《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》雑魚の地球儀 その⑧
「おお! ここにいたのでおじゃるか、お二方!」
と、そこへ懐かしい聲が割り込んで來た。
大柄なを揺すりながら走ってくるその男は、見間違えようもなくグルツおじさんだった。
僕らは立ち上がり、彼を迎えた。
「おじさん、外國にいたんじゃなかったんですか?」
「急いで帰って來たのでおじゃるよ! どうやら魔導王國は陥落したようでおじゃるな?」
「まあ、なんとか。々大変でしたけどね」
「わしのほうも大変じゃったよ……」
おじさんが目を細める。
きっと苦労を重ねた末に援軍を呼んでくれたのだろう。
「おかげさまで何とかなりましたよ。僕の役目はここまでです。これからは、ミアやおじさんにもっと働いてもらわなきゃ……」
「そのことなんじゃが」
「え、なんです?」
僕が訊き返したときには、おじさんは地面にひれ伏すようにしてこちらに頭を下げていた。
「わしが甘かった! すまん! 奴らは―――」
グルツおじさんの聲をかき消すように、あの風切り音が近づいて來た。
僕の隣でミアが呟く。
「どうして(・・・・)、撃機がこちらに(・・・・・・・・)……?」
次の瞬間撃機の編隊がシュルルツの上空を橫切って行き、そして―――。
そして、シュルルツは撃機の落とした弾によって火の海になった。
次々とが起き、地面が揺れる。
熱気と衝撃波が僕らに押し寄せる。
「……これは、なんですか……グルツおじさん?」
僕の質問に、グルツおじさんは頭を下げたまま答える。
「奴らは最初からこれが狙いじゃった。援軍として軍隊を派遣し、機がせばそのまま魔導王國を武力によって制圧し、分割する。『魔法やスキルという、世界平和の脅威となりうる超常技をる國家をコントロール下に置き、世界全の平和に貢獻する』という名目で。えーくん、ミアさん、わしらは駒にされていたのじゃ。三年前、外國技を持って王國を倒そうとしたあの時から」
「そ……そんな」
ミアの顔は青を通り越して真っ白になっていた。
燃え盛る首都を見渡すと、あちこちで反軍のメンバーたちが水魔法による消火活や、負傷者の運搬を行っていた。
しかし、後者はともかく前者の消火活はうまくいっていないようで、火の手は広がり続ける一方だった。
「奴らの兵は魔法をけ付けないようになっているのでおじゃる。わしらが商品として輸出した魔法の技を解析され、対策されたか―――魔法を無効化する技(・・・・・・・・・・)がどこかから流出したか」
僕の脳裏にラフィさんの顔が浮かんだ。
くれぐれも頑張ってね―――そんなことを言っていた、あの顔が。
まったく、あの人もやってくれる。
何が傍観者だ。
最初から自分が勝つことが分かっていたんだ―――いや、この事態はあの人のコンプレックスが為した業なのかもしれない。
ラフィさんが己の持つ力すべてを使い盡くした結果、この事態が生まれたのだ。
僕らは負けたのかもしれない。
スキルや魔法(チート)を、そしてそれらをる者が優遇されるこの世界そのものを憎む、あの人に。
「このままではわし達も攻撃に曬される。わしらは奴ら――外國の國々にとっては國家転覆を目論み実行したテロリストに過ぎん。そして、奴らはそんなわし達に協力したという事実をみ消すために、確実に消しにかかるじゃろう。仲間たちを集めてくれ、ミアさん。出路を確保してある。こんなところで死ぬわけにはいかん。生きておれば必ずチャンスは來る」
グルツおじさんは立ち上がり、ミアの手を取った。
地平線の向こうから、武裝した車両の一団がこちらへ接近してくるのが見えた。
「……まだ終わりじゃないだろ、ミア」
「えーくん?」
「僕は今まで君のために戦ってきた。やっとここまで來たのに、それをどこの誰かも分からないような奴らに良いようにやられちゃムカつくんだよ」
それにまだ、ラフィさんとの決著はついてない。
「何言ってるの、えーくん! 勝てるわけないじゃない! それにもう、あなたは……あなたのは!」
「だからこそだよ。ここで逃げれば命は助かるかもしれないけど、僕はもうスキルを使えないになるだろう。だから、まだがく今のに出來ることをやっとかないといけない」
僕が言い終わるのと同時に、頬に鈍い痛みが走った。
ミアに叩かれたのだ。
「馬鹿なことを言わないで! えーくん、あなた死ぬかもしれないのよ!?」
「死ぬのには慣れてる。今まで何度も死んできたからさ」
「どうして? 私が行かないでって言っているのに、どうして行くの!?」
僕はミアの顔を見た。
白いと、赤い瞳を見た。
今まで何度も見て來たそれを、最期(・・)にもう一度、見た。
「ミアが好きだから――ミアの願いを葉えたいから」
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