《【書籍発売中】砂漠の國の雨降らし姫〜前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました〜【コミカライズ】》16 絹糸への道(1)
(1)と(2)を同時に更新しました。
図書館で絹糸の作り方を調べた。
やはり桑の木に繭を作るあの芋蟲を使うらしい。
図書館はなんて便利なのか。分を問わずお金さえ払えば知識を得られる。この制度を作った今の王家は立派だ。王家にいい思い出がない私だけれど、現王家の功績は素晴らしいと思う。
蠶《かいこ》の育て方は、手間はかかるし神経も使うけど作業は単純そうだった。あの芋蟲を空気が通る箱にれて清潔な桑の葉を與えて育てると、およそ月が満ち欠けする二十八日ほどで繭を作るらしい。おなかを満たしてやり、清潔を保つ。様子を見ながら丁寧に育てる。それって鶏やラクダを育てるのと同じね。
前世なら悲鳴をあげていたであろう芋蟲たちも絹糸の素材だと思って世話をしていると慣れてくる。翌日から私はせっせと芋蟲を集めて蓋つきの籠に閉じ込めた。
「アレシア、何をやってるんだ?」
「イーサン、これを集めて絹糸を作ろうと思ってるの」
「これが絹になるの?絹ってすごく高価な布でしょ?」
「その高価な布を織る糸を吐き出してくれるのよ」
イーサンは高級品の絹が蟲の口から出る糸で織られていると知って「ウヘエ」と顔をしかめて驚いている。それでもせっせと桑についてる芋蟲を集めてくれた。
「ほお。蠶《カイコ》を育ててるのか」
「お父さんは蠶のことを知ってるの?」
「やったことはないが、聞いたことはある。アレシアは図書館で調べたのかい?」
「うん。絹糸が作れるようになったら桑の木を買う時に出してもらったお金はお父さんに返すね!」
「あはは。そんなに稼げる日を楽しみに待ってるよ」
父は子供の遊びと思っているようだが私は本気だ。
(絹製品は裕福な貴族たちに人気だから、しくらい高値を付けても売れるだろう。私の九歳のじゃ農作業を手伝ってもたかが知れてる。養蠶ならこのでも役に立つわ)
私はやる気満々で桑の木の枝をどんどん挿し木した。大々的に蠶を育てるならたくさんの桑の木が必要になる。挿し木でバンバン増やせば苗木代も節約できる!
と、考えながら働いていたらイーサンに注意された。
「なあアレシア、お前自分で気づいてないと思うけど、最近仕事しながらすっごく悪い顔になってるぞ。悪い商売をして金儲けするのが好きな婆さんみたいだ」
「ええっ」
思わず近くにいたハキームを見たら笑うのを必死に我慢してた。うわ、ほんとなのね。まだ九歳なのに。『悪い顔の婆さん』って……。あんまりじゃない?
