《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》稲の帰り道

それから、俺と桐葉、稲の三人は、水族館から最寄り駅までの10分間、今日一日を振り返りながら歩いた。

見た、買った、話した事、麻彌がペンギンコーナーにってしまった事と、それから、坂東を見かけた事も言った。

どの會話でも、稲と桐葉は笑ってくれた。特に、坂東の話を。

駅に著くと、俺もし名殘惜しかった。

今日が終わってしまった。

その覚に、早百合部長の言葉を思い出した。

「高校生のゴールデンウィークは一生に三度しかないのではない。高校一年生のゴールデンウィークは一生に一度しかないのだ」

なら、それは一日一日においても言える。

高校一年生のゴールデンウィーク初日は、一生に一度しかない。

そして俺は今、その一生に一度しかない日を、失おうとしている。

そう思うと、急に寂しさがこみあげてきた。

俺は意外と、影響されやすいのかもしれない。

知らなかった自分の一面に驚かされながら、俺は稲と別れようとする。

けれど、稲は俺と桐葉を見つめながら、優しい顔で見上げて言った。

「さっき、八方人をやめた理由、ここに居場所があるからって言ったよね。でもね、きっかけは、ハニー君のおかげなんだよね」

「え?」

俺がまばたきをすると、稲は慈のこもった聲をかけてくれた。

「だって私、総務省でもハニー君としか接點なかったじゃない」

「あー、言われてみれば。きっかけって、俺を通して詩冴とか桐葉とかと出會ったって意味か?」

「ううん、そうじゃないよ」

ゆっくりと首を橫に振って、彼は否定した。

「私の知る普通の人は、利益のためにくんだよね。前に言った、他人の手柄を橫取りしたり、自分との共同果にしようとしたり、ケチをつけたり。他にも、都合がいい人だから一緒にいるとか。でも君は違う」

大きな瞳に俺を映して、稲ははっきりと、俺の心に響かせるように、明るく語気を強めた。

「君は自分の利益じゃかない。學校の人たちよりも、君1人と友達になりたいなって思ったの。だから、君が學校の人に責められたら、君を守りたいの。たとえそれで學校の人たちに嫌われてもね」

まるでの告白をするように友を語る稲は、とても魅力的だった。

のことを大切に思いながら、自然と口が開いた。

「もっと、早く稲と知り合いたかったよ。俺と稲だけじゃない、俺らみんな、な」

隣の桐葉の手を握ると、桐葉は俺の腕を抱き寄せてくれた。

「うん、ほんとそうだね。ボクの學校にハニーがいてくれたら、ボクはあんな辛い思いをせずに済んだ。ハニーじゃなくても、今日一緒に遊んだ誰でも、きっとボクを怖がることはなかったと思う」

深いため息を吐きつつも、桐葉は、夢を見るような聲音で、そうらした。

「俺ら七人が同じ小學校だったら、桐葉は坂東をぶっ飛ばして元気な大將、稲と詩冴は俺らと楽しく遊んで、麻彌はみんなに甘えて、舞は難しいことに悩んで、真理が天然フォローを炸裂させて、俺がツッコんで、そんな毎日だったかもな」

生まれる場所が違えば、もしかしたらあったかもしれない世界線の景に思いを馳せて、俺は笑みを浮かべた。

そんな小學校時代を送りたかった。

でも時間は巻き戻せない。

それこそ早百合部長の言う通り、どんな日だって一生に一度しかないのだから。

深く考えすぎると哲學的で、あるいはまるでマンガのセリフみたいだけど、再び巡る日なんて一日も無い。

だから、人は一日一日を無駄にせず、一生懸命生きるべきなんだと思う。

――なんて、恥ずかしくて誰にも言えないけどな。

この場に舞と真理がいないことを幸いに思っていると、稲は最高の笑みを浮かべて、背筋をばした。

「じゃあ二人とも、また明日ね」

「ああ。また明日な」

「また明日遊ぼうね、稲」

「うん。二人とも、また明日」

三人で置き土産のように『また明日』という言葉を殘すと、稲は駅の中へと消えて行った。

今日が終わるのは寂しいくせに、早く明日になってしい。

矛盾な幸せに浸りながら、俺は桐葉の手を握る指に力をれた。

「俺って恵まれているよな」

「今さら気づいた? でもね、これかもっともっと、ボクが幸せにしてあげるんだから。覚悟していてね、ハニー」

「覚悟じゃなくて期待をするよ」

桐葉は頬をほんのりと赤くして笑った。

奧井育雄と別れた後、電車に乗った稲だが、最寄り駅の一つ前で降りてしまった。

すぐに帰るのはもったいないとテレポートを斷った彼は、とうとう電車で帰ることすらもったいないと思ってしまったのだ。

葉うなら、このまま家に帰りたくなかった。

家に帰らなければ、まだ奧井たちと過ごした時間の延長でいられるから。

真っ赤な夕日に照らされながら、彼はそんなことを思っていた。

家に自分の居場所はない。

あそこは嫌だ。

息苦しくて、いつも、早く學校へ行きたかった。

そうすれば、たとえ仮初でも、安堵することができた。

「…………」

赤信號の前で、足を止めながら、視線を落とした。

――この道をまっすぐ歩けば、10分で家に著いちゃう。

い聲に視線を上げると、橫斷歩道の向こう側に、手をつないだ親子が立っていた。

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