《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》雑魚の地球儀 その⑥
本來なら、シロが僕を殺し、死んだ瞬間にスキルを無効化する結界が解け、僕はニヒトの能力に曬され、『固定』されるはずだった。
ちょうど僕が死にかけている(・・・・・・・)狀態で。
そうなると、死ぬことがきっかけで発する僕の【即死(デストラクション)】は発せずに僕らの敗北が決まっていた。
だけどそうならなかったのは――ニヒト自の力が弱っていたからだ。
っていうかシロ、策なんて大層な言い回しをしていた割にはのある作戦だったじゃないか。
もし僕が『固定』されてたらどうするつもりだったんだ。
「余だけが死ぬわけにはいかん……貴様も一緒に連れて行く!」
「させるか……!?」
一瞬、僕の右腕のきが鈍った。
『固定』が効き始めている……!?
【抹消(ホワイト・アウト)】の結界を張ったが、その瞬間にはニヒトの拳が僕の顔にめり込んでいた。
目の前に火花が散る。
「なぜだ!? そうまでして貴様が手にれたいものは何だ!? 余の王國は平穏だったはずだ!」
「平穏だったのは、あんただけだ……あんたの作った王國は、力のない人間に優しくない」
「意味の分からないことを言うな! 貴様たちがやったのは自己満足の反抗と、売國行為だ! なぜ王國の平和を脅かすようなことをした? 貴様たちの行為はこれからの千年、王國最大の汚點として殘るだろう―――」
「違う、新しい始まりだ。ミアのむ世界の!」
「ならば、その世界とは何だ!? 力を持った人間が興した國は、無力な存在を否定する國になる。貴様らは千年前の余と同じ道を辿るしかないのだ」
「そうはさせない! 僕がやらせない!」
「口先だけの小僧が!」
僕と拳の応酬を繰り返すニヒトは、急激に老け始めていた。
千年分の時を、今この瞬間取り戻しているように。
「僕はミアを信じている。だからあんたも、僕らを信じろ!」
「信じられるものか、余の王國を裏切った人間たちを―――」
ニヒトが僕の襟元を摑み上げる。
負のに支配された虛ろな瞳が僕を睨みつける。
その瞬間、ニヒトのは手の先の方から崩れ始めた。
「千年も……長かったでしょう、ニヒトさん」
「何かを為すというのは、呪いだよ……貴様たちもせいぜい足掻いて見せるがいい、國という呪縛の中で」
一陣の風が吹いた。
ニヒトのは千切れ、飛散し、風の中に消えて行った。
――――全ては終わった。
「……!」
不意に、僕の口や鼻から生暖かいものがあふれ出した。
ってみると、それはだった。
ニヒトとの戦いで蓄積したダメージだろうか―――いや、違う。
僕の脳もまた限界を迎えつつあるらしい。
あとしでも戦っていたら、倒れていたのは僕の方だっただろう。
ギリギリの勝利だった。
まあ、今まで楽勝だったことなんてないんだけど。
それに、これ以上スキルを使わないといけないことなんてないだろうし、ようやく僕もお役免ってわけだ。
あとはミアがなんとかしてくれる。
そう思うと一気に中から力が抜け、気づけば僕は仰向けに倒れこんでいた。
空が青い。
あちこちから人の聲が聞こえ始めた。ニヒトがいなくなって、『固定』が解けたからだろう。
ああ、なんだか――眠い。
僕は目を瞑った。
意識が遠くなっていく。
そんな僕のを溫かいものが包んだ。
回復魔法だ。
「……ミア?」
「殘念、俺だ」
瞳を開けると、そこには僕を見下ろすようにエヌが立っていた。
僕の傷を治してくれているようだ。
「さ、最悪だ」
「なっ!? お、お前、せっかく回復させてやっているのにその態度は何だ!?」
「見境なく敵地に突っ込んで『固定』されてるような奴に言われたくないよ」
「そ、それはそうだが、しかし……今お前に死なれては困るからな」
「どういうこと?」
「……お前が死ぬとミアが哀しむだろうが。言わせるな」
うわ。
嫌だな。
こいつもツンデレか?
っていうかジャギア族はみんなツンデレなのか?
嫌な一族だな……。
次回の更新は3月24日です。
熱心な読者の皆様、最終話の投稿に向けてレビューと☆5の準備をしておいてください。
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