《【電子書籍化決定】生まれ変わった騎士は、せっかくなので前世の國に滯在してみた~縁のある人たちとの再會を懐かしんでいたら、最後に元ご主人様に捕まりました》様々な真実を知りました
著替えを済ませた私たちは、応接室に通される。
お茶の用意を終えると侍は部屋を出て行き、中には三人だけが殘された。
ライアンとピーターが著ているのは明らかにノヴァ殿下のだとわかる服で、筋質のライアンはし窮屈そうに、兄は多余裕があるように見える。
しかし、私が借りたドレスはサイズを測ったかのようにほぼピッタリ。
過度な裝飾はなく、きやすい私好みの服だった。
自分で言うのも何だが、もわざわざ髪と瞳のに合わせたかのように、私によく似合っていた。
◇
お屋敷の中はひっそりとしていて、音一つしない。
もしかしたらノヴァ殿下のご家族に會えるかもしれないと期待していた私は、隣に座る兄へ顔を向けた。
「兄上、ノヴァ殿下のご家族の方と會われたことはありますか?」
「レンブル様は…まだ、ご結婚をされていない」
「えっ?」
驚いてライアンへ視線を向けると、彼も頷いた。
「…団長は人された日に、『自分は、生涯獨を貫く』と國王陛下へ宣言されたんだ。それからは、見合い話をすべて斷っている」
人前に何人かとお見合いをしたが、誰一人として心をかされる方はいなかったようだ…と、ライアンは語った。
「宰相様から頼まれて、私は一度レンブル様の説得にあたったことがあるんだ」
「説得…ですか? 何の?」
「『自分には、幸せになる権利など無い』と仰るから、そんなことはセリーヌもんでいないとお伝えした。殘念ながら、聞く耳を持ってもらえなかったが…」
「そんなことが…」
「俺も団長へ言ったんだ。『父は、あなたが幸せになることを何よりも願っている』と。そしたら…」
ライアンが言葉をつまらせる。
「『一人生き殘った自分だけが幸せになることが、どうしても許せない…』って…」
「そんな…」
國を守る騎士になるという夢を葉え、騎士団長としての務めを立派に果たしているノヴァ殿下がそんなことを思っていたなんて、夢にも思わなかった。
最後にご家族仲睦まじいお姿を拝見したら、心おきなく國へ帰ろうと思っていたのに。
「団長は、追悼式が追悼集會になってからも、毎年この日は必ず休暇を取って、からずっと見守ってこられたんだ」
「だから、今日はあんな恰好をされていたのね…」
皆にされ慕われていた主のために、今の自分ができることはないだろうか。
私はじっと考えていた。
◇
「…では、理由を聞かせてもらおうか」
冒険者の服から著替えを終えたノヴァ殿下は、腕組みをし険しい表で三人を互に見據える。
私たちは顔を見合わせて無言のやり取りをしていたが、意を決し私が口を開いた。
「ノヴァ殿下、大変ご無沙汰をしております。私は、セリーヌ・ログエルです」
「………」
「あの日…殿下とお別れしたあと、すぐに生まれ変わりまして、今はランベルト王國のスーザン・バンデラスとして生きております」
「…その話を、私に信じろと?」
「もちろん、すぐに信じていただけるとは思っておりません」
そう言うと、私は一度口を閉じた。
「ログエル伯爵殿とライアンは信じているようだが、その拠は何だ?」
「畏れながら申し上げます…」
ピーターとライアンが、それぞれ説明を始めた。
セリーヌしか知り得ないことをスーザンは知っている、だから、生まれ変わりで間違いない…との話を、ノヴァ殿下は黙って聞いていた。
「君たちの言い分はわかった。それなりに拠があることも理解した。では、私から一つ質問をさせてもらうが、いいだろうか?」
「はい」
私へ真っすぐに向き直ったノヴァ殿下は、ゆっくりと深呼吸をした。
「私とわした、最後の約束を答えてほしい」
「ノヴァ殿下との、最後の約束……」
彼とは、いろんな約束をした。
果たせた約束も、果たせなかった約束もたくさんある。
「一緒にお忍びで街へ出て買いをする約束は果たせました。あの時に買って皆で食べたクッキーや串焼きは、本當に味しかったですね。果たせなかった約束は……私の瞳のに似ているというブルーマロウの花畑を見に行くという話でしょうか? ノヴァ様が人されたら一緒に飲みに行く約束……それとも、実地訓練のあとに、皆でささやかなお祝いをするという話ですか? そういえば、私はその『お祝い』が何か、聞かされておりませんでした」
私が思いつくままに答える度に、ノヴァ殿下の目は徐々に大きく見開かれていくが、彼は「違う」と首を振った。
「その約束は、あの日にわしたものだ。言い方を変えれば、セリの願いを葉える…とも言えるな」
「私の願い…ですか」
う~んと唸りながらあの日の記憶を手繰っている私を、ピーターとライアンは固唾(かたず)を呑んで見守っている。
――そういえば、私がノヴァ殿下に何か言ったような…
約束を果たす前に死ぬなと言われて、殿下が私を嫁にもらってくれるという冗談話を思い出して、それから…………………………………………………………
…………!?