「言いにくいことを言ってくれてありがとうイーサン。気をつける」
「ああ、気をつけろよ。あんな顔を誰かに見られたら嫁に行けないぞ」
きいぃぃ。こんな子供に嫁りのことで注意されるとは。
私の雨の範囲はしずつ広がっていて、今は直徑が二キロメートル近い範囲になっている。近くの農家の人は
「今まで馬や人が井戸水を汲み上げていたけど、その手間がなくなった」
と皆が口を揃えてそう喜んでいるそうだ。
雨の範囲はまだまだ広がるだろう。
そうなればますます雨の原因はわかりにくくなるはずだ。うちの農園だって大手を振って桑の木をたくさん植えられる。我が家だけじゃなくて他の農家も絹織を作れるようになったらいいのに。
夕食時、ハキームが
「近頃、俺の妹が薬を全く飲まないでも起きていられるようになったんです。俺はここの水と食べのおかげだと思ってます」
と言い出した。
「それじゃ水と食べが薬みたいじゃないか」とイーサン。
「そういや我が家もアレシアの家も誰も病気をしてないな」とナタンおじさん。
「ちょっとした切り傷は雨水で洗えばすぐ治るのよね」とベニータおばさん。
「毎日山ほど働いても腰が痛くならないな」とお父さん。
「この年で肩こりさえ無いわね」とお母さん。
いやいや待って。
私が降らせる雨にそんな力があるはずない。
前世の私はただの水の魔法使いだった。治癒魔法なんて使えなかったのよ。言えないけど。
慌てている私をハキーム以外の全員が見る。違うって。私にそんな力無いから。言えないけど。
ハキームが「え?なんですか?」という顔になった。ハキームは何も知らないものね。
「コホン」と咳払いをした父が
「原因は何にせよ、ハキームの妹さんが元気になったのはいいことだ。そのうち我が家に遊びに來られるといいな」と言った。
「実はずっと妹にねだられているんです。一度皆さんに會いたいって。お禮を言いたいそうです。それと、この農園も見てみたいらしくて。すみません。仕事場なのに」
「じゃあ、今度図書館に行く時にラクダで行くわ。帰りに妹さんを乗せて、ひと晩うちに泊まって翌日にまたラクダで送って行けばいいじゃない?」
「そりゃいい。妹さんの合がいい時にそうしてあげよう」
父の許可が出て、ハキームが嬉しそうだ。
私も嬉しい。なにしろ今世ではの子の友達どころか知り合いさえいない。イーサンとハキームだけが友達だもの。
人の役に立つ第一歩が家族とイーサン一家だった。
次はハキーム一家の役に立てたら嬉しい。
夜寢る前に、蠶たちの箱を點検する。
蠶は皮しながら大きくなっている。箱に耳を近づけると「シャクシャク」と桑の葉を食べるかすかな音が聞こえるような。繭から絹糸を取れる日が待ち遠しい。最初は絹糸一本でいい。功しますように。
それからしばらくして、桑の木がやたら長しているのに気づいた。
葉を取っても取ってもどんどん新芽が出てすぐに葉を広げる。
「桑の木は長が早い」と苗木屋さんのおじさんに言われたけど、驚くほどの生命力だ。
その長の早い桑の葉をガシガシ食べて、蠶《かいこ》はやがて箱の中のあちこちで繭を作った。
【書籍化】盡くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?
【書籍発売中&コミカライズ決定!】 「新山湊人くん……! わ、私を……っ、あなたのお嫁さんにしてくれませんか……?」 學園一の美少女・花江りこに逆プロポーズされ、わけのわからないうちに始まった俺の新婚生活。 可愛すぎる嫁は、毎日うれしそうに俺の後をトテトテとついて回り、片時も傍を離れたがらない。 掃除洗濯料理に裁縫、家事全般プロかってぐらい完璧で、嫁スキルもカンストしている。 そのうえ極端な盡くし好き。 「湊人くんが一生遊んで暮らせるように、投資で一財産築いてみたよ。好きに使ってね……!」 こんなふうに行き過ぎたご奉仕も日常茶飯事だ。 しかも俺が一言「すごいな」と褒めるだけで、見えない尻尾をはちきれんばかりに振るのが可愛くてしょうがない。 そう、俺の前でのりこは、飼い主のことが大好きすぎる小型犬のようなのだ。 だけど、うぬぼれてはいけない。 これは契約結婚――。 りこは俺に戀しているわけじゃない。 ――そのはずなのに、「なんでそんな盡くしてくれるんだ」と尋ねたら、彼女はむうっと頬を膨らませて「湊人くん、ニブすぎだよ……」と言ってきた。 え……俺たちがしたのって契約結婚でいいんだよな……? これは交際ゼロ日婚からはじまる、ひたすら幸せなだけの両片思いラブストーリー。 ※現実世界戀愛ジャンルでの日間・週間・月間ランキング1位ありがとうございます!
