《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》【REC】
二時間後。
総務省の講堂へ戻ると、早百合部長が出迎えてくれた。
「ご苦労だったな諸君」
「早百合部長も、テレビ出演、お疲れさまでした」
「あの程度、なんのことはないさ。それと、計畫の進捗狀況から政府の年見込み収が出たぞ」
「確か、私たちって50兆円稼がないといけないんですよね?」
「そういえばそんな話だったな」
輸できない資を手にれるということにばかり気を取られて、肝心なことを忘れていた。
日本は稅収50兆円、借金50兆円、合わせて100兆円を國家予算にしている。
けれど、総理大臣と日銀総裁のもめで、日本は日銀から借金をすることができなくなった。
だから、今の日本は半分の予算で運営されている。
このままでは、今年度は9月で予算を使い切ってしまうのだ。
「貴君らのおかげで上々だぞ。燃料、金屬、水産、畜産は超能力で賄えているからな、政府の企業への販売額は32兆円を超える見込みだ。また、農産と林産、それに類は峰稲が用意した金銀で買い付けているから、その分の11兆円分を足して43兆円ほど稼げる。プラス、針霧桐葉のローヤルゼリー365億円だ」
「殘りは6兆9635億円だね」
桐葉の出した答えに、早百合部長は頷いた。
「あるいは節約だな。警察班のおかげで捜査費用はかからないし、枝幸詩冴のおかげで外來生対策費用もいらなくなった。最悪の場合は峰稲の生した金塊を直接換金すればよいので、予算問題は解決済みと言えるかもしれない」
「けど、それは本當に最終手段なんですよね?」
「うむ。7兆円分もの金を換金すれば、その出どころに疑念を持つ者が現れるだろう」
早百合部長は、周囲を警戒しながら、そう口にした。
稲が、海水から金屬を作っているのはだ。
そんなことがバレたら、國連が絶対に介してくる。
海水の使用制限ならまだいい。
もしも、人間鉱山として、稲の柄そのものを引き渡すよう要求されたら、最悪だ。
考えるだけで気が引き締まるような想像をしていると、不意に早百合部長の視線が反応した。
「待て、電話がった……私だ、何があった? またか? ……ふむ……ふむ。し待て」
早百合部長の瞳が、俺らを捉えた。
「記者団が、超能力者への直接取材を申し込んできている。先程の記者會見後にはっきりと斷ったのだが、玄関に集まって騒ぎが収まらないらしい」
「俺は構いませんけど」
隣の桐葉へ目配せすると、彼も頷いた。
「ハニーと一緒ならいいよ。ていうか、ボクらは一緒じゃないと監視にならないし」
「助かる。學生の分である貴君らを見世にはしたくないのだが、あまりにすると勝手な憶測が飛びう可能がある。あとは峰稲、貴君への取材要求が強いのだが、頼めるか?」
早百合部長からの打診に、稲はし考える風にして、おとがいをでた。
「そうですね、取材中は録畫及び映像をネットにあげていいという條件でならけますよ」
記者會見における早百合部長のオマージュだろう。記者団を警戒したいい手だ。
「俺も、いや、俺ら全員、その條件で一緒ならけます。個別の取材はNGで」
「ボクも、取り調べみたいなのはいやだね」
「わかった。では、それを條件にして取材をけよう」
早百合部長は再び通話に戻る。
――それにしても、稲は慎重というか、頭が回るな。
何も考えずに取材をOKしてしまった自分を恥ずかしく思いながら、俺は稲に心した。
◆
取材は、広々とした第一會議室で行われた。
圧迫の無い、開放的な空間に、俺、桐葉、稲、詩冴、真理、舞、麻彌、他、何人かの能力者が殘ってくれた。
ちなみに舞はガチガチで、麻彌は無表のままのほほん、としているので、たぶん、警察班への取材は真理が話すことになるだろう。
それぞれの班ごとに並んで座り、長テーブルを挾んだ向こう側に、記者たちが座っている形だ。
そして、俺ら能力者側は全員、頭上に【REC】マークが出ている。
これは、デバイスによる視界撮影アプリだ。
自の視界を、そのまま録畫できる。
ただし、盜撮防止のため、アプリを使用中はわかりやすく、MR映像で頭上に【REC】と表示される。
これは、犯罪の抑止力にもなっている。
不審者から聲をかけられても、頭上に【REC】と表示させれば、たいていの人は退散するのだ。
「では質問ですが、枝幸詩冴さん。貴のオペレーションという能力について説明してもらってもいいですか?」
「えっ!? あ、あー、はい、えーとですね、シサエの、アレは、ほら……」
――意外にガチガチかよ!
「コンビを組んでる自分が答えます。彼のオペレーションは半徑10キロ以の、人間以外の生をコントロールできるんです」
そうやって、俺は詩冴の能力について解説していく。
ちなみに、案の定、警察班への取材は、真理が一人で理路整然と話している。
「では桐葉さん、この仕事に就いて良かったと思うことはありますか?」
「そりゃあハニーに出會えたことだよ。ハニーはね、ボクの蜂の能力を怖がらないんだよ」
記者の一人が、怪訝な顔をした。
「それでは監視の意味がないのでは?」
「ん? どうして?」
「だってお二人は付き合っているのですよね? なら、彼がアポートで盜みを働いたとしても、貴はそれを黙認するのではないですか? むしろ、する貴が頼めば、彼は何でも盜むのでは?」
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