「〜〜♪　〜〜〜〜♪♪」

ベッドに橫になり、リップを眺めてずっとご機嫌の清坂さん。

昨日から橫で添い寢することになり、俺もベッドに橫になってるけど……眠れない。目がギンギンに冴えている。

「海斗センパイ、どうしてそんな端っこにいるんです？」

「お、お構いなく。端っこが好きなので」

「でも、もっとこっち來ないと落ちちゃいますよ。ほらほらっ」

「わ、ちょっ……！」

き、清坂さんっ、最近強引すぎじゃないですかねっ……！？

腕を引かれ、清坂さんとの距離が近くなる。

うぅ。可い、暖かい、いい匂い……！

「あ、そういえばセンパイ。最近私、ソフレについて調べたんすよ」

「ソフレについて？」

「はいっす。どうやらソフレって側で寢るだけじゃなくて、腕枕や抱き枕なんかで人をじるものらしいっすよ」

へぇ、腕枕や抱き枕……え？

「という訳で、今日は腕枕に挑戦っす」

「待て待て待てっ。ホント待って……！」

「む。なんすか？」

なんすかじゃないわ、なんすかじゃ！

「お、俺らって、まだソフレになって數日だよ？　流石にペースが早いと思うんだけど」

「こういうのに、早いも遅いもないっす。やるかやらないかっす」

あらやだ男らしい。

こういうところを見ると、ギャルってさっぱりした格してると思う。

「それに、抱き枕はもうやってるじゃないっすか。ほぼ事故でしたけど」

「確かに」

あれに比べたら、腕枕はセーフ……か？

なんだかアウトとセーフの境界が曖昧になってる気がする。

「……ちょっとだけね」

「！　センパイ、流石っす」

何が流石なのやら。

腕を清坂さんの方にばすと、遠慮もなく腕を枕にして橫になった。

「おぉ……これ、すごく心地いいっす」

「そう？」

「はい。今までも心の隙間を埋めてたのに、これは段違いです。心がポカポカします」

清坂さんの言っている意味、なんとなくわかる。

俺も最初は張したけど、いざ腕枕をすると……張より、安心の方が強い。

人というか、重みというか……そういうのが全て心地いい。

「なるほど。これが本當のソフレなんすね。今まではモドキでした」

「モドキかどうかはわからないけど、確かにこれはいいかもね」

俺も今まで、こうして誰かと寢たことはなかった。

もちろん、親も含めて。

こうして隣で人をじるって……こんなにも安らぐものだったんだ。

話を聞く限り、清坂さんも訳ありの環境で育ったみたいだ。

こうして人をするあたり、相當寂しい思いをしたんだろう。

似たもの同士の傷の舐め合い、か。

まあそれとは別に、頬にキスされたという事実で頭が沸騰しそうだけど。

「ふふ。センパイ、おやすみなさいっす」

「うん、おやすみ」

相変わらず寢付きがいいのか、清坂さんはスッと眠りにる。

そんな寢顔を見つつ、俺も睡魔にを任せた。

◆

翌日。俺は昨日のことで集中出來ていなかった。

添い寢に関しては、思いの外いいものだった。それは認める。

俺が気にしているのは、頬へのキスだった。

お禮で頬にキスって、そんな気軽にするものなのか？

それとも清坂さんの距離が近いだけ？

他の人にも同じようなことしてるのか？

そんなことばかり考えてしまう。

下手に聞くと重い男って思われそうで、下手なことは聞けないし。

添い寢じゃ、こんなに考えることはなかったのに……俺、もしかしてチョロい？

「はぁ……」

「海斗。ため息なんてついて、何考えてんの？」

「……あ、悠大。いやちょっと……」

清坂さんにキスされたとか、誰にも相談出來ないでしょ。頬にとはいえ。

親友の悠大ですら、清坂さんを崇めてる始末だ。

もしソフレの上にキスまでされたって知られたら、何を言われるかわかったもんじゃない。

「ほら、もうお晝だよ」

「……え。もう？」

「こりゃ重癥だ」

しまった。午前の授業全く聞いてなかった。

昨日も休んじゃったし、集中しないと。

「本當、海斗がこうなるなんて珍しいね。どうしちゃったのさ」

「いや、まぁ……」

「もしかして、清坂さん？」

「……は？　え、な、なんで……？」

まさか、一緒にいるところを見られた……！？

いや、學校外で清坂さんとの絡みはない。じゃあなんで……？

「なんでって、三時間目はずっと外を見てたじゃないか。一年生の育。清坂さんと天さんがいたでしょ」

あ……そういえば、そうだった気もする。

無意識のうちに目で追ってたのか、俺。うわ、なんか恥ずかしい。する乙か、俺は。

「あ、もしかして天さんの方？　ついに海斗も、天教にるのかい？」

「は？　天教？」

「ファンクラブだよ。天さんは、天教。清坂さんは、清坂黨ってね」

「そんなことになってんのか。暇かな、うちの學校の生徒は」

「因みに僕は両方にってる」

「それでいいのか」

「うん。清坂さんと天さんは仲がいいからね。ファンクラブの會員同士も仲良いし」

何それ、超平和じゃん。

「でも最近、清坂さんの方にある噂が流れててさ」

「噂？」

「うん。なんでも、男が出來たとか」

「……え？」

お、男？　え、男が出來た？

「驚きだよね。最近ファンクラブの間では、誰が相手かって話で持ち切りだよ」

「それはもう確定なのか？」

「いや、まだ噂程度だよ」

ほっ……よかった、まだバレてはないみたいで。

バレないように息を吐くと、悠大がニヤリと口角を上げた。

「安心してるねぇ、海斗。やっぱり清坂さんのことが気になってるんだ。もしよかったら、ファンクラブ紹介しようか？」

「違うわ」

「そうだよね。ガチ勢はファンクラブれない規約になってるし」

「だから違うって」

というか、規約まで作ってるのか。ガチのファンクラブじゃん。

「さ、海斗のの悩みを肴に、ご飯を食べましょうかね」

「ねぇ……」

……これって、なのか？

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