《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》転校、新たな學園

「こ、ここが俺らの通う學園ですか……」

「うむ、良いところだろう?」

5月11日金曜日の朝。

俺らは、龍崎早百合(りゅうさきさゆり)部長の案で、都のとある高校の前にいた。

は俺ら超能力者をまとめる、日本政府総務省異能部の部長だ。

今日は俺ら超能力者のために新設された學園の學式で、わざわざ案を買って出てくれた。

けれど、その高校の建があまりに立派過ぎて、俺はやや圧倒されていた。

學校というよりも、まるでコンベンションセンターだ。

次々生徒たちが玄関へ向かう中、俺は校舎を大きく見上げながら、ぽかんと口を開けた。

「こんなトンデモない施設、どうやって用意したんですか?」

「廃校になった場所を安く買い上げたのだ。貴君らは運がいいなぁ!」

早百合部長は長い黒髪をかきあげると、自慢げにを張った。桐葉すら超えるが、タイトな黒スーツ越しに揺れて、俺は視線を逸らした。

「廃校って、生徒いなくなったの?」

そう問いかけたのは、俺の彼で同居人、針霧桐葉(はりきりきりは)だ。

蜂の能力を再現できる超能力【ホーネット】の使い手で、その影響か日本人なのに亜麻の髪とハチミツの瞳を持つ、絶世のだ。

上司の早百合部長にもタメ口を利くフランクな格で、俺を的にからかうのが趣味という困った奴だ。

「ライバル校に學希者を奪われ、昨年度末に吸収合併され、建だけが殘った。かつては日本中のエリートが通う超進學校だったのだがな。エリート階層が子供を學校へ通わせるのは學歴以上に人脈を作るためだ。ライバル校と生徒數に差ができれば、あとは坂を転げ落ちるように衰退したよ」

「盛者必衰って奴ですね」

きちんと敬語を使っている上品な子は、稲。質を分解再構築するリビルディングの使い手で、前の高校から一緒にいる友達であり學園のアイドルだ。

今日も綺麗にヘアセットされた黒髪のハーフアップがしく、街中を歩けばスカウトマンに聲をかけられても違和がない。

ちなみに、三人そろっての発育が極めて良好なので、一緒に居るとどこぞの馬鹿がおかしな誤解をしそうだ。

「こんなにおっきな校舎で、生徒ちゃんは何人くらい集まるんすか?」

アルビノで、ツインテールにまとめた純白の髪を指でもてあそびながら尋ねるのは、枝幸詩冴(えさししさえ)。

るオペレーション能力者で、総務省では俺の相方的ポジションだ。

もかなりので、自他ともに認める巨ではあるものの、桐葉たちが恵すぎて普通に見えてくる。

24時間構ってちゃんで、おはようからおやすみまでメッセージが止まらないが、一緒に遊んでいると楽しいのであまり気にならない。

「一學年辺り300人強、三學年合わせて約1000人になる。だが、貴君らは同じクラスにしておいた」

「サユリちゃんグッジョブっす♪」

そして、桐葉を越えるフランクガールでもある。

――にしても天下の僚様をちゃん付けって……。

詩冴は絶対OLにはなれない。そう思った俺だった。

「では、まずは講堂で學式だ。ついて來るがよい」

「講堂がある時點で普通の高校じゃないですね」

俺は辟易としたため息をついた。普通、そこは育館だろうと。

軽く、一か月分の走馬燈を見ながら、今でもこれは夢ではないのかと思う。

俺は、つい先月まではボッチ野郎だった。

なのに、テレポーターであることがわかってから、財政破綻した日本を救うプロジェクトの一員となり、総務省で働くことになり、タワマンで桐葉という人と同棲して、地下資源をテレポートで採掘することで月収6億円の分になった。