8 74【書籍化&コミカライズ】小動物系令嬢は氷の王子に溺愛される
『氷の王子』と呼ばれるザヴァンニ王國第一王子ウィリアム・ザヴァンニ。 自分より弱い者に護られるなど考えられないと、実力で近衛騎士団副団長まで登り詰め、育成を始めた彼には浮いた噂一つなく。それによって心配した國王と王妃によって、ザヴァンニ王國の適齢期である伯爵家以上の令嬢達が集められ……。 視線を合わせることなく『コレでいい』と言われた伯爵令嬢は、いきなり第一王子の婚約者にされてしまいましたとさ。 ……って、そんなの納得出來ません。 何で私なんですか〜(泣) 【書籍化】ビーズログ文庫様にて 2020年5月15日、1巻発売 2020年11月14日、2巻発売 2021年6月15日、3巻発売 2022年1月15日、4巻発売 【コミカライズ】フロースコミック様にて 2022年1月17日、1巻発売 【金曜日更新】 ComicWalker https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_FL00202221010000_68/ 【金曜日更新】 ニコニコ靜畫https://seiga.nicovideo.jp/comic/52924
8 160「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無雙する〜【書籍化】
【Kラノベ ブックス様より1〜2巻発売中】 【コミカライズ、マガポケ様にて好評連載中】 剣、魔法、治癒、支援——それぞれの最強格の四天王に育てられた少年は「無能」と蔑まれていた。 そんなある日、四天王達の教育という名のパワハラに我慢できなくなった彼は『ブリス』と名を変え、ヤツ等と絶縁して冒険者になることにした。 しかしブリスは知らなかった。最弱だと思っていた自分が、常識基準では十分最強だったことに。あらゆる力が最強で萬能だったことを。 彼は徐々に周囲から実力を認められていき、瞬く間に成り上がっていく。 「え? 今のってただのゴブリンじゃなかったんですか?」「ゴブリンキングですわ!」 一方、四天王達は「あの子が家出したってバレたら、魔王様に怒られてしまう!」と超絶焦っていた。
8 122【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】
とある地方都市に住む主人公。 彼はいろいろあった結果無職になり、実家に身を寄せていた。 持ち前の能天気さと外面のよさにより、無職を満喫していたが、家族が海外旅行に出かけた後、ふと気が付いたら町はゾンビまみれになっていた! ゾンビ化の原因を探る? 治療法を見つけて世界を救う? そんな壯大な目標とは無縁の、30代無職マンのサバイバル生活。 煙草と食料とそれなりに便利な生活のため、彼は今日も町の片隅をさまようのだ! え?生存者? ・・・気が向いたら助けまぁす! ※淡々とした探索生活がメインです。 ※殘酷な描寫があります。 ※美少女はわかりませんがハーレム要素はおそらくありません。 ※主人公は正義の味方ではありません、思いついたまま好きなように行動しますし、敵対者は容赦なくボコボコにします。
8 183學生騎士と戀物語《パンドラボックス》
入學式とゆう大事な日に堂々と居眠りをしたり、授業を真面目に受けないこの物語の主人公 月影亜紀斗(つきかげあきと) ただ力を求めるだけの少女 月野蛍(つきのほたる) 彼のいる世界は自分の持つ固有スキルが強いほど権力があり、弱い者は権力がない。全てが力で決まる世界。 そんな世界で二人が起こす物語とは⁉︎青春ドタバタSFコメディー
8 185世界にたった一人だけの職業
クラスでもあまり馴染むことができず、友達にも恵まれず高校生活を送っていた高校二年生の主人公の柏沢蓮斗。そんなある日、クラスでいつも通り過ごしていると先生の魔法詠唱によって足元に魔法陣が現れた。魔法陣に吸い込まれた後、目を覚ましたら異世界の王宮の中にいた。皆それぞれ職業に目覚めており、主人公もまた例外ではなかった。だが、主人公の職業はー 異世界の複雑な事情に巻き込まれていく ストーリーです。 新作 「スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、超萬能スキルでした~」も興味のある方は見に來てください。 お気に入り1000突破! ありがとうございます!!
8 134