《優等生だった子爵令嬢は、を知りたい。~六人目の子供ができたので離縁します~(書籍化&コミカライズ)》033

セレスティーヌとエヴァルドは、そのまま汽車に乗りインファート王國に戻って來た。セレスティーヌは、ブランシェット家に行こうかどうしようか迷う。離縁した家に、男を連れて戻るなんて非常識過ぎないかと……。

でも、汽車の中でエヴァルドの話を聞いた所によると、當分エヴァルドも自國に戻るつもりがないと言う。

そう考えると、やはりブランシェット家にお世話になるのが一番な気がしてならない。

セレスティーヌは、迷った末にとりあえずレーヴィーの意見を聞こうとブランシェット家に舞い戻って來た。

玄関で、執事が驚きながらもすぐにレーヴィーの元に案してくれた。タイミングよく、レーヴィーが屋敷にいてくれて助かった。

レーヴィーにリディー王國で、國が出來なかった事を話す。すると、遠慮する事なくブランシェット家に滯在するように言われる。

エヴァルドの事は、リディー王國からレーヴィーに會いに、ブランシェット公爵家に遊びに來た事にすればいいと言ってくれた。

セレスティーヌとは別に遊びにやってきて、たまたま滯在が被った事にすればいいと提案される。

セレスティーヌは、流石レーヴィーだと心する。

「レーヴィーに相談して、正解だったわ。ありがとう」

セレスティーヌは、レーヴィーにお禮を言う。

「いえ、母上が私を頼ってくれて良かったです。グラフトン公爵様も、ゆっくりしていって下さい。こちらでも、リディー王國の事は探ってみます」

レーヴィーが、いつものクールな表を見せる。

「突然の事で申し訳ありませんが、お世話になります」

エヴァルドが、レーヴィーに頭を下げる。

「では、私達は下がるわね。お仕事中に突然押しかけてごめんね。客室は、アルフに用意してもらうから」

セレスティーヌが、そう言ってソファーから立ちあがる。エヴァルドも、続けて立ち上がりレーヴィーの執務室を後にした。

セレスティーヌが、執事のアルフを呼ぶと既に客室が用意されていた。すぐにエヴァルドを案してくれる。

エヴァルドは、何も持たずに來てしまったので最低限の服を準備して貰うようにお願いする。もう夜だけど、アルフなら何とかしてくれるだろうと信じる。

とにかく二人とも、突然々あったので疲れてしまった。お互い部屋で、し休みましょうと廊下で別れた。

セレスティーヌは、自分専用の客室に戻るとソファーに腰かけて今日あった事を思い出していた。

リディー王國で、エヴァルドがセレスティーヌの為に仕事を放って迎えに來てくれた。あの時の事を思い出すと、何だか顔が赤くなってくる。顔に、両手を當てて悶絶する。

エヴァルドが好きだと言ってくれた事が、凄く嬉しかったけど、自分も凄い事を言った気がする。

あの時の勢いで、口走ってしまったが冷靜になって考えると恥ずかしくてたまらない……。

でも、言った事は本心だし後悔はない。ただ、ひたすら恥ずかしい。この恥ずかしい気持ちをどうすればいいのか苦悩する。

オーレリアに言ったら、何て言うかしら? きっとオーレリアなら、「それがだから仕方ないわ。れなさい」って言いそう。

そう思ったら、何だか可笑しくてしょうがなくなった。一人で笑ってしまう。

二人で告白し合った後、汽車の個室に移して二人で々な事を話した。

エヴァルトは、い頃に王に言われた言葉がトラウマで、今までずっと一人で生きて來たと告白した。

また同じ言葉で傷つくのが怖くて、王以外のでも近づくのが怖かった。それと同時に、自分なんかと一緒にいるが可哀想だと零した。

セレスティーヌは、その話を聞いてが張り裂けそうだった。い頃に、公衆の面前で言われた心無い言葉。

どれだけ傷ついて今までの長い期間を、一人で生きて來たのだろう。改めて、これからはセレスティーヌが一緒にいて、楽しい時を過ごしていきたいと思った。

それをエヴァルドに言ったら、子供のような屈託のない笑顔で笑ってくれた。

そして、最初にセレスティーヌが言ってくれた事が、ずっと頭の中にあったと嬉しそう教えてくれた。

たまたま會った、朝の散歩。

その時にセレスティーヌが、「落ち著きがあって瞳が優しくて素敵です」「自分が思っているよりもエヴァルド様は素敵です」と言われて驚いたと。

そんな事言ってくれた人は、今までいなかったから。きっとその時から、僕は君にしてしまったんだね。ととても恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。