「あの…一応思い出したのですが…えっと…ここで言うのでしょうか?」
「ああ、思い出したのなら答えてくれ。それが、本人であるとの証明にもなる」
たしかに、この話は二人だけしか知らないものだ。
しかし、ノヴァ殿下へはまだしも、ピーターとライアンに知られるのは非常に恥ずかしい。
「…もし…私が生まれ変わって…もう一度ノヴァ殿下にお目にかかれたら…その……」
「その…何だ? はっきりと言ってくれ」
「よ、嫁にもらってほしいと…申し上げました!」
恥ずかしさをごまかすように、最後は開き直って大きな聲で言い切った。
その容に驚いたピーターは噎せて咳き込み、可笑しさに耐えきれなかったライアンは吹き出したが、ノヴァ殿下は目を閉じたまま微だにしない。
しばらくの間、部屋にはピーターの咳とライアンの笑い聲だけが響いていた。
「…団長、納得してくれましたか?」
目を潤ませたライアンが、ノヴァ殿下へ笑顔を向ける。
「ああ…彼がセリなのは間違いない。それだけは斷言できる」
目を開けたノヴァ殿下は、黃緑の瞳で私を見つめる。
彼がたまに見せていた何か言いたげなその表を、私は十八年ぶりに拝見した。
◇
私(セリーヌ)のかなり恥ずかしい話をピーターとライアンに知られてしまったが、その甲斐あって、ノヴァ殿下には信じてもらえた。
だから、結果的には良かったのだと思う……まだ、ライアンはニヤニヤしながらこちらを見ているけど。
「やはりセリには、そのドレスがよく似合う。皆の見立てに間違いはなかったようだな…」
ノヴァ殿下がらした言葉に、いち早くライアンが反応した。
「じゃあ、団長は最初からわかってて…このドレスを?」
「いや、半信半疑だった。でも、容姿だけでなく、ここまで仕草が似ている者はこれまでいなかったからな、本當にセリの生まれ変わりだったら…と思っていたところに、君らのあの発言だ。確信するしかないだろう?」
団長も人が悪い!と愚癡るライアンを橫目に、ノヴァ殿下が私へ優しい笑みを向ける。
「そのドレスは、セリへの贈りとして皆が用意していただ。あの日あんなことがなければ、十七歳を一緒に祝っていたのだが…」
「お祝い…私の…」
あの日の出來事が、鮮明に思い出された。
◆ ◆ ◆
「セリ、実地訓練が終わったら、皆でささやかなお祝いをするぞ!」
何の前置きもなく、突然ジョアンが言い出した。
「お祝いということは…味しいものが食べられるのですか?」
お祝いと聞いてすぐに食事を連想したセリーヌを、執務用の椅子に座っているノアルヴァーナが目を細めて眺めている。
「ははは…セリはいつでも、気より食い気だな」
「まあ、セリーヌらしいがな…」
苦笑いを浮かべたインザックとそれに同意したマシューを軽く睨むと、セリーヌはノアルヴァーナとゼスターへ顔を向けた。
「…ところで、今日は何のお祝いなのでしょう? ノヴァ殿下はご存知ですか?」
「えっと…私も、何も聞いていないな。なあ、ゼスター?」
急に話を振られたゼスターが、コクコクと頷いている。
「そ、そうですね…。私は、新作のお菓子を買ってくるように言われただけで…」
「「「「あっ! ゼスター…」」」」
「えっ…新作のお菓子!?」
新作とはどんなお菓子ですか?とゼスターへ詰め寄るセリーヌと、しまった!と口を押さえたゼスター。
そんな二人を、インザックとマシューは呆れ顔で眺めていた。
そんな中…ノアルヴァーナは執務機の引き出しを開けた。奧に隠すように置いてある長方形型の箱が見える。
中を確認すると、彼はすぐに引き出しを閉めた。
微笑を浮かべているノアルヴァーナを、ジョアンが優しいまなざしで見つめていた。
◇
「今の流行には合わないかもしれないが、ぜひけ取ってほしい。きっと……彼らも喜ぶ」
「あ、ありがとう…ございま……」
最後は、言葉にならなかった。
思い浮かぶのは、彼らの笑顔だけ。
皆の優しい気持ちと、さり気ない気遣いがとても嬉しい。
でも…
――ジョアン殿……インザック殿……マシュー殿……ゼスター殿……
彼らへ直接お禮を伝えられないことが、本當に殘念でならない。
このドレス姿を見たら、何と言ってくれたのだろうか。
涙が止めどなく溢れてくる。
大事なドレスを汚してしまいそうで慌てて手で拭うが、それでも涙は止まらない。
人目を憚(はばか)らず、しゃくり上げて泣く私に、ノヴァ殿下はハンカチを貸してくださった。
兄は、よしよしと頭をでてくれる
それに対しライアンは…
「そのドレス、大事にしろよ。それのせいで、うちは離婚の危機に陥ったんだからな!」
彼いわく、ジョアン殿が代表して店とやり取りをしていたそうだが、それを奧様に見つかり「浮気をしている!」と騒になったとのこと。
しかし、ノヴァ殿下と皆の説明で誤解はすぐにとけたそうだ。
しんみりとしてしまった雰囲気を和ませようとしたライアンなりの気遣いだとは思うのだが……彼は本當に、私の涙を引っ込めさせるのが上手だと思う。
私たちだけ24時間オンライン生産生活
VR技術が一般化される直前の世界。予備校生だった女子の私は、友人2人と、軽い気持ちで応募した醫療実験の2か月間24時間連続ダイブの被験者に當選していた。それは世界初のVRMMORPGのオープンベータ開始に合わせて行われ、ゲーム內で過ごすことだった。一般ユーザーは1日8時間制限があるため、睡眠時間を除けば私たちは2倍以上プレイできる。運動があまり得意でない私は戦闘もしつつ生産中心で生活する予定だ。まずは薬師の薬草からの調合、ポーションづくり、少し錬金術師、友達は木工アクセサリー、ちょびっとだけ鍛冶とかそんな感じで。 #カクヨムにも時差転載を開始しました。 #BOOTHにて縦書きPDF/epubの無料ダウンロード版があります。
8 98【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】
※書籍&コミカライズ決定しました!書籍第1巻は8/10発売、コミカライズ第1巻は10/15発売です! ※ニコニコ靜畫でお気に入り登録數が16000を突破しました(10/10時點)! ※キミラノ注目新文蕓ランキングで週間5位(8/17時點)、月間15位(8/19時點)に入りました! ある日、月坂秋人が帰宅すると、そこには三人の死體が転がっていた。秋人には全く身に覚えがなかったが、検察官の悪質な取り調べにより三人を殺した犯人にされてしまい、死刑となった。 その後、秋人は“支配人”を名乗る女の子の力によって“仮転生”という形で蘇り、転生杯と呼ばれる100人によるバトルロイヤルの參加者の1人に選ばれる。その転生杯で最後まで勝ち殘った者は、完全な形で転生できる“転生権”を獲得できるという。 そして參加者にはそれぞれスキルが與えられる。秋人に與えられたスキルは【略奪】。それは“相手のスキルを奪う”という強力なスキルであった。 秋人は転生権を獲得するため、そして検察官と真犯人に復讐するため、転生杯への參加を決意した。
8 151【WEB版】身代わりの生贄だったはずの私、兇犬王子の愛に困惑中【書籍化】
11月11日アリアンローズ様より【書き下ろし2巻】発売! 伯爵家の長女ナディアは、家族から冷遇されていた。実母亡き後、父は後妻とその娘である義妹ジゼルを迎え入れ溺愛し、後妻はナディアを使用人以下の扱いをしていた。そんなとき義妹ジゼルに狂犬と呼ばれる恐ろしい王子の侍女になるよう、國から打診がきたが拒否。代わりにナディアが狂犬王子の生贄として行くことになった。そして噂通りの傲慢な態度の狂犬王子クロヴィスは、初対面からナディアを突き放すような命令をしてきた。ナディアはその命令を受け入れたことで、兇犬王子は彼女に興味を示して―― ◇カクヨム様でも掲載 ◇舊題『身代わりの生贄だったはずの私、狂犬王子の愛に困惑中』※狂犬→兇犬に変更
8 74ぼくは今日も胸を揉む
死んだ――と思ったら、異世界に転生してしまった。何故か、女の子の姿で。 元々変態少年だったぼくは、體が女の子になって大興奮! いつでも柔らかい胸を揉むことができるし、女湯にも女子トイレにも入ることができる。 しかも、普通の人間にはない能力がぼくにはあるらしく……。 とはいえ、痛いこととか怖いことは嫌だ。 だから自分の胸を揉み、他の美少女たちの裸を見たりしながら、平和に暮らしていきたいと思います。 もう、男には戻れません。 ……え、お金を稼ぐには戦闘をする必要があるかもしれない? 大丈夫大丈夫、ぼくにはチートと言っても過言ではないほどの能力があるし。
8 148姉さん(神)に育てられ、異世界で無雙することになりました
矢代天使は物心ついたときから、姉の矢代神奈と二人で暮らしていた。そんなある日、矢代神奈の正體が実の姉ではなく、女神であることを知らされる。 そして、神奈の上司の神によって、異世界に行き、侵略者βから世界を守るように命令されてしまった。 異世界はまるでファンタジーのような世界。 神奈の弟ラブのせいで、異世界に行くための準備を念入りにしていたせいで、圧倒的な強さで異世界に降り立つことになる。 ……はずなのだけれども、過保護な姉が、大事な場面で干渉してきて、いろいろと場をかき亂してしまうことに!? 姉(神)萌え異世界転移ファンタジー、ここに開幕!
8 106天使と悪魔と死神と。
杏樹(あんじゅ)は小さな頃から孤児院で育った。孤児院の日々はつまらない。どうにか抜け出したいと思っていたある日、孤児院のブザーがなって……
8 125