《【書籍発売中】砂漠の國の雨降らし姫〜前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました〜【コミカライズ】》37 告白
「殿下。教えていただけませんか。うちの農園を探っていた『彼』とは、誰ですか?」
殿下は眉を寄せて考え込んでいらっしゃる。
「王太子殿下がそこまで厄介とおっしゃる人は他國の人なんですよね?東のバルワラ王國は殿下のお筋の國。我が國に接している國に限れば、こそこそ隠れて私たちを探り、殿下が尾行する必要がある相手となると北のファリル王國のような気がしますが」
「実は今、王宮にファリル王國の第四王子、ヘルード殿下が滯在している。最近我が國に遊學という名目で訪れている」
『厄介』の意味がわかった。
「殿下、そのファリルの王子がここに來ていたんですね?その方はどのくらいの期間遊學されるのでしょうか」
「全くわからない。突然あちらの國王から頼むと言われて王宮に留まっているんだ」
遊學とやらが短期間なら私だけがどこかに逃げてその王子をやり過ごす手もある。でも長期間だったら困る。私が長い間留守にすると農園の桑の木は全部枯れてしまう。また最初から農園をやり直している間に助けられるはずの人がたくさん死んでしまう。
ならば今は逃げるのではなく、王家の権力を頼るのもひとつの方法ではないだろうか。
「殿下。ファリル王國がどんな國か、おおよそなら知っております。その方が何を探っていたのかも想像がつきます。農園の周囲を歩いていたらと言うならおそらく、まだこの布のことは知らないはずです。布のことも含めて全て殿下にお話ししたら、私だけでなく農園のみんなを守ると約束してくださいますか?」
マークス殿下は私の唐突な條件を聞いて戸ったようだ。
「君たちはこの國の國民だ。しかも病も怪我も治すこの布のこともある。他國に渡すはずがないだろう?」
「お約束くださいますか?」
「もちろんだ。両親の名にかけて誓う」
私は覚悟を決めて口を開いた。
「殿下、その方が探っていたのはおそらく、雨のことかと」
「アレシア!」
「やめろ!」
父とイーサンがぶ。私は「大丈夫」と安心させるように小さい聲でなだめた。
「お父さん、私達は十四年間もうまくやってきたわ。でも私はいつかこんな日が來るだろうと覚悟もしてた。お父さんだってそうでしょう?一生隠し通すのは無理じゃないかと思っていたはずよ。ファリル王國は恐ろしい國だわ。今、殿下を頼らなかったら、ある日突然私達全員が襲われてファリル王國に運ばれる可能だってあると思う」
いきなりのことで父はオロオロしている。
「お父さん、今は王家から逃げたり隠れたりするより王家のお力を頼るべき時だと思うの」
「アレシア。いったいどういうことか私にわかるように説明してくれるか」
「はい。殿下」
両親とイーサン一家に向かって笑顔を作った。
「私やみんなのことも農園も守れるよう、殿下とお話し合いが必要だわ。みんなにも聞いていてほしい」
・・・・・
「そうだったか。いや、まだ全部理解したわけではないんだが。雨のことは以前から疑問に思っていたんだ。君たちと雨の関係を知りたいと思ったこともある。おそらくあの砂漠の農園も君たちなんだろう?」
やはり気づかれていたのか。
「君たちの人柄を知っていたから僕はあえてここのことを誰にも報告しなかった。砂漠の農園の時のようにまた逃げられることの方が國の損失だと思ったんだ」
「そういうことでしたか」
「絹の力は二度も経験したから信じている。それにしても三年も前からあの絹を使いながら効果を調べていたとは。いや、雨はアレシアが生まれた時からだったな。十四年間か。君たちは本當にすごいな」
「殿下、どうかアレシアをお守りください。この通りです」
父が頭を深々と下げた。母も、おじさんとおばさんも。イーサンも頭を下げた。
「必ずアレシアを守る。君たちもだ。ファリルに奪わせたりしない。この農園を守る方法も考えよう。し考える時間をくれるか」
そう言ってから橫たわるメイールさんをチラリと見た。
