョバムアーマー、パラシュートパックもオールグリーンです。勇気を出して、飛びましょう。」
「いくぞ!」
そう言って火星の空をる。
雲を抜けると激しい対空砲火が僕らを襲う。
エドワードから通信がる。
「こんなのデタラメだろ!!降りれるかってんだ!!」
それに対してマキシは
「諦めんな!!気合いで避けろ気合いで!!先行で上陸した奴らもいるんだぞ!!」
と怒っている。いや、この場合は激勵しているの方が正しいか。
ジンは
「先行上陸部隊はこんなところで降ろされないはずなんだよな……戦いの神よ。どうか我々に味方してください……」
とシールドを構えながら降下している。
僕は冷靜にシールドを構えてパラシュート展開までの時間を計測していた。
「サイ、予測だとどのぐらいでパラシュートが開く?」
「約120秒程度でしょうか。先行突した地上部隊が思った以上にやられていますね。」
「となると、再突してくる部隊もあるはずだな。それまでにこの砲臺を叩ければいいが。」
「パイロット、足への被弾には注意してくださいね。歩けなくなったら大変です。」
「サイ、任せてくれ。僕の腕を信じろ。」
「頼もしいです。いいトモダチを持ちました。ワタシは。」
そう言ってる間にパラシュートが開く。
そろそろ地表だ。
「サイ!姿勢制のコントロールの誤差修正を頼む!」
「やっております。パイロット。風が強いです。し流されてしまいますが、なんとか持ち堪えさせます。」
近くまで來ると対空砲火は一層激しくなる。
こう言う時に神に祈るのだろう。
シールドへの被弾が激しく、もうボロボロになっている。
足についてるチョバムアーマーもしの被弾でへこんでいる箇所がある。
基地上空に取りつく。
1つ対空砲臺をロックオンし、
「お返しだ!!」
とフルオートで銃弾を叩き込む。
対空砲臺は散する。
ようやく地面に足がつく。サイが火星の重力用にパラメーターをセッティングしたおかげで、難なくけるようになっている。
ブリーフィングでもわかっていたことだが、火星基地はものすごく広い。
僕が著陸した場所はどうやらアームドの訓練所で走路がある。
ブレイブ隊のアームドは全機健在だが、風によって流され、それぞれ遠い場所に流れ著いてしまったようだ。孤立するのはまずい。まずは合流しなければ。
マキシから通信がる。
「全機大丈夫か!?とりあえずストーンバンカーで合流をするぞ!」
エドワードから通信がる。
「隊長、シールドがボロボロだ。そこらの敵から奪えればいいんだけどな。不安だからチョバムはそのままつけて歩くぜ。」
ジンからも通信がる。
「なんとか降りれましたね。こちらもシールドがボロボロです。こちらもアーマーはそのままでストーンバンカーまで後退します。」
僕も通信を返す。
「ストーンバンカーまでの後退を了解した。こちらもチョバムアーマーはぎ捨てずに移する。こちらは走路付近だ。おそらく敵の目が厳しいと思う。合流が遅れた場合は3機でいてくれ。」
そう言って通信を切る。
そうするとサイが
「みんな助けに來てくれますよ。仲間ですから。」
と聲をかける。
「そうだな」
そう言って周りを見渡す。
敵機、グラディエーターが何機もこちらに向かってくるのを確認できる。
IFFに敵機の反応がいくつも表示される。
「まずはここを突破するぞ、サイ!」
「了解です。パイロット。」
そう言ってストライカーを歩かせる。
おそらくここは、地獄とも呼べる戦場だろう。
21話へ続く。
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