《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》俺のテレポート能力がチート過ぎる!
桐葉と一緒に家に帰ると、桐葉はすぐにシャワーを浴びた。
一緒にる?とわれて、からかわれて、恥ずかしい思いをしてから、俺は彼がシャワーから上がるのを、テレビを見ながら待っていた。
すると、不意に稲から電話がかかってきた。
明日の遊園地のことで相談でもあるのかと思い出てみれば、稲の助けを求める聲と悲鳴、そして、坂東の下卑た聲が聞こえて、俺は脊髄反でテレポートした。
居場所なんて知らない。
ただ、この電話の向こう側へ行きたいと思いながらテレポートしたら、目の前に稲と坂東がいたので、坂東をテレポートさせた。
そして、今に至る。
稲を安心させるために、瞬間的に湧いた怒りを抑え込みながら、俺は彼に手を貸した。
「稲、立てるか?」
「う、うん」
彼の手にれると、その冷たさに驚いた。
まるで、彼の恐怖心を現したような溫度に、ドス黒いが湧いてくる。
以前、稲は俺のことを、バトル漫畫の最強主人公と言ってくれたけれど、およそ主人公らしくない、本能的な衝だった。
「奧井か、最高のギャラリーだな。お前の前で犯して、どっちのモノが上かわからせてやるよ!」
「坂東!」
「おっと、お得意のテレポートは効かないぜ。素人のお前は知らないだろうが、質に干渉するタイプの能力は、同じ超能力には効かないんだ。つまり!」
坂東のが、一瞬で氷の鎧に覆われた。
鎧はさらに長して、顔も隠した。まるで、西洋甲冑だ。
「こうして全をオレの氷で守れば、お前のテレポートは効かないんだよ!」
有頂天になって吠えながら、坂東の背中から第三第四の腕が生えていく。その手には、禍々しくねじくれた剣が握られ、怪じみた姿に変していく。
「奧井、お前にこの姿を見せるのも久しぶりだな。いや、あの頃よりもさらに進化したから始めてか。これがオレの最終形態、ジ・エンペラーだ。言っておくけど、テレポートで逃げたら稲の家に行かせてもらうぜ。娘の不始末を、親につけてもらわないとな!」
「ッ」
俺の手を握る稲の手が強張った。
彼は、両親と不仲らしい。だからと言って、暴走した坂東の餌食になってもいいわけじゃないんだろう。
――本當に、優しい子だよ。なのに、あいつは稲を傷つけた。
頭が沸騰するような怒りが冷めていく。
許したんじゃない。
むしろ、坂東への容赦がなくなった。
話を聞こうと、テレポートで距離を作ったが、もうその必要はない。
坂東がどれだけ傷つこうが関係ない。
稲を守れれば、それでいい。それだけが、唯一の優先事項だ。
「ははは! 命乞いしてももう許さねぇぞ奧井! 今日はお前にの程をわからせてやるよ!」
勝利を確信しながら、坂東は地面を蹴り飛ばし、弾丸のように飛び出した。
俺の腕の中で、稲がをくした。
だから彼を抱き寄せ、俺は言った。
「安心しろよ稲、俺は、最強主人公なんだろ?」
「でも」
「くたばれぇえええええええええええ!」
氷の武を振り上げながら坂東は5メートル手前から跳びかかってきた。
そして、上空から飛來した砲弾が、坂東を々に砕いた。
目の前で自車が正面衝突を起こしたような破砕音が耳をつんざいた。
破片は全てテレポートで防ぐも、衝撃波にを叩かれ、俺と稲は反的に目を細めた。
雪が舞い散り、辺りは軽く霧がかった。
その中央で、坂東はうつぶせに倒れ、死んだように白目を剝いていた。
死んではいないだろうけど、下半は完全に潰れ、回復系能力者でも、機能を取り戻せるかはわからなかった。
坂東の最期に、稲はぽつりとつぶやいた。
「あれって……自販機?」
坂東の腰を潰しているのは、ひしゃげた自販機だった。
稲がはっと振り返った先、ベンチの隣にあった自販機は姿を消して、自販機の下半分を覆っていた氷だけが殘っている。
「坂東にテレポートが効かないなら、他のモノを持ってくればいい。自販機を上空にテレポートさせて、十分にスピードを付けてから落下速度をそのままに、坂東の頭上にテレポートさせれば、絶対に當たるだろ?」
「すごい……あの一瞬で思いついたの?」
「いや、実は毎晩テレポートで戦う方法考えていた。稲に、バトル漫畫なら最強主人公だよねとか言われて、その気になっちまってさ。子供っぽかったかな?」
「ううん、カッコイイよ。大好き」
稲は幸せそうな笑みで、俺の首に抱き著いてきた。
その笑顔は本當に素敵で、坂東への怒りなんて、どこかへ吹き飛んでしまった。
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