そして先週、い頃から俺をいじめてきた坂東と対決して勝利を納め、袂を分かつことに功した。

そして今度は、超能力者だけが通う學園へ學。

まるで誰かが腳本を書いているような、出來過ぎたシナリオだと思う。そう言えば、主人公の人生が全てラスボスに作されていたってオチの漫畫があったな、と思う。

ただし、殘念と言うか幸いと言うか、この世界には超能力はあっても悪の組織、なんてものはない。

超能力は、超質とか、完全記憶能力とかと同じ、特異質の一種として、日常に浸している。

特別を見出すのは、中二病めいた、坂東のような馬鹿だけだ。

「何しているのハニー? ほら、早く行こ」

考え事をしていた俺が顔を上げると、桐葉が無邪気に笑いながら、手を差し出してきた。

言葉がけだけでいいのに、相変わらず、スキンシップが好きな子だ。

おかげで、ドキドキさせられっぱなしだ。

「おう」

何にせよ、上辺しか見ないクラスメイトたちと別れ、彼たちと學園生活を送れるのだから、こんなに幸せなことはない。

桐葉の手を取り、俺は校門をくぐった。

講堂で學式を終えた俺らは、1年1組の教室へ集まった。

窓際の俺の席を中心に、桐葉、稲、詩冴、舞、麻彌、真理の六人が集まる。

「しっかし二か月連続で學式をするとはな」

俺の想に、栗のワンサイドアップが可い、舞舞(こいまいまいこ)が苦笑いを浮かべた。

「あはは……まぁみんな、先月に元の高校でも學式しているからね……」

「そういやみんなはこんな簡単に転校してよかったのか? 俺は単純に地元の高校けただけだし、著ないけど」

「私は形だけの友達にわれて學しただけだから」

「前の高校にシサエの友達はゼロっす」

「サイコメトラーだからっていじめられていたしちょうどよかったよ」

「私は指示された通りにくだけです」

「そもそもボクはハニーの監視任務で元から転校済みだし、前の前の學校ではハチの能力で避けられていたし」

「え? なんなの? 能力者ってみんな闇深いの? 俺も能力者だからボッチだったの?」

稲、詩冴、舞、真理、桐葉のバックボーンに、俺は肩が重くなった。

「て、そういう麻彌は?」

合法ロリのちっちゃ可いみんなのマスコット、むしろゆるキャラでサンリオのキャラに混じっていても違和が無い山見麻彌のツーサイドアップ頭を探した。

すると、らしいペタンコぼでぃは桐葉と稲のを下から頭突き、両腕で擔ぐようにしていた。

「ここはもちもち天國なのです。前の學校はスカスカ地獄だったのです」

「ぃやん、ちょっと麻彌さんッ」

「あはは、麻彌ってばほんとにおっきなおっぱい大好きだよね。ハニーのいい対抗馬だよ」

「だから俺の私生活が疑われるようなこと言うなよ!」

「そうっすよ。ハニーちゃんがキリハちゃんのバインバインに溺れないよう、シサエがおはようからおやすみまでお邪魔メッセージを送りつけているんすから!」

「そういう目的で送っていたのか!?」

「ぐふふ、これもハニーちゃんのためっすよ。別にシサエが構ってしいとかじゃないっすよ♪」

「てめっ、本當はそっちが目的だろ!?」

「怒っちゃだめっす~、怒っちゃいやっす~♪」

「つうか水著の畫像送るのやめろ! 昨日も桐葉に見られて勘違いされたんだからな!」

詩冴の顔が邪悪に歪んだ。

「おやおや破局の危機っすかぁ?」

「ボクのほうがセクシーだもんとか言って下著姿で迫られたんだよ、壁際に!」

「ちっ、逆効果でやんしたか」

「お前いい加減、下水道にテレポートさせるぞ」

俺のテレポートは、任意のモノを任意の場所にワープさせられる。

宇宙空間に放り出さないだけ、マシだと思ってしい。

「へへん、テレポートを悪用したらマイコちゃんのサイコメトリーを証拠に一発でムショ行きっすよん♪」

「きゃっ」

の背後に回り込んで抱きしめながら、詩冴は聲を弾ませた。

は恥ずかしそうに顔を赤らめる。

桐葉はこういう顔を時々しか見せてくれないので、子の赤面にはレアリティをじた。

「つまり、ハニーちゃんは詩冴に手を出すことは……ん? マイコちゃん、初めて會った時よりもおっぱいおっきくなってませんか?」

「ふゃっ!? な、なってないもん!」

「マリアちゃん、マイコちゃんのブラのサイズを念寫するっす!」

「承りました」

「承るな!」

俺が寸止め空手チョップを真理の脳天に叩き込むと、彼はクールにまばたきをした。

「ですがまれましたので」

まれたからって何でもやるな! お前の命令権にアカウントねーのかよ!?」

「他人にまれれば可能な限り聞いてあげるのが私のモットーですので」

「人間國寶並の素直さか!」

もはや奇跡に近い純真さである。麻彌とは、また別ベクトルの無垢さだ。

いま世界に足りないのはこういう子だろう。

でも、その純真さが人を傷つける。

真理は無表のクールフェイスで俺を見つめ、眉ひとつかさないまま、瞳の奧から疑問のオーラを出してくる。

麻彌はお人形さんのように可いけど、真理はお人形さんのように整った顔と髪が特徴で、寶石のような瞳で見つめられると、怒る気力がなくなってしまう。

なんというか、何を言っても通じない、そんな気になってくる。

「とにかく、他人の個人報を他人に教えちゃダメだぞ」

「わかりました、それと」

真理は、ノーモーションでふっと距離を詰めてくると、俺の耳元で囁いた。

「舞さんはGカップです」

「だから教えるなよ! 俺のみは聞かないのかよ!?」

「えっ、いまハニーくん、わたしのほう見たよね? いまわたしの何を聞いたの?」

「な、なんでもないぞ舞

「目を逸らさないで教えて、ねぇ、何を聞いたのねぇ?」

に追求されて、俺が困っていると、擔任らしき室してきた。

「さぁ先生が來たぞ、みんな席に座ろうか」

「むぅ、あとで絶対に聞かせてよねっ」

気な格の舞にはめずらしく、ちょっとすねた顔で、なかなか食い下がってきた。

いや、もしかすると、初対面の張がなくなって、気兼ねがなくなってきただけかもしれない。

だとしたら、結構嬉しい。

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