エヴァルドの笑顔が嬉しくて、お互いの気持ちを確認できた興からセレスティーヌは忘れていた。エヴァルドに言わなくてはいけない事がある事を……。

忘れていた事を思い出したのは、ブランシェット家に再び滯在し始めて何日か経った頃。セシーリアと話している時だった。

「お母様が戻って來たのには驚いたけど、エヴァルド様と上手くまとまったみたいで良かったですわ。お母様が気にしていた問題も解決したのです?」

セレスティーヌは、お茶を飲もうと持っていたティーカップを落としそうになる。そして、固まった。

セレスティーヌは、すっかり忘れていたから。自分がもう、子供を育てるつもりがないと言わないといけない事を……。

「お母様……。もしかして、忘れていたんですの?」

セシーリアが、呆れている。

「だって、々あってすっかり飛んじゃっていたのよ……」

セレスティーヌが、困の表を浮かべる。

「お母様って案外、自分の事は抜けてらっしゃるのね。でも、エヴァルド様なら大丈夫なのではなくて? だって、こちらが見ているのが恥ずかしいくらい、好きが駄々洩れですわよ」

セシーリアが、笑っている。

それは、セレスティーヌもヒシヒシとじていた。エヴァルドが、セレスティーヌを見つめる瞳がいつも甘い。

エヴァルドなら、セレスティーヌが何を言っても許してくれそうなそんな瞳だった。

「でも、ちゃんと言わないといけない事だし……。機會を見て話してみるわ。セシーリアが言ってくれて良かった。ありがとう」

セレスティーヌは、セシーリアに笑顔でお禮を言った。

「全く……。お母様ったら、落ち著きがないフェリシアみたいよ」

「そうね……。最近ちょっと落ち著きがないかも。一度、気を引き締めるわ」

セレスティーヌは、これではどちらが親かわからないと反省する。でも、あんなに我儘だった娘が、大人になったなと嬉しくもあった。

セレスティーヌは、子供の事をどうやって言おうかとずっと悩んでいた。折角、お互いの気持ちが通じあって良い雰囲気なのに……。

その雰囲気を壊したくなくて、なかなか言えずにいた。インファート王國で、エヴァルドと一緒に過ごす毎日が楽しくてどんどん月日が経過していく。

そんなある日。突然の來客だった。

セレスティーヌとエヴァルドの二人が、ティータイムを楽しんでいた所に、執事が相を変えて飛び込んできた。

「セレスティーヌ様、大変です。お客様がお見えです!」

セレスティーヌとエヴァルドは、何事かと驚く。

「お客様って、私に? いったいどなたなの?」

セレスティーヌが、口を開く。

「エヴァルド様にです。それが、実は――――」

執事が名前を言おうとした所で、扉にいた執事の後ろから誰かが居間に割ってってきた。

「失禮するよ」

姿を現したのは、リディー王國の王太子サイラス・キャンベル・リディーだった。

「サイラス」

エヴァルドが、驚いて聲を上げる。

「久しぶりだね、エヴァルド。突然すまない。今日は、セレスティーヌの件で謝罪に來たよ。話を聞いて貰えるだろうか?」

サイラスが、エヴァルドを真っすぐに見つめていた。その真摯な態度に、エヴァルドもじるものがあったのか靜かに頷いた。

「セレスティーヌ、申し訳ないが、サイラスと話せる場を設けて貰えないだろうか?」

エヴァルドが、申し訳なさそうにセレスティーヌに確認する。

「もちろんですわ。レーヴィーにも、確認して來ます。応接室の方がよろしいでしょうか?」

セレスティーヌが、質問を返す。

「突然來ただ、大事(おおごと)にしたくない。この部屋で充分だよ。それとセレスティーヌにも、一緒に話を聞いて貰いたい」

サイラスが、エヴァルドよりも先に答える。

「分かりました。では、アレフ、お茶とお菓子の用意を。それと、レーヴィーに報告をお願い」

セレスティーヌが、執事のアレフに指示を出す。アレフは、真剣な表で「はい」と返事をし、素早く居間から出て行った。

セレスティーヌは、サイラスにエヴァルドと対面するようにソファーを勧め座って貰う。セレスティーヌは、エヴァルドの隣に腰かけ直した。

すぐに、お茶とお菓子の準備が整う。

「今日は、突然申し訳ないね。こちら側の処分が全部終わったから、やっとエヴァルドを迎えに來られたんだ」

サイラスが、お茶に口を付けた後に靜かに話し出した。

「迎えにって、王太子がする事じゃないだろう……」

エヴァルドが、呆れている。

「それぐらいしないと、エヴァルドに誠意が伝わらないと思ったんだ。今まで、本當に申し訳なかった」

サイラスが、エヴァルドに向かって頭を下げる。

「サイラス! 王太子がそんなに簡単に頭を下げたらだめだ」

エヴァルドが、いつもと違う険しい表で言う。

「簡単なんかじゃない。ここまで來るのに、時間がかかり過ぎた。もっと早く、何とかするべきだった」

サイラスは、尚も言葉を続ける。

サイラスの妹による、心無い言葉から始まったエヴァルドの厳しい立場。

子供の頃に植え付けられたトラウマは、そんなに簡単にする事が出來ない。ずっと、一人きりで冷たいリディー王國の社界に立たせてしまった。

原因を作ったのが、王家だと言うのになんの対処もしないまま、國の役にずっと立って貰った。

本當だったら、王宮でなんて働きたくないのもずっとわかっていた。それを、王族のエゴで、エヴァルドの優しさに甘えて今までずっと傍に仕えさせていた。

そう言ってサイラスは、苦悶の表を浮かべた。

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