《【書籍化+コミカライズ】悪ですが、する旦那さまのお役に立ちたいです。(とはいえ、嫌われているのですが)※完結済み》52 旦那さまへのが、発しました。

それならば、ランドルフがオズヴァルトを強く警戒する理由が、はっきりとする。

(お母さまがどのような出自の方であろうと。國王陛下の子である以上、オズヴァルトさまの王位継承権は上位)

恐らく世間に対しては、オズヴァルトの筋を隠しているのだろう。

けれど、いつまでも隠し続けるつもりなのかは分からない。

なにせオズヴァルトは、膨大な魔力を持ち合わせており、魔の実力も隨一なのだ。

國民からも人気があり、英雄的なまなざしを集めている。

オズヴァルトが王子であると公表する行為は、いまの王室にとって、なんら不利益なことではないだろう。

國王はいつか、オズヴァルトを取り立てて、王位継承させるかもしれない。

(ランドルフさまにある敵意と焦りは、自らの地位を奪いかねないオズヴァルトさまに対する、恐怖心からくるもの)

だからランドルフは、オズヴァルトを許せないのだ。

「ああ、そうか。オズヴァルトの正は知っていても、これまでの行いは聞かされていないかもしれないなあ?」

ランドルフは、良いことを思い付いたとでも言いたげに笑った。

「教えてやろう。オズヴァルトはな、生來持ち合わせている魔力が強すぎて、生まれるときに母親の命を奪ったんだ!」

「……!」

そう告げられて、息を呑む。

「ははは! いいぞ、その表! 自分がどれほど罪深い人間か、オズヴァルトはやはり話していなかったらしいな!」

「……オズヴァルトさまの、お母さまが……」

「生まれた瞬間の出來事すら、化けにふさわしいエピソードだろう? 自の魔力もろくに制できず、子供の頃は半ば封印狀態で、塔に閉じ込められて育ったんだ」

ぞくりとした寒気が、シャーロットの背筋を駆け上った。

「その狀態でも抑えきれず、あいつは何度も魔力の暴走を起こした。父上はその都度オズヴァルトを教育し、の程を思い知らせて封印し直したんだ! でなければまた、母親のときのように、誰を殺すとも限らないからな」

「……っ」

シャーロットはぎゅっとくちびるを噛み締める。

「どうだ? さすがのお前も、オズヴァルトが恐ろしいだろう」

ランドルフは、震えるシャーロットにいたく満足げだ。

「オズヴァルトもお前同様に、父上の判斷次第で、いつ『廃棄』されてもおかしくなかった!」

「……」

「いまは殊勝な態度が見られ、國に魔師として盡くすと誓ったからこそ、仕方なく存在を許されている。王族に伝わる契約魔は、同じ王族には効果が適用されないからな」

がすっかり冷え始めて、震えが治らない。

それを見て、ランドルフはますます笑うのだった。

「オズヴァルトが生きていられるのは、王家にとって利用価値があると判斷されている間だけだ。あいつが自の魔力を制できるようになり、魔師として上り詰めたからこそ、仕方なく生かされているだけに過ぎない。……危険因子だと父上が判斷なされば、オズヴァルトは容易く始末されるだろうな……!」

ランドルフの手が、シャーロットの顎を摑んで上向かせた。

「ずっとオズヴァルトが邪魔だったんだよ!! 化けのくせに、よりにもよって父上のなんか引きやがって。あんな、僕たちですら屆かない、不気味なほどの魔力を!!」

「オズヴァルトさま」

「はははははっ、震えているな!? 自分がどんな男の妻にさせられたのか理解して、肝が冷えたか」

嘲笑が、ずぶ濡れのシャーロットに注がれる。

「オズヴァルトさまに……」

「恐れろ、あいつを拒め! いくらあいつが世間で英雄視されていようと、所詮は」

シャーロットは最早、耐えられない。

目を瞑り、震える自を抱き締めて、渾の力でこうんだ。

い頃のオズヴァルトさまに、溫かいミルクと布を差しれたい……っ!!」

「………………へ?」

ランドルフが、豹変したシャーロットにぽかんとする。

「いっぱい味しいご飯を食べさせてお布団にって、明日の憂いもなく、ぐっすりと眠らせて差しあげたいです!! 細かいことは抜きにして、とにかく幸せに!! お小さいオズヴァルトさまを! 早急に! 幸せにしませんと!!」

