《【書籍化決定】拾ったギャルをお世話したら、〇フレになったんだが。》第59話 腐れ縁とギャップ

翌日、俺は一人で駅前に來ていた。

こうして一人でいるのは久々な気がする。最近はテスト対策とかで、常に誰かと一緒にいたし。

しかも今日はデート(仮)だ。

相手は頭は殘念だが二年生でもトップクラスの、月藏ソフィア。

前までは腐れ縁だと思っていた。

でも実は俺のことが好きらしいけど……正直、まだ冗談だと思っている。

でも、ソーニャは本気で俺のことを好いている。

先週まではテストに集中してたから気にしてなかったけど、改めて意識すると……き、張してきたな。

自分の格好を確認する。

ベージュのチノパンに白い無地のシャツ。上から黒い七分丈のジャケット。肩からショルダーバッグを背負っている。

念の為髪はワックスでセットしてるけど、変じゃないかな。ソワソワ。

そのまま待つことしばし。

急に周囲が騒がしくなった。

「えっ、誰?」

「すごい人。モデルさんかな?」

「お前聲掛けてみろよ」

「無理無理無理ッ」

「外國人……?」

「腳長……」

なんだ? 誰が來たんだ?

野次馬の視線の先に目を向ける。

んー……ん?

「はぁっ、はぁっ……! よ、ヨッシー!」

「え……ソーニャ?」

いつものスウェットやパーカーじゃない。

七分丈のチノパンに、肩出しのトップス。手には小ぶりのハンドバッグ。

後れを編み込んで後ろでまとめていて、足元はヒールの低いパンプスを履いている。

耳にはシルバーとゴールドが螺旋しているイヤリングを付け、薄らと化粧までしていた。

いつも絶世のだと思っていた。

でも、オシャレと化粧で完全無欠のに変したのだ。

ソーニャは俺の側までやって來ると、膝に手をついて息を整えた。

「はぁ、はぁ。お、お待たせ」

「……ぁ、いや……待ってない、ぞ」

ギャップがすぎて、流石の俺も聲が出ない。

こんなガチガチにオシャレをしてくるとは思わなかった。本當、人すぎる。

「えと……どう? 似合う?」

「……え。あ、ああ。似合う、本當に……」

「ホント? えへへ。ヨッシーに褒められた」

ぐっ、可い……!

危ない、油斷してると魂が浄化されそうだ……!

ソーニャを直視出來ず、思わず目を逸らす。

でもいつまでも見ない訳にはいかないし……。

そう思いソーニャを見ると、恥ずかしそうに俺を見つめてはにかんだ。

「その……ヨッシーも、かっこいーよ」

「っ……そ、そうか」

「うん」

や、やりづらい。これは本當にソーニャなのだろつか。誰かが変裝した偽じゃないか?

だってソーニャがこんな……あーもうっ! なんだこれ!

頭を振って雑念を払う。

こんなんじゃいつまで経っても移出來ないじゃないか。

「じゃ、行くか」

「そだね」

目的地へのアクアミュージアムは、電車で移しなきゃならない。

ソーニャが人すぎて人目が集まりすぎてるし、早く移しちゃおう。

無事、目的地に向かう電車に乗れた。

流石に休日だから、人が多すぎる。ほぼ満員電車だ。

「ソーニャ、大丈夫か?」

「う、うん。だいじょーぶ……あ、ごめん噓。やっぱキツイかも」

「なんで噓ついたんだ……ほら、こっち來い」

「にゃっ」

ソーニャの腕を引くと、上手く場所を代して隅の方に寄せた。

壁に両手をついてを壁にし、人混みからソーニャを隔離する。

ラノベや漫畫であるあるのシチュエーションだが、背に腹は変えられん。

「おぉ……これ見たことあるけど、実際やられるとドキドキするね」

「ばっ、耳元で囁くなっ」

俺、最近耳が弱いことに気付いたんだから。

ソーニャは「へぇ……」と呟くと、俺の肩に顎を乗せてきた。

「ふぅ〜」

「ッ!?!?」

耳ッ、息ッ……!?

「ふふふ。ヨッシー、耳よわよわなんだ」

「や、喧しい」

「ざーこ、ざーこ♪」

こいつ、楽しそうにしやがって……! 人混みから守ってやってるってのに、恩を仇で返すなよ……!

頑張って耐えていると、次の駅に到著。

が、この駅がまた宜しくない。

最悪なことに、この駅から乗り込んでくる客は沢山いるのだ。

案の定大量に乗り込んでくる客。

「うおっ!」

「キャッ……!」

その圧に負け、完全にソーニャに著してしまった。

途端にソーニャの匂いが濃くなる。

バニラのような、生クリームのような匂い。そこにシャンプーと、ソーニャ自から香る匂いがブレンドされる。

それにこの著によって、慎ましくもしっかりと主張するお様やしっかりとした括れをじてしまい、々とヤバいことに。

「ご、ごめんっ……!」

「う、ううん。仕方ないよ、混んでるし」

ソーニャも恥ずかしいのか、真っ赤にした顔を伏せてしまった。

思わぬいじらしい態度に、俺も急激に心拍數が上がる。

ソーニャのこんな姿、見たことないんだけど。可すぎないか、こいつ。

「…………ぁ」

「ど、どうした?」

「……ヨッシーの匂いがする……」

「やめんか」

「やだ」

俺のジャケットのボタンを開けて、そこに顔を埋めてきた。

なんだこれ。なんで俺は満員電車でに匂いを嗅がれてるんだ。頭が茹でダコになりそう。

「むっ。でもキヨサカさんとアマナイさんの匂いもする」

「そ、そりゃあ同居してる訳だし、仕方ないだろ」

「なら私の匂いで上書きしてやるし」

に腕を巻き付け、匂いを嗅ぎつつ更に著してきた。

「や、やめろって……!」

「やだもん」

子供か!

「ヨッシーはいや?」

「いや……じゃ、ない……けど……」

「だよね。ヨッシーのヨッシー、元気だもん」

──死にたい。

結局、駅に著くまでの三十分間。マーキングされるようにずっと著されていた。

既に瀕死なのですが……俺のライフはもうゼロよ。

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