《【書籍化決定】拾ったギャルをお世話したら、〇フレになったんだが。》第56話 ハプニングオブハプニング
『にゃははー、せーかい!』
せーかい、じゃないわ!
「お、おまっ、何考えて……!」
『だいじょーぶだよ。こうなると思って、ちゃんとタオル巻いてるから』
え、タオル?
よく見ると、確かにお湯の中でタオルを巻いていた。
でもいつもより面積が広いし、控えめだが谷間も見える。それに腳も組んでるから、いけないところまで見えちゃいそうだ。
『ね? だいじょーぶだから、このまま話そうよ』
「解けるんじゃないの?」
『そんなドジ踏みませーん』
本當かよ。ソーニャの自信ってマジで拠がないんだよな……。
まあ、ソーニャがそれでいいって言うなら、俺もこのまま會話させてもらうけど。
「というか、なんで風呂場から電話してんの?」
『ゆーわく』
「は?」
『ゆーわくだよ。今ヨッシーって、キヨサカさんたちと一緒でしょ? そんなのふこーへいだと思うんだよね。だから私は私で、ヨッシーをゆーわくしよーと思って』
なるほど、そういうこと……いやなるほどってなんだ。何を納得してるんだ、俺は。
ソーニャが手で水を弾いているのか、畫面の向こうからちゃぷちゃぷという音が聞こえてくる。
見てはいけないとわかっていつつも、思わずチラ見。
『そんなチラ見しなくても、ヨッシーになら全部見られてもいいよ』
「ば、馬鹿言うな。子高生なんだから、恥じらいを持て」
『恥ずかしいよ』
ソーニャはむっとした顔でインカメラに顔を近付けた。
風呂にってるから火照ってるのか、それとも恥なのか。顔が赤らんでいて、目の奧もし揺れている。
『スキな男の子にを見られて、恥ずかしくないとでも?』
「じゃあ風呂場からビデオ通話はやめてくれ……」
『いやよ。お風呂場じゃないとゆーわく出來ないじゃない。私は私のやり方で、ヨッシーをゆーわくするわ』
ダメだ、話が通じない。頭がくらくらして來たぞ。
眉間を指で押さえていると、ソーニャはスマホを浴槽の縁に置いた。
しかも真正面に。全が映るから、その角度は止めてほしいんだけども。
『でも恥ずかしいのはほんとーだから、あんま見ないでよ』
「じゃあそこ置くなよ……」
『ダメよ。ゆーわくするって言ったでしょ』
言ったけども。
……あ、そうか。俺がスマホを──。
『言っておくけど、スマホを伏せたらあんたらのことがっこー中に広めるからね』
「HAHAHA! そんなことするはずないじゃないか!」
『そ? ならいーわ』
あ、あぶねぇ。ギリギリセーフ。
なんで俺、社會的信用の生殺與奪の権をこいつに握られてるんだ。ソーニャの癖に。
『ね、ヨッシーって二人とどんな風に生活してるの?』
「ど、どんな風にって……まあ普通に。居候だし、互いに干渉しすぎないように……かな」
『ほんとー? 男が一つ屋の下で暮らしてて、何もないって逆に不健全じゃない?』
「そ、そうか? 意外と普通だぞ」
『そーかな』
「ソーニャの常識に何でもかんでも當てはめるなよ」
『むー、わかったよ』
納得はしてないみたいだけど、渋々頷いた。
まあ、普通納得しないよな。絶対言わないけど。
『いーなー。私もヨッシーとどーせーしたいなー』
「無茶言うなよ。あと同棲じゃなくて同居な」
『似たよーなもんじゃん。それに、スキな子と一緒に住みたいってよっきゅーは誰もがあると思うし』
そんなもんかね。
好きな人と同棲……ダメだ、想像出來ん。
そもそも、俺は誰かを好きなのかどうかって所から考えないといけない。
清坂さんが好きなのか。天さんが好きなのか。それともソーニャが好きなのか。
なくとも三人は、俺に対して不快なは持ってないと思う。
ソーニャには告白された訳だし。
清坂さんと天さんも、不快だったらソフレやハフレにはならないはずだ。
なら俺は……俺は……。
ガラッ。
「センパーイ、まだ電話してるっすか?」
「の聲が聞こえるけど、パイセン」
あ。
しまったぁ! ビデオ通話はスピーカー! 扉一枚隔ててるだけだと外にれるんだ!!
「まままままだ電話中だからし待っててくれると──」
『! カイト君、そんな所まで見たいの? やーん、えっちなんだからぁ〜』
「ちょーーーーー!?!?!?」
おまおまおま何考えてんのお前はアァ!?
「んなっ!? センパイ何してるっすか!? ナニしてるんすか!?」
「今の聲、ツキクラパイセンでしょ! 二人で何してたの!?」
「何もしてない! してないから!!」
『あぁんっ。カイト君のゆびぃ〜』
「テメェ黙れマジで!!」
「センパイ、ナニしてるっすかぁ!!」
「パイセンのケダモノぉ!!」
「俺ここにいるのにナニも出來ないからな!?」
何このカオスな空間。どうしてこうなった。
「パイセン、スマホよこせー!」
「通話切って下さいっすー!」
そんな中、二人がスマホを奪おうと迫ってくる。
ちょっ、二人ともやめっ……!
『くおるぁ! ソーニャ、風呂で盛るんじゃねぇー!!』
『げっ、ポーリャってくんなし!』
『アンタが風呂場で盛ってるからでしょーが!』
えっ、ポーリャって……確か、ソーニャのお姉さんだったか?
た、助かった。よし、向こうはポーリャさんに任せて──。
「えい!」
「あ」
清坂さんのジャンプと同時に、スマホが手から弾かれた。
宙を舞うスマホ。
運良くか運悪くか、畫面が俺の方を向くと。
そこに映し出されていたのは──慌てて浴槽から立ち上がった拍子に、タオルがはだけたソーニャの姿だった。
俺の脳が無駄にフル回転し、目に映るものがスロー再生される。
ソーニャの全てが見え、脳に焼き付く。
ソーニャも目を見開いて俺を見て固まった表を最後に、通話が切れた。
……ナイス(バッド)タイミング。
それからソーニャは、三日ほど學校を休んだ。
いや、なんかごめん……。
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