《【書籍化&コミカライズ】関係改善をあきらめて距離をおいたら、塩対応だった婚約者が絡んでくるようになりました》あの男とは関わるな
不安は翌日になって的中した。
なんとアーネストが公爵邸に直接押しかけて來たのである。
婚約したばかりの頃は、アーネストは頻繁にビアトリスのもとを訪れては、一緒に庭を散策したり他ないおしゃべりを楽しんだりしたものだが、ここ數年は義務のない限り一切近づこうとしなかった。そのアーネストがせっかくの休日を潰してまでやってきたことは、否が応でもビアトリスの不安を掻き立てた。
「なんで俺がわざわざ來たのか、分かっているな?」
ビアトリスがサロンにると、アーネストは不機嫌さを隠しもせずに切り出した。
「大変申し訳ありませんが、私には心當たりがございません」
ビアトリスは相手を刺激しないよう、なるべく靜かな口調で言った。
「とぼけるのはよせ。気付かれていないとでも思っていたのか? 昨日赤の男と一緒にいただろう」
「タルトのお店でのことでしたら、あそこには五人のグループで來ていたのです。彼と私の他に生徒が二人、男子生徒が一人一緒におりました。やましいことは何もありません」
「毎朝あずまやで逢引きしているとの噂も聞いているぞ。まさかと思って聞き流していたが……それも本當だったんだな?」
「向かい合ったベンチに腰掛けて、普通におしゃべりしているだけです。あの通り壁もない開放的な場所ですし、逢引きという表現は不適當かと存じます」
「君は俺の婚約者なんだぞ。しはわきまえたらどうなんだ」
まるで嫉妬でもしているかのような言いに唖然とさせられる。あれだけ疎ましがっていた婚約者が、誰と仲良くしようとどうでもいい話だろうに。
(プライド、なのかしらね)
自分の所有だと思っていた相手が、他の男と親しくすることが彼のプライドに障ったのだろう。アーネストの考えていることはよく分からないが、取り合えずそう思っておくことにする。
「もう一度申し上げますが、彼は単なるお友達です。會話する時はきちんと距離を保っていますし、王太子殿下の婚約者として、恥じるような真似はなにひとつしておりません。昨日は五人のグループで一緒に出かけたのです。二人きりで出かけたことはただの一度もございません」
「たとえ他の人間がいようと、婚約者の居るで親族でもない異と共に出かけるのが問題だと言っている」
そんなマナーは聞いたことがない。
それでもかつてのビアトリスならば、マナー云々に関わらず、アーネストが嫌がっていると知れば即座にやめたことだろう。実際、今も心の中には「アーネストにこれ以上嫌われないために、もう二度と彼には會わないと今すぐ誓った方がいい」と主張する聲がある。
しかしその一方で、ビアトリスはカインを失いたくなかった。長らく孤獨だったビアトリスにとって、カインは大切な友人だ。マーガレットやシャーロットたちと同様に。
そもそも嫌われないための努力とは何だろう。今までビアトリスは一切アーネストに逆らわず、彼の意に沿おうと必死だったにもかかわらず、容赦なく嫌われたではないか。
「……私は問題視されるようなことではないと思います。それに親族でもない異と一緒にいたのは、アーネストさまも同じではありませんか」
嫌味に聞こえるかもしれないが、これは當然の指摘だろう。なくとも自分はあんな風に腕を絡めたりはしていない。
「マリアは生徒會のメンバーだ」
「もちろん存じておりますが、昨日出かけていたのは生徒會の仕事ではないでしょう?」
「君は俺が生徒會の人間と親睦を深めるのが気にらないのか?」
「いえ、けしてそのような」
「もしかして、生徒會に選ばれなかったことを未だにに持っているのか?」
ビアトリスは答えに窮した。
生徒會に選ばれなかったことに傷ついたのは事実だし、その傷がまだ完全に癒えていないのも事実である。とはいえ、それとこれとは別問題だ。
以前からアーネストときちんと話したいと思っていたが、こうして実際に話してみると、なにか絶的にかみ合わないものをじる。昔は視線をわすだけで通じ合っていた気がするのだが。
どう答えるべきか考えあぐねていると、アーネストは意外な提案を持ち出してきた。
「分かった。それじゃ君に生徒會の手伝いをさせてやろう」
「はい?」
「雑務が多くて人手が足りないから、ちょうど手伝いをれようと思っていたところだったんだ」
アーネストは「嬉しいだろう?」と言わんばかりの調子で、言葉を続けた。
「――その代わり、もうあの男とは関わるな」
「申し訳ありませんが、それは承服できません」
「なんだと?」
「彼は大切なお友達です。生徒會の手伝いはどなたか別の方にお申し付けください」
「……君は生徒會のメンバーに加わりたいんじゃなかったのか?」
「以前はそうでしたが、今はその、々と忙しいので……もっと他に相応しい方がいらっしゃると思います」
アーネストの言う通り、かつてのビアトリスは確かにそれを切していた。アーネストに「雑用でもいいから手伝わせてしい」と懇願し、にべもなく撥ねつけられたのは他ならぬビアトリス自である。
しかし昨日の一団を見て、あの中にりたいとはもはや微塵も思わなかった。あそこにビアトリスの居場所はない。彼の居場所は、昨日一緒に出掛けたメンバーの中にこそ存在する。
「あとかられてくれと言ってきても遅いんだぞ」
「それはもちろん分かっております」
「勝手にしろ」
アーネストがようやく帰宅した後、ビアトリスは深々と息をついた。
本當にこれで良かったのか、改めて己のに聞いてみても、やはり後悔はわいてこなかった。
(それにしても)
あの當時のビアトリスの懇願に対し、「メンバーを増やすつもりはない。俺の婚約者だからと言って調子に乗るな」と言い放ったアーネストの蔑みの眼差しを、「俺に公私混同させるつもりか」と吐き捨てた口調の刺々しさを、今も鮮明に記憶している。それなのに今になってこんな理由で「それ」を投げ與えようとするとは。
あのときの自分が味わった恥と絶は一何だったのだろう。
ビアトリスは婚約者に対する不信が滓のように溜まっていくのをじざるを得なかった。
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