《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》スクール下克上
「みんな、お金目當てで群がるのはみっともないよ。育雄君困っているじゃない」
學園のアイドルにしてスクールカーストトップの登場に、ケダモノたちはやや怯んだ。
「な、峰さん……」
「別にいいじゃない。だって6億円だよ6億円。私ら全員に1000萬円ずつ配っても3億円以上殘るんだよ」
「そうそう。あたしならチョコレート6億枚持っていたらむしろ友達みんなに好きなだけ持って帰っていいよって言うよ」
「獨り占めなんてずるいわよ」
――どういう例えだよ……頭だいじょうぶか?
「それ、貰う側が言うことじゃないよね? それに育雄君が育雄君の力で稼いだお金なのにどこがずるいの?」
「「「うっ」」」
子ABCは撃沈した。
「ノブリスオブリージュって言うだろ。金持ちは庶民に施す義務があるんだよ!」
「それを現したのが累進課稅でしょ? 億単位で稼いでいる人はみんな、所得の半分以上を稅金で持って行かれているんだよ。自分の才覚で稼いだお金なのに」
「へ?」
「他にも土地や建を持っているだけで毎年かかる固定資産稅、高額な産相続にかかる相続稅、高額なプレゼントにかかる贈與稅とかね」
「稅金なら俺らだって払っているぜ」
男子の一人が、偉そうにを張った。
「みんなが払っているのはせいぜい消費稅で月1000円かそこらでしょ? それじゃ國は運営できないよ。金持ちなんだから奢れっていうけど、みんなは現在進行形で高所得者に養われているんだよ。フリーライダー問題って知っている?」
「フリーライダー、なんだそれ?」
「払っている稅金以上の公共サービスをけている人のことだよ。日本て住みやすいよね。蛇口をひねるだけで清潔な水が飲めて、消防や警察がみんなのために24時間365日待機してくれて、困ったことがあったらいつでも電話一本で駆けつけてくれて、もしも外國が攻めてきたり災害に巻き込まれても自衛隊が守ってくれて、中學校まではタダで教育をけさせてくれて。これだけ至れり盡くせりのサービスが、月1000円で賄えると思う?」
「ぐっ」
男子Aは撃沈した。
「アタシは警察も消防も呼んだことないわよ!」
「それは利用しなかっただけ。いつでも利用できる環境を整えて貰っていることが大事なんじゃない。それはスポーツジムに會しておきながら今月は行っていないから月謝払わないっていうのと同じだよ」
「あぐっ」
子Dは撃沈した。
「人聞きの悪いだな。友達に奢るのなんて普通だろ?」
「育雄君、この人たちって友達なの?」
「いいや。連絡先知っている奴なんて一人もいないぞ」
「お前ふざけんなよ。同じクラスの仲間だろ!」
「クラスは學校側が振り分けたグループだよね? 友達って學校から與えられるものなのかな? 君みたいに都合のいい時だけ友達顔するのってよくないと思うよ」
「のぐっ」
男子Bは撃沈した。
「はんっ。とかなんとか言って、本當は自分がタカりたいだけじゃないのか?」
「言えてる。さっきから妙に奧井の肩持つし、オレらを踏み臺にして自分が奧井とお近づきになりたいだけだろ? 峰って意外に卑怯なんだな」
「それはないよ。だって私の特別超能力手當20億円だもん」
全男子子が撃沈した。
みんな、目を剝いて、息を止めている。
「でも私もみんなに奢る余裕はないよ。私が平均壽命まで生きるのにかかる費用2億円を除いた18億円は、政府の難病研究機関に寄付したから。たった今ね」
稲は、MR畫面をみんなに見えるよう可視モードにして、ひっくり返した。
そこには、
【寄付をありがとうございます 政府機関一同 1・800・000・000円】
と、メッセージ付きの電子謝狀が表示されていた。
それでまた、みんなは息どころか心臓まで止めそうな顔で、愕然としてた。
俺も、これには帽した。
いくらあぶく銭でも、18億円という大金を、ポンとその場で寄付してしまう気風の良さは、尊敬を通り越して崇拝してしまいそうだった。
「それと、育雄君は桐葉さんとラブラブで18歳の誕生日に結婚する勢いなの。狙っても無駄だよ」
みんなを嗜めるように、稲が語気を強めた。
子たちは、稲を挾んで俺のそばに立つ桐葉の亜麻の髪、ハチミツのの瞳、桜のくちびる、そして、メロン大のバストに目配せをして、戦意を喪失した。
クラスメイト達は、それぞれ違った、けれど腹に一抱えた表で、散っていった。
「ありがとうな、稲」
「ボクも、ハニーを助けてくれてありがと」
「大したことじゃないよ。ただの正論ですから。じゃあ、またお晝に」
「おう」
「うん」
謙遜しながら、稲はクールに背を向け立ち去った。
――でも驚いたな。まさか稲が、あんなことを言うなんて。
さっきの一件で、なからず、みんなのヘイトを稼いでしまっただろう。
その場を丸く収めるのではなく、相手をやりこめるようなことを、しかも、自ら首を突っ込んで。
――いや、まだ知り合って一か月も経っていないし、元から隣のクラスで、前からそんなに知っているわけじゃないしな。
元から、彼はああいう格だったのかもしれない。
そう納得して、俺は桐葉と一緒に自分の席へ足を運んだ。
自然と、すぐ後ろの席に座る坂東が視界にる。
坂東は不機嫌そうに鼻を鳴らすと、デバイスの仮想畫面をわざわざみんなに見えるMR畫面にして、自分の顔を隠した。
こいつの存在が、やたらと小さく思えて、何もじなかった。
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