「ピューマに組み伏せられたメイールには傷が無いことをどう説明したものか……」
「殿下、幸い今夜は月明かりがありません。ここはひとつ、メイールさんの勘違いで押し通しましょう。失したから著替えさせた、これです」
ナタンおじさんの提案は珍妙だったけど、聞いているとそれしかないという気になる。
殿下はメイールさんを揺さぶって起こし、ドアの外で見張っていたヨアヒムさんに聲をかけた。
「いやぁ、農園の人たちに迷をかけてしまったよ」
と朗らかに笑いながら。
「殿下!メイールの合は?」
「大丈夫だ。ただ、メイールが失してしまってな。農園の皆さんに著替えをお願いしたところだよ」
「えっ?怪我はないんですか?」
ヨアヒムさんが驚いている。
「怪我はない。暗かったから私もすっかり転してしまった」
メイールさんを助ける時にがついてしまった殿下は上著とシャツを父の服に著替えていて、殿下の後ろから下だけナタンおじさんのズボンをはいているメイールさんが「実に面目ない」という顔で出てきた。
「ものすごくが出て痛かった気がしたんですが、自分の思い違いだったようです。ピューマに飛びかかられて押し倒されましたけど、ほら、この通りだ。騒がせてすまなかった」
メイールさんがズボンをめくってヨアヒムさんに見せた。
メイールさんには申し訳ないけど、みんなで彼に失していたと話した。本人は裂傷もなければも出ていない自分の足を見て納得するしかなかった。
ヨアヒムさんが笑いだした。
「なんだ、俺はてっきりピューマにやられたかと肝を冷やしたぞメイール!」
「だがピューマがいたことは本當だ。足跡も殘っているだろう。農園の方が警備兵を呼びに行ってくれた。ここの農園の果は母上のお気にりだからな。ピューマが出たのを知りながら警護も置かずに何かあっては問題だ」
ナタンおじさんの連絡で警備兵が來てくれた。殿下は小聲で「後で連絡する」と私に告げて帰られた。
メイールさんは帰りに盛大に腹の蟲を鳴かせ、ヨアヒムさんに「いい加減にしろ!殿下に失の後始末をさせたお前が腹の蟲を鳴かすなど打ち首ものだ!」と叱られて恐のし通しだったそうだ。
後日殿下が「メイールは実に気の毒だった」と苦笑しながら帰り道での様子を話してくださった。
貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】
マート、貓《キャット》という異名を持つ彼は剣の腕はたいしたことがないものの、貓のような目と、身軽な體軀という冒険者として恵まれた特徴を持っていた。 それを生かして、冒険者として楽しく暮らしていた彼は、冒険者ギルドで入手したステータスカードで前世の記憶とそれに伴う驚愕の事実を知る。 これは人間ではない能力を得た男が様々な騒動に巻き込まれていく話。 2021年8月3日 一迅社さんより刊行されました。 お買い上げいただいた皆様、ありがとうございます。 最寄りの書店で見つからなかった方はアマゾンなど複數のサイトでも販売されておりますので、お手數ですがよろしくお願いします。 貓と呼ばれた男で検索していただければ出てくるかと思います。 書評家になろうチャンネル occchi様が本作の書評動畫を作ってくださっています。 https://youtube.com/watch?v=Nm8RsR2DsBE ありがとうございます。 わー照れちゃいますね。
8 54グンマー2100~群像の精器(マギウス)
2100年のグンマーは、半知成體ビーストとの戦いの最前線。 群馬で最高の権力と知能、精神力を持つ少年少女達の生徒會。 名は、群馬最高司令部、通稱GHQ(Gunma・Head・Quarters)。 此れは、グンマー人によるグンマー物語であるかもしれない。 ★は挿絵等有り 人類の敵、ビースト。 OTONA(國連)や首都圏首席との政治的対立。 首都圏、栃木・茨城・千葉連合との武力衝突。 色んな事が起こる予定。 アルファポリス様にも投稿
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