《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》雑魚の地球儀 その④
「だとしたらどうなんです? 無効化されていることに変わりはないでしょ」
「そういうセリフが言えるのも今のだけどね」
ニヒトの手が僕へびて來る。
躱そうとしたが、相手の方が速かった。
「―――どうする気です?」
「こうするんだ、お前みたいな奴は」
ニヒトに倉を摑まれたことを認識する暇もなく、僕は空中へ投げ飛ばされていた。
こいつ、見た目に寄らずなんて怪力だ……!?
地面が遠くなっていく。
このままだと、シロの結界の外へ出てしまう――!
「えーくん!」
僕が覚悟を決めたとき、空中へ飛び出したシロが僕をけ止め、再び地面に卸してくれた。
「ご、ごめん。助かった」
「しっかりしてくれ。ボク一人じゃ手に余る相手だ」
「君の言う策っていうのを使ってもか?」
「それには君の力が必要だし、そもそも今はまだその時じゃない。出來ることなら使わずに済ませたい策だからね。ニヒトの力を無効化できている狀態で奴を倒せるなら、それに越したことはないだろう?」
仰る通りだ。
スキルが使えない狀態なら、人數が多いこちら側が有利なはずだ。
集中して戦えば勝てないはずがない。
「だけど、思ったより強敵なんだよね……」
「だからこそボクらの力を合わせるべきなんだ。いいかえーくん、敵は君を狙っている。君が囮になってくれ」
「そうすれば勝てるの?」
「君はどう思う?」
「……勝てなくても、やってみるしかない」
「その通りだよ。ようやく君らしくなってきたね」
そういうセリフ、僕はこんな白髪ホモじゃなくてから聞きたかったな。
ま、今更後悔しても遅いか。
「できるだけうまくやるよ」
ニヒトは退屈そうに、冷めた目でこちらを眺めている。
強者の余裕というやつだろうか。
余裕ぶってくれるのならそうしてくれた方が良い。
その余裕を殺すのが―――僕なのだから。
「作戦會議は終わったかな、愚かな反逆者たちよ」
「無事にあんたを殺す算段がつきましたよ。泣いて許しを請われても、僕は聞きれませんからね」
「負け犬の遠吠えにしか聞こえないなぁ」
うるせえ。
所詮僕は負け犬だ。
実際、今まで散々負けて傷ついて死んできたわけだし。
でも――最後には勝ってきた。生き殘って來た。
この戦いも、勝って、生き殘ってやる。
ニヒトを倒して。
僕はニヒトに対し正面から立ち向かった。
深い憎悪だけを瞳に宿し、ニヒトは拳を振り上げる。
「!」
敵の攻撃を両腕で防いだ僕だったが、その衝撃の重さに全が震えるのをじた。
「千年だ――分かるか? 千年だぞ。余は千年この王國を守って來た。それだけの覚悟をして、王國のために大切なものをいくつも犠牲にしてきた。貴様には余の心など分かるまい」
「大切なものなら僕にだってあります。だから、負けるわけにはいかない」
「知ったような口をきくな!」
ニヒトが右腕を振り回す。
僕はその腕を足掛かりに空中へ飛んだ。
そしてその勢いのままニヒトの肩口に蹴りをれた――が、當然ニヒトはびくともしなかった。
「しは痛がってくれると助かるんですけど」
「余の心の痛みに比べれば、この程度大したことじゃあない!」
ニヒトがをひねり、僕は再び空中に放り出された。
一回転して著地し、もう一度ニヒトと向かい合う。
「そんなに嫌な仕事なら、僕の知り合いが代わってくれますよ。ミアっていうの子なんですけど」
「ふざけるな! ジャギア族のにこの國を任せられるか――それでは、ジャギア族を北の地へ追いやった意味もなくなる!」
怒鳴りながら、ニヒトは僕に接近してきた。
ローブをはためかせながら僕へ手をばしてくる。
僕はそれを、地面ギリギリをるようにして躱した。
「だから、元々それに意味なんて無かったんですよ。疑心暗鬼に囚われず、人を信用していれば、あなただって千年も生きる必要がなかったはずだ」
「誰よりもこの王國の平穏をんでいるのはこの余だ! 余以外に王國を治められるものなどいるはずもない!」
「……そうですか。それなら、仕方ありませんね」
「何?」
「未練を抱いたまま死んでください」
僕には、シロがニヒトの背後に回ったのが見えていた。
完全に死角を突いた位置だ。もはや躱せないだろう。
シロの一撃で僕らの勝ちだ。
―――そう、思っていた。
シロの心臓部から、ナイフの刃先が現れるまでは。
「し、シロ?」
無意識のに僕は呟いていた。
シロのが力なく地面に落ち、跳ねる。
僕は咄嗟にそのを抱え、ニヒトから距離を取った。
同時に聞き覚えのある年の聲が辺りに響き渡った。
「いやー、だめだよだめだよ、ぼく抜きでこんな楽しいことをやっちゃさぁ」
まだ顔にささえ殘している年。
それ(・・)の正を、僕は知っていた。
「キュタ……っ!」
元老院の暗部擔當、キュタ。
ハリシを殺したあの年が、ぞっとするような微笑みを浮かべて、ニヒトの背後に立っていた。
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