「お、おい、どうした……?」

ランドルフの揺を一切無視して、シャーロットはふるふると悶える。

「それにしても、しのオズヴァルトさまが王子さま……!? あまりにも納得です黙っていらしても伝わってくるような存在そのものの高貴さはそれゆえだったのでしょうかいえきっと違いますね筋などは関係なくオズヴァルトさまの孤高さはご自の信念とお考えによって構されたものなのですしそもそもお育ちになられた環境をものともせずあれほどまでに真っ直ぐでに篤いお心を持ち合わせていらっしゃるのは奇跡ではありませんかご自分も境遇もすべて承知の上でそれなのに決して傲慢でなくそれどころか慈に満ち溢れていて街でお困りのひとりひとりのために膝をつき服を汚してでも救いの手を差しべていらっしゃるその姿勢こそがオズヴァルトさまの気高さを卻って象徴していると確信しますその上にあの思いやりは人だけではなくフェンリルにも向けられているのですから激です言葉をわすことの出來ない存在それも一般的には危険だとされる狀態の魔まで思いやれるというのは並大抵のことではありませんもちろんそれを可能にしたのはオズヴァルトさまが魔の高い実力をお持ちなことも理由にあるでしょうがそれは何も魔力の大きさだけではありませんものねそれに神が安定ししていなければ魔力を制することも出來ないのですからそれをお父君に封じられていたという経緯があれど現在は緻に制していらっしゃるというのもまた事実ここまできっと辛い思いをなさり大変な苦労がおありだったでしょうにそれでも腐らずに努力されたのですねいころからいまに至るまでの積み重ねがオズヴァルトさまを作り上げているのをじますなにせあの魔法陣を思い出せばその構築の巧さは明白ですからこれはつまり生來の魔力の膨大さに決して驕らず常に努力と研究を続けて來られたという証それでいて座學だけでなく実踐を踏まえたのであろう魔法陣になっていることからも戦場で積極的に先陣を切られていたはずお仲間を守り果敢に戦われていたであろう勇ましいお姿が見てもいないのに目に浮かぶようですきっとその経験を活かし日頃の業務に勵んでいらっしゃるに違いなくだからこそ街でお困りの方を見掛けた際も自然にけるこれはまさに人助けが習慣となっている証左でありオズヴァルトさまの心の反映生まれ持っての才覚に加え進を続けるお心の強さと他者への思いやりをお持ちでいらっしゃるそれに加えて効率を重んじる合理的な一面や魔力の活かし方を把握なさっている富な知識量そして理論を実行に移すだけの大膽さこれらがすべて揃っているのですからオズヴァルトさまが戦場で最強でいらしたというお話も當然のことですね思い返せばイグナーツさまも仰っていました學院時代は々やんちゃな面がおありだったもののお相手はいつも下級生に酷いことをしていた上級生や人道的に間違っている先生ばかりだったときっと昔からご自の信念と正義のために戦うお方だったのですよねああなんと素敵なのでしょうかオズヴァルトさまはどのような境遇であろうといついかなるときも他者を尊重し慈しみ深い振る舞いをなさっているのですおモテになるのも道理ですオズヴァルトさまにする全世界のたちと握手がしたいです私のような悪とご結婚くださった上に食事の心配や夜會での禮儀作法まで配慮して下さったオズヴァルトさまにはきっと私が想像するよりもこれまでに數えきれないほどの苦難がおありだったでしょうそれなのにご自がお持ちのやさしさを惜しげもなく注ぎたくさんの喜びを與えて下さったそんなオズヴァルトさまの有りようが何より素敵ですし格好良く尊く大好きです! っ、ああ……っ!」

シャーロットは、大きく息を吸い込む。

「……オズヴァルトさまが素晴らしすぎて、の震えが止まりません……っ!!」

そうぶと、ずっとシャーロットを見ていたランドルフが、怯えたように後ずさった。

「な、なんだ今のは!? まさか古來に研究されていたという、『呪文の高速詠唱』か……!?」

「え? あっごめんなさい、もしかしてランドルフさま今なにか喋ってました?」

ランドルフの存在を忘れかけていたシャーロットは、首を傾げて彼を見上げた。

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