《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》ワクワクの初任給

翌日。5月2日の水曜日。

俺と桐葉、稲が登校すると、教室は騒然となった。

「おい奧井、今朝のテレビ見たぞ!」

「なんで今まで隠していたのよ水臭い」

「守義務ってやつか? でもオレらにぐらい教えてくれてもいいだろ?」

「そうだぜ。同じクラスの仲間じゃないか!」

問わず、みんな、目を輝かせながら迫り、扇狀に俺を取り囲んだ。

「ちょっと冷靜になれお前ら、今朝のニュースってなんの話だ?」

今朝は寢坊したので、俺はニュースを見ずに登校してきた。

ちなみに桐葉は、俺の寢顔を撮影すると言う理由で起こしてくれなかった。

「何って、これだよ」

男子生徒がMR畫面でニュースサイトを開くと、一本の畫が再生された。

容は、昨日、俺がけたインタビューだった。

畫面の右上や下には、【年間8兆円を稼ぐ高校生】【燃料問題を一人で解決する、スーパー超能力者に電撃インタビュー】と表示されている。

それで俺は、うへぇ、となった。

はっきり言って、俺にはスター願も自覚も無い。

マスコミにバッシングをける蕓能人のニュースを目や耳にするたび、有名稅重すぎんだろ、と思ってきた。

それに、俺はただ能力を発させているだけで、なんの苦労も払っていない。例えるなら、1キロのダンベルを持ち上げたら騒がれている覚だ。

もちろん、自分の能力で燃料問題を解決したのは知っている。稲や詩冴、桐葉と同列になれた達もある。

けど、周りから讃えられるのは、気が引ける。

なのに、みんなは好奇心と憧れに両目を輝かせ、想笑いを浮かべながら、俺とコミュニケーションを取ろうと躍起だった。

「おいお前ら、何騒いで、奧井!?」

「あ、坂東、退院したのか?」

振り返ると、また下水道に落ちて染癥を引き起こして、高熱と下痢と嘔吐が止まらず院していた坂東だった。

三度目ということもあり、桐葉は早くも目つきを細め、敵意を向けた。

坂東も、眉間にしわを寄せて睨んでくるも、長続きはしなかった。

「けっ」

糞悪そうに吐き捨てて、俺らに背を向けると、坂東は反対側のドアから教室にった。

その背中は丸く、席に著くと、ネットサーフィンを始めた。その顔は不機嫌の塊で、空中に展開したMR畫面を睨むように目を細めている。

すると、俺を包囲する連中の一人が尋ねてきた。

「なぁ奧井ぃ、ぶっちゃけた話給料っていくらもらっているんだよぉ」

「は? なんでそんなこと教えなくちゃいけないんだよ?」

「いいだろ別に。教えてくれないとここ通さないぞ」

なんて鬱陶しい連中だと思いながら、俺は息をついた。

「基本給が20萬。基本超能力手當が10萬。あとは個々人の仕事容で特別超能力手當てが付くけど、四月分はまだ計算中だからわからない」

合計月30萬。

高校生の収にしては、多すぎる。なんだか申し訳ない。

「歩合制みたいなものだからね。最初だから、総務省も適正額に悩んでいるんだよ」

と、桐葉は俺の顔を見ながら言った。

稲たちのことは仲間と認識しているも、どうやらクラスメイトたちと言葉をわす気はないらしい。

――まだ、ちょっとコミュ力が足りないな。

その一方で、桐葉にはこいつらと口を利いてしくない、という思いもある。

特に男子。

これが獨占だろうか。

そこへ、視界の右下に、AR映像で封筒マークが浮かんだ。

――メッセージ? 早百合部長からか?

開いてみると、早百合部長の凜とした聲が流れた。

『奧井育雄、貴君の特別超能力手當が決まったぞ』

――へぇ、いくらだろ? 10萬? 20萬?

『政治家共もシブチンでな。メタンハイドレートは政府の財産で、貴君はただ運んだだけだから、掘削料と輸送費としての手當てになった』

――なら、5萬円くらいかな? まぁ、30萬円でも十分だからいいけど。俺は能力を行使しているだけだし。

『6億円になった』

「あーそうですか6億、6億ぅっ!!!!?????」

俺は、脊髄反んでしまった。

――なんだその報酬額!? ケタがインフレしているぞ! バトル漫畫なら初期ボスってなんだったんだろうってファンがイジり始めるぞ!

「ハニーもメッセージ読んだんだ。ボクはローヤルゼリー作り始めたの最近だから今回は1000萬円だけど、次回からは3億円くれるって。ちぇっ、ハニーをボクのヒモにしようと思ったのに、追い抜かれちゃった」

桐葉がチュッとくちびるを尖らせる一方で、クラスメイトたちはを滴らせるシマウマを前にした、法悅のライオン顔だった。

「ろく、おく……」

「寶くじかよ……」

「それを毎月……」

「奧井! オレら友達だよな!」

「あたし実は前から奧井くんのこといいなって思っていたの!」

「奧井! みんなのセカンドハウスとしてタワマン1フロア買い切ろうぜ!」

「私來週誕生日なんだけど、プレゼントちょうだい! いいでしょ!」

「今日からお前放課後の払い役な! 6億もあるんだからいいだろ!」

怒濤のタカリ行為に圧され、俺は咄嗟に対応できなかった。

桐葉も、珍しく困していた。暴力を振るわれているわけではないので、どう対応すべきか悩んでいるのだろう。

でも、助け船は後ろからきた。

「はい、そこまでぇ」

背後から俺と桐葉の肩を抱いて、稲は、優しい顔でみんなを見回した。

を剝き出しにしたクラスメイトたちに向けて、彼は語り掛けた。

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