《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》稲が尊い

「だってお二人は付き合っているのですよね? なら、彼がアポートで盜みを働いたとしても、貴はそれを黙認するのではないですか? むしろ、する貴が頼めば、彼は何でも盜むのでは?」

まずい、と俺が思った時にはもう遅い。

桐葉は視線の溫度を絶対零度まで下げると、強い敵意を込めた聲を返した。

「ハニーが毎日サイコメトリーをけているのは知っているよね? なら、そんなことしたらボクまで共犯じゃないか? 今の発言、ハニーを犯罪者にしたいって願けてるよ? お前ら【能力者廃絶主義者】?」

能力者廃絶主義者とは、名前の通り、能力者を社會から廃絶しようという団だ。

世間ではあまり相手にされていないが、一部では熱心な信者もいる。

能力者を批判する書籍を出せば、必ず彼らが買ってくれるので、一定の売り上げが見込める批判本は、毎月何點も敢行されている。

「この取材が、ボクら能力者を斷罪する材料探しのためにやっているなら、ボクらは帰るよ」

本當に立ち上がり、桐葉は帰ろうとする。

記者は慌てて制止しようとし、俺も、桐葉の肩を抱きよせて座らせた。

桐葉のイメージダウンは、避けたかった。

「まぁまぁ桐葉。よし、じゃあこの場を借りて頼むよ。桐葉、もしも俺がアポートで何かを盜むようなことがあったら、容赦なく毒針を打ってくれ。あと、24時間桐葉の働き蜂になるよ」

「え、それほんと?」

桐葉は、ちょっと以上に悪い顔で指を立て、俺のわき腹を突いてきた。

「ああ。記者さんの前で約束するよ。あ、これ記事にしていいですよ。俺が悪いことしたら、自分以外の子と口を利いちゃダメとかそういうのでもOKだぞ」

「じゃあ一緒にお風呂ってカラダ洗ってくれる?」

「録畫中に何言ってるんだよ。ああもう絶対アポート悪用しないからな!」

「え~、ボクはちょっと悪用してほしいなぁ、ねぇねぇねぇ」

「やめなさい」

俺がチョップのポーズを取ると、また、桐葉は俺のチョップに額を當てた。

「でこタッチ♪」

おでこで甘えながら、キス顔を作る桐葉。その姿がべらぼうに可くて、ちょっと我を失ってしまう。

そして、記者さんは俺らの様子を、苛立たし気に見ていた。

きっと、人がいないのだろう。

「奧井君。君は金屬班でもあるんだろ? 峰さんと一緒に取材、いいかな?」

「あーはい。いいですよ」

歯を食いしばっている記者を無視して、俺は桐葉と一緒に、稲の隣の席に移した。

稲を擔當していたのは、早百合部長を問い詰めていた、あの記者だった。

早百合部長が駄目なら、部下の能力者を叩いてホコリを出してやる。

そんな意図が、目から溢れている。

否応にも警戒心が高まる中、記者さんは稲に尋ねた。

峰さん、君は、から特定の元素を出できるんですか?」

「はい。それを原子レベルで結合できるので、たとえば廃車から鉄原子だけを集めて鉄のインゴットを作れますし、廃棄するデバイスの山があったら、そこから純金を集めて金塊を作れます。とは言っても、デバイスに使われている金は量なので、かなりの量が必要ですけどね」

稲は張することなく、穏やかに対応していた。

さすがは學園のアイドル。コミュ力が高い。

「でも、その力があれば、自分で大金を稼ぐこともできますよね?」

「う~ん、そういうのは興味ないですね。私は、この力を國家のために使おうと思います」

「でもほら、若いんだし、しいとかあるんじゃない? 君がその気になったら、タワマンも買えるでしょ?」

既に俺らはタワマンに住んでいる。あくまで舎だから借りだけど。

――というかこの記者、何を企んでいるんだ?

「いえ、贅沢には興味が無いので。収は生活できる分があればそれで構いません。それにほら、私は換金ルートなんて持っていませんし、貴金屬の買い取り業者に持ち込むのがせいぜいです。あと、それにも所得稅かかりますよね? そういう面倒なのは全部國に任せれば、私は楽して生活費を稼げるんです。私ってずるいですよね?」

くったくのない笑顔に、記者は悔しそうに歯噛みした。

「労働環境に、何か問題とか、困ったこととかはありませんか」

「ありますよ」

「それはどんな?」

記者は前のめりだった。

「私の労働時間がない點です」

「え?」

真顔で、稲は滔々と語り始めた。

「私は、ゴミの山から資源だけを回収できます。私がその気になれば、日本中の埋め立て地を空っぽにできるはずです。なのに、學生に無理はさせられないと、夕方には退勤になってしまうんです。私だっていつ通事故や病気で死ぬかわからないのに、ちょっと悠長だと思いませんか? 國の埋め立て地はあと20年でいっぱいになるんですから、私が生きている間にしでも多くの埋め立て地を空けるべきです。なのに、ホワイト過ぎて困ってしまいます」

「皆さんは、政府に搾取されているんじゃないですか?」

――うわ、稲の発言まるごと無視しやがった。こいつどういう脳味噌してんだ?

こういう人は多い。

最初に自分好みの前提と結論を作り、それに沿った形でしか事を見ず、最初に用意した結論へ導する。

――さてはこの記者、離反者を出して、政府の責任問題に発展させる気だな。

でも、稲にその手は通じない。

「私の話を聞いていましたか? 聞いていたらそんな質問出ませんよね? 私は、自分の意思で日本を救うためにプロジェクトに協力しているんです。私の話を歪曲するなら、取材はここまでですね。あと、この畫は約束通り、ネットに投稿させてもらいます」

「はっ? 貴、こっちが下手に出ていたら調子に乗って、そんなことさせませんよ!」

「取材容を録畫すること、ネットに投稿する、という條件でけた取材なのにどうしてですか? 大人なのに約束を破るんですか?」

「それは、そうしないと取材をけないと貴方がわがままを言うから」

「つまり騙したんですね。これは詐欺行為に該當する可能がありますよ」

「屁理屈を言うんじゃないわよ!」

記者は化粧にヒビがりそうなほど顔を歪めて怒鳴った。

他のテーブルに著いている能力者たちの視線が、一斉に記者へ集まる。そう、頭上に【REC】と表示された能力者たちの視線がだ。

それで、記者もハッと我に返った。

けれど、今更取り繕うことなんてできない。

記者は最後の抵抗とばかりに稲を睨みつけてから、足早に會議室を出て行った。

稲、お前やるな」

「大したことじゃないよ。だって正論しか言っていないもん。それともこれが【ロジカルハラスメント】なのかな?」

「いや、【正論で理不盡】てもう破綻してんだろ。俺その言葉嫌いだな。とか言っているから俺は嫌われるんだけど」

「でも彼さんとはラブラブだよね」

「おい、ここは配信すんなよ」

軽くツッコミをれると、小柄で若い、ポニテの記者さんが俺らの対面に座った。

「あ、わたし燃料班擔當なんだけど、奧井君、お話聞かせてもらえるかな?」

「はい、答えを導する質問以外にはだいたい答えますよ」

「安心して、わたし、早百合部長の知り合いだから」

ポニテの記者さんは、にっこりと笑